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【ベトナム】MiG-17のチェックポイント

<編集履歴> 17Feb.2023公開、18Feb.2023見直し更新(第1回目、見直し更新)

 

 ベトナム国内に展示されているMiG-17シリーズのチェックポイントを記しておこう。例によってモデラー(模型を作る人)には笑われるような内容だが、現地に行ったら自身の目で確かめておきたい。

 

 さてベトナム国内にはMiG-17("-17"の後ろに何もつかないただの"MiG-17"という型式で初期型と量産型(通常型)の二型式に分類する)、MiG-17F(ドラッグシュートの有無で二型式)、中国製MiG-17F(J-5)の5種類のMiG-17が展示されている。これ以外にもMiG-17AやMiG-17PFなどが供与されたという話もあるが、本当に供与されたのかを私自身が確認していないことと、これらの型式が現存していないので説明を省略する。もちろん今後の調査で確認できれば本記事を更新するつもりでいるが、早くても半年くらいはかかることだろう。

 

【MiG-17(初期型)】

 "-17”の後ろに何もつかない「ただのMiG-17」だ。本BlogでもそうだがMiG-17シリーズの一般呼称として「MiG-17」を使う場合と、いくつかの型式があるMiG-17シリーズ中の「初期型である”MiG-17”という型式」を混在して記述している文書が多数ある。どちらの意味で使われているのかは文章をよく読んで文脈を理解しよう。”MiG-17(初期型)”の特徴は胴体後部のエアブレーキが細長いこと(ただしMiG-17(通常型)の2/3程度の長さしかない)、そのエアブレーキを動かすアクチュエーター収納部の膨らみが”無い”こと、エンジンはアフターバーナーのついていないVK-1あるいはVK-1A装備機で、エンジンノズルは機体後部からはほとんど見えないということになるが、展示機ではエンジンを抜かれている場合もあるので識別点とはなりにくいのが実情だ。現在確認できるのはナチャンNha Trangの空軍士官大学Trung Si quan Khong quan敷地内の展示機場にある2614号機のみだ。

 

【MiG-17(通常型(あるいは量産型))】

 繰り返すが”-17”の後ろに何もつかない「ただのMiG-17」だ。MiG-17(初期型)との識別点(特徴)は胴体後部のエアブレーキが細長く、かつエアブレーキを動かすためのアクチュエーターを納めるための膨らみが”ある”。エンジンは上述した”MiG-17(初期型)”と同様、アフターバーナーのついていないVK-1あるいはVK-1A装備機で、エンジンノズルは機体後部からはほとんど見えない。なお”MiG-17A”や”MiG-17Fの初期生産型”もこの特徴に当てはまるのだが、ベトナムに供与されたかどうかを確認していないことと相違点(識別点)が現時点では不明なため、この特徴のある機体を全てを”MiG-17(通常型)"としておく。2023年2月17日時点ではハノイの軍事歴史博物館にある”2047”号機とハイフォン市博物館のS/N不明機の2機が”MiG-17(通常型)”だ。

写真1-1, 1-2 ハノイの軍事歴史博物館にある"2047"号機。スピードブレーキの形状は細長い長方形に近い。アクチュエーターのフェアリングもある。(2018年9月30日撮影)

 

写真2-1, 2-2 ハイフォン市博物館のMiG-17(S/N不明)。本機のエアブレーキ形状も細長い長方形に近い。(2018年9月29日撮影)

 

【MiG-17F(ドラッグシュート無)】

 MiG-17(後ろに何もつかないMiG-17シリーズ中の"MiG-17")のエンジンを改良してアフターバーナーを付けたVK-1Fとした型式。エンジンが付いていればエンジンノズルが胴体後部から顔を出しているハズだ。胴体後部のエアブレーキは大型化されて台形に近くなり、これを動かすためのアクチュエーター収納部の膨らみが機軸線よりやや上にあるのも特徴だ(”MiG-17”のエアブレーキアクチュエーター収納部の膨らみは機軸線よりやや下側にある)。現在、ベトナム国内に展示されている機体の中で最も数が多いのがこのタイプだ。

写真3-1, 3-2 ハノイの防空・空軍博物館のMiG-17F"2011"号機。エアブレーキは台形に近い形状。アクチュエーター収納部の膨らみが機軸線よりやや上にあるのも特徴だ。(2012年1月8日撮影)

 

【MiG-17F(ドラッグシュート有)】

 上記のMiG-17のラダー下部、エクゾーストパイプ上部にドラッグシュート収納部を設けたもの。2023年2月17日時点ではハノイの防空・空軍博物館に2機展示されている機体のうちの1機である2047号機しか確認していない。

※参考:以下のサイトではドラッグシュート収納部がよく分かる写真が掲載されている:

MiG-17F | S川エアロドローム RCフライトデブリーフィング

写真4-1, 4-2 上はドラッグシュート収納部のある2047号機、下はドラッグシュートを装備していない2011号機。いずれもハノイの防空・空軍博物館の展示機だ。(2012年1月8日撮影)

 

【J-5(中国製のMiG-17F)】

 基本的には(2)のドラッグシュートの無いMiG-17Fと同じ機体。外形的な差異はなく、機体各所の注意書きがキリル文字ではなく中国語で書かれていることが唯一の識別点だとされている。ベトナム国内に現存する機体では機体表面の注意書きは既に消失していることが多いため、脚扉内に頭を突っ込んで注意書きを確認するしか識別方法は無いだろう(キャノピーを通してコクピット内を見ることのできる機体は無さそうだ)。2023年2月17日時点ではハノイの南東約70km、ナムディン省省都ナムディンの省立博物館Bao tang thnh Nam Dinhにある2331号機がJ-5だと言われているが、その証拠となる画像・映像はまだ見たことがない。

 北京の中国空軍博物館展示機ほかの写真を確認したところ、J-5の中にはエアブレーキ形状がMiG-17(通常型)と同じような長方形をした機体が存在していた。初期に生産されたJ-5だろうか。中国製J-5の世界もまた奥が深いんだよな・・・。

以上