用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【青森県】青森県立三沢航空科学館

<編集履歴> 13Mar.2021公開、17Aug.2022見直し更新(第14回目、F-4EJの記載見直し)

<場所 Place> 〒033-0022 青森県三沢市三沢北山158 青森県立三沢航空科学館

青森県立三沢航空科学館

<座標 Location>  40.7077N, 141.3903E 

<訪問日Visit>  01Feb.2014, 06Feb.2019, 26Aug.2021,26Jul.2022ほか 

<行き方 Access> 

(1) 車で行くのが基本の博物館。以下の”歩いていく場合”の話は参考程度に見て欲しい。

(2) 青い森鉄道三沢駅から三沢中央(三沢市役所)付近までバスで行き、そこから約6kmを歩く。春から秋までの間の週末には駅から市内主要観光地を回る「MISAWAぐるっとバス」が運行されており、これに乗って博物館まで行くことができる。ただし運行本数が少ないので事前に発車時刻を良く調べておこう。

(3) 駅から博物館まで歩くと約9km、休憩をはさんで2時間半程度かかる。 私は2019年2月に博物館から駅まで片道歩いたことがあるが、まぁ、あんまりおススメはしない。2022年8月には駅から歩いて往復したが、この時は片道100分ほどかかった。当然といえば当然なのだが雪のある冬場は時間がかかることを確認した。

(4) 空港からは道なりに約3.8km、徒歩で一時間程度だ。

(5) 三沢駅から空港前にある三沢空港温泉近くまでは市内を循環するコミニュティバスで行けるが、このバスも運行本数が少ないので時間を良く調べておこう。バス停から博物館までは約4km、一時間ほど歩く。 

<解説General>

(1) 三沢基地北東部にある県立の航空博物館。開館時間0900-1700(入場は1630まで)、休館日は毎週月曜日と年末年始(12/30-1/1)。入場料510円。その他はHPにて確認のこと。

(2) 展示物は屋外展示機11機、屋内展示機3+レプリカ5機と充実している。屋外展示の機体の一部は土日祝日などにコクピットや機内を公開している。

コクピット公開をする機体:F-104J、T-3

・機内公開を行う機体:UP-3A, LR-1, OH-6D

(3) 館内に蔵書の充実した図書館(博物館付属の”航空図書館”)があるのがうれしい。 

(4) 2020年秋から2021年4月19日にかけてリニューアル工事を行った(4月20日リニューアルオープン)。工事による変更は概ね次の4点:

1)シコルスキーS-51-1A (JA7014)の撤去(返却)

2)ホンダジェットの技術実証機(N420HA)展示

3)小型惑星探査機「はやぶさ2」実物大模型展示

4)宇宙関連の展示スペース増強。

(5) コロナ前数年の利用者数は年間約18万人(月平均1.5万人、1日平均約500人)、利用者収入は約5千万円(18万人で割り返すと278円/人。ちなみに高校生団体の場合は入場料240円だ)。

https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kikaku/chikatsu/files/02kannriunnei.pdf

https://www.kokukagaku.jp/common/application/kanpou.pdf

【展示機Aircraft】(番号は連番)

<航空自衛隊機>

(1) F-1 (00-8247) 空自の無償貸付機。第3飛行隊の武者マーク入りで、かつ退役時に施した特別塗装のままで展示されている。F-1、T-2前期型および後期型(ブルーインパルス機)が全て展示されているのは国内でココだけだ。細部が異なるのでじっくりと見比べてみよう。

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写真1 退役時のスペシャルマーキングを残したF-1。(2014年2月1日撮影) 

 

(2) F-4EJ改 (57-8375) 空自の無償貸付機。第8飛行隊の黒豹マーク入り。2009年1月29日に搬入された。屋外展示となってから約13年が経過した2021年9月9日~12月10日にかけて再塗装を行った(請負金額は2,035,000円)。機体の細かい注意書などはザっと見た感じで8割程度は残されており、大変細かい作業が行われたことを示している。

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写真2 約13年間屋外展示された後、2021年末に再塗装工事をおこなったF-4EJ改。大部分の注意書が復活していた。(2014年2月1日撮影)

 

(3) F-104J (76-8699) 空自の無償貸付機。第207飛行隊のマーク入りで、機体は沖縄配備機特有の塩害防止塗装となっている。コクピット公開機だ。 

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写真3 雪の照り返しに輝くF-104J。(2014年2月1日撮影)

 

(4) T-2 (59-5105) 空自の無償貸付機。国内では珍しい前期型だ。かつては三沢基地内の展示機でF-1のような迷彩塗装とされていた機体を移設した。T-2にはF-1迷彩を施して引き渡されたものが数機存在するが、本機は展示機となった後に迷彩塗装を施したもの。日の丸の大きさはT-2と同じだったため、ものすごい違和感があった。展示に際して初期の4空団所属機の塗装に塗り直された。

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写真4 初期の第四航空団所属機マークを施したT-2。(2014年2月1日撮影)

 

(5) T-2 (29-5177) 空自の無償貸付機、後期型。ブルーインパルス塗装機。2021年訪問時にはかなり色褪せていた。

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写真5 増槽タンクを付けたT-2ブルーインパルス機。(2014年2月1日撮影)

 

(6) T-3 (91-5516) 空自の無償貸付機。静浜基地の第11飛行教育団のマーク入り。こちらもコクピット公開機だ。

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写真6 第11飛行教育団(静浜)のマークをつけたT-3。(2021年8月26日撮影)

 

(7) T-33A (81-5344) 青森県と第3航空団の”3”をデザインした北部航空方面支援飛行班のマーク入り。かつて三沢基地にいた第3飛行隊はこのデザインで赤色、第8飛行隊は同じく黄色、北部航空方面支援飛行班は青色に塗り分けられ識別されていた。本機は退役後の2002年に航空自衛隊から米空軍に返還され、さらに米軍から三沢市に無償貸与された機体だ。すなわち航空自衛隊機ではなく、アメリカ合衆国機だ。そんじょそこらにある空自から無償貸付されたT-33Aとは質が違うのだよ!(もっとも”航空機”ではなく、単なる"物品"の扱いだとは思うのだが・・・)大空広場には2005年7月から展示されている。(来歴は三沢市の担当部署に伺って判明。2021年11月12日記)

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写真7 機体をやや傾けて展示してあるT-33A。どこにでもあるT-33Aだが、その来歴はかなり違うぞ。(2019年2月6日撮影)

 

<陸上自衛隊機>

(8) LR-1 (22009)

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写真8 雪の中のLR-1。退色が進んでいるが、雪の反射で細かいディテールが判る。(2014年2月1日撮影)

 

(9) OH-6D (31270) 開館当初に展示されていた機体と後退した二代目の展示機。見ての通り、周囲にはコクピット見学用の台座が設けられているので機体写真は撮り辛い。

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写真9 OH-6Dの機種周りには見学用台座があるため、写真は撮りづらい。(2021年8月26日撮影)

 

<海上自衛隊機> 海上自衛隊機の展示機は存在しない。

<米軍機>

(10) F-16A (78-0021) 一般公開されている常設展示機としては国内唯一の機体。なおF-16A自体は三沢基地内にも展示されており基地公開の際には見ることができる。

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写真10 F-16Aの常設展示機は全国でもココだけ。背景に三沢航空科学館の英語名が入り、どこにある機体か一目で判るため、このアングルでのショットは多くの媒体で用いられている。(2014年2月1日撮影)

 

(11) UP-3A (Bu.150526) P-3オライオンの展示機自体が世界的に見て少数であるうえ、機体がUP-3Aとなるとの他に展示されている例がない(2021年10-11月にかけて調査実施)。”P-3”ではなく”UP-3A”という機種型式別でいえば、実は世界唯一の展示機なのだが、この件でメディアに取り上げられたことはまだ無いように思う。

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写真11 UP-3Aの展示は世界中で三沢だけの貴重な存在だが認知度は超低い。(2019年2月6日撮影)

 

<民間機> 

(12) YS-11 (JA8776) 国内唯一のTDA塗装機だ。

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写真12 JAC塗装で残るYS-11は国内ではココだけ。(2021年8月26日撮影)

 

(13) ホンダジェット技術実証機  (N420HA, c/n. P001) 2021年春のリニューアルオープンの時から展示された。

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写真13 ホンダジェットの技術実証機。 (2021年8月26日撮影)

 

<その他>

(1) ミスビードル号のレプリカ 青森県と縁の深い機体。ある意味、本館の最大の目玉となる機体だ。

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写真14 ミスビードル号のレプリカ。本館の目玉の一つ。 (2021年8月26日撮影)

 

(2) 航研機のレプリカ プラスチックやFRPなど軽量素材で作られているのだろうが、それにしても長い主翼を支え無しによく歪ませずに作ってあるものだなぁと思う。

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写真15 航研機のレプリカ。写真の左側にはプライマリーグライダーHAYABUSA改が展示されている。 (2021年8月26日撮影)

 

(3) 奈良原式2号機のレプリカ

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写真16 奈良原式2号機(レプリカ)。 (2021年8月26日撮影)

 

(4) 白戸式旭号のレプリカ

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写真17 白戸式旭号(レプリカ)。 (2021年8月26日撮影)

 

(5) ライトフライヤーのレプリカ

(6) プライマリーグライダーHAYABUSA改 もともとは肩翼と高翼の複葉だったが、今は肩翼と低翼の複葉グライダーに改造されている。2022年夏に訪問した際には解説板にある飛行中の写真は改造前のものであったため、違和感を覚えた。

写真18 プライマリーグライダーHAYABUSA改。(2022年7月26日撮影)

 

(7) 小型惑星探査機「はやぶさ2」実物大模型

 

【展示後撤去された機体】

(1) 一式双発高等練習機・立川キ54

2012年9月5~6日にかけて十和田湖から引揚げたもの。2020年11月8日をもって展示終了となり東京の立飛HDに譲渡された。

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写真19 十和田湖から引揚げた立川キ54。(2014年2月1日撮影)

 

(2) シコルスキーS-51-1A (JA7014)

 2021年3月、リニューアル工事の際に国内で唯一残されていたS-51ヘリコプター(JA7014、きたかみ号)が撤去され、所有者に返却された。3月7日にはブルーシートに包まれた機体が展示場外に置かれている姿が目撃されている。このリニューアルにより宇宙関連の展示が増え、またホンダジェット実証試験機が展示されることになった。先端技術を紹介することは博物館の役割ですが、一方で歴史ある機体を保存し後世に遺すのも大きな役割だと思いますので、今回の処置は極めて残念と思っている。返却先にてしっかりと保管され、また一般公開されることを希望いたします。

*参考:S-51登録状況

JA7014 S-51-1A 本機

JA7025 S-51   1960年7月18日 大破

JA7035 S-51-2  1964年10月10日 大破

JA8805 S-51  →海上自衛隊へ(館空-201を経て8831へ、用廃後廃棄)

*参考URL;

航空:航空機の登録について - 国土交通省

JA Search:日本の民間航空機データベース

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写真20 2021年3月のリニューアルで所有者に返却されたS-51。(2014年2月1日撮影)

 

(3) DC-9の機首部分 2020-2021年のリニューアル後は行方不明。格納か?

(4) ゼロ戦21型のレプリカ 映画「山本五十六」使用機。2020年11月8日まで展示されたのち、茨城県笠間市の筑波海軍航空隊記念館に譲渡した。

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写真20 映画「山本五十六」に使用された21型のレプリカ(2014年2月1日撮影)

 

(5) Pitts S-1C (N122EZ)  2020-2021年のリニューアル後は行方不明。格納か?2022年8月に訪問した際に館内スタッフ(ボランティア?)の方に伺ったが分からなかった。真面目に知りたいならば、管理部門に”正式に”尋ねてみよう。

 

【その他】

 三沢基地の滑走路両端付近や空港展望デッキからは航空自衛隊のF-35Aや米空軍のF-16C/Dなどの実機を見ることができる。冬季には地吹雪で機体が見えなくなることもあるが、積雪のある晴天時には雪の反射で機体下面が浮かび上がる「雪レフ」効果により美しい写真を撮影できるチャンスもある。

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写真21 平日には博物館の近くで実機を見ることができる。これは三沢基地に着陸する航空自衛隊のF-35A。雪の反射で機体下面が良く見える。(2019年2月5日撮影)

以上