用廃機ハンターが行く!

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先進技術実証機 X-2

<編集履歴> 18Jun.2020公開、21Jan.2023見直し更新(第5回目、飯岡支所にて確認)

 

大切な機体のことを忘れていた。防衛装備庁が製作した先進技術実証機(ATD : Advanced Technology Demonstrator) X-2だ。

本機は2016年4月22日に小牧空港で初飛行し、そのまま岐阜基地に着陸。三菱重工による社内飛行1回を行った後、6月13日に納入された。そして一年半後の2017年10月31日には32回目の試験飛行をもって引退した超短命な実証試験機だ。ステルス性能と高機動性の確認を主体として関連する各種の技術について実証・確認を行ったとされるが、その詳細は・・・ウィキでも見てください(^^;)。

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写真1 岐阜基地祭で一般初公開された時のX-2。この時点ではまだ現役機。(2016年10月30日撮影)

 

岐阜基地航空祭における公開の様子> 

 試験実施中の2016年度の岐阜基地航空祭では標準ピトー管を装着した形態で初公開されている。2017年の引退直後には「機密保持のために直ぐに壊される」「メーカーとの契約に取り壊すことが書かれている」「すでに取り壊された」などというウワサ話が入間基地周辺でのマニア同士の会話の中で聞くことができたが、同年11月17日の航空祭では標準ピトー管を外した状態で展示された。かれこれ40年近くヒコーキ写真を撮り続けている私にとって、基地周辺のウワサ話とは、まぁこんなモンだろうと思っている。機体は2019年11月10日の航空祭まで引続き展示されたが、2020年8月18日夜(19日午前0時ごろ)に基地からいずこかへと搬出されてしまった。以下に航空祭での展示状況をまとめてみた。 

(1) 2016年10月30日 格納庫内にて機体後部が見えないようにして右側面のみを公開。試験中の現用機ということもあって一般公開の中では唯一、標準ピトー管をつけたままの形態であった。

(2) 2017年11月17日 前年よりも機体右側面が見やすい位置にして公開。エンジン排気口のパドル形状がなんとか判る程度には撮影することができた。なお本年以降の公開では標準ピトー管は外されている。とあるYoutube動画に収録された解説(会話)より、このころに「解体される」とのウワサ話が広がっていたことがうかがえる。なお私自身は訪問していない。 

(3) 2018年11月20日 格納庫内にて滑走路側に機首を向け、かつ側面には回り込むことができない状態で一般公開された。このため前方象限からしか見られなかったが、一般公開では初めて正面形が明らかになった。私自身は訪問していない。

(4) 2019年11月10日 機体を初めて屋外に展示し、全周から見ることができるようにして展示された。これにより排気口周辺のパドルの形状が一般に初公開され、外形の詳細が明らかになった。そして、これが岐阜基地における本機の公開の最後となった。

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写真2 初めて機体全周を公開した際のX-2。(2019年11月10日撮影)

 

<機体搬出>

Jウイング誌2020年11月号p.78の記事によると、本機は2020年8月19日午前0時ごろに岐阜基地からいずこかへと搬出されていったとのこと。

2020年8月21日にTwitterに投稿された画像とコメントによるとX-2の胴体を搬送中の車両が浜松を通過しているそうです。なお浜松基地に機体が搬入されたワケではありません。本機は電波環境関連の試験に供するとのウワサも聞かれます。電波環境の試験を行うことのできる施設があるところはど~こだ?

あくまで私の個人的な推測ですが、現在防衛装備庁電子装備研究所飯岡支所(千葉県)では電波反射特性評価技術に関する研究の一環として大型目標のRCS計測場を整備中です。2016年に完成するハズの施設は(注:私自身は完成したということを確認していない)「戦闘機クラスの実大模型を支柱上に設置して実際に電波反射の測定を屋外で実施する施設で、500メートル×200メートルの平坦面を確保、440メートルの距離からKuバンドの電波を発射してその反射を実測する予定。計測対象と計測装置を置くコンクリート基盤、電波経路の舗装、付属施設として、模型の組立て、実験準備を行う30メートル四方の組立場も整備する。」(週刊ウイング/ウイングデイリーさん2015年12月6日記事より引用)とのこと。

 この計測場の評価のためにはステルス性能を持った被試験体が必要なハズですので、これにX-2を用いるのではないでしょうか?

【追記】

2023年1月21日にTwitterに投稿された画像にて、やはり飯岡支所の敷地内に設置されていたことが判明しました。またフランスに持って行って事前評価に使われたX-2実物大模型も試験に使われていたようです。2022年度内にデータを取り終えたら、またしばらくはどこかに格納されるコトでしょう。(2023年1月21日追記、1月29日加筆)

 

以上