用廃機ハンターが行く!

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【岐阜県】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(その2、屋内展示の固定翼機)

<編集履歴> 24Apr.2021公開、08Apr.2023見直し更新(第6回目、F-4EJ改写真追加)

 

 本記事では岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に関する三部構成の記事の第二部として大ホールにある戦後に開発された固定翼機について紹介する。その他の機体等については別記事を参照されたい。

・博物館の概要や行き方、屋外展示ついてはこちら:

【岐阜県】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(その1、概要と屋外展示機) - 用廃機ハンターが行く!

・館内の回転翼機、戦中戦前の機体、人力飛行機、非公開の収蔵機、過去に展示されていた機体やその他についてはこちら: 

【岐阜県】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(その3、戦前の機体や収蔵機、その他) - 用廃機ハンターが行く!

【大ホール展示機】

 大ホールの展示機は新規展示機となるF-4EJ改431号機を2023年2月18日に搬入するため、2月初旬ごろから若干の配置変更を行っている。本Blog掲載写真の大部分は配置変更前に撮影したものであることを予めお断りしておく。

(1) KAL-1 (JA8074) 

写真1 (2018年8月19日撮影)

 

(2) KAT-1 (JA3084) 2023年2月にUF-XSの脇に移設した。

写真2 (2019年11月11日撮影)

 

(3) サーブサフィールX1G1 (TX-7101) 技術研究本部(当時。現防衛装備庁)所属機。日本航空協会の重要航空遺産に認定されている。

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写真3 サーブサフィール改造のX1G1。”渋い”機体ばかりが展示されている。(2019年11月11日撮影)

 

(4) 日本大学/伊藤忠 N-62 イーグレット (JA3251) 日本大学の学生と伊藤忠整備(現ジャムコ)の技術陣が作った軽飛行機

写真4 (2019年11月11日撮影)

 

(5) FA-200改 (JA3263) 航空宇宙技術研究所(NAL)でSTOL試験機に改造された機体。元はFA-200-160だがエンジンを180馬力に強化して計測装置を搭載。水平安定板を可変翼(-3~+3度)として初期の試験を行った。後年、再改修して境界層吸込式フラップのある主翼に換装、その境界層吸込ブロア用にスバル・360のエンジンを胴体に搭載したという。このため見るべきは本機の後ろからの姿とエンジン搭載の後席部分かと思うが、解説板すらまともに読まずに撮影していたのであまり良い写真在庫がない。なお初期改造機をFA-200改、主翼換装した機体をFA-200XSあるいはFA-203-Sと称していた・・・ということだそうだが、上記の内容の真贋を含めて詳しいことは何も調べていない。そのうち判明したら本文を更新するつもりなので、それまでは他のリサーチャーのHPを読んでいて欲しい(他力本願モード)。でも、まずは現地の解説板をよく読んでみようかぁ!(2023年4月7日に訪問したが、解説版の写真を撮る時間が無かった・・・)

写真5 両翼端にピトー管を取付けたNALのFA-200。(2018年8月19日撮影)

 

(6) UF-XS (9911) PS-1開発に際してデータを取得するためにグラマンG.64アルバトロスを魔改造した試験機。原型となったアルバトロスの写真はネットで探して本機と見比べ、どれだけ改造を施したのか確認して驚こう。

写真6 戦後の飛行艇開発のためのデータ取得用実験機UF-XS。貴重な機体だが本館設立前にはボロボロで廃棄寸前の有様だった。(2019年11月11日撮影)

 

(7) T-33A (61-5221) 機首に標準ピトー管を付けたテストパイロット養成用特殊試験機。岐阜基地で使われていたが、元の練習機形態に戻されたのちに入間基地に配備され、そこで用廃となった。MAP供与機であったため書類上は米国に返還された機体を取り戻し(注:この返還に関する記載は正しいか?)、分解した機体をトレーラー3台に載せて岐阜基地に移送。ここでかつての「試験機」の姿に復元した。基地内から博物館まで川崎ヘリコプタシステムのV-107に吊り下げられて運ばれた。

写真7-1, 7-2 機首に標準ピトー管、縦揺れと横揺れを確認する装置を取り付けたT-33A。(上下とも2019年11月11日撮影)

 

(8) T-1B (05-5810) 本機はT-1Aとして製造されたが、のちにエンジンを換装してB型に改造した。引退時に施した特別塗装のままで展示している。

写真8 退役当時の記念塗装を残したT-1B。(2019年11月11日撮影)

 

(9) T-2CCV (29-5103) T-2開発時にスピンテストに用いられた3号機を改造した。本機により次世代に向けたデジタルFBW操縦技術の基礎を作ったといえるのかな。外見的にはインテーク脇の2枚の水平カナードと胴体下に1枚の大きな垂直カナードを取り付けたことが特徴だが、通常型のT-2に比べるとそれ以外にも多くの改修点があるので、隣のT-2B.I.機とよく見比べてみよう。フラップやラダーのアクチュエーターが大型化されていたり、ベントラルフィンが無くなっていたりと細かな違いを見つけるのも楽しいぞ。なお本当のCCV機能評価試験の際には単座仕様であり、後席部分には評価/記録機器を搭載していたが、一連の試験を終えたあとに複座型へと戻されてテストパイロットコースで使用された。

写真9-1, 9-2 近隣にあるT-2ブルーインパルス機(後期型量産機)とどこが異なっているのか、じっくりと見比べてみよう。(上:2018年8月19日、下:2019年11月11日撮影)

 

(10) T-2ブルーインパルス機 (19-5173) 国内初の超音速ジェット練習機のアクロ仕様機だ。T-2の機体背部をマジマジと観察できる状態で展示されている機体は国内では本機だけなので、量産型T-2とT-2CCV実験機との違いをジックリと比較してみよう。ブルーインパルスがT-4に機種変更したあと、しばらくの間は岐阜基地ADTWでも元B.I.機所属機を使用していたが、その機体は現在小松空港前の航空プラザに展示されている。すなわち本機は各務原とは縁もゆかりもなく、その意味で本館の展示趣旨からは外れた機体といえる。客寄せのためなら仕方ないかとも思うが、個人的には展示するなら現在岐阜基地の展示機エリアにある107号機(F-1のプロトタイプ)や2021年3月頃に解体されてしまった102号機(元XT-2の2号機。初号機は三菱重工に展示中)を展示して欲しかった。

写真10 右側排気口部にスモーク発生用のパイプが見える。これはアクロ仕様機だけの装備だ。(2019年11月11日撮影)

 

(11) T-3 (11-5547) 富士重工(株)(現SUBARU)による「国内開発機」だが、試験評価はメーカーである富士重工のある宇都宮飛行場(陸上自衛隊北宇都宮駐屯地)で行われており、また配備後もADTWを介した技術的向上施策の実施とその評価は岐阜基地では行われなかったハズ。このため各務ヶ原で開発・評価された機体という本館の展示趣旨からは少し外れた機体だ。技術開発の紹介展示ではなく、操縦席体験搭乗を目的として「借用」したという。

詳細はこちらへ;

2008年7月26日 T-3初等練習機・11-5547号機の搬入

写真11 T-3初等練習機。(2019年11月11日撮影)

 

(12) F-104J (36-8515) 永らく岐阜基地で各種飛行試験の際の随伴機(チェイサー)やTPCでの教育用として使われてきた機体だが、各務原で開発・評価された機体ではないため本館の展示趣旨からは外れた存在だ。一般公開されているF-104Jの屋内保存機は本機以外には浜松広報館と石川県立航空プラザにしか存在しないので、私個人としては「まぁいいや」という位置づけだ。

写真12  細長い胴体に薄く短い主翼が特徴のF-104J。カッコイイが本館の展示主旨にはそぐわない。綺麗な形で大切に保管・展示されているという意味では文句のつけようがないのだが。(2018年8月19日撮影)

 

(13) F-4EJ改 (07-8431) 既存のF-4EJ戦闘機に対して日本独自の改修を施した機体の初号機。本機は改修後の一時期に第306飛行隊に移管されていたが、それ以外は岐阜基地航空実験団(APW)/飛行開発実験団(ADTW)に配備されていた。2021年3月に用廃となった後は岐阜基地で保管され、ランウエイウォークや2022年秋の航空祭で一般公開されていたが2023年2月18日に本館へと搬入された。搬入した当日から2階より見学はできたが、公式な展示開始は2023年3月25日のお披露目イベントからとなっている模様。

写真13 F-4EJ改。元のF-4EJより「頭がよくなっている」(コンピューター換装)。(2023年4月7日撮影)

 

(14) STOL実験機「あすか」 (8501) USB方式を採用した短距離離着陸性能試験機。予算上の制約から完全に新規の機体を設計・製作することはできなかったため、既存のC-1(の設計図)を元にして設計・製作した。C-1製造ラインから引っこ抜いて改造したり、既存のC-1を改造したものではない。また通産省主導のプロジェクトのため「軍用輸送機の転用」でもない。1984年頃に初飛行して100回ほどの飛行を行ってデータを得た後に用廃となった。解説はそのうちもっとしっかり書くつもりでいるが、当面はwikipediaでも読んでいてくださいw。

写真14 STOL実験機「あすか」。(2020年12月16日撮影)

以上