用廃機ハンターが行く!

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【鳥取県】空自 美保基地の展示機

<編集履歴> 04Apr.2021公開、16May.2023見直し更新(第13回目、字句表現など見直し)

 

<場所 Place> 〒684-0053 鳥取県境港市小篠津町2258 航空自衛隊美保基地

美保基地|防衛省 [JASDF] 航空自衛隊

 <訪問日Visit> 01Apr.2021, 08Jan.2022, 09Aug.2022ほか

<行き方 Access> 

(1) 基地正門まではJR境港線米子空港駅から約800m、徒歩約10分。基地祭時の航空機展示会場まではさらに約500mを歩く(ただし当日の開放エリア設定状況によっては100m程度は異なる)。

(2) 基地南東部の展示エリアへはJR境港線大篠津町駅から約600m、徒歩約8分。

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写真1 基地南東部の道路脇にはC-1、YS-11P、F-4EJ改がフェンス際に置かれているが、このアングルだとF-4EJ改はYS-11に隠れて見えない。(2021年3月31日撮影)

 

<解説General>

(1) 航空支援集団の基地。第403飛行隊のC-2、第405飛行隊のKC-46Aが配備されているほか、陸上自衛隊中部方面航空隊第3飛行隊のCH-47J/JA、海上保安庁や国内エアライン等も同居する。民間空港としての名称は米子空港(米子鬼太郎空港)。

(2) 例年5月末から6月初旬頃に航空祭が行われ、ブルーインパルスが参加することもある。滑走路が短い(2,500m)ため戦闘機の離発着は行われず、上空でのデモフライトを行うのみだ(戦闘機の離発着を行うには運用上、緊急時の支援設備の設置が必要なほか、通常時であれば周辺自治体との事前調整が必要)。C-2からの物量投下デモが見られるのは全国でこの基地だけだ。また他基地ではまず見ることのできない春日基地西空司令部支援飛行隊のT-4が高頻度で展示される。2020, 2021, 2022年は新型コロナウイルス感染防止のために基地祭は中止されている

(3) 基地正門から右手にかけて8機の展示機がある。また基地南東部の道路わきにC-1、YS-11P、F-4EJ改の3機が展示されている。この南東部の航空機展示場は開庁60周年を記念して2018年5月26日にオープンしたとのこと。陸上自衛隊海上保安庁、民間機の展示機は無いものの美保基地は山陰エリアでは最大の航空機展示場となっている(この資源を観光に活かせないかなぁ?)。

(4) 基地南西部には貨物投下訓練エリアがある。このため平日に投下訓練を実施する際にはC-2からの貨物投下シーンを外周からも見ることができる。

 

【展示機と位置 Aircrafts and Locations】

(1)  C-46D (91-1139, 35.5011N / 133.2387E) 美保基地におけるC-46Dの運用は1977年(昭和52年)2月15日をもって終了したようだ(ヒコーキ雲さん掲載写真より)。本機は背中に二つの天測窓を増設し、合計3つバブルウインドウを持つNT(Navigation Trainer)機だ。この仕様の機体は運用当時も本機一機だけしか存在しておらず、貴重な機体だ。引退したあとは美保基地の格納庫裏(35.5000N, 133.2382E付近)に展示されていたが1992年(平成4年)の春ごろから半年ほどの作業を行い正門奥の現在の展示位置に移動させたという。この際にC-46と同じエリアに展示されていたT-33A、F-86DおよびF-104Jも現在の場所に移動させたようだ。2019年5月28日には新たな説明板が完成し披露された。基地新聞「だいせん」によれば、こののち各機の説明板も更新される予定とのことであった。

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写真2 正門奥のC-46D。背中に3つのバブルウインドウを持つ天測航法訓練機だった。(2007年5月27日撮影)

 

(2)  F-1 (20-8260, 35.5029N / 133.2382E)、基地内北側、広報館近くにある。航空祭時には人気がある機体で人を入れずに撮影することは困難だ。尾翼には第6飛行隊(築城基地)のマークを描いている 。2020年の「桜の咲くころ」から再塗装前の作業が開始され、7月30日には再塗装終了のお披露目記念撮影が行われた(基地新聞だいせん2020年8月31号より。なお7月30日号にも関連記事あり。)

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写真3 広報館脇にあるF-1。(2014年6月8日撮影)

 

(3)  F-86D (04-8202,  35.5020N / 133.2389E)、航空自衛隊基地ではF-86FやF-86FとF-86Dの二機種を展示する例は多いがF-86D”だけ”という例は珍しい 。尾翼には第3航空団(小牧基地)のシャチホコマークを描いている。第3航空団は当時3個飛行隊から編成されており、S/Nの下に飛行隊ごとに異なる色の帯を入れて識別していた。帯の色は第101飛行隊(緑)、第102飛行隊(黄)、第105飛行隊(青)であったというが、本機では帯は記入されていない。

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写真4 F-86D。(2007年5月27日撮影)

 

(4)  F-104J (46-8602, 35.5019N / 133.2389E)、尾翼には第203飛行隊(千歳基地)のマークを描いている 。バルカン砲口はカバーで塞がれている。2014年に訪問した際には植樹や柵との関係で下がり切れなかったが、2017年に訪問した際にはフルサイズ35mm程度で真横写真を撮影することができた。

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写真5-1, 5-2 フルサイズ35mm程度のレンズであれば真横写真を撮影できる。(上:2014年6月8日撮影、下:2017年5月28日撮影)

 

(5)  T-1B (35-5860, 35.5023N / 133.2387E)、尾翼には第5術科学校小牧基地)のマークを描いている 。

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写真6 T-1B。(2017年5月28日撮影)

 

(6)  T-3 (11-5543, 35.5024N / 133.2386E)、尾翼にはADTW(岐阜基地)のマークを描いている 。このマークを描いて展示されている機体は本機、岐阜かかみがはら航空宇宙博物館、石川県立航空プラザ、淡路島のミツ精機(株)の4機がある。T-3の国内展示機総数は18機なので、”やや珍しい”部類だろうか。

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写真7 T-3。ADTWマークを付けた機体は全国に4機ある。(2012年5月27日撮影)

 

(7)  T-33A (51-5647, 35.5022N / 133.2388E)、尾翼には(F-86D時代の第3航空団マークと同じ)第8飛行隊(小牧基地時代)のマークを描いている 。

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写真8 T-33A。(2014年6月8日撮影)

 

(8)  S-62 (63-4776, 35.5025N / 133.2386E)、国内に3機が残る機体のうちの貴重な1機だ。航空自衛隊のS-62は「単にS-62か、S-62Aか、それともS-62Jか?」という型式表示上の問題が未解決で残っている。「まぁ、こんなコトもあるんだ」程度に別記事を眺めておいてください。

【航空自衛隊】 S-62は何型? - 用廃機ハンターが行く!

写真9 S-62救難ヘリコプター。(2007年5月27日撮影)

 

(9)  C-1 (38-1003, 35.4931N / 133.2515E)、基地南東部の道路沿いに置かれた国内唯一の用廃C-1を利用した広報展示機だ。2018年5月26日の展示場オープンの際に展示されていたので設置されたのはその数日前のことだろう。退色劣化が激しかったため、2019年8月7日に展示場から旧一格へと移動し、約一年かけて再整備のうえ耐候性のある塗料で再塗装を行った。塗装は約3か月を要したとのこと。そして2020年10月14日に再塗装が終了したことが基地新聞だいせん2020年12月22日号に掲載されている。大型機の屋外展示は大変だということを思い知らされた事案であった。翼には第403飛行隊(美保基地)のマークを描いている 。保存指定機であるかどうかは確認していない。

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写真10 本機は国内唯一のC-1用廃展示機だ。(2021年4月1日午前8時50分ごろ撮影)

 

(10)  YS-11P (02-1158, 35.4931N / 133.2515E)、貨物輸送型YS-11Cとして製造され、のちに人員輸送型YS-11Pに改造された機体であるため、胴体左側後部に大きな貨物ドアが残っている。しかし2021年12月14日に東側にファントムが置かれたため、貨物ドアの良く見える位置(機体の真横写真ややや後方から)の写真は撮影できなくなった。本機も上述したC-1と同様に2018年5月26日の展示場オープンの際に展示されていたので設置されたのはその数日前のことだろう。2021年春の訪問時には若干退色が進んでおり、2022年1月訪問時には胴体右上後部に塗装の剥離が見られた。航空自衛隊YS-11は本機とあいち航空ミュージアム展示機の2機のみが残されている。尾翼には第403飛行隊(美保基地)のマークを描く 。本機が保存指定機であるかどうかは確認していない。

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写真11 貨物搭載型YS-11Cを人員輸送型YS-11Pに改造したが、機体左側後部に貨物ドアが残る。(2021年4月1日午前8時40分ごろ撮影) 

 

(11)  F-4EJ改 (17-8439, 35.4931N / 133.2515E)、2020年9月8日(火)13時ごろに第301飛行隊長岩木三四郎2佐の操縦により百里基地を飛び立ち、13時半ごろに到着して用廃となった機体。美保基地にファントムを展示する予定があることは2020年6月24日付の日本海新聞が伝えていた。着陸に際しては安全確保のため9月4日(金)には可搬式拘束装置(機動バリアP-2Jか?)が滑走路中央部付近に設置されていた。なお日曜から月曜にかけて強い台風10号が九州西側を通過しており、民間定期便は全便運休となっていた。台風が来なければ7日(月)にフェリーが行われたことだろう。2021年12月14日にYS-11の隣に設置されたが翌15日にはブルーシートで覆ってしまった。翌年1月7日にお披露目式が行われて道路からいつでも見られるようになった。機体はYS-11Pの東隣りにあるが、平行ではなく機首側が若干開いた「ハ」の字状に置かれている。機首方位は125~130度くらいだろうか。ここで仮に機首磁方位を125度としておき、10度の角度をもって光が当たるまでを”順光で撮れる”と表現することにしよう。すなわち「太陽方位が115度に達するまでは順光で撮れる」という意味だ。太陽方位や太陽高度を計算するサイトで値を代入ししたところ、3月ごろで午前8時45分ごろまで、夏休みの7月20日ごろには10時30分ごろまでは”順光”で撮影できるハズだ。同様に冬休みの12月25日には6時45分ごろまでしか”順光”で撮影することができない。光にこだわる方は、夏場に訪問することを心掛けると良いだろう。尾翼には第301飛行隊(百里基地)のマークを描き、機首のアーマメントパネルには送り出した整備員の最後のメッセージが残されている。野ざらしなので消える前に訪問して記録を残しておきたい。

参考:F-4EJ改展示機に関する米子市議会の議事録

https://www.city.yonago.lg.jp/secure/30941/kitimondai02.6.24.pdf  

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写真12-1, 12-2 世界中で最後から2番目に製造された”2番目に若い”ファントム。機体左側面を順光で撮影するには3月中旬~8月末の早朝に訪問する。(上:2022年1月8日午前10時20分ごろ撮影、下:2022年8月11日午前7時頃撮影)

以上