<編集履歴> 07Aug.2019公開、29Apr.2024見直し更新(第28回目、ドレミコレクションの飛燕(レプリカ)追加)
日本国内には第二次世界大戦で使われた旧日本軍機が数ヶ所に展示されている。このうち「ゼロ戦」の展示場所は別稿「ゼロ戦を見に行こう!」に記してあるので、ここではそれ以外の旧日本軍機の展示場所を紹介しよう。
なおエンジンやプロペラ、墜落機の破片だけを展示している場所が国内に複数個所あるが、本Blogでは「概ね機体外観の半分程度」以上の実物が展示されている場所のみを取り上げることにする。またレプリカ(実物大模型)を展示している場所も簡単に紹介する。
展示場所の数はそれほど多くないので訪問コンプリートを目指そうじゃないか(笑)!
【一般的な注意事項】
(1) ゼロ戦とは旧日本海軍の戦闘機「零式艦上戦闘機」のことを指します。ゼロ戦の展示場所については別稿を参照ください。
(2) 第二次世界大戦(太平洋戦争)当時に使用されていた旧日本軍(日本陸軍および日本海軍)の戦闘機のことを、全て「ゼロ戦」と称するものと考える方がおられますが、それは明らかに間違いです。旧日本軍には「ゼロ戦」以外にも数多くの戦闘機がありました。
【実機展示場所】
旧日本軍機を展示・保管(非公開含む)している場所をおおむね北から南の順に記します。
(1) 茨城県 つくば市国立科学博物館筑波研究資料センター キ115 "剣"(収蔵中、非公開/年一度の施設公開時に公開することがある)
(3) 東京都 立川市 立川キ54、元青森県立三沢航空科学館展示機。立飛に譲渡後は社内倉庫に保管中2021年と2022年に各1回、数日のみ一般公開実施。
(4) 埼玉県 所沢航空発祥記念館
(6) 山梨県 河口湖自動車博物館
(7) 愛知県 三菱重工(株)大江時計台航空史料室(予約制、写真撮影不可)
(8) 岐阜県 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
(11) 福岡県 芙蓉博物館(2023年8月末まで毎週木曜日のみ限定公開)
(12) 鹿児島県 海上自衛隊鹿屋基地史料館
(13) 鹿児島県 知覧特攻会館(注:キ84「疾風」の写真撮影不可)
(14) 鹿児島県 南さつま市 万世特攻平和祈念館
【展示場所と機体、および概要】
展示機の概要を以下に記します。なおネット上の情報(ウィキペディアなど)の方がはるかに詳しいので、本Blogは参考程度に読み流してください。また私自身のリサーチ不足・転記ミスや、そもそも転記元の情報が間違っているなどの理由により、ここに記載した年代や数値などに間違いがある場合があります。可能な限りは各自にて展示場所の公式HPなどを参照して、記載内容を確認してください。
(もちろん、記載ミスを見つけられましたらご指摘くださいね!)
1.茨城県つくば市 国立科学博物館筑波研究資料センター理工第一資料棟(一般非公開)
展示機: 特攻機キ115「剣」
概要 : 国内に唯一残る特攻機キ115 「剣」。1985年の一時期に河口湖自動車博物館で展示されたのを最後に一般公開展示は行われていない。現在は国立科学博物館筑波研究資料センター理工第一資料棟内にエンジン・胴体部・主翼部に分割して保管されており、年に一度の収蔵庫公開イベントの際には見ることができるという。ただし現状維持目的のため撮影は禁止。
展示機: 彗星、桜花(レプリカ)、ゼロ戦52型
概要 : 玄関ホールにゼロ戦52型がある。また館内に復元された彗星と桜花のレプリカがある。館内展示物は撮影禁止だが、機体のあるホールのみ撮影可能。開館時間 0900-1630(入場は1600まで)、年中無休だが6月末と12月末に臨時休館あり。入場料 1,000円。詳細はHPで確認のこと。https://www.yasukuni.or.jp/yusyukan/
【東京都】靖國神社遊就館の展示機 - 用廃機ハンターが行く!
写真1-1, 1-2 遊就館の彗星(上)と桜花(レプリカ、下)。(2017年09月30日撮影)
3.東京都 立川市 立飛HD敷地倉庫内(一般非公開)
展示機: 立川キ54/一式双発高等練習機
概要 : 1943年9月27日、不調のために十和田湖に不時着水した機体。このとき搭乗員4名のうち3名が殉職した。2011年に引上げを試みるも失敗。翌2012年9月5~6日にかけて引上げたもの。淡水湖であったことから当時の塗装などが驚くほど良好に保たれている。2020年11月8日をもって青森県立三沢航空科学館での展示を終え、東京の立飛HDに譲渡され、敷地内倉庫に保管されている。2021年と2022年に数日間、一般公開された。
写真2-1, 2-2 上は2020年11月8日まで県立三沢航空科学館に展示されていたキ54高練(2014年2月1日撮影) 。下は東京・立川市の立飛HD敷地内倉庫で一般公開された際の撮影(2022年10月27日撮影)。
4.埼玉県 所沢航空発祥記念館
展示機: 91式戦闘機二型(昭和8年1月製造、第237号)
概要 : 第二次世界大戦中に個人が購入し、手つかずのまま保管されていたもの。経済産業省の近代化産業遺産指定。
写真3-1, 3-2 所沢航空発祥記念館の91式戦闘機(実物)と97式戦闘機(レプリカ)。97式戦のレプリカは格納されたようで、現在は見ることができない。(2018年08月22日撮影)
展示機: 桜花11型、F-1(70-8201 / 初号機)、V-107A(74-4844)、アンリファルマン機
概要 : 修武台記念館内に保管・展示。毎月1回程度、午前と午後に各一回(各回50人程度)の見学会が行われており、その際に見ることができる。応募要領は入間基地のHPを参照のこと。個人趣味としての撮影は可能だがSNS公開禁止など画像の利用については制限があるので注意事項をよく確認すること。私自身も撮影しているがルールに従い画像の公開はしない。
【埼玉県】空自 入間基地の展示機 - 用廃機ハンターが行く!
6. 山梨県 河口湖自動車博物館
展示機: 隼1型、隼2型、一式陸攻22型12017号機(龍41)の胴体、ゼロ戦×3機、彩雲の胴体、桜花(レプリカ)、93式中練、ピッツS-2、F-86F, T-33A, F-104DJ, C-46など
概要 : 例年8月1日~31日の一か月間のみ公開される。この際、スマホ以外の機材による撮影は禁止されるなどの制限があるので注意のこと。ゼロ戦も3機展示されている(ゼロ戦については別稿「ゼロ戦を見に行こう!」参照願います)。
【山梨県】河口湖自動車博物館・飛行舘 - 用廃機ハンターが行く!
写真4-1 2013年から展示が始まった隼1型(展示当初は胴体部分のみ)。2020年夏の展示の際には天井から吊り下げられ、その下に無塗装の隼2型が展示されている。(2019年8月20日撮影)
7.愛知県 三菱重工(株)大江時計台航空史料室
展示機: 秋水。他にゼロ戦もあり。
概要 : 1961年(昭和36年)6月に神奈川県横浜市金沢区にある日本飛行機杉田工場の拡張工事中に胴体の一部が発掘された。これを1963年より航空自衛隊岐阜基地内に展示していたが、1997年(平成9年)に三菱重工へと譲渡した。三菱重工では2001年(平成13年)12月に復元し、愛知県豊山町の名古屋航空宇宙システム製作所史料室に展示していたが、史料室の閉鎖に伴って2020年1月31日より同社大江時計台航空史料室に移設し、ここで一般公開されている(事前予約制)。写真撮影はできない。
(ゼロ戦については別稿「ゼロ戦を見に行こう!」参照願います)
写真5-1 三菱重工(株)小牧南工場の史料室内に展示されていた頃の秋水。(2014年02月22日撮影)
8.岐阜県 岐阜かがみがはら航空宇宙博物館
展示機: 三式戦闘機「飛燕」、十二試艦戦のレプリカ、ほかに展示機多数
概要 : 戦後、各地での展示や23年間におよぶ航空自衛隊岐阜基地での保管ののち、1986年からは鹿児島県知覧町に貸与され知覧特攻平和会館に展示されていた機体。2015年9月に岐阜県各務原市にある川崎重工岐阜工場に搬入されて修復を受け、この際に当時の製作技術を見せるために従来の塗装を落とし、あえて無塗装のままで残している。その後は神戸市での展示を経て、2016年11月以降は岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に収蔵されている。岐阜かがみがはら航空宇宙博物館では増改築作業が行われていたため、一般公開が始まったのは2018年3月24日からのことだ。展示に際してはプロジェクターで機体に日の丸を投影しているが、個人的には不要だと思う。開館時間1000-1700(土日祝日は1000-1800)入館は閉館30分前まで。休館日は毎月第一火曜日、12/28-1/2、その他(HPにて確認)、入館料は800円。他館との共通割引券あり。
【岐阜県】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館 - 用廃機ハンターが行く!
写真6-1 岐阜かがみがはら航空宇宙博物館の三式戦闘機「飛燕」。(2018年08月19日撮影)
展示機: 紫電改21型(N1K2-J)のみ
概要 : 1978年11月、南宇和郡城辺町久良湾の水深約40mの海底に沈んでいる機体が発見され、翌1979年7月14日に引き上げられた機体。1945年7月24日の戦闘で未帰還となった6機のうちの1機と考えられている。もともと航空機に関する展示物の少ない四国内においては異色の博物館。開館時間0900-1700、休館日は12/29-1/1。入場は無料。なお2024年7月にリニューアル工事を開始し、2025年度に新たな建物が完成。2026年度に旧展示館の解体工事や外構工事を含めた全工事を完了する予定となっている。この工事の間、機体を見ることが出来るのか、一時的に展示中止となるのかは未定だ。工事の進捗状況に応じて状況は変化すると思われるので、現地に確認してから訪問してほしい。
写真7-1 紫電改展示館の紫電改21型(2015年02月21日撮影)
10.福岡県 筑前町立大刀洗平和記念館
展示機: 97式戦闘機、ゼロ戦32型、震電(実物大模型)、MH-2000A、T-33A(太刀洗駅舎前)
概要 : 博多湾から引き揚げられた97式戦闘機、翼端が四角く整形されたゼロ戦32型、そして震電の実物大模型が館内に展示されている。また屋外展示のMH-2000Aも撮影可能。道路を隔てた太刀洗駅舎前にはT-33Aがある。開館時間 0900-1700(入場は1630まで)、休館日 12/26-12/31、入場料600円。上述の機体以外については撮影制限があるの注意が必要だ。
公式HP:http://tachiarai-heiwa.jp/
【福岡県】大刀洗平和記念館と駅前のT-33A - 用廃機ハンターが行く!
写真8-1 先尾翼機という特異な形状をした震電の実物大模型。2023年公開の映画「ゴジラ-1.0」の撮影に用いられた。(2022年9月2日撮影)
11.福岡県 芙蓉博物館(公開準備中/2023年7-8月は木曜日のみ公開予定)
保管機:零式三座水上偵察機(ただし現存するのは胴体と左翼部分のみ)
概要:以前は岐阜基地に展示されていた零式水上偵察機は2021年3月頃に福岡県豊前市の芙蓉博物館(豊前市赤熊1341-4, http//:fuyomuseum.com/)に移送された。芙蓉博物館は2023年になって竣功式を行い、さらには6月29日から8月末までの毎週木曜日に限定公開する旨を発表している(有料、写真や録画は不可)。続報に期待したい。
写真9-1 岐阜基地に展示されていた頃の零式水上偵察機。(2009年10月12日撮影)
12.鹿児島県 海上自衛隊鹿屋基地史料館
展示機: 二式大艇、ゼロ戦52型、ほかに海上自衛隊退役機多数
概要 : アメリカから返還された後、東京都の船の科学館前に展示されていた。日本に返還されてからずっと屋外に展示されている。台風の勢力が強く桜島の降灰の影響もある場所での屋外展示は何とかならんものかねぇ・・・。(2019年8月時点では岩国市が飛行艇博物館(仮称)を建造し、こちらに引き取りたいとの意向がある、とのうわさがあったが、その後の話は耳にしていない)
【鹿児島県】海自 鹿屋航空基地史料館(コロナによる入場制限中) - 用廃機ハンターが行く!
写真10-1 海上自衛隊鹿屋基地史料館(2008年05月17日撮影)
13.鹿児島県 知覧特攻平和会館
展示機: 四式戦キ‐84甲「疾風」、ゼロ戦52型丙A6Mc、富士T-3(81-5502)、一式戦「隼」9/10モデルおよび1/1モデル
概要 : 「疾風」の実機を展示。1945年フィリピンで米軍が回収。その後、Planes of Fameにて飛行可能な状態にして1973年に日本に寄贈。栃木県宇都宮(富士重工)、京都嵐山博物館、和歌山県白浜を経て知覧町(当時)が購入し、現在に至る。撮影禁止。なお「主翼桁を切断したために飛行不能となった」という話があるが、どうやら事実誤認らしい。「隼」の9/10模型(屋外展示)および1/1模型は映画「俺は君のために死にに行く」(2007)の撮影に使われたもの。屋外展示機のみは撮影可能。「ゼロ戦52型丙」については別稿「ゼロ戦を見に行こう!」を参照ください。年中無休(台風時臨時休館あり)。0900-1700(入場は1630まで)。入場料500円。
※参考:「陸軍四式戦闘機「疾風(1446号機)」保存状態調査報告書I」(2022年4月発行)これには2017年1月から2020年11月までの間に5回行われた機体調査の結果をまとめたもの。機体外観を見てどーのこーのと書くのもよいが、できれば一読しておこう。東京新橋の航空図書館で閲覧できる。
【鹿児島県】知覧特攻平和会館の展示機 - 用廃機ハンターが行く!
写真11-1 知覧特攻会館にある9/10サイズの「隼」の模型(2011年03月27日撮影)
14.鹿児島南さつま市 万世特攻平和祈念館
展示機: 零式水上偵察機、製造番号:九飛41116号
概要 : 1945年6月4日に燃料不足で不時着水した偵察302飛行隊所属機で乗員3名は脱出している。1992年8月22日に吹上浜沖合約600m、水深5mの海底から引揚げられた。日本航空協会より重要航空遺産に認定。近年では「日本で唯一の機体」と紹介されることが多いが、これはWikipediaに岐阜の機体のことが記載されていないためだろう(上述の通り岐阜基地にあったが2021年に芙蓉博物館に移転された)。開館は0900-1700(入場は1630まで)、休館日は12/31と1/1。入館料 310円。
万世特攻平和祈念館【2021年4月リニューアルオープン】 | 南さつま市観光協会
【鹿児島県】万世特攻平和祈念館の零式水上偵察機 - 用廃機ハンターが行く!
写真12-1 海底に横たわる状態で展示されている。2021年春には機体後方に「橋」が設けられ、操縦席部分を上から見られるようになった。(2017年09月07日撮影)
【おまけ:レプリカ(実物大模型)展示機】
各地にあるゼロ戦以外の大戦機レプリカ(実物大模型、上記以外)の概要は次の通り。私自身はレプリカ(実物大模型)には、正直言って興味が無いので、サラリと北から南の順に紹介する。詳細はGoogle大先生に伺ってください。
1.桜花11型:茨城県鹿嶋市 櫻花公園の旧掩体壕内に映画「サクラ花」(2015年)で用いられた機体が展示されている。
2.桜花11型:茨城県神栖市 神栖中央公園 こちらにも映画「サクラ花」(2015年)で用いられた機体が展示されている。キャノピーがやや大きく膨らんでいるが、所詮は映画撮影用の機体なので気にしない。
3.紫電改: 兵庫県加西市 鶉野飛行場跡の加西市地域活性化拠点施設「soraかさい」(2022年4月18日開館)に展示。茨城県水戸市の(株)広洋社が製作したもの。
【兵庫県】soraかさいの実物大模型と近隣のSNJ - 用廃機ハンターが行く!
写真13-1 soraかさいに置かれた紫電改のレプリカ。(2023年4月2日撮影)
4.九七式艦上攻撃機: 上記の紫電改と共に兵庫県加西市の「soraかさい」に展示。天井から吊り下げられているためコクピットや細部を見ることはできない。茨城県水戸市の(株)広洋社に1,900万円で発注して製作した。太平洋戦争初期の真珠湾攻撃やミッドウェイ海戦に使用された3号艦攻ではなく、光3号発動機を搭載した1号艦攻(練習機へ改修)の仕様となっている。
【兵庫県】soraかさいの実物大模型と近隣のSNJ - 用廃機ハンターが行く!
写真13-2 soraかさいに吊り下げられた97式艦上攻撃機のレプリカ。(2023年4月2日撮影)
5.九三式中間練習機(通称:赤とんぼ): 熊本県球磨郡の錦町立人吉海軍航空基地資料館(愛称:にしきひみつ基地ミュージアム)にて2021年3月1日より公開。本機は茨城県の(株)広洋社に制作を依頼し、2021年2月23日もしくは24日に搬入された。
6.三式戦闘機「飛燕」1型(キ-61-1甲):岡山県浅口市金光町須恵1079、DOREMI COLLECTION MUSEUM。2024年4月29日にオープンした私企業博物館。茨城県の日本立体さんが製作した1/1レプリカが展示されている。見学に際しては事前予約にて見学時間を枠を指定する必要がある。詳細はHPを参照すること。入場料は¥1,100から。オーストラリアのコレクターからオークションにて入手した実胴体部分(ほぼ骨組みのみ)も展示されている模様。
8.瑞雲: 「艦これ」ブームに乗じて作られたレプリカ。2017年6月17日~7月30日まで富士急ハイランドで公開、2018年4月21日~5月27日まで読売ランドで公開、2019年4月20日~6月2日まで八景島シーパラダイスで公開された。2020年度以降はコロナのために集客・展示イベントは中止となっており、2021年9月11日時点での保管状況や保管場所は不明。コロナ明けにはどこかでまた見られることを期待したい。
9.烈風改(A7M3J):「艦これ」ブームに乗じて上記の瑞雲に続いて作られたレプリカ第二弾。2019年5月12日(瑞雲が公開されたイベントの後半から)~6月2日に八景島シーパラダイスで公開された。瑞雲同様に2020年度以降はコロナのために集客・展示イベントは中止となっており、2021年9月11日時点での保管状況や保管場所は不明。コロナ明けにはどこかでまた見られることを期待したい。
以上