<編集履歴> 21Mar.2020公開、29Mar.2024見直し更新(第15回目、科博廣澤航空博物館見直し、写真追加)
戦後初めて開発した国産双発旅客機YS-11を見に行こう!
ここでは全国にあるYS-11展示機の様子をサラリと紹介する。「行ってみようか」と思われた方は、各展示施設のHPなどで最新情報を得てから出かけてくださいね!
【現用機の状況】
(1) 日本国内の航空会社やいくつかの航空関連組織がYS-11を運用していたが、航空会社、海上保安庁、航空局、海上自衛隊のYS-11は既に退役している。
(2) 航空自衛隊では飛行点検隊(入間基地)所属のYS-11FC (52-1151)が2021年3月17日に退役した。これにより国内に残っていたオリジナルのRR製ダートMk.542-10エンジンを搭載した機体は全て引退したことになる。
(3) 航空自衛隊ではエンジンをGE製T64-IHI-10J(P-2Jのエンジン)に換装したYS-11EAを2機とYS-11EBを2機の合計2機を2024年03月28日時点でも運用しているが、本Blogでは引退後に各地で展示されている機体(用廃展示機)のみに注目して紹介する。
写真1 YS-11FC飛行点検機は2021年3月17日に最終飛行を行い退役した。これによりオリジナルのダートエンジンを搭載した機体の運用は国内で終了した。(2018年11月15日入間基地にて撮影)
写真2 航空自衛隊ではエンジンをGE製T64-IHI-10Jに換装したYS-11EAを2024年度末まで、YS-11EBを2027年ごろまで運用する予定だが、用廃機を紹介する本Blogでは(本機は現用機なので)取り上げない。写真はYS-11EA電子戦訓練機。(2019年2月13日千歳基地にて撮影)
【日本国内のYS-11展示場所】
日本国内では次の14か所で全機もしくは機首部分や胴体部分が展示(あるいは放置)されている。これらを北から南の順に紹介しよう。なお計器盤やプロペラのみの展示は国内の数か所にあるが本Blogでは原則として取り上げない。
02. 茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ内の「科博廣澤航空博物館」(屋内展示)
03. 千葉県 航空科学博物館
04. 埼玉県 所沢航空発祥記念館
05. 東京都 JAXA調布航空センター 機首のみ
06. 神奈川県 電車とバスの博物館 機首部のみ、胴体部分は後述11.にある。
07. 愛知県 あいち航空ミュージアム(屋内展示)
08. 岐阜県 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
【各展示場所の紹介】
<機体> JA8776、元JAC(日本エアコミューター)保有機
<コメント> 屋内に展示されている。元JAC塗装のままで現存する機体は本機のみ。
【青森県】青森県立三沢航空科学館 - 用廃機ハンターが行く!
写真3 青森県立航空科学館のJA8776(2014年2月1日撮影)
2. ザ・ヒロサワ・シティ「科博廣澤航空博物館」(茨城県筑西市茂田)
<機体> JA8610(通算3号機、量産初号機)、元航空局保有機
<コメント> 引退後は国立科学博物館が羽田空港格納庫内に保管、動態保存してきた機体。2019年10月頃より解体作業が始まり、2020年2月28日、日付が変わった頃に羽田空港から搬出。5時ごろに展示場所に到着した。その後、再び組み立てられた。
新たな展示場所をみつけたことは喜ばしい話だが、2006年頃の退役から13年間、保管経費をかけながらも一般公開されずにいたこと自体がおかしな話だ。なお当初は2022年1月に一般公開という予定であったが、2022年11月16日時点でも公開されておらず、開館時期に関する発表はない。この間、少なくとも一回の参加者限定の有料ツアーが企画されており、少数の方が見学されているハズだ。
・分解の様子:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000047048.html
・本Blogの関連記事;
【茨城県】筑西市 ザ・ヒロサワ・シティの”ユメノバ” - 用廃機ハンターが行く!
写真4-1, 4-2 上(写真4-1)は羽田空港「空の日」イベントで展示されたJA8610。下は現在、科博廣澤航空博物館で展示されている同機。(4-1: 2014年9月27日、4-2: 2024年3月27日撮影)
3. 航空科学博物館 千葉県
<機体> JA8611、製造初号機
<コメント> YS-11の初号機だ。機内には計測装置が搭載されている。
写真5 成田の航空科学博物館のYS-11製造初号機のJA8611。(2018年2月17日撮影)
4. 所沢航空発祥記念館 埼玉県
<機体> JA8732、元ANK(Air Nippon)保有機。
<コメント> 西武新宿線航空公園駅前に展示されており、1年365日24時間いつでも見ることができる。年に数回程度は機内公開イベントが開催されている。
写真6 所沢航空公園駅前のYS-11(JA8732)いつもキレイに手入れが行われている。(2013年1月20日撮影)
<機体> JA8720、c/n. 118、元航空局保有機(2006年12月引退)
<コメント> 例年4月と10月に一般公開が行われる。この日は見学者が多くて撮影には不向きだが平日であれば個人でも見学可能だ。
写真7 JAXA調布航空センターのJA8720機首部。(2016年4月24日撮影)
6. 電車とバスの博物館 神奈川県 機首部のみ
<コメント> 意外に知られていないようだが1988年1月10日に米子空港をオーバーランして中海に突っ込んだ機体の機首部が展示されている。2016年まではフライトシミュレーターとして機内に入れたが、現在は機内非公開の模様(未確認)。元TDA塗装は全国でもここだけだ。なお胴体部分は鳥取県空港R/W10スレッショルド脇の道路脇に放置されていたが、2023年夏ごろに撤去された。
写真8 電車とバスの博物館にある元東亜国内航空のJA8662。(2015年1月25日撮影)
7. あいち航空ミュージアム 愛知県
<機体> 52-1152、元第403飛行隊(美保基地)所属機
<コメント> 元航空自衛隊機はココと美保基地の二ヶ所に展示されている。
【愛知県】あいち航空ミュージアム - 用廃機ハンターが行く!
写真9 最後フライトは美保基地から小牧基地へのフェリーフライトだった。(2018年8月18日撮影)
8. 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館 岐阜県
<コメント> 博物館が閉門している時でも敷地外からなんとか見ることができる。土日祝日の開館時間中は訪問者が多いので、人を入れずに機体だけの写真を撮るためには朝一番で入門しよう。
【岐阜県】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館 - 用廃機ハンターが行く!
写真10 岐阜かがみがはら航空宇宙博物館のJA8731(2019年11月11日撮影)
<機体>
4) YS-11A-212 N462AL 元(株)エアロラボインターナショナル保有機
<コメント>
1) 日本航空学園(Japan Aviation Academy)石川能登空港キャンパスには4機のYS-11が集められている。これらの機体は毎年秋ごろに行われる学園祭の際に間近に見学することができる。なお平日でも2~3機は屋外に置かれており、学園の敷地外(駐車場脇)から中望遠レンズで撮影することができる。
2) JA8777,JA8781, JA8805の三機は元JACの機体を訓練用に入手したもの。
3) N462ALは元航空局のJA8709だ。航空局で保有していた6機は退役後に民間業者等に引き取られていった(注:JAXA展示機もこのうちの一機)が、この機体は2014年12月17日の入札において予定価格203,268円に対して(株)エアロラボインターナショナルが2,230,200円(税込)で落札した。再び空を飛べるように整備して羽田から高松へと空輸されたが、モロモロの事情により手放すこととなり、2018年5月11日に高松から能登空港への最後の飛行を行い日本航空学園に引渡された。会社のHPでは入手から手放すまでの様子を伝えている。リンクは次の通り。
YS-11 プロジェクト 飛行までの軌跡① – Aero Lab
YS-11 プロジェクト 飛行までの軌跡② – Aero Lab
【石川県】日本航空学園 石川能登空港キャンパスの展示機・教材機 - 用廃機ハンターが行く!
写真11-1 元JACのYS-11A-500 (JA8777)。(2021年10月6日、外周より撮影)
写真11-2 元JACのYS-11A-500 (JA8805)。(2021年10月6日、外周より撮影)
写真11-3 元AeroLaboのYS-11A-212 (N462AL)。以前は航空局のJA8709だった。(2021年10月6日、外周より撮影)
<コメント> 平成21年および平成31年秋に再塗装された。隣にエアロコマンダー680FL (JA5197)も展示されている。空港敷地の開放時間内(8時ごろから20時ごろ)であれば低い柵越しに全景を眺めることができる。また日中は柵内に入り、機体に近づくことができる。
【兵庫県】但馬空港のYS-11とエアロコマンダー - 用廃機ハンターが行く!
写真12 但馬空港のJA8734(2021年3月31日撮影)
11. 美保基地
<機体> YS-11P 02-1158、元第403飛行隊所属機
<コメント> 2018年頃にC-1と共に滑走路南東端付近の道路脇に展示された。24時間いつでも道路から見られるが金網が邪魔だ。金網の目の隙間から撮影し、四隅に入った金網はトリミング等で除去しよう。運転しながら眺めて事故を起こさないように。
【鳥取県】空自 美保基地の展示機 - 用廃機ハンターが行く!
写真13 美保基地東南部の道路脇に置かれた02-1158。(2021年3月31日撮影)
<機体> YS-11A-500R JA8743、元ANK保有機
<コメント> 本機は高松空港ターミナルと反対側の敷地にある「さぬきこどもの国」という名称の公園にある。空港ターミナルからは道なりに4kmほど離れているうえ、空港からのアクセス手段が車以外には無いのでフラリと訪問するのはかなり困難だ。訪問するなら車を利用して数km離れた高山航空公園に置いてあるT-2と合わせて巡る予定で行こう。なお機首はほぼ北を向いており、午前中には機体右側、午後には機体左側が順光となる。機体の右側が小高い丘となっており、やや俯瞰した形で撮影することができるので午前の訪問がお薦めだ。
写真14 さぬきこどもの国のJA8743。(2020年4月5日午前10時ごろ撮影)
13. 佐賀空港
<機体> YS-11A-500R (JA8733, c/n.2102)、元ANK保有機
<コメント> 量産型100番目の製造機。試作機が2機あるので”通算”102号機だ。
【佐賀県】佐賀空港・空港公園のYS-11 - 用廃機ハンターが行く!
写真15 佐賀空港のJA8733。やや劣化が進んでいるように見えた。(2010年10月3日撮影)
2013年3月29日にJAXAより無償譲渡されたJA8788(cn.2176)の機首部分が32.7866N/129.8632Eに置かれている。
【海外のYS-11】
数か国に輸出されたYS-11だが、日本近隣ではフィリピンの空軍博物館、タイのジェサダ博物館などで見ることができる。その詳細はカテゴリー欄もしくは以下のリンクから両国のサイトに行って記事を確認していただきたい。(完全他力本願モード)
【Nakhon Chai si】Jesada Technik Museum - 用廃機ハンターが行く!
【Nakhonpathom】エアクラフトマーケットとNiagara N Garden - 用廃機ハンターが行く!
写真16 フィリピンのマニラ国際空港の一角にある空軍博物館に展示されているYS-11。(2015年9月21日撮影)
写真17 タイのバンコク西部、ナコーンチャイシーにあるジェサダ博物館に展示されているYS-11。(2019年1月14日撮影)
写真18 タイのバンコク西部、ナコーンパトムにあったYS-11。2021年には周辺が整備されたガーデンになり、機体は再組立されて展示されている。個人的には場所柄すぐに廃れると予想しているので早めに訪問しておきたい場所だ。(2019年1月11日撮影)
【本Blogで紹介した後に撤去】
1. 鳥取空港南西部(胴体部分のみ)
<コメント> 1988年1月10日に米子空港をオーバーランして中海に突っ込んだ機体の胴体部分が鳥取県空港R/W10スレッショルド脇の道路脇(35.5275N、134.1496E)に放置されていたが、2023年夏ごろに撤去された。この機体の機首部分は2023年3月末時点でも上記「6.電車とバスの博物館」にて展示されている。
・参考/本Blogでの関連記事;
【鳥取県】鳥取空港脇に転がるYS-11の胴体(撤去済/記録) - 用廃機ハンターが行く!
【最後に】
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。この文章を書いた後で、ほぼ同じコンセプトで作られているサイトを見つけました。コチラの方がより詳しく展示場所を紹介してますので合わせてご確認ください。
https://okinawa-airport-terminal.com/ys-11_museum/
以上