用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

海上自衛隊 UH-60Jの記録

<編集履歴> 13Nov.2020 公開(海上自衛隊 回転翼機の展示機より分離独立)、

24Apr.2024見直し更新(第23回目、H-60系の情報からUH-60Jを分離独立)

 

【はじめに】

 海上自衛隊の救難ヘリコプターUH-60Jは1991年12月に初号機が納入され、最終的には8961-8979号機の19機が調達された。

 2024年4月時点では3機未満(恐らくは1機のみ)が現役であり、硫黄島にて運用されているものと考えられるが、展示機や訓練機となった機体は確認されていない。また事故抹消機は存在しない。本記事では実機の無くなる本機種に関して、若干の記録を残すことを目的としておく。

写真1 八戸航空基地祭でデモフライトを行う第73航空隊大湊分遣隊の8973号機。(2008年9月6日)

 

【回転翼救難機の運用一本化方針】

 中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度、p.7の下から3行目)に回転翼救難機は航空自衛隊に一本化する旨が書かれていたため「2019年度末頃には全機が退役する」とアチラコチラで吹聴してきた(ええ、私がデマの発信源です)が、結果的にはそれから5年が経過した2024年度まで運用が続けられている。財務省が2020年1月に発行した「予算執行調査資料 反映状況票(令和2年度予算政府案)」にも「海自のUH-60の除籍に合わせた、空自への一元化を推進中である」との一文がある。

写真2 館山基地にフォーメーションのままアプローチするUH-60J。(2009年5月31日、館山航空基地祭にて)

 

海上自衛隊回転翼救難機の運用継続】

 回転翼救難機を航空自衛隊での運用に一本化する方針であったが、調整の結果、硫黄島をベースとした救難活動に於いては海自が引き続き行うこととなり、このために(海自型のUH-60Jの追加購入は行わずに)SH-60Kから対潜機器を外して「SH-60K(救難仕様)」としたうえで、これを運用することになった。2020年度予算にて2機、2021年度予算で1機、2022年度予算で2機(12億円)の合計5機を改装して、海自硫黄島基地で運用する予定だ。なお海上自衛隊隊の硫黄島航空分遣隊が航空救難を行う根拠は「航空救難に関する訓令」第3条による。こんな根拠は「空自が行う」と書き換えれば済むハナシなのだが・・・。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1960/ax19601224_00056_000.pdf

 2020年度予算で改装された2機(8455, 8457号機)は2023年度中に納入された。2021年度予算による3機目の改装機(S/N不明。三菱小牧にIRANで入った機体と、出ていった機体の差異をみれば、予想はつくが・・・)は2024年度中に引き渡される予定であり、この機体の配備と引き換えに、UH-60Jは全機が退役するものと思われる。

写真3 レスキューデモ中のUH-60J。(2016年7月30日、館山航空基地祭にて)

 

写真4 容易に哨戒型(通常型)に戻せるよう、最小限の改修を施したSH-60K(救難仕様)。吊下型ソナーを取り外してあるため、機体下面のソナー用の穴が塞がれているのが外見上の大きな特徴だ。細かいトコロでは対潜哨戒関連の装備がいくつか外され、機内には増槽タンクが設けられている。

 

【UH-60J用廃時期】

 UH-60JのIRAN終了時期から考え、各機体の用廃時期はおおむね以下のようになるものと考えている(公式発表があったものは、その時期を記載する)。なお海上自衛隊では航空機として使用しなくなる際に「機体を”除籍”する」と称しているようだ。「除籍」の定義となる文書を、まだ見つけていないが、本Blogでは「除籍」イコール「用廃」とし、「用廃」という用語を用いる。(他の海上自衛隊機についても同様)

・8961~8969 本Blogの立ち上げ前の2019年度末までに用廃

・8970 2020年9月30日に用廃

・8971 2021年1~3月度ごろに用廃と推定

・8972 公式Twitter2023年4月5日付で除籍式の報告あり。第22航空群最後のUH-60J

・8973 2023年1月度に用廃と推定(新聞記事より)

・8974 2023年10~12月度ごろに用廃と推定

・8975 2024年9~11月度ごろに用廃と推定

・8976 2024年8~10月度ごろに用廃と推定

・8977 2022年2月度に用廃(確定)

・8978 2022年2月14日用廃(確定)

・8979 2025年1~3月度ごろに用廃と推定(2023年1月31日頃に三菱小牧にて最終PAR終了)

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写真5 格納庫の中で部品を外され、埃まみれ、鳥の糞だらけになって置かれていた用廃UH-60J。(2019年7月27日館山基地にて撮影)

 

【UH-60J在籍機の推定数(年度末時点)】

2020年度末 8機

2021年度末 6機 第224飛行隊(大村)解隊。

2022年度末 4機、第213飛行隊(館山)解隊(2022年4月1日)、第22航空隊鹿屋分遣隊廃止(2023年1月)

2023年度末 3機、全機を硫黄島航空分遣隊で運用、SH-60K(救難仕様)2機納入

2024年度末 0機(SH-60K(救難仕様)3機目納入予定)

写真6 館山基地の片隅に置かれた用廃UH-60J/SH-60J。手前の8966号機には第73航空隊の"73"、奥の8969号機には第21飛行隊の”21”が記入されていた。(2020年11月25日、館山基地にて撮影)

 

以上