用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【ベトナム】MiG-15、MiG-17、MiG-19展示機まとめ

<編集履歴> 03Feb.2023公開、24Feb.2023見直し更新(第5回目、見直し更新)

 

【概要】

(1) 北ベトナム空軍が戦闘機を得たのは1964年2月に旧ソ連がMiG-17Fと少数のUTI-MiG-15を合わせて36機を供与したこと始まる。続いて中国もJ-5(中国製MiG-17F)を供与、さらにソ連からは少数のMiG-17PF(インテーク内にレーダーを装備したタイプ)が供給されている。これらは戦闘で損失があれば都度補填されていたようだ。1972年春の時点でのMiG-17シリーズの保有機数は80機程度を保有していたが、正確に何機が供与されたのかは(軽く調べてみたが)分からない。

(3) 中国製MiG-19であるJ-6はベトナム戦争末期の1972年に投入されたというが、何機が供与されたのかは調べていない。現在はハノイとダナンに各1機、合計2機が残されている。

写真1 ハノイの防空空軍博物館にある2機のMiG-17F。(2012年1月8日撮影)

 

【UTI-Mig-15展示機】

 ベトナムに単座型MiG-15は供与されていないが複座型のUTI-MiG-15は練習機として若干数が1964年2月に旧ソ連から供給された。その後、追加供給を受けたのかは未調査だ。またいつ頃退役したのかも調べていない。現在ではナチャンの空軍大学付属展示場に1機のみが展示されている。

(1) UTI-MiG-15(2635, 12.2347N / 109.1929E) Nha Trangの空軍士官大学Truong Si quan khong quanに2007年1月から2012年1月までの間に敷地を整備して航空機展示場を造り設置した。ここには9機ほどの展示機があるが一般非公開。ただし道路脇や隣接するホテルの上層階から何機かは撮影できてしまう。私自身は未訪問なので写真は無い。

 

【MiG-17展示機】(機首に描かれたS/N順)

 現在ではMiG-17が3機、MiG-17F(ドラッグシュート無)10機、MiG-17F(ドラッグシュート有)1機、中国製MiG-17F(J-5)1機の合計15機が残されている。ベトナム国内のMiG-17の相違点(チェックポイント)は別記事にまとめたので参照ください。(便宜上、写真で型式を確認できない機体には型式後に"*"をつけてある)

【ベトナム】MiG-17のチェックポイント - 用廃機ハンターが行く!

(1) MiG-17F (935, 11.1411N / 106.4622E) HCM市近郊のクチトンネル(二つあるトンネルのうち主に国内観光者向けのBen Duocトンネル)のビジターセンター前の広場に2014年10月には置かれていた。機首両側に5個のキルマークがあるが、2014年に訪問した際にはかなり消えかけていた。ここにはMiG-21とUH-1も展示されている。

(2) MiG-17 (1203, 20.8621N / 106.6829E) ハイフォン博物館。エアブレーキが細長い長方形タイプの"MiG-17"。Bob OgdenのS/N本(第二版)によると「A型」だが、A型とする根拠をみつけていない。私が訪問した際には全てのマーキングは消えていた。

(3) MiG-17F*(1221, 19.8965N /105.4533E)    バイトゥオンBai Thuong空軍基地(トースアンTho Xuan空港)展示機。周囲にはA-37, MiG-21やSu-22などもある。

(4) MiG-17F (2002, 17.4686N / 106.6235E) ダナンの北西約230km、クアンビン省省都ドンホイDong Hoiにある省立博物館Bao tang tinh Quang Binhに2005年には存在していた機体。2009年7月ごろから現在の場所に置かれているが、私の知る限りでは最もボロボロなMiG-17だ。近い将来には撤去確実という感じがする。敷地内にはA-1Hスカイレーダーも展示されている

(5) MiG-17F (2010, 18.6577N / 105.6953E) Vinh市のBao tang Quan khu 4にある機体。上述したBao tang Tinh Quang Binhの2002号機に次いでボロボロな機体。敷地内にはMi-4も展示されている。

(6) MiG-17F (2011, 21.0000N / 105.8296E) ハノイ防空空軍博物館に2機展示されているMiG-17Fのうちの1機。かつては緑色のまだら迷彩だったが、2018年頃には褪色してほぼ銀地の機体になっていた。

(7) MiG-17F (2011, 21.2575N / 105.8371E)  ハノイのノイバイ空港の北東約6㎞にある軍事施設内(第371師団第921戦闘飛行連隊)に展示されている国内2機目の2011号機。Google Map掲載写真のエアブレーキ形状からF型だが、ドラッグシュート収納部分は見えず、シュートの有無は確認できていない。

(8) MiG-17F (2047, 21.0000N / 105.8296E) ハノイ防空空軍博物館に2機展示されているMiG-17のうちの1機。2023年2月時点で確認されている唯一のドラッグシュート装備機

(9) MiG-17 (2047, 21.0339N / 105.8406E) ハノイ軍事歴史博物館にある国内2機目の2047号機。本当の番号ではないとされる。機首左側に7個のキルマークがある。エアブレーキが細長い長方形タイプの"MiG-17"だ。

(10) J-5 (中国製MiG-17F)(2331, 20.4238N / 106.1745E) ハノイの南東約70km、ナムディン省省都ナムディンの省立博物館Bao tang thnh Nam Dinhにある機体。国内3番目くらいに汚くボロボロになっている。ドラッグシュートは付いていない。中国製のJ-5だとされるが、近くでよく見て注意書きが中国語かキリル文字(もしくはベトナム語)であるかを確認する必要がある。

(11) MiG-17F (2505, 10.4528N / 105.6327E) HCM市の南西約120km、ドンタップ省カオラインにある博物館Bao tang Dong Thap展示機。明瞭な尾部付近の画像がなく、F型であることは確実だがドラッグシュートの有無は確認できていない。隣にはUH-1もある。

(12) MiG-17 (2614, 12.2347N / 109.1931E) Nha Trangの空軍士官大学Trung Si quan Khong quan敷地内に2007年1月から2012年1月までの間に敷地を整備して設置した。Google Map掲載写真を見るとエアブレーキ形状は原型機に近い小さな長方形で右側のスピードブレーキにはアクチュエータ収納部の膨らみすらない。機体後部にエンジンパイプも見えない。”MiG-17”の極めて初期の機体ではないだろうか。周辺には9機の展示機がある。

(13) MiG-17F (3020, 20.8228N / 106.6369E) ハイフォンの第3軍区博物館 3020号機とされるが私が訪問した際にはマーキング類は消失して確認できなかった。

(14) MiG-17F (3029, 19.8147N / 105.7801E) ハノイの南約130km、 タインホア省省都タインホアにある博物館Bao tang tinh Thanh Hoaの展示機

(15) MiG-17F* (S/N?, 21.7193N / 104.9147E) イエンバイ省省都イエンバイ市の博物館 Bao tang Yen Bai敷地内にMiG-21と共に置かれている。以前から街中のどこかで展示されていた機体だが2019年9月から2020年9月までの間にMiG-21と共に博物館敷地内に搬入・設置された。博物館の裏手に置かれたためか、衛星画像以外にネット上で写真を見つけることができず、エアブレーキ形状やドラッグシュートの有無など細部を確認でkずにいる(2023年2月時点)。

写真2 ハイフォンの第3軍管区博物館にあるMiG-17F。3020号機とされるがS/Nは完全に消えていたため確認はできなかった。(2018年9月28日撮影)

 

写真3 ハイフォン博物館のMiG-17。1203号機とされるが、S/Nは完全に消えており確認はできなかった。(2018年9月29日撮影)

 

【展示後廃棄もしくは行方不明となったMiG-17】

(1) J-5(中国製MiG-17F)(2011, 16.0496N / 108.2072E) 以前からダナン基地ゲートガードだったが3機目のMiG-21(複座型か?)が2020年5月25日から2021年3月12日の間に設置された際に撤去された。国内3機目の2011号機だったが、元の機番は1043号機だったという。現在、本機が置かれていた場所にはJ-6が置かれている(後述)。

(2) MiG-17F (S/N?) フエの歴史博物館に2000年頃まで展示されていたが撤去された。撤去後の2012年6~8月ごろにMiG-21とA-1が展示されたが、これらの機体も現在は市内の別な場所に移設されている。

(3) MiG-17F (2047) 上述した2047号機とは台座の異なる国内3機目の2047号機がどこかの基地(駐屯地)に置かれている可能性がある。ただし改装前のハノイ防空空軍博物館展示機もしくは改装前のハノイのノイバイ空港北方にある第371師団第921戦闘飛行連隊展示機である可能性も捨てきれない。

写真4 クチトンネル(Ben Duocトンネル)のMiG-17F。(2014年11月2日撮影)

 

【MiG-19/J-6】

現在はハノイとダナンに各1機、合計2機が残されている。

(1)  J-6C (6058, 20.9997N / 105.8295E) ハノイの防空・空軍博物館にある中国製のMiG-19S。右主脚カバーに”歼6-6436”という番号が残る。

(2) J-6 (6058, 16.0496N / 108.2072E) ダナン基地ゲートガード群のうちの1機。中国製のMiG-19Sでc/n.6433とされる。2020年頃に複座型MiG-21の展示機が1機増えたことにより、これまでより1機分横にズレた位置に展示されている(そして以前はここにあったMiG-17が撤去された)。

写真5 ハノイの防空空軍博物館にあるJ-6C。隣接するショッピングセンター”アルテミス”の5階から撮影したもの(2018年9月30日撮影)

 

以上