用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

航空自衛隊 三菱T-2の展示機

 三菱重工(株)製の高等練習機T-2はプロトタイプ4機(101-104)、F-1プロトタイプことT-2特別仕様機が2機(106、107)、前期型28機(105、108-124、147-156)、後期型62機(125-146、157-196)の合計96機が生産された。このうち現存するのは自衛隊基地等に8機、民間施等に12機の計20機。生産機に対する展示機となった機体の割合は機首部分の展示を含めて20機/96機×100 = 20.8%でありまする。 

なお運用中の一時期には、部隊によっては識別のために前期型をT-2A、後期型をT-2Bと称していた。基地祭での機体紹介用の看板に「T-2A/B」と書かれていたこともある。このことが海外に伝わり、海外の文献では”T-2A/B”の表記となっていることがある。さらには”Zenkigata”から”T-2Z”、”Koukigata”から”T-2K”と記載していた例もある。このため海外文献を参照する際には正しい情報を文脈とシリアルナンバーから読み取ってほしい。

 またT-2「特別仕様機」(106号機と107号機)は開発時の呼称(のちに”F-1”となる支援戦闘機開発プロジェクトにおける機体の呼称)である「FS-T2改」とする場合もある。現在入手可能な資料として「世界の傑作機 三菱T-2」(文林堂)があるが、この本のp.43下段には”本書内では以降「FS-T2改」で統一”との注記がある。開発プロジェクト上の機体として文書上で指す場合は「FS-T2改」、実物を指す場合には「T-2特別仕様機」と称するのが適切かと思う。そして開発プロジェクトが終了し、F-1として部隊使用承認されたあとの106号機および107号機は「T-2特別仕様機」と表記する方が良いと考えている。なおプラモデルの箱に「FS-T2改」と記されていても、それ自体が販促用の宣伝文句と認識しているので気にしないというのが私の立場だ。

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写真1 新田原基地祭時にエプロンに展示された保存機。現在は基地内の保存展示機エリアに展示されている。(2011年12月04日撮影)

 

<航空自衛隊基地・施設での展示機>

1.基地運用の実績

 過去にT-2を運用していたのは三沢、松島、岐阜、築城、新田原の五基地だ。運用していた部隊と各基地での展示状況の確認をしておこう。

(1)三沢基地:第3飛行隊、第8飛行隊にて運用。現在、基地内にT-2の展示機はないが隣接する青森県立航空科学館に通常機(105号機)とブルーインパルス使用機(177号機)の2機が展示されている。通常機はかつては基地内に展示されていた機体だ。

(2)  松島基地:第21飛行隊(戦技研究班含む)、第22飛行隊で運用していた。広報用展示機(通常機192号機)、ブルーインパルス使用機(保存指定機176号機)のほか、救助訓練に使われる141号機のコクピット部分が敷地内に残されている。

(3)  岐阜基地:実験航空隊/航空実験団/飛行開発実験団にて開発時の飛行試験や搭載物の適合試験等を実施した。基地内にF-1プロトタイプとなるT-2特別仕様機の2番機(107号機)が展示されている。

(4)  築城基地:第6飛行隊、飛行教導隊(1981-1983)にて運用していたが、現在の基地内にはT-2の機体は残されていない。

(5)  新田原基地築城基地から移転した飛行教導隊が1983年から1990年にかけて運用していた。通常塗装機であった196号機(最終号機)に対して飛行教導隊機の当時の塗装と当時のシリアルナンバー(127号機)を記載して展示している。

(6) 浜松基地第一術科学校での整備員教育にはF-1が用いられていたため、T-2を保有したことは無いが、隣接する浜松広報館にて元ブルーインパルス所属機(111号機)が展示されている。また用廃となった114号機の前部胴体がシミュレーターとして利用されている。

(7) 小牧基地では隣接する三菱重工業にて機体の製造とIRAN(定期点検修理)が行われていた。このため試験飛行のために全てのT-2を見ることができたが、基地所属機ではないため小牧基地内にはT-2の展示機はない。ただし三菱重工敷地内に初号機である101号機が展示されており、外周道路から見ることができる。 

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写真2 松島基地で救助訓練に使用されている141号機の機首部分。(2019年8月25日撮影)

 

2.基地展示機

 自衛隊基地・施設に展示されているT-2について、おおむね北方から南方への順で展示場所を列挙する。

1) 59-5192 宮城県 松島基地

2) 29-5176 宮城県 松島基地 BI機 保存指定航空機

3) 79-5141 宮城県 松島基地 前部胴体のみを救出訓練用に使用

4) 29-5175 茨城県 百里基地 BI機

5) 59-5114 静岡県 広報館 コクピット部分をフライトシミュレーターに転用

6) 86-5111 静岡県 広報館 BI機  保存指定航空機

7) 59-5107 岐阜県 岐阜基地 2006年3月2日ラストフライト後、格納庫保管。2017年2月20日より屋外展示

8) 89-5196 宮崎県 新田原基地 T-2最終号機。かつてのアグレッサー塗装とし、当時の機番である”69-5127”に書き換えて展示

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写真3 岐阜かかみがはら航空宇宙科学館のT-2CCV実験機。(2019年11月11日撮影) 

 

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写真4 浜松広報館でシミュレーターとして利用されている114号機の機首部分。(2019年4月20日撮影)

 
3. 公共施設・民間等の展示機

次いで博物館や公園等の公共施設、民間施設に展示された機体を確認してみよう。教育用に使用されているのは帝京大学保有の一機のみだ。国産の超音速機であるが、航空機の構造・整備教育には従来から貸与していたT-6/F-86/F-104で十分であったということだろうか。Old Car Center KUDAN および山梨県の個人宅に展示されている前部胴体は防衛省の貸与機ではなく、スクラップとなった機体の一部を引取り、再生したものと思われる。

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写真5 三菱重工(株)小牧南工場に展示されているT-2初号機。(2019年11月9日15時半ごろ撮影)

 

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写真6 山梨県南巨摩郡身延町遅沢にある個人所有機(2019年08月20日撮影)

 <民間展示機>

こちらもおおむね北方から南方への順で展示機を列挙する。
1) 59-5105 青森県 県立三沢航空科学館、元は三沢基地内展示機 
2) 29-5177 青森県 県立三沢航空科学館、BI機、タンク付き、ランチャー無し。
3) 69-5125 青森県 芦野公園、元は第4航空団第21飛行隊所属機
4) 69-5128 宮城県 JR鹿妻駅前 BI機
5) 59-5115 福島県 Old Car Center KUDAN 前部胴体のみ、2018年10月28日訪問者によると別所に保管中で非公開とのこと
6) 79-5193 栃木県 宇都宮市 帝京大学
7) 79-5146 山梨県 個人宅 前部胴体のみ
8) 19-5101 愛知県 三菱重工(株)小牧南工場  生産初号機
9) 29-5103 岐阜県 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館 CCV機 保存指定航空機 
10) 19-5173 岐阜県 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館 BI機
11) 99-5163 石川県 小松市航空プラザ BI機(BI→ADTW所属後に展示)
12) 69-5126 香川県 高山航空公園、元第6飛行隊所属機  

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写真7 青森県芦野公園に展示されている第21飛行隊マークを付けたT-2。(2010年01月24日撮影)

 

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 写真8 高山航空公園のT-2は第6飛行隊のマークを付けている。(2020年4月5日撮影)

 

<展示後撤去>

一度は展示されたものの、その後に撤去された機体が3機存在する。

1) 29-5102 岐阜基地内に塗装を落としたモニュメントとして設置していたが2021年3月に解体・撤去された。解体公告より垂直尾翼は残されているようだが、2021年4月25日時点でモニュメントに加工されたという話は聞いていない。

2) 59-5109 松島基地展示後、撤去 。津波被害ではなく、老朽化が原因らしい。

3) 89-5151 茨城県鹿嶋市小鹿幼稚園に展示後、2018年5月16日以降2019年1月5日以前に撤去。機体は廃棄されたのか、次の展示のためにどこかの基地の片隅に保管されているのかは不明。

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写真9 ”開発・評価はゼロからスタートする”という気持ちが込められて塗装を落として岐阜基地内に展示されていた102号機だが2021年3月に解体・撤去された(2016年10月30日撮影)。

 

以上 

<編集経緯>

21Aug.2018 Mixiにて初版公開。

21Feb.2019 Blog公開

25Apr.2021 見直し更新(第15回目、102号機解体撤去による見直し実施)