用廃機ハンターが行く!

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【茨城県】筑西市 ザ・ヒロサワ・シティの”ユメノバ”

<編集履歴> 08May.2021公開、28Mar.2024見直し更新(第15回目、現地訪問、写真追加、情報見直し)

 

<場所 Place> 〒308-0811茨城県筑西市ザ・ヒロサワシティ内

ザ・ヒロサワ・シティへようこそ│ザ・ヒロサワ・シティ|茨城県筑西市

<座標 Location>  36.2923N, 140.0185E

<訪問日Visit>  27Mar.2024 

<行き方 Access> 

(1) JR水戸線関東鉄道常総線真岡鉄道「下館」駅の南口よりタクシーで10分

(2) 同じく「下館」駅より域内循環バスで12~22分(巡回ルートによる)、「廣澤美術館」で下車し、道なりに約400mを歩く(徒歩約5分)。

(3) 同じく「下館」駅より、道なりに約5.2km、徒歩約70分

<解説General>

(1) 筑西市にあるアミューズメントパーク「ザ・ヒロサワ・シティ」内に設けられた「陸・海・空・宇宙」に関する展示物を集めたテーマパークエリア「ユメノバ」には「科博廣澤航空博物」、「ヘリコプター・ソーラーカー館」、「宇宙館」などの15館ほどの展示館と温室3棟が設けられており、各種航空機や鉄道、消防車、モーターボートなどが展示されている。開館は1000-1700(入場は1630まで)、月曜日休館(祝日や連休中などは別途休日設定)、入場料は大人2,500円だ。

(2) 当初は2022年1月にオープンする予定であったが、数度の開館延長通知を経て、2024年2月11日(日)に開館した。正式に開館する前には何度か企画イベントが行われていたため、そこそこに館内の様子がネット上にて公開されていた。恒久的な展示施設では、公開してからしばらく経過した時点で、観客動線の見直しとともに展示機の配置場所も見直すことが多い。今まで見えていたものが見えなくなることもあるので、開館後は、なるべく早い時期に一度訪問することを推奨しておく。

国立科学博物館のプレスリリースはこちら;

https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/579133.pdf

(3) ”ユメノバ”内の科博廣澤航空博物館、ヘリコプター・ソーラーカー館、グライダー模型飛行機館、サボテン園の館内にそれぞれ展示機があるので見落としの無いように巡回しよう(注:私は宇宙館を見落として帰ってきた)。

(4) 現地まで徒歩で訪れる人がいるとは想定していないようだ。歩行者にとっては”ユメノバ”の入口の案内が幾分悪いように思うが、「ユメノバ駐車場」の案内に従って進めばよい。歩行者用入口が手前にあるのではないか?などと余計なことを考えずに駐車場に向かおう(「ユメノバ入口」とは書かれていない。あくまで「ユメノバ駐車場」だ)。ちなみに入口(チケット売り場)の座標は36.2916N/140.0193Eだ。

(5) 廣澤美術館まで行く巡回バスの運行頻度は平日は日中に4便程度、休祝日は6便程度だ。平日は最終便の廣澤美術館前の発車時刻が14時台なので、使いづらい。歩けばJR駅まで70分程度かかるので、やはり車で行く場所なのだろう。

 

【展示機 Displayed aircrafts】

<科博廣澤航空博物館>

 ”ユメノバ”内の施設は運営する広沢商事の施設だが、この科博廣澤航空博物館だけは国立科学博物館との協業施設となっている。建物(=施設)は広沢商事の物で、中身のうちの数機は国立博物館のモノ、ということなのだろうけれど(プレスリリースの中に、そこまで詳しく書いてあったかな?)。展示機数は8機。

(1) 三菱ゼロ戦21型改 2020年7月まで東京・上野の国立科学博物館で展示されていた機体で前線(ラバウル)で単座機を複座偵察機に改造したもの。複座とはいえ、後席は直径30cm程度の腰掛け用の板が取り付けられているだけだ。また「偵察機」というものの、後部の観測員席下部に機体底部を貫通する直径10cm程度の小穴が開いているだけ。狭い観測員席で身体を折り曲げてこの穴から下方を覗き、カメラで撮影したのだろうか(かなり無理な姿勢を強いられるゾ)。現在の目で見れば「よくもまぁ、こんな機体を前線で造って、使ったモンだなぁ」と思うが、それが進歩というもの。当時の技術をジックリと観察して、イロイロと感じて欲しい。

写真1-1, 1-2 ゼロ戦21型(ラバウルにて複座に改造)。後席下部右側、胴体に描かれた日の丸の前縁下部付近に偵察用の窓(といわれる)が開けられているが、展示機では窓は閉じられた状態になっている。(2024年3月27日撮影)

 

(2) YS-11 (JA8610) 量産初号機。引退後は羽田空港の格納庫内で保管されてきた機体が2020年3月27日午前9時、輸送業者により左翼・胴体・右翼の順で積み込作業が開始された。午後9時30分に2台に分乗させた左右主翼羽田空港を順次出発。日が変わった28日午前零時から胴体の輸送を開始し、都心を縦断して約5時間ほどをかけ28日午前5時頃にザ・ヒロサワシティーに到着した。午前8時から積み下ろし作業を開始し、午後2時過ぎに先に出発した右翼・胴体・左翼が組立場所の定位置に下ろされ、搬送作業は終了した。機体の組立ては9月頃には尾翼も取り付けられ飛行機らしくなっていたが、コロナの影響で入場者収入が激減した科博の資金が枯渇。機体の分解・組立てに必要な約8000万円のうち3000万円を目標としたクラウドファンディングで支援を募ることになった。最終的には2021年11月6日の締切りまでに994人の支援者から目標の93%にあたる27,938,610円を集め、作業が継続された。事実上の組立完了日はいつかは不明だが、組立完成セレモニーは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から大幅に延期され、2021年12月11日にようやく開催されている。

写真2(2024年3月27日撮影)


(3) シコルスキーS-58 (JA7201)  海上保安等から1973年に国立科学博物館に移管され、保管されていた機体。2021年3月3日未明に搬送された。

写真3(2024年3月27日撮影)

 

(4) 霧ヶ峰式鷹7号グライダー (JA2001)  国立科学博物館で保管されていた機体。グライダー登録の第1号機。

写真4(2024年3月27日撮影)


(5) Stork B 日本大学の卒業研究製作機で1976年12月31日に当時としては世界最長の飛行時間4分43秒を記録した。現在の人力飛行機の記録はWikipediaを参照願います。

人力飛行機 - Wikipedia

写真5(2024年3月27日撮影)

 

(6) FA-200-180 (JA3673, cn. FA200-225) 1992年11月27日付で登録抹消。胴体をキャビン後部で切断し、左主翼と主脚を外したうえで、これらを脇に置いた形で展示されている。胴体切断面を見せるワケでもないような配置なので、今後、展示方法が変わるかもしれない。

写真6(2024年3月27日撮影)

 

(7) 日飛NP-100 (JQ2001) 日飛が開発したモーターグライダー。1978年に開発中止/飛行試験が終了となった後には個人コレクター(その1)に譲渡されていた。2000年頃にコレクター(その1)が逝去して、コレクター(その2)の手に渡った。さらに2001年以降は日本飛行機(株)に返還され、杉田工場内に保管されていた。

 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館では、かつて本機の展示を狙ってコレクター(その1)と交渉を進めていたが、話が煮詰まる寸前にコレクター(その1)が逝去。話し合いの内容については文書化もしていなかったため、機体はコレクター(その2)の手に渡ってしまったという経緯がある。「ゴタゴタの末に、ようやく博物館での一般公開展示にこぎつけた機体」ということができそうだ。

写真7 1978年に開発が中止されてから45年ほどが経過して、ようやく一般公開されたNP-100モーターグライダー。(2024年3月27日撮影)

 

(8) グラマンアメリカン・エビエイションG-1159ガルフストリームII (JA8431, cn. 141) 2020年4月8日登録抹消。航空局で約20年使われた後、ダイヤモンドエアサービスで使われていた機体で、切断された前部胴体のみが展示されている。なお、かつてDiamond Air Searviceと書かれていた胴体上部はHirosawa Airに書き換えられている。銘板は見当たらなかったが、コクピット計器盤にはテープで張られたJA8431という番号が残されている。なお機首部の切断や後部胴体等の解体は株式会社エコネコルが行っており、その様子は同社のHPで公開されている。

・解体の様子はこちら;

エコネコルが国内で使用済み航空機の解体・リサイクルを実施 | 「環境」と「経済」の融合【株式会社エコネコル】

写真8 入口付近に展示されているガルフストリームII。かつてDiamond Air Searviceと書かれていた胴体上部はHirosawa Airと書き換えられている。(2024年3月27日撮影)

 

<ヘリコプター・ソーラーカー館>

 ここには3機のヘリコプターとソーラーカーが展示されている。伝聞情報だが、展示された3機とも「ヘリコプター歴史協会さんからの貸与」という位置づけらしい。

写真9(2024年3月27日撮影)

 

(1) 川崎ベル47G-2 (JA7313, cn. 218) 1978年3月11日付で登録抹消。中日本航空専門学校で教材として使われた後に日本ヘリコプター歴史協会へ譲渡された。本館へは2023年11月27日頃に陸送された。コクピット計器盤にJA7313のラジオコールが残る。

写真10(2024年3月27日撮影)

 

(2) 川崎ヒューズ369HS (JA9204, cn.6647) 1992年12月15日付で登録抹消。中日本航空専門学校で教材として使われた後に日本ヘリコプター歴史協会へ譲渡された。ここで数年保管/イベント展示されたのち、2023年11月27日頃に本館に陸送された。Y字のテイルフィンのうち、右側方に張り出したものは取り付けられていない。

写真11(2024年3月27日撮影)

 

(3) OH-6J (31036 cn. 6337) 元は陸上自衛隊のOH-6Jだが、ラジオコールや銘板は全て無くなっている。機体全体をOD色に塗られ、テイルブームにはU.S.ARMYの文字が入れられている。機体に書かれた"25301"は偽ナンバーであり、自衛隊機であったことは外形からでは判らない。Y字のテイルフィンのうち、右側方に張り出したものは取り付けられていない。日本ヘリコプター歴史協会さんより、2023年11月27日頃に陸送された。

写真12(2024年3月27日撮影)

 

<サボテン園>

 サボテン園の温室の中に、軽飛行機が2機とグライダー1機の合計3機が展示されている。航空機が展示されている他の展示館から少し離れたところにあるので、訪問を忘れないように注意しよう。軽飛行機2機は2015年頃から現在の”ユメノバ”敷地内にて屋外展示されていたが、”ユメノバ”整備に伴い、サボテン園の中に移設されている。

写真13(2024年3月27日撮影)

 

(1) セスナ150C (JA3187, cn.15059783) 2014年4月18日付登録抹消。2014年4月10日(ネット上の写真投稿日)~6月1日には調布飛行場内プロペラカフェに隣接する格納庫内で展示機(仮置きついでか?)となっていたが、2016年3月21日にはザ・ヒロサワ・シティ敷地内に屋外展示されていた。2015年中に移設されたとされるが、この移設日程の根拠は不明。”ユメノバ”整備に伴い、サボテン園の中に移設された。

写真14(2024年3月27日撮影)

 

(2) セスナ172  (JA3107, cn. 29151) 1992年3月13日付登録抹消。セスナ172型機の輸入第1号機。2010年前後には大阪航空専門学校の教材機となっていたが、2015年頃からザ・ヒロサワ・シティ敷地内にて屋外展示されていた。”ユメノバ”整備に伴い、サボテン園の中に移設された。

写真15(2024年3月27日撮影)

 

(3) スリングスビー・ケストレルT59D (JA2140, cn.1773) 2010年6月30日付登録抹消。

写真16(2024年3月27日撮影)

 

<グライダー・模型飛行機館>

ここにはグライダー2機と多数の模型が展示されている。

(1) スリングスビー・ケストレルT59A (JA2135, cn.1722) 2010年6月30日付登録抹消。サボテン園にある機体とほぼ同じ機体だ。A型とD型の違いは・・・、そのスジの専門記事を探して読んで欲しい(汗)。

(2) 日飛ピラタスB4-PC11AF (JA2276, cn. 1003)  2010年6月30日付登録抹消。日本飛行機がライセンス生産した全金属製グライダー。

写真17-1, 17-2(2024年3月27日撮影)

 

【謝辞】

 一部の展示機のS/Nや、その由来については、佐藤正孝様より情報をいただいております。情報提供、ありがとうございました。御礼申し上げます。

以上