<編集履歴> 16Jun.2020公開、14Jul.2020見直し更新(第2回、令和2年度防衛白書資料編表5の数値を追加)
毎年7月ごろに発行される防衛白書。
この資料編には主要航空機の保有数・性能諸元が掲載されているのはご存じだろうか?原則として発行年の3月31日現在の「国有財産台帳」記載の数値が記載されているのだけれど、ファントムに関してはこの数値がおかしいのだ。
写真1 小牧基地祭に展示後、帰投準備をする岐阜基地所属のF-4EJ。だが機体トラブルのため、この日に帰ることはできなかった・・・。(2016年3月13日撮影)
<防衛白書記載状況の確認>
まずは記載状況を確認してみよう。
発行年度(西暦)/資料番号/機数/うち改の機数/ノーマルEJの機数/実際のノーマルEJの機数/差分としておく。表の欄外に通常は「F-4EJにはF-4EJ改〇機含む」と記載されているので機数からこれを減じてノーマルEJの機数とした。なおノーマルEJは岐阜基地にのみ配備されており、原則としてTPC(テストパイロットコース)で使用されている。
<防衛白書記載状況>
平成26(2014) / 資料14 / 60機 / 56機 / 4機 / 7機 / 3機
平成27(2015) / 資料35 / 55機 / 48機 / 7機 / 7機 / 0機
平成28(2016) / 資料9 / 54機 / 48機 / 6機 / 7機 / 1機
平成29(2017) / 資料9 / 52機 / 48機 / 4機 / 7機 / 3機、注1
平成30(2018) / 資料9 / 52機 / 48機 / 4機 / 6機 / 2機、注1
令和元(2019) / 資料9 / 34機 / 改の機数別記なく、判断不能
令和2(2020)/ 資料5 / 26機 / 改の機数別記なく、判断不能
注1:平成29年および平成30年版には表の右上に「当該年3.31現在」と書かれているにも関わらず、欄外に「保有数は、2016.3.31現在の国有財産台帳数値である」と記載されている。意味不明だね。当該年なのか2016年なのかよく判らん書き方をしている。
<ノーマルF-4EJの在籍状況>
改修されなかったF-4EJの2012年以降の実際の在籍状況は次の通りだ。
1) 17-8301
2) 37-8318 2020年3月5日用廃(?)
3) 47-8327 2019年11月6日用廃
4) 47-8336
5) 77-8393 2020年6月2日用廃(?)
6) 87-8409 2018年3月26日用廃
7) 07-8429
写真2 こちらも小牧祭に展示されたF-4EJ。(2018年3月3日撮影)
<まとめ>
1. 裏方で何があったのか分からないが、まず平成26年の防衛白書にてファントムの機数を間違えている。改の機数が56機ならば総数は63機となるし、総数が60機ならば改の数は53機となる。
2. 翌年、すなわち平成27年版では正しく見直されたようで、ノーマルEJ機の数は7機に戻った。
3. 平成28年以降はもう資料価値がないくらいにおかしなことになっている。注記の「保有数は、2016.3.31現在の国有財産台帳数値である」とは、一体どの機体の保有数のことを指しているのだろうか?(ファントムだけを見た場合、改の保有機数のことを指しているようにも見えるが明確ではない)
<考察・邪推>
航空自衛隊が管理している(ハズ)の財産台帳の管理方法が杜撰であったため、ファントムの保有機数が判らなくなっていたのではないだろうか?具体的には平成26年にはノーマルファントムの管理台帳が4機分と3機分に分かれていて、3機分の記載を見落としたのではないだろうか?平成27年には見直して4+3機の合計7機を記載したが、翌年にはまた3機分を見落としていたのではないだろうか?
のちのちの検証資料となる白書に取り上げる数値は十分に確認していただきたいと思う。また後年に間違いが見つかった場合には、その旨を発見時の防衛白書にでも記載してくれればよいのにと思う。
ファントム以外には興味がないので詳細を調べてはいないが、この分だとこれ以外にも数値のミスは数多くありそうに思える。興味ある方は各自で調べてみてください。
「そもそも白書とは、こんなもんだ」と思って使うのが正しい使い方なのかもしれない。
【余談】
Flyteamさんでは防衛白書の数値を元に毎年自衛隊保有機の一覧表を公表しています。しかし平成30年まではF-4ファントムについては「F-4EJ改〇機を含む」の部分をダブルカウントしているので、空自固定機数、空自保有機数、自衛隊保有機数がそれぞれ数十機分多くなってます。令和元年分はF-4EJとE-4EJ改をまとめて記載しているので修正されていますけれどね。メンバー内でチェックできないなら、部外者が書き込めるコメント欄を設けて、誤記・誤認識に対する批判を受け入れるようにすればイイのに、と思いますよ。生データ量だけは国内随一を誇るサイトなだけに、情報が勿体ないと感じますね。
以上