用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【愛知県】三菱重工業(株)小牧南工場の展示機

<編集履歴> 31Jul.2021公開、16Jan.2024見直し更新(第3回目、展示場所移動)

 

【注意】

 2024年1月13~14日にかけて、展示機4機の移設作業が行われた。13日にはHSS-2BとT-2の移設作業が行われ、翌14日にF-104JとF-86Fの移設が行われている。新しい展示場所は正門脇(35.2530N, 136.9139E)付近。道路沿いだが植樹が邪魔になって全景撮影はできないが、以前よりかは見やすくなっている。移設の様子はyoutbe上に動画が投稿されている。

JASDF T-2初号機 (用途廃止展示機)移動・三菱重工南工場2024.01.13 - YouTube

JASDF F-86F(用途廃止展示機)移動・三菱重工小牧南工場2024.01.14 - YouTube

 

 何らかの工事に伴う仮移設なのか、新たな恒久的な展示場所にするのかは現時点では不明だ。状況が判るまで、以下の記事では移設前の様子を紹介する。

<場所 Place> 〒480-0293 愛知県西春日井郡豊山町大字豊場1

三菱重工業(株)名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場  三菱重工

<座標 Location>  35.2524N, 136.9146E(注:上述の通り移設済み)

<訪問日Visit>   28Jul.2021, 12Nov.2022 

<行き方 Access>

(1) 名古屋空港から約740m、徒歩約10分。

(2) 名鉄犬山線西春駅より名古屋空港行のバスに乗車。「豊山町社会教育センター」で下車して徒歩3分程度。

<解説General> 

(1) 名古屋空港に隣接する三菱重工業(株)名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場(以下、本Blog内では単に三菱もしくは三菱重工と略す)には以前から4機の航空機が展示されていたが、2021年春ごろに県道161号線脇(トヨタレンタリースの反対側、豊山スカイプール駐車場脇)に移設された。道路からはそこそこに見えるが、時期によっては雑草で覆われ、伸びた植樹が邪魔になって全景を見ることが困難な状態となる。さらに訪問時期・訪問時間帯とその時の植樹の剪定状況次第では機体に植樹の影がかかる。自らの「運試し」のつもりで訪問しよう。

【展示機 Aircrafts】 

(1) F-86F(62-7702)航空自衛隊の無償貸付機で部隊マークは記入されていない。F-86Fの国産2号機だ。なお国産1号機はアメリカに返還したため国内には残されていない。最も県道に近い場所にある機体だが夏場の草刈り前には雑草で機体が隠されることがある。

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写真1-1, 1-2 県道161号線沿いから置いてある機体が見えるが、時期によっては雑草に覆われる。また撮影時間帯によっては植樹の影が機体にかかるので運試しのつもりで訪問しよう。(上:2021年7月28日撮影、下:2022年11月12日撮影)

 

(2) F-104J (56-8672) 航空自衛隊の無償貸付機。三菱製の”マルヨン”だが、この展示された機体やそのS/Nに特に意味は無いようだ。部隊マークは記入されていない。

写真2 県道161号線から見たF-104J。訪問時には植樹により全景を見ることは困難だった。(2022年11月12日撮影)

 

(3) T-2(19-5101) 航空自衛隊の無償貸付機。S/Nが示すようにT-2の初号機、すなわち国産初の超音速ジェット機だ。これこそ博物館に展示すべき機体だと思うが、用廃となってからはずっと屋外展示となっている。機首には標準ピトー管が取付けられ、また垂直尾翼にはADTWのマークが記入されている。

写真3 県道161号線から見たT-2初号機。手前にあるF-104Jや植樹との位置関係により見ることができるアングルは限られる。(2022年11月12日撮影)

 

(4) HSS-2B(8084) HSS-2Bの初号機だ。並んだ機体の一番奥にあり、手前に並ぶ機体と植樹の関係からほとんど姿を見ることはできない。

写真4 県道161号線から見たHSS-2B初号機。この機体も見ることができるアングルは限られる。(2022年11月12日撮影)

 

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写真5 豊山スカイプール駐車場から見た展示機群。黒いフェンスの奥にグラウンドからの球よけネットが貼られている。手前側は三菱工場敷地内の通路なので黒いフェンスまで近づくことはできない。(2021年7月28日撮影)

 

【余談】

 2021年7月の訪問時にはJR勝川駅からバスで名古屋空港に向かったのだが、そのバスは北味美駅を過ぎたあたりで側道から左折するために出てきた乗車と衝突!幸いケガ人は出なかったがバスは右前側を小破し、乗用車は右前側が中破してしまった。代替バスが来るまで待つよりも歩いた方が早そうだと判断し、バスを降りて炎天下を徒歩で現地に向かったのだった。

 

【余談その2】

防衛省所管に属する物品の無償貸付及び譲与等に関する省令」の第二条(無償貸付)では「防衛大臣又はその委任を受けた者(以下「防衛大臣等」という。)は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる物品を無償で貸し付けることができる。」としており、第二条第一項には「防衛に関する施策の普及又は宣伝を目的として印刷物、写真、映写用器材、音盤、模型若しくは見本用物品その他これらに準ずる物品を地方公共団体、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校その他当該普及又は宣伝を行う者に貸し付けるとき」という文言がある。

 すなわち、これら航空機の展示は「防衛に関する施策の宣伝を目的」として貸付けられたものなのだろうというのが私の解釈なのだが、いかがだろうか。

 さてSUBARU工場のT-1やIHI瑞穂工場のF-104Jは一般人は見ることができないものの工場内道路の脇に置かれており、工場勤務者に対する宣伝用途としての役目を果たしている。しかしここで紹介した三菱の機体は工場勤務者の動線とは離れたところにあるので「工場勤務者に対する宣伝用」とは言い難いような気がする(朝夕の出勤/退勤時のみ使う道路脇なのだろうか?)。さらには「一般人に対する宣伝用」とも微妙に異なるような展示位置だという気がする。いや「一般人に対して自社製品の宣伝をする」という視点は無かったのだろう。かつての史料室前にあったときに比べれば「対外的に機体を見せるという宣伝目的としては"格段の進歩"」だとは思うけれど、県道161号線に沿って並べるとか、半年ごとに1機ずつあいち航空ミュージアムに貸出して「特別展」を繰り返すとか、もう一歩踏み込んだ展示・宣伝が出来なかったものだろうかと思う。ここの後で訪問したヤマザキマザックのT-6G、川崎重工のT-4あるいは淡路島のミツ精機の展示方法と見比べると展示物の歴史的価値の大きさに対する扱いがとても軽いように感じられました。

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写真5 県道沿いの植樹の隙間から中望遠ズームレンズを通して見たT-2初号機とHSS-2B初号機。(2021年7月28日撮影)

以上