用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

国内の主要な航空機展示施設

<編集履歴> 21Jan.2020「小松にファントムを!」の一部としてBlog公開、01Jun.2020 体裁を改め、定義を見直すなどして公開、13Dec.2023見直し更新(第20回目、見直し実施)

 

 日本国内の「主要な航空機展示場所」をまとめて紹介しよう。

<定義・条件など>

 まず何をもって「主要な展示場所」とするか?

 本Blogでは「展示機数が実機で5機以上ある、一般人がたやすく見学可能な施設」ということにしておく。

 簡単に言えば「休日に子供を連れて行くことができて、一度にたくさんのヒコーキが見られてイイな!」と感じられるような場所だ。「実機で」という言葉を入れたのは、複製のゼロ戦などは含めないという意味がある。もちろん国内には一機しか展示していなくても、それが大変貴重な一機であるような展示場所も多数あるが、ここは「子供連れで行って、そこそこ楽しめる」という要素を最重要視し、「学ぶための博物館」的な要素は二の次にしておく。まぁ「一機しかない貴重な機体」を求めるレベルの方は、こんなサイトを見なくても自分で探して行っちゃうので、わざわざ書くこともなかろう、ね?

 なお航空自衛隊岐阜基地のように自衛隊基地敷地内に5機以上展示してあっても、容易に近づくことができない場合は取り上げないが、一般公開することを目的とした航空自衛隊の浜松広報館と海上自衛隊の鹿屋基地史料館、そして日時限定ながら、基地ゲートに飛び込みで訪問しても簡単な申請のみで見学ができる百里基地雄飛園はここに含めることにする。一方で一般公開を前提としていない個人コレクション(具体的には山梨県身延町の個人宅にあるF-104J, T-2, T-6, T-33A, OH-6J, V-107Aのこと)は含めないことにした。

さらに「1機」という概念には「機体の大部分」の展示、あるいは「機体前半部(主として機首先端部分からコクピット部分まで)」の展示を含むものとした。

 

<「主要な」展示場所>

 さて上記の「定義」に基づいて国内の航空機展示場所を見回したところ、5機以上が展示されている”主要な航空機展示場所”は以下の通り、全国に14か所存在するという結果となった。

・北海道      存在しない

・東北       2か所

・関東・甲信越   6か所

・東海・北陸    4か所

・近畿       1か所

・中国       存在しない

・四国       存在しない

・九州・沖縄    1か所

全国合計      14か所


【主要な航空機展示場所一覧】

これら14か所について、おおむね北から南の順に紹介してみよう。(番号は連番)

<東北>
1. 青森県 青森県立三沢航空科学館 

https://www.kokukagaku.jp/ 

【青森県】青森県立三沢航空科学館 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】屋内展示の実物はYS-11ホンダジェットの2機、レプリカは「ミス・ビードル号」など6機程度。屋外展示は実機が11機(F-1, F-4EJ改, F-16A, F-104J, T-2, T-2Blue Impulse, T-3, T-33A, LR-1, UP-3C, OH-6D)

【コメント】展示機の質・量ともに良好な博物館だが、車がないと行けない。安く行くなら市内循環バスで空港近くまで行き、そこから約1時間歩く。駅から歩くと休憩をはさんで約2時間半かかる。週末には駅から博物館まで行くバスがあるようだが本数が少ないので最新情報を得て利用すること。

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写真1 三沢航空博物館のUP-3C。(2014年2月1日撮影)


2. 福島県 オールドカーセンター・クダン

http://www.kudan.co.jp/oldcarcenter.html

【福島県】オールドカーセンター・クダンの展示機 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】屋外展示:B-65, F-86F, F-104J/DJ(合計3機分), L-19E, RF-4EJ(機首部のみ), KM-2, T-2(機首部のみ、非公開), T-6, T-33A, UH-1Bの小計12機、屋内展示:OH-6J, KH-4, TH-55J,の小計3機、合計で15機

【コメント】古い(カッコイイ)車の展示がメインの施設だが、それらについては本Blogでは一切触れない(笑)。主にスクラップとなった自衛隊の払下げ品を入手し、それを再度組立てて展示している。JR常磐線を利用すると、東京からはなんとか日帰り圏だ。青春18きっぷの利用期間や東北方面の旅行のついでに途中下車して訪問することを考えよう。

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写真2 Old Car Center Kudanの屋外展示機。(2019年8月24日撮影)

 

<関東・甲信越

3. 茨城県 百里基地雄飛園(2022年10月時点ではコロナ対応で閉園中)

https://www.mod.go.jp/asdf/hyakuri/

【茨城県】航空自衛隊百里基地 雄飛園 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】F-1, F-4EJ改, F-86D/F, F-104J, RF-4E, T-2B.I., T-33A. 合計8機

【コメント】月、水、金の13時から15時までのあいだに限り、基地ゲートで見学を申し込むと容易に見学できるが、「平常時かつ日本国籍を有する者に限る」という条件が付く。「平常時」というのがクセ者なので、確実に訪問したい場合には事前に基地に電話して確認しよう。

 なお近隣の茨城空港には2機のファントムがあり、また近くの運動公園にT-33Aがあるのでこちらも同時に訪問しよう。

写真3 機首にカメラを搭載した偵察型のファントムは14機が輸入されて運用されたが、国内に残されたのは本機のみ。RF-4E(901号機)。(2023年7月7日撮影)

 

4. 千葉県 航空科学博物館 

航空科学博物館

【千葉県】航空科学博物館 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】屋外展示機19機と屋内展示のパーツやレプリカなど。

【コメント】成田空港に隣接した敷地にある航空博物館。空港からバスの便があるが、便数が少ないので事前に発車時刻をよく調べておくこと。軍用機の展示は無い。成田空港の滑走路34Lに着陸する機体の撮影ポイントでもある。日本で唯一、博物館法による博物館と認められた航空博物館だ。

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写真4 珍しい二重反転ローターを持つカモフKa-26が展示されている航空科学博物館。(2021年4月10日撮影)

 

5. 千葉県 大慶園

http://www.daikeien.jp/index01.html

【千葉県】大慶園の機体 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】F-15J(操縦席部分のみ), F-104(バラバラになった機首部、胴体部、尾翼), Bell 47G, R-22など7機分がある。

【コメント】ゲームセンターやゴーカートなどがあるアミューズメントパーク。屋外には世界で唯一、空中戦で撃墜されたF-15の機首部があることで世界的に有名な娯楽施設。館内には民間ヘリが展示されているが、博物館的な展示状況を期待して訪問すると失望する。全ての機体は娯楽施設の「置き物/アイキャッチャー(集客のために目を引くもの)」と割り切って見学すること。最寄り駅から徒歩20-40分程度。

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写真5 大慶園のアトラクション館内にあるR22。(2019年4月7日撮影)


6. 東京都 東京都立産業技術高等専門学校科学技術展示館

https://www.metro-cit.ac.jp/community/pavilion.html

【東京都】東京都立産業技術高等専門学校(荒川キャンパス)科学技術展示館 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】民間小型機や自作機を中心に15機。

【コメント】教材機を年に10回程度、平日に一般公開している。公開日はHPで確認すること。展示を目的とした施設ではないため、乱雑であったり埃をかぶっていたりするが、貴重な機体が多いので一度は訪問して見ておきたい場所だ。

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写真6 東京都立産業技術高等専門学校の機体。(2016年3月25日撮影)


7. 埼玉県 所沢航空発祥記念館

所沢航空発祥記念館 | 日本で初めて飛行場ができた場所。所沢航空発祥記念館。

【埼玉県】所沢航空発祥記念館 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】駅前のYS-11、公園のC-46および非公開の収容機を含み32機(うち常設展示機は23機程度)、レプリカ5機。

【コメント】東京の郊外にあり、駅から徒歩10分程度と行きやすい展示施設だ。「国内唯一の」陸上自衛隊機が数多く展示されている。一方、保管庫に収容された機体の中には20年以上も人前に出していない機体があり、管理・運営に問題があるのではないかと思っている。「持っているなら見せろよ!」ということだ。2022年末には貴重な旧型機を廃棄して新たな機体を展示するリニューアル基本構想が公開された。V-44、H-19C、UH-1Bは2025年頃には廃棄されるハズなので、早めに訪問して見ておこう。

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写真7 T-1Bは現在この写真とは異なる位置に移動して展示されている。


8. 山梨県 河口湖自動車博物館

http://www.car-airmuseum.com/

【山梨県】河口湖自動車博物館・飛行舘 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】ゼロ戦や隼、一式陸攻などの復元機、F-86F、F-104DJ、 C-46、T-33Aなど「機体」と確認できるもの26機。

【コメント】公開は夏季限定なのでHPで開館時期を確認して訪問すること。また撮影や画像・映像公開に各種の制約条件があるので事前によく確認すること。

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写真8 隼(2019年8月20日撮影) 

 

<東海・北陸>
9. 静岡県 航空自衛隊浜松基地広報館

https://www.mod.go.jp/asdf/airpark/

【静岡県】空自 浜松基地浜松広報館 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】航空自衛隊で使用した機体など17機(常設展示機のみ)、レプリカ1機、FSM1機

【コメント】 名前はどうあれ、一国を代表する「空軍博物館」なのだが・・・。自国で戦闘機などを開発する能力があるのだからさぞや、と期待してはいけない。

 2021年3月には2機を新たに屋内展示に加えたが、その代わりに8機を減ずるというリニューアルを行った。戦闘機やブルーインパルスなど一般ウケの良い機体の展示に絞ったのだろう。戦後の国内航空機開発の初期から中期に活躍した機体が無くなり、航空機開発や歴史の重みというコアな部分が希薄となり、表面だけの安っぽい”ショールーム”になってしまったような気がしている。2023年2月時点ではリニューアルを行った当時の浜松基地司令も交代しており、”リニューアルした”ことすら忘れさられているのではないかと懸念する。

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写真9 2021年3月初旬にリニューアルされた浜松広報館。(2021年3月24日撮影)

 

10. 愛知県 あいち航空ミュージアム

https://aichi-mof.com/

【愛知県】あいち航空ミュージアム - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】MH-2000(2機), MU-2, MU-300, EH-101, YS-11P、T-4B.I.、自作機など9機。ゼロ戦のレプリカもある。

【コメント】展示内容に比べて入館料が高いと感じる(大人1,000円だが、2022年11月時点では800円に割引中)。隣接するショッピングモールの買い物客を取込む仕組みを導入しているが、入場者を見る限りでは、まだまだ努力が足りないような気がしている。「入場料金を1/3に落として入場者数3~5倍、入館料収入1.5~3倍」程度を考えてよいのではないだろうか。東京湾アクアラインの通行料金と利用台数の関係を参考にすることを提案する。三菱スペースジェットの開発が中止となった現在、完成済の機体を展示するかどうか、今後の動向が注目される。名古屋空港小牧基地を発着する「活きた」航空機を撮影するには絶好の場所だ。

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写真10 あいち航空ミュージアムのMU-300ほか。(2018年8月18日撮影)


11. 岐阜県 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館

http://www.sorahaku.net/

【岐阜県】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】収蔵庫の未公開機を含めて40~50機(FSM/レプリカ4機を含む)

【コメント】各務ヶ原で生まれた機体を核とした国内最大規模の本格的航空博物館だ。大部分の展示機には数報以上の学術論文がくっついてくるほど、技術的エピソードには事欠かない。これらをキチンと収蔵し、後世に遺すという志はいつまで続くだろうか。横山晋太郎著「航空機を後世に遺す」(グランプリ出版、2018年5月)を一読して訪問するとなお良い。またボランティアの小山氏のサイトも一読の価値あり。

小山氏のサイトURL: http://koyama-s.la.coocan.jp/KASM_volunteer/

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写真11 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館展示機(2019年11月11日撮影)


12. 石川県 石川県立航空プラザ

https://komatsu-ccf.com/navi/?mode=office&office_no=5&sub_mode=plant&func=info&plant_no=20

【石川県】石川県立航空プラザ - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】F-104J, T-2B.I., T-3, T-33A, HSS-2B, KM-2, OH-6D, 民間小型機やハンググライダーなど、合計17機、レプリカ・FSMは2機。

【コメント】

 日本海側にある唯一の航空博物館だが、新幹線の金沢延伸により目の前にある小松空港利用者が激減。これに伴い入館者も大きく減っているハズだ。ネット上のコメントを見ると冬季は子供の室内遊技場として重宝されているような気がするが、展示内容を充実させ、本来の観光客・見学者増につなげることが重要だろう。F-2B(機首部モックアップ)、X-2の事前評価モデル(ラジコン機)、B-747政府専用機の貴賓室展示など、地味に面白いものを展示しているが、ネット上での評価はいま一つ。なお基本は市の総合施設に「機体を置いているだけ」であって「航空博物館」ではないし、博物館的な運営はやらないのだという悪評もネット上で目にしている。入場無料は嬉しいのだが、大人300円程度の入場料を取れば博物館的な運営モチベーションも上がるかと思うのけれど・・・。F-4ファントムII戦闘機の誘致には予算がつかなかった模様。今後の機体増加は期待できず、今後10年程度の間の発展性は乏しいように思える。

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写真12 航空プラザのT-33A。(2018年9月18日撮影) 

 

<近畿>

13. ミツ精機株式会社 翼の広場(展示場を含む) 

http://www.mitsu.co.jp/wp-content/uploads/2018/07/%E7%BF%BC%E3%81%AE%E5%BA%83%E5%A0%B4%E3%80%80web.pdf

【兵庫県】ミツ精機(株)「翼の広場」の展示機 - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】F-1, T-1B, T-3, LR-1, OH-6D、V-107A、UH-1Hの7機

【コメント】

 淡路島の精密機器メーカーが企業内教育と文化活動の一環として機体を展示している。開館は平日(月~金)の0800-1700、土日は休館(一企業内の展示場なので会社がお休みの時には休館となる)、入場無料。西日本エリアでは随一の航空機展示場だ。機体は非常に良好に保管・展示されており、その企業努力に頭が下がる。飛び込み見学ができるが、可能なら事前に電話で連絡をいれておくと良いだろう。休日でも機体の一部は外周から記録撮影レベルで撮影はできるが外周の植樹が入る。ヒコーキ好きには「撮れそうで撮れない」ストレスが溜まる状況なので、やはり有給休暇などを利用して開館中の平日に訪問しよう。

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写真13 ミツ精機のF-1。保管状況は屋外展示にも関わらず国内最良レベルだ。(2019年10月7日撮影)

 

<九州・沖縄>
14. 鹿児島県 海上自衛隊鹿屋航空基地史料館

https://www.mod.go.jp/msdf/kanoya/toukatu/HPzairyou/1-8siryoukann/1-8siryoukann.html

【鹿児島県】海自 鹿屋航空基地史料館(コロナによる入場制限中) - 用廃機ハンターが行く!

【展示機】屋内展示3機、屋外展示15機の合計18機

【コメント】

極めて貴重な二式大艇が屋外に展示されている。また国内に1~2機しか残されていない極めて貴重な海上自衛隊の機体も屋外に展示されている。しかし台風上陸時には勢力の強い範囲になるエリアなので被害にあう可能性が高く、近い将来には破損や腐食が原因で撤去される機体が生ずることだろう。屋内にはゼロ戦も展示されている。

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写真14 鹿屋基地史料館には多くの貴重な機体が屋外に展示されている。(2020年3月10日撮影)

 

【余談1】

 各地にある航空専門学校や航空工学科のある大学等の学園祭の時には複数の教材機が展示されることがあります。たいていは年に一度、10-11月ごろの週末だけのイベントですが、機会があれば訪問すると良いでしょう。

 

【余談2】

北海道、近畿、中国、四国、九州、および沖縄には、それなりの場所に航空機展示場を作れば集客できそうですね。別稿で取り上げている岩国市の飛行艇博物館は拡張・拡大解釈し、さらに予算が許せば、地理的にも面白い集客施設になりそうな気がしています。

以上