用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【愛知県】あいち航空ミュージアム

<編集履歴> 19Apr.2021公開、23May.2022見直し更新(第10回目、T-4B.I.展示機番決定)

<場所 Place> 〒480-0202 愛知県西春日井郡豊山町大字豊場(県営名古屋空港内)

あいち航空ミュージアムあいち航空ミュージアム

<座標Location> 35.2477N, 136.9250E

<訪問日Visit>  18Aug.2018 and 20Dec.2021

<行き方 Access> 

(1) 名古屋駅前より小牧空港経由あいち航空ミュージアム行バスが1時間に2本程度ある。

(2) 名鉄西春駅より小牧空港行のバスが1時間に2本程度ある。空港で下車して5分ほど歩く。

(3) JR名古屋駅前、JR勝川駅や栄から空港に行くバスの便もあるが本数は少ない。時刻表やミュージアム前に停まるかどうかは各自で確認ください。

<解説General>

(1) 空港南西端のショッピングモールに隣接した展示館で2017年(平成29年)11月30日にオープンした。屋外に1機、展示ホールに実機が9機とゼロ戦のレプリカ1機が常設展示されている。開館時間は0930-1700(入場は1630まで、夏季などに1800までの開館時間延長あり)、火曜日およびHPにて通知した日は休館。入場料大人800円(2022年3月末まで)。博物館前のスペースに自衛隊機や官公庁所属機などを展示するイベントを何度か開催しているので、イベント情報は適宜チェックしておこう。

(2) 本記事内においては「三菱重工(株)」を単に「三菱」と記載する。

(3) 2021年12月20日に訪問した際には機体配置が若干変わっていた。2022年3月末までの予定で行われている特別展でT-1Bを一時的に展示するために移動させたのだろうか。

(4) 展望デッキは国内の空港の中では最も滑走路に近い。三菱のテストフライト機が通る誘導路まで約140m、滑走路中心まで約320mだ。

【展示機】

(1) YS-11P (52-1152) 空自の無償貸付機。2017年5月28日の美保基地祭でサヨナラ飛行を一般公開し、翌29日小牧基地にフェリーされて用廃となった。

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写真1 展示の目玉は航空自衛隊のYS-11P。(2018年8月18日撮影)

 

(2) MU-2 (JA8737) 三菱製のビジネス機。

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写真2 三菱製ビジネス機MU-2。(2018年8月18日撮影)

 

(3) MU-300 (JA8248)  三菱製のビジネスジェット機。FAAの新規規制適用の第1号となった機体で、耐空証明の取得に苦労したとのこと。販売は振るわず販売権・製造権ともに手放してからアメリカ空軍の練習機に採用され、その後に航空自衛隊でも採用されるなど、さまざまな話題がある。ただし前述のように三菱のビジネス的には失敗だった。

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写真3 三菱製ビズジェットMU-300。(2018年8月18日撮影)

 

(4) MH2000A (JA002M) 7機が製造された三菱重工製のヘリコプター。

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写真4 三菱製ヘリコプターMH2000A。(2018年8月18日撮影)

 

(5) MH2000A (JA21ME) 三菱製ヘリコプターMH2000Aの中味を改造したJAXAのMuPALε。なかなか良い機体だったとJAXA関係者から伺ったことがある。

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写真5 JAXAのMuPALε。計測用のピトー管が特徴的。(2018年8月18日撮影)

 

(6) EH-101 (JA01MP) 2019年2月22日から展示されている元警視庁航空隊機。民間籍としては国内唯一の機体だ(海上自衛隊でCH-101とMCH-101を使用中)。

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写真6 EH-101。(2021年12月20日撮影)

 

(7) ロビンソンR22 Beta (JA7834か?) 2021年10月10日に「展示機が増えました」とのアナウンスあり。セコインターナショナルから借りた機体とのことで、期限付きの展示かもしれない。詳細は不明。国内最大級のヘリコプターEH101の隣に国内最小のヘリを置いたので、その大きさの違いやシステムの違いを確認してほしい。

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写真7(2021年12月20日撮影)

 

(8) ロックウェル・コマンダー112 (JA3783) 屋外の道路入口に展示されている。 

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写真8 ミュージアム前の道路に展示されたロックウェル・コマンダー112。(2018年8月18日撮影)

 

(9) 八〇式名市工フライヤ- (JR1968) 名古屋市工業高等学校飛行機同好会が二宮忠八の「玉虫型飛行器」を基に製作した飛行機。平成29年1月28日に三重県津市の香良洲飛行場で約70mの距離をジャンプ飛行した。

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写真9 八〇式名市工フライヤ-。(2018年8月18日撮影)

 

(10) 川崎T-4(26-5805予定) 2022年11月の開館5周年記念に合わせて退役したBlue Impulse機を展示する予定だ。2022年5月12日付ブルーインパルスファンネットの書き込みによると展示機は26-5805号機となることが決定したそうだ。

 

【特別展示】

(1) 富士T-1B (35-5866) 開館4周年特別企画展「日本の飛行機づくりと富士T-1初鷹」(2021年11月27日(土)~2022年9月30日(日))に合わせて小牧基地展示機を借り受けて展示中。移動・搬入作業は2021年11月19日夜に行われ、翌20日からは「展示準備中」としながらも機体は見学できるようになった。当初予定では3月14日までの展示であったが3月9日に9月30日(日)まで延長する旨が公表された。9日はXJ3エンジンも展示されていた。

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写真10 展示パネルが機体に接近して配置されているので10-24mmレンズで機体だけを撮影した。(2021年12月20日撮影)

 

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写真11 2階から撮影するとYS-11Pの主翼と尾翼が少々邪魔になる。(2021年12月20日撮影)

 

【レプリカ(複製)】

(R1) ゼロ戦52型のレプリカ 佐賀県の馬場ボデーが製作した機体。映画「人間の翼」、「君を忘れない」、「永遠の0」で使用された。2010年には青森県立三沢航空科学館に一時展示されていた機体。2019年3月ごろに三菱に返却した実機の代わりとして展示を開始した。

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写真12 本物は三菱に返却し、新たに展示されたゼロ戦のレプリカ。(大路 聡 氏 撮影)

 

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写真13 (2021年12月20日撮影)

 

【その他】

(1) 2021年4月より三菱Spacejetのキャビンモックアップ(胴体部内装模型)の展示が始まった。

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写真14 三菱スペースジェットの胴体部分展示。(2021年12月20日撮影)

 

【過去に展示された機体】

(1) ゼロ戦五二型甲(三菱4708号機) 三菱の保有する機体を2017年11月の開館時から2019年4月8日まで展示していた。その後は返却され、現在は秋水と共に三菱の大江時計台航空史料室に展示されている(撮影不可)。

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写真15 展示に際して一悶着あった三菱のゼロ戦(実機)。(2018年8月18日撮影)

 

(2) 小型機等、各種の機体がイベント時にミュージアム内外に展示されている。2019年頃のイベントでは航空自衛隊のC-130Hが格納庫前に展示され、ミュージアム屋上から正面上からの撮影ができたという。2022年3月2日~13日には映画「ブルーサーマル」公開記念としてグライダ―(ディスカス、JA10GC)が展示された。

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写真16 イベントで一時的に展示されたパイパーPA-28-140。飛行可能な機体だ。(2018年8月18日撮影)

 

【余談】

(1) 口の悪い人達からは「三菱失敗航空博物館」と揶揄されている。理由は以下の通りだ。

1) YS-11は国内航空企業の集合体であった日本航空機製造(株)の製造だ。しかし実機製造の責任者は三菱の東條氏であったこと、そして日本航空機製造(株)が解散した後のフォローは三菱が行っていたこともあり、「販売戦略等の失敗で182機しか製造できずに終わった」のも「三菱の失敗」に含めて考える場合がある(三菱からすればいい迷惑だろう)。

2) MU-2はまぁ成功作。ただしドルが変動相場制に移行した際のドタバタで翻弄され販売は赤字に陥った。開発から生産終了までの目で見た時に赤字だったか黒字だったのかは検証・確認していない。

3) MU-300はFAA基準の変更適用第1号となったため、さんざん「産みの苦しみ」を味わった挙句、三菱での販売が振るわずにアメリカのビーチクラフト社(当時)に販売権を譲り、のちには製造権も譲ってしまった。・・・その結果、アメリカで成功した機体だ。(だから三菱としては失敗)。その後、航空自衛隊がT-400として採用したのは皮肉でしかない。

4) MH2000ヘリコプタは試作機2機を含む7機が生産されたのみで終わった。

5) 三菱SpaceJetの試作機が試験終了後に展示される予定であったが、2020年には機体開発自体が「一旦立ち止まる」状況となってしまった。アメリカで飛行試験を行っていた機体は2021年4月時点では現地で保管中だが、三菱の財政状況も考慮すると日本に回航してまで展示機とする可能性は低い。ただし設計変更に伴う地上試験用機や製造をほぼ終えた10号機が国内に残されているので、これらが展示される可能性は残る。

6) 開館当初に展示されていた三菱保有ゼロ戦も当時の地元町長が「(戦闘機や戦争の道具の)展示は好ましくない」としたことから様々な調整が行われたようだ。個人的な邪推に過ぎないが、おそらくはこれで戦後の航空工業復活の元となったライセンス生産のF-86F、「国内初の超音速機」三菱T-2、中身を自主開発したHSS-2Bという三菱小牧工場脇に屋外展示されている「三菱が手掛けた」自衛隊機群を移設して公開する芽を摘んでしまったのではないだろうか。

7) コロナ禍の影響もあり年間17万人以上の入場者が10万人程度となってしまった同館の起死回生の策は「川崎重工製のT-4 Blue Impulse」を展示することだった。国産機の場合、国内航空産業各社が参画しているので当然三菱も関与しているのだが、個人的には三菱の面目丸つぶれの策だと思っている。

(2) 結果として本博物館は「かつての華やかなりし頃の名古屋小牧空港を懐かしむ施設(あるいは名古屋空港の歴史展示博物館)」ではなく、「三菱で製造した機体(主に軍用機)の歴史や製造技術・機体製造に関する事項、周辺地域の航空産業を展示・紹介する施設」ではなく、「小牧基地と供用する民間空港の現状やあり方を紹介する施設」でもなく、「小型機・民間ヘリコプター、スカイスポーツを紹介する施設」でもない、主体性の良く判らない「空港があるため何か航空機を展示してみたハコモノ(建築物)」になっているように思える。

(3) 加えて展示内容の割に入館料が高く、隣接するショッピングモール来場者を取り込めていないような気がしてならない。現在は大人1,000円の入館料を期間限定で800円にしている(恐らくはコロナの影響で入場者数が激減したことにより、値下げで客数を増やす施策に出たのだろう)が、感覚的には入場料250~300円程度、せいぜい”ワンコイン”の500円として入場者数3倍程度を狙っても良いと思っている。ショッピングモールにはかなりの数の家族連れが年間に何度も訪問しているはずだ。この家族連れが「今日もヒコーキ見て行こうか?」「うん、行く!」と言えるような価格帯にすれば入場者数を数倍にすることは比較的容易となる下地はある。(参考例として東京湾アクアラインの通行料金が挙げられよう。当初2400円程度の通行料金を800円にしたところ、ほとんど利用されていなかった道路があっという間に渋滞するまでに通行量が増えた)

 この施設の唯一の取柄といえば、屋上から三菱のテストフライトを絶妙なアングルで撮影できることだろうか。平日にも訪問できるような地元スポッターとっては、年間パスポートを使って通えば良いショットを量産できることだろう。

(4) 2021年3月に運用を終えたF-4EJ戦闘機の初号機を展示したいとの希望があったようだ。しかし同機の引退直後にイカロス出版Jウイング編集部から「初号機を展示しませんか?」とのアナウンスがTwitterに流れたことから、展示は実現しなかったようだ。同機は1年くらいは基地内に残されるだろうが、残されている間になんとか金銭的な支援を受け、関係部署等の調整を行い、岐阜基地から分解・搬送して展示できないものかと思う。少なくとも展示スペースはあり、ファントムの分解・組み立てを行うことのできるスキルを持った人員は近隣に大勢いる。だけど上述の通り「何のための展示施設か?」というところが曖昧なので「展示しなくてはいけない理由」がやや乏しいように思う。

 誰かミュージアム側の尻を押してくれないかしら(蹴っ飛ばしてくれてイイ)。

 

【参考】

<あいち航空ミュージアム運営委託費>

平成29年度(2017年11月開館) 未調査

平成30年度(2018) 未調査(約1億5,600万円の赤字)

平成31/令和元年度(2019) 当初予算61,465,000円(約1億1,300万円の赤字)

令和2年度(2020)   当初予算61,465,000円

※12月10日議会にて赤字対応について議論あり。

令和3年度(2021) 当初予算176,493,000円(前年の約3倍。2020年12月議会検討結果を反映か)

令和4年度(2022) 当初予算176,766,000円

 

<展示物設置費>

平成29年(2017、11月開館)

平成30年(2018)  10,249,000円(*1)

平成31/令和元年度(2019) 17,134,000円

令和2年度(2020)   17,180,000円

令和3年度(2021) なし(T-1Bの移動設置費用が見つからない)

令和4年度(2022) 84,798,000円(*2)

*1: 9月度補正予算、EH-101および永遠ので使用したゼロ戦展示費用。決算額は10,102,320円(県議会議事録より)。

*2: T-4 Blue Impulse仕様機展示費用

 

<入場者> 

開業前の想定は65万人/年(すなわち平均すると5.4万人/月、2,200人/日(1月を25日として計算))

平成29年(2017、11月開館)年度末までの4か月で196,000人(*1、4.9万人/月)

平成30年11月末までの1年間に約50万人(4.2万人/月)

平成30年(2018)  38万4千人(*1、3.2万人/月)うち約1/4が高校生未満。

平成31/令和元年度(2019) 上半期(4/1~9/30)で約16万人(2.7万人/月)

(下半期入場者を2.7万×3か月+1.1万人×3か月として年間27.4万人、2.3万人/月と仮定する)

令和2年度(2020)   1月末までで10万9千人(*1、1.1万人/月)、13.2万人/年程度

令和3年度(2021) 不明(8月21日に入場者百万人セレモニー実施)

*1 読売新聞2022年2月16日報道値。その他は県議会議事録より。

*2参考値:岐阜かかみがはら航空宇宙博物館の利用者数:30,198(H29.03.24にリニューアルオープン年)、433,204人(H30)、269,066人(R1)、108,376人(R2)

以上