用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【特集】T-2ブルーインパルス塗装機

 <編集履歴> 17Mar.2019公開、17Oct.2023見直し更新(第13回目、各展示場所の記事へのリンク追加)

 

 三菱T-2の用廃展示機の現状については別稿にて記しているが、ここではブルーインパルス所属機の現状のみを抽出して紹介しよう。

・参考:T-2全機の展示状況を知りたい場合はこちらへ;

航空自衛隊 三菱T-2の展示機 - 用廃機ハンターが行く!

 航空自衛隊のアクロバット飛行隊「ブルーインパルス」は1982年のシーズンから1995年12月8日に松島基地で行われた最終訓練飛行(一般公開)までの13年間、6機のT-2による演技を全国各地で公開した。111号機と112号機は前期型からの改修機、172~177号機はブルーインパルス用の機体として製造された後期型新造機。128号機および163号機は補充用に後期型通常機から改修された機体だ。これらのうち112号機、172号機および174号機は事故で失われているが、最終訓練飛行時に在籍していた7機全ての機体が全国各地に保存・展示されている。

【展示機一覧】
(1) 86-5111 静岡県 浜松基地広報館、ダミーミサイルとタンク付、保存指定航空機
(2) 69-5128 宮城県 JR仙石線鹿妻駅
(3) 99-5163 石川県 県立航空プラザ 、岐阜基地で使用後に展示
(4) 19-5173 岐阜県 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
(5) 29-5175 茨城県 百里基地、スモークパイプ無し 
(6) 29-5176 宮城県 松島基地、ダミーミサイルとタンク付、スモークパイプ無し、保存指定航空機
(7) 29-5177 青森県 県立三沢航空科学館、タンク付、ランチャー無し

 

【個別解説】

 1. 静岡県 浜松基地広報館の59-5111号機

 7機あるB.I.塗装機の中で唯一の前期型。ダミーミサイルとタンク付、航空自衛隊の保存指定航空機だ。 111号機と112号機はF-86Fから機種更新する際に前期型から改修された機体だが、112号機は1991年7月4日に訓練中の事故で172号機と共に失われた。

【静岡県】空自 浜松広報館(その2、屋内展示機) - 用廃機ハンターが行く!

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写真1 浜松広報館の59-5111号機。(2018年8月13日撮影)

 

2. 宮城県 JR鹿妻駅前の69-5128号機

 浜松基地での公開中に墜落した174号機の補充用として1983年にアクロ機へと改修された機体。左インテイクベーンに関係した整備員の名前が描かれている。駅前広場にあるので24時間いつでも撮影可能。 

【宮城県】JR仙石線鹿妻駅前のT-2B.I. - 用廃機ハンターが行く!

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写真2 JR鹿妻駅前の69-5128号機。時々塗り直されている。(2020年08月05日撮影) 

 

3.  石川県 小松航空プラザの99-5163号機

 補充用に1986年にアクロ機へと改修された機体。ブルーインパルス(アクロ機)としての役目を終えた後は用途廃止となるまで、この塗装のままで尾翼にADTWのマークを入れて岐阜基地で使用されていた。展示場所の都合上、側面写真は撮りにくいが、その一方で機体細部をジックリと観察することができる。

【石川県】石川県立航空プラザ - 用廃機ハンターが行く!

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写真3 石川県立航空プラザの99-5163号機。(2018年9月18日撮影)

 

4. 岐阜県 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館の19-5173号機

 「キレイに屋内で大切に保管されている」「上からも見ることができる」という点ではまったく文句のつけようがないのだが、「かがみがはらで開発された機体(特に試験機)の展示」という基本的なコンセプトがある同館においては「客寄せ」的な感じのする異色の展示機だ。個人的には三菱重工(株)小牧工場のT-2初号機、もしくはお隣の岐阜基地に展示されているT-2 107号機(T-2特別仕様機/F-1プロトタイプ)と交換して欲しい・・・と思う。本機(および三菱にあるT-2初号機)をあいち航空ミュージアムに譲渡して、107号機を屋内にて永久保管したらいかがでしょうか?とご提案申し上げておきます。

【岐阜県】岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(その2、屋内展示の固定翼機) - 用廃機ハンターが行く!

写真4 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館の19-5173号機。(2019年11月11日撮影)

 

 5. 茨城県 百里基地「雄飛園」の 29-5175号機

 175号機はブルーインパルスとしての活動を終えた後、第4航空団(松島基地)でしばらく使われていたが、百里基地へのフェリーフライトをもって用廃となり、「雄飛園」に展示されている。百里基地正門脇に設けられた「雄飛園」は日本国籍を有するものであり、かつ平常時であれば、正門で簡単な手続きのみで 見学することが可能だ。ここには退役した戦闘機など8機がある。航空祭の時は見学者が多く、人を入れずに撮影することは困難なうえ、雄飛園敷地奥を公開しない場合があるため、できるだけ通常日に見学訪問することを強くお薦めする。本機はスモーク発生用のパイプを取り外した形態で展示されている。2022年3月に再塗装され、この時にキャノピー劣化防止のためにキャノピー全体が黒く塗りつぶされた。

【茨城県】空自 百里基地 雄飛園 - 用廃機ハンターが行く!

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写真5 百里基地「雄飛園」の29-5175号機。日本国籍を有していれば平日指定日に見学可能だ。(2020年11月8日撮影)

 

6. 宮城県 松島基地の29-5176号機

 第11飛行隊格納庫内に保管されている航空自衛隊の保存指定航空機。2011年3月11日の東日本大震災においては津波による被害を受けたが修復された。ダミーミサイルとタンクを装着している姿を航空祭や基地見学時に見ることができる。 なお本機はスモークパイプを取り外した形態で保管されている(2019年8月公開時に確認)。保管当初は付いていたような気がしたのだが、津波被害を受けた際に損傷したのだろうか。いつ頃から無くなったのか、そのうち確認してみたい。(ご存じの方、いらっしゃいましたらコメントいただけるとありがたいです)

【宮城県】空自 松島基地の展示機 - 用廃機ハンターが行く!

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写真6 松島基地の29-5176号機は空自の保存指定航空機だ。(2019年8月25日撮影)

 

7. 青森県 県立三沢航空科学館の29-5177号機

 当初からB.I.専用機として製造された機体の最終号機。タンク付、ランチャー無しというやや珍しい形態で展示されている。雪の多い地方での屋外展示では機体の痛みも早かろうにと思うのだが・・・。

【青森県】青森県立三沢航空科学館 - 用廃機ハンターが行く!

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写真7 三沢航空科学館の29-5177号機。(2014年02月01日撮影)

 

【余談】

 T-2B.I.機は通常の機体とは異なり発煙装置を装備している。展示機では機内のタンクから発煙用のオイルを高温の排気口に導くためのパイプを機体右側、エンジンノズルの先に見ることができるので、訪問した際にはよく見てやってほしい。デビュー当初は機体左側にノズルを取り付けていたり、パイプの形状や太さが異なるなどの違いがある。運用中に試行錯誤しながら改良を加えていったので、過去の写真を見る際にはこれらの点に注目しよう。なお松島基地の29-5176と百里基地雄飛園の29-5175号機はこのスモークパイプを取外し、パイプの通る穴を塞いだ状態で展示している。

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写真8 アクロ機の外見的特徴であるスモークパイプ。(2018年8月13日浜松広報館にて撮影)

  

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写真9 百里基地「雄飛園」の29-5175号機の尾部。スモークパイプは無く、パイプの通っていた穴は塞がれている。(2020年11月8日撮影)

以上