用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【茨城県】空自 百里基地 雄飛園

<編集履歴> 17Nov.2020公開、03Apr.2024見直し更新(第14回目、T-2B.I.機の飛来日追加)

 

<場所 Place> 〒311-3494 茨城県小美玉市百里170

百里基地|雄飛園|防衛省 [JASDF] 航空自衛隊

<座標 Location>  36.1885N, 140.4259E周辺

<訪問日Visit> 08Nov.2020, 06Feb.2022(外周より), 07Jul.2023ほか

百里基地祭へは1979年11月11日以降、何度も訪問)

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写真1  月水金の13時から16時に見学できる雄飛園。画面右側に写るF-4EJ改(302号機)は2022年1月17日に解体された。(2020年11月8日12時ごろ撮影)

 

<行き方 Access> 

(1) JR石岡駅からタクシーで2-30分程度、5千円くらいか。

(2) JR石岡駅から茨城空港までのバスが1時間に1本程度ある。大人片道630円。空港からはタクシーで10分程度。2千円くらい。

(3) 東京駅から茨城空港までのバスに乗り空港下車、大人片道1,650円で所要約100分。空港からはタクシーで10分程度。2千円くらい。ただし2023年初夏の時点でバスの運行は木・日のみであるため、雄飛園見学のための交通手段としては使えない。

(4) JR水戸駅北口あるいは南口から空港まで1~2時間に一本程度のバスの便あり。片道1,200円程度。空港からはタクシーで10分程度。2千円くらい。

航空祭の開催時にはJR石岡駅などから百里基地までシャトルバスが運行される。

<解説General>

(1) 百里基地内の展示エリア「雄飛園」は正門を入って直ぐ左側に位置している。演習や特別な事情がない限りは月水金の午後1時から4時まで日本人であれば見学することができる。見学の際にはゲート脇の事務所で免許証など国籍が判るものを提示した上に氏名等を申告する。日本国籍を持たない方や訪問予定日の見学可否などの詳細は基地に直接問い合わせること。なお見学は自由にできるが、エスコート担当の隊員が付かず離れず優しく見守ってくれている。このため可能ならば雨天や強風時、真夏や真冬などの訪問は避けるなどの”配慮”はあって良いかと思う。

(2) 雄飛園にはF-1, F-4EJ改、RF-4E, F-86D, F-86F, F-104J, T-2 Blue Impulse, T-33Aの合計8機の用廃機が展示されている。また慰霊碑など、いくつかの記念碑がある。いずれも写真撮影は可能だが、基地施設や車両等の撮影は禁止されている。このため、F-86D/FおよびT-33Aについては道路側から基地方面への撮影が制限される。F-104Jについては道路側からの撮影は可能だったが、逆にグランド側からの撮影(機体右側)の撮影が制限された(個人的にはF-104Jの右側面撮影制限は担当者(民間委託の窓口担当者)の勘違いではないかと思う)。

(3) 前述の展示機のうち、F-4EJ改、RF-4E,F-1,T-2B.I.は限定的ながらも基地脇を走る道路から撮影可能だ。フェンス部分はやや目の細かい金網となっており、18-55mm程度の標準ズームで金網に近づいて撮影しても画面の四隅のどこかに金網が入る。90cm程度の脚立を持参すれば金網をクリアして撮影できる。雄飛園の非公開日にはこのくらいできるヨという話だが、現実的にはそこまで苦労して撮影する意味は無いので、見学可能な日時・時間内に訪問して撮影することを考えよう。

(4) 展示エリア脇には広報館があり、館内に”体験搭乗用”のF-4EJ改の前席コクピット模型が置かれているが、日常の雄飛園見学時には公開はされていない。

(5) 航空祭時には警備の都合か、雄飛園エリアは閉鎖されることがある。観客動線沿いのF-104Jは道路側から撮影できる。その他の機体は中望遠レンズがあれば、公開エリア内からでも撮影はできるが、アングルはかなり限定される。雄飛園展示機は航空祭とは別途に見学することをお薦めする。

(6) 展示等の洗浄・再塗装とコーテイングが2021年度末に行われた。公告は11月18日付で12月17日に入札を実施。契約金額は4,620,000円であった。また同様の名目で2022年1月28日にも入札が行われ、こちらの契約金額は1,650,000円となっている。いずれも詳細は公開されなかったため対象機は不明だ(個人的には後者165万円はRF-4Eの塗り替え工事費用だと思っている)。作業期間は12月17日から3月31日までであり、この期間中にF-1、F-86D/F、F-104J、T-2BI、T-33A、RF-4Eの7機が塗り直されている。F-4EJ改にもコーティングが施されたのかもしれないが、詳細は不明だ(なお入札仕様書自体は請求すれば公開される情報であるが、私自身はそこまでして確認するつもりはない。ただし基地HPの調達情報(一般公開情報)でファイルが読めなくなっている状態をメールで通知したにも関わらず、2022年12月25日になってもそのままなのはどういうことよ?と問いかけておく)。

(7) 雄飛園周辺には各種のモニュメントが置かれている。また格納庫/飛行隊事務室脇には実機の垂直尾翼を利用したモニュメントが設置されている。垂直尾翼モニュメントは航空祭時に見ることができる。

 

【展示機 Displayed aircrafts】 

 1. 三菱F-1(60-8274)は2006年3月30日から2009年5月26日の間に搬入・展示された。築城基地第6飛行隊のマークを描いている。2022年1月末から3月度にかけて再塗装を行い、この際にキャノピーは劣化防止のために黒く塗りつぶされた。色合いも褪色具合が綺麗に再現されたという感じだ。次回の塗り直しの際の仕様書には、例えば「**社のプラモデルの塗装例に従った色合いで塗装すること」の一文を入れても良いかと思う。おそらくは10年後ぐらいの話になるだろうが。

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写真2-1, 2-2, 2-3, 2-4 色褪せてきた三菱F-1は2021年度末に再塗装されたが「違う!そうじゃない!!」感がいっぱい。(2-1: 2020年11月8日、2-2: 2022年2月6日11時45分ごろ、2-3:2022年5月29日11時10分ごろ、2-4: 2023年7月7日14時50分ごろ撮影)

 

2. 三菱T-2Blue Impulse(29-5175)松島基地第21飛行隊戦技研究班(ブルーインパルスのこと)としての活動を終えた後,しばらくは教育訓練で使われていたが、2001年4月23日に最終飛行を兼ねたフェリーフライトを行い、当基地で用廃となった。整備後、同年12月頃から展示されている。右エンジン排気口部のスモークパイプは取り外されている。2022年1月末から3月度にかけて再塗装を行い、この際にキャノピーは劣化防止のために黒く塗りつぶされた。

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写真3-1, 3-2, 3-3 右エンジン排気口のスモークパイプは外されている。2021年度末に再塗装された。(3-1: 2020年11月8日13時ごろ、3-2: 2022年2月6日11時ごろ、3-3: 2022年5月29日11時10分ごろ撮影)

 

3. F-4EJ改 (17-8437) 先代展示機である17-8302号機が解体された後の2022年1月24日に設置された。前後席とも射出座席は外されている。

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写真4 F-4EJ改の二代目展示機(17-8437)。外周から見ると機首部分はRF-4Eの主翼と重なり、尾翼部分は植樹で隠れてしまう。(4-1: 2022年2月6日11時ごろ外周道路より、4-2および4-3: 2023年7月7日撮影)

 

4. RF-4E (47-6901) 先代展示機である57-6906号機が解体された後の2022年1月24日に設置された。国内で唯一のRF-4Eの展示機だが前後席とも射出座席は外されている。設置当初は青い洋上迷彩に退役前のスペシャルマーキングを施していたが、7空団主催の撮影会が2022年2月12日(土)行われた後に”オモチャのような”緑色迷彩にされてしまった(2月16日には下塗りが行われ、”白ファントム”となっていた)。余談だが2022年2月12日の撮影会は50人×4回分=200人枠に対して約600人の応募があったそうだ(当選者のTweetより)。

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写真5-1, 5-2, 5-3,5-4 写真5-1から写真5-3は外周道路から90cmの脚立を使い、フェンスの上部から撮影したもの。写真5-1と5-2は再塗装前の現役時代のステンシルを残したRF-4Eでフルサイズ320mm相当で5-2写真のような機首部のアップを狙える。2022年3月には写真5-3のような緑色迷彩となった。(5-1および5-2: 2022年2月6日11時ごろ、5-3: 2022年5月29日、5-4: 2023年7月7日14時45分ごろ撮影)

 

5. ノースアメリカンF-86D(04-8197)は2003年2月14日以前より展示されている。垂直尾翼にはかつて百里基地にいた第204飛行隊(F-15)のマーク(鷲の頭部)を描いているが、F-86Dがこのマークを付けて飛んだことはない。F-104時代の第204飛行隊は新田原基地第5航空団所属しており、その際には黄色と青でV(5)を示すマークが垂直尾翼に描かれていた。この当時のマークは新田原基地に展示されたF-104Jの尾翼に残されている。2022年3月度に再塗装作業が行われ、この際にキャノピーが黒く塗りつぶされている。

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写真6-1, 6-2 全機が米空軍からの供与機だったF-86D。(6-1: 2020年11月8日、6-2: 2023年7月7日撮影)

 

6. ノースアメリカンF-86F(92-7885)は2003年2月14日以前より展示されている。垂直尾翼に描かれているのはかつて百里基地にいた第305飛行隊(F-4EJ→F-15)のマークを描いているがF-86Fがこの梅マークと胴体の青帯を付けて飛んだことはない。2022年3月度に再塗装された際にキャノピーが黒く塗りつぶされた。またこの時に胴体の青帯が無くなっている。

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写真7-1, 7-2 三菱製のF-86F。(7-1: 2020年11月8日、7-2: 2023年7月7日撮影)

 

7. ロッキードF-104J(46-8630)は1980年代後半には基地内に展示されていたが、1992年に百里基地展開25周年を記念して台座に据え付けられた。1992年9月12日に展示式が行われており、航空情報1992年12月号(No.579)p.130にその様子が掲載されている。垂直尾翼に描かれたマークはかつて百里基地にいた第206飛行隊のもの。数回の塗り直しを行った後、2000年代ごろからはオモチャのような水色塗装となってしまった。20年余りが経過した2022年1月末から3月度にかけて再塗装工事が行われ、よりオリジナル塗装に近い銀地塗装に戻された一方で、キャノピーは劣化防止の観点から黒く塗りつぶされている。

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写真8-1, 8-2 写真8-1は胴体を水色に塗られた頃のF-104J。2021年度末の再塗装工事にて写真8-2のように銀地塗装に戻されている。(8-1: 2020年11月8日, 8-2: 2023年7月7日14時25分ごろ撮影)

 

8. ロッキードT-33A(51-5629)は2003年2月14日以前より展示されている。垂直尾翼には第501飛行隊のマークが描かれている。2022年3月度に再塗装が行われたが、この際にキャノピーが黒色に塗りつぶされてる。コクピット見学用の台座は恐らくこの作業の際に撤去されたのだろう(用をなさないため)。

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写真9-1, 9-2 比較的保存状態の良いT-33A。(9-1: 2020年11月8日、9-2: 2023年7月7日撮影)

 

【展示後廃棄】

1. マクダネルダグラスF-4EJ改(17-8302)は2012年3月16日から2014年3月22日の間に展示された。退役時にはノーマル塗装だった第302飛行隊のスコードロンシップであった302号機に対して航空祭で別機に施したものと同様のスペシャルマーキングを描いて展示機としたもの。したがって本機がこの塗装で飛行したことはない。2022年1月17日にRF-4E(57-6906)と共に解体された。解体から2日後に「新たな機体(2機)を展示する」旨の発信が公式Twitterであったが、この情報発信までの間は解体を非難する発言が相次ぐことになり、広報発信の在り方を考えさせられる事案となった。

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写真10 雄飛園のシンボル的な存在だったF-4EJ改特別塗装機。(2020年11月8日撮影)

 

2. マクダネルダグラスRF-4Eは14機全機が輸入され第501飛行隊に配備されていたが、2020年3月にRF-4Eの引退に伴って解隊した。57-6906号機は2010年9月11日には展示されていたことが確認されている。国内で唯一のRF-4Eの展示機であったが、2022年1月17日にF-4EJ改(17-8302)と共に解体された。

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写真11 国内唯一の展示機だったRF-4E偵察機。「国内唯一の展示機」の座は二代目展示機901号機に引き継がれた。(2020年11月8日撮影)

 

【その他】

(1) 先代の展示装備VADS-IIに変わり、2023年4月頃からVADS-I改がT-2Blue Impulseの脇に展示されている。

・参考:本Blogでの関連記事;

【番外】空自のVADS全廃! - 用廃機ハンターが行く!

写真12 全機が用途廃止となったVADS-I改。(2023年7月7日撮影)

 

コクピット

 雄飛園に隣接する百里基地広報展示館内にはF-4EJ改87-8408号機の前席コクピット部分が存在する。造り物の「機首部分」に”408”と描かれているため、SNSなどではこの機番のことを言っているものと思っていたが、見学者の写真から実際の408号機の計器盤が使われていたことが判明した(2021年6月)。

 

垂直尾翼のモニュメント】

 ファントムの垂直尾翼を用いたモニュメントは全国に4機分があるが、このうち3機分は百里基地内に置かれている。残る1機分は三沢基地内にある。

(1) 57-8373 RF-4EJ 第302飛行隊マーキング。エプロンから格納庫一棟隔てた通路側にある。RWRが付いていないRF-4EJ限定改修型の用廃機から作成されたものなので、厳密には「57-6373」と記載すべきものなのだろう(注:用廃後は物品の扱いなので、どのように塗られようとも構わないという位置づけのものだ)。2023年12月の航空祭時に現存。

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写真13 373号機の垂直尾翼のモニュメント。RF-4EJ限定改修機の垂直尾翼から作られたためRWRアンテナが無い。(2019年12月1日撮影)

 

(2) 97-8418 RF-4EJ 第305飛行隊マーキング。2020年11月29日には残っていた尾翼端のカラーチップおよび梅組マークが、翌11月30日には消されていることが視認された。この時、SNも消されたようだ。その後、2023年12月の航空祭時には元通りにペイントされている姿が確認されている。このモニュメントもRWRが付いていないRF-4EJ限定改修型の用廃機から作成されたものなので、厳密には「97-6418」と記載すべきものなのだろう。

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写真14 百里基地内にある418号機の垂直尾翼のモニュメント。こちらもRF-4EJ限定改修機の垂直尾翼から作られたため、RWRアンテナが無い。(2019年12月1日撮影)

 

(4) 47-6902 RF-4E 第501飛行隊マーキング 第501飛行隊は閉隊されたため、このモニュメントはどうなるかと注目していたが、2023年12月の航空祭時には色褪せていたものの、このまま残されていた。航空祭時には公開エリア外になることが多く、公開エリアから、かろうじて見えるか見えないかというギリギリの位置にある。滑走路を挟んだ反対側から超望遠レンズを使うと、立ち上る陽炎の向こうに、なんとか確認できるハズだ。

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写真15 百里基地内にある902号機の垂直尾翼のモニュメント。かつて青色をベースとした洋上迷彩塗装となっていた時期もあった(2019年11月撮影)

 

以上