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【ベトナム】ベトナムにあるMiG-21の識別法

<編集履歴> 30Jan.2023公開、24Feb.2023見直し更新(第3回目、見直し更新)

 

 ベトナム国内に展示されているMiG-21は単座型のMiG-21F-13、MiG-21PF (=PFL=PF-V)、MiG-21PFM、MiG-21MF、MiG-21bis、および複座型のMiG-21USおよびMiG-21UMの合計7種類だ。「運用されていた機種」というとあと1~3機種くらい増えるかもしれない(詳細は後述)。これらの見分け方を紹介しておこう。

 モデラー(模型を作る人)に言わせると「どこもかしこも、みんな違うじゃん!」という一言で片づけられてしまうのだが・・・。ネット上にある不鮮明な写真でも識別できる参照点(私が参照している場所)を以下にまとめる。”紹介しておこう”とか”まとめる”などと格好つけて書いてはいるが、要は自分の備忘録的メモのまとめだ。識別点をより詳しく書いたサイトなど、ご存じでしたら紹介いただければ幸いです。

 なお繰り返しになりますが、本記事ではベトナム空軍・防空空軍で使用され、かつ展示機となっている型式のみについて記載することにします。

 

【MiG-21の型式全般について】

(1) 基本情報とするMiG-21の型式全般についてはこちらを参照しています。

List of Mikoyan-Gurevich MiG-21 variants - Wikipedia

(2) 英文を読んだうえで日本語Wikipediaも参考にしています。

MiG-21 (航空機) - Wikipedia

(3) 手持ちの参考資料はホビージャパン社発行の「MiG-21プロファイル写真集」のPart1とPart2です。ベストセラーのMiG-21ですが、成書の資料はこれしか持ってません。

 

ベトナム防空空軍で使用していた型式】

(1) 日本語版Wikipedia(2023年1月30日閲覧)より、単座型MiG-21はMiG-21F-13、MiG-21PF-V、MiG-21M、MiG-21MF、MiG-21bisが使用されていたとのことです。あれれ?海外サイトに記載されているPF/PFL/PFM/F98などの型式の記載がないぞ?(詳細は後述)

(2) 参考本やHPなどにより幾分の差があるが、ベトナム防空空軍におけるMiG-21の各型式の受領機数は次の通り。なおベトナム戦争中に何機がソ連から供与されたのかは「正確には分からない」というのが定説だ。

<各型解説>

・MiG-21F-13 (S/N: 4400~4599) 1965年に20~30機を受領

・MiG-21PF (S/N: 4100~4399) 1966年に30機を受領(S/Nの範囲が200機分あるのに対して「30機を受領」という一文だけしか見つけていない)。このPF型はベトナム向けの特別仕様機でレーダー(ロケーターLocator)が異なるので「PFL」あるいは「PF-V(VはVetNamのV)」と呼ばれ、また記載されることがある。海外のサイトでは記載者により「PF」「PFL」「PF-V」という型式記載が混在しているが、本Blogでは「PF」で統一する。この判断が間違っていたら教えてくださいネ。

・MiG-21PFM (S/N: 5000~5099、6101~6200) 1968年から100~110機を受領

・MiG-21MF (S/N: 5100~5199) 1970年頃から60機を受領

・MiG-21bis (S/N: 5200~) 1979年頃から受領。受領機数不明。さらに2005年に中古機18機をポーランドから受領(18機中に数機の複座型を含むとされている)

・MiG-21M 日本語版wikipediaには「ベトナム空軍で使用された」と記載されている型式だが、「購入の計画」はあったものの実際には購入・使用されていない。

※「PFM」「F98」については調査後に記載する予定です。

※複座型MiG-21については項を改めて後述します。 

写真1 MiG-21PF(奥の4326号機)とMiG-21MF(手前の5121)。全て異なると言ってしまえばそれまでだが、まずはキャノピーの枠、ドーサル部の分割ラインやアクセスパネルの形状、垂直尾翼先端付近とドーサル部の結合部あたりに注目しよう。(2018年9月30日、ハノイ防空空軍博物館)

 

【単座型MiG-21識別法】

(文書で書くと分かりにくいので各自で分類・識別チャートを作ってみてください)

<パッと見た目の分類:キャノピー後方から垂直尾翼にかけてのドーサル部>

(1) まずはパッ見た感じで初期型と後期型に分類・識別する。

(2) ドーサル部が小さく、かつ主脚収納部の膨らみの上あたりで「くびれていてスリムな感じ」のする機体は比較的初期型のMiG-21(F-13/PF/PFM)だ。

(3) ドーサル部の上縁ラインがキャノピー後縁から垂直尾翼まで真っ直ぐ伸びていて「ずんぐり、どっしりとした感じ」のする機体は後期型のMiG-21(MF/bis)だ。

 

<ウインドシールドとキャノピーの形状>

(1) 風防とキャノピーが一体型、かつキャノピー後方にも”窓”があり、直後にアンテナが立っていればF-13型だ。ただしF-13型は国内に1機しか残っていないので以下は説明を省略する。

(2) 風防とキャノピが一体型(前方ヒンジ):MiG-21PFかMiG-21PFM初期型だが、ベトナムにPFM初期型は輸出されていないようなので、この時点で「PF型」確定。なおPF型はハノイの軍事歴史博物館と防空空軍博物館の2か所に各1機ずつしか展示されていない。

(3) 風防とキャノピーが分離(右側ヒンジ):MiG-21PFM後期型かそれ以降の型式(MF/bis)だ。背中(ドーサル部)がくびれていて、風防とキャノピーが分離していれば「PFM型」確定。

写真2 ベトナム国内にあるワンピース型キャノピーを持つMiG-21はF-13型が1機とPF型が2機しか残されていないので展示場所とS/Nを覚えた方が早い。(2012年1月8日、ハノイ軍事歴史博物館。青色の日よけが設けられる前の撮影)

 

<MFとbisの識別>

”ずんぐりとした感じ”のMiG-21の識別点は次の通り。

(1) 左側面キャノピー直後に小さなアンテナの膨らみがあればbis。なければMF。
(2) 左側面のドーサルスパインのアクセスハッチの位置が主脚収納部の膨らみの前方にあればMF、膨らみの後方であればbis。
(3) ドーサルスパインから垂直尾翼先端基部の構成が二つのパーツであればbis、3つのパーツならMF。ただしボロボロに錆びた機体や不鮮明な写真だとパネルラインが見えず、識別は困難。

(4) 垂直尾翼付根先端部付近のドーサル部にある点検用の小さな丸い穴の位置を見る。垂直尾翼付根先端部からやや離れて上の方にあればbis。垂直尾翼付根先端部のほぼ下にあるならMF。この識別法はかなり有効ではないかと思っている。

(5) 機体右側だけの写真でMF/bisを識別する方法を(私自身は)まだ確立しておらず、上記(3)で述べたパネルラインに注目するしかない。

写真3-1, 3-2, 3-3 上からPFM型、MF型、bis型のドーサル部。いずれも左側が機首側だ。PFM型は主脚収納部付近で絞られているのが特徴。bis型にはキャノピー直後に小さな膨らみがある。MF型とbis型はパネルラインが異なると言ってしまえばそれまでだが、主脚収納部の膨らみ上部のドーサル部にあるアクセスパネルの位置、垂直尾翼先端部分との結合部付近にある小さな点検用の穴の位置が異なっていることが識別点だ。(上:2014年11月2日Cuchiトンネル、中:2018年9月27日DaNang、下:2018年9月28日BacNinhにて)

【複座型のMiG-21】

 日本語版wikipediaによるとベトナム空軍・防空軍ではMiG-21U、MiG-21US、MiG-21UMの3型式を使用してきたが、ベトナム国内に展示機として残されているのはMiG-21USが1機(Nha Trangの8107号機)、MiG-21UMが2機(フンイエン省博物館の8229号機とフーカット基地の5940号機)、そして型式不明のダナン基地8232号機の合計4機だ。USとUMの外見上の違いはドーサルスパイン上後部にR-832のアンテナが立っていればUM、無ければUSだ。

 蛇足ながらこの識別法を確認した2023年2月22日に再度画像で確認しようとネット上で画像を探しまくったのだが、2枚ほど「どこかにあった」ハズのNha Trangの8107号機の写真がどうしても見つからない。読者の方で見つけられましたら、そのURLをお教えいただければ幸いです。

 

 旧ソ連や東欧では現地改造やアップグレード途中の生産機など、上記の識別点が当てはまらないケースもあるのではないかと思っていますが、ベトナム国内の展示機に限って言えば、こんな感じで識別できるかと思います。「ココを見れば一発で分かる!」という識別法がありましたら、ご一報いただければ幸いです。

以上