用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【特集】Only You !(国内唯一の展示機)

<編集履歴> 03Jun.2021公開、20Dec.2022見直し更新(第9回目、RF-4Eの写真差し替え)

 

「国内に一機しかない機体」を見に行こう!

 本記事では原則としては一機種一機しか現存していないものを取り上げるが、気が向いたらサブタイプごと(A型とかB型など)も加えたり、特別仕様機もカウントする。また複数機が存在していても、一般公開されている機体は一機だけという場合も取り上げておこう。「あの装備品を取り付けた機体はアソコにあるヤツだけ」とか「コッチの機体はココが他と違う唯一の機体」などという話を取り上げていくとキリがないが、まぁ固いことは言わずに緩い括りで「唯一の機体」ということにしておく。読者の皆さんご自身の基準で再構成したり、「あの機体がリストから抜けてるのは許せないっ!」などと話のネタにしていただければ幸いです。なお「国内唯一の機体」の対象は私の趣味の範囲から自衛隊機とします。在日米軍の展示機と大戦機はほぼ全てが「一機種一機のみ」なので、原則としてここでは扱いません。あしからず。

 さて経験上の話となりますが、「唯一」となっている機体は早めに訪問しておくと良いでしょう。「いつまでも あると思うな 用廃機(詠み人知らず)」

 

航空自衛隊

 航空自衛隊で用廃後に展示機となった機種のほとんどは複数機が存在しており、本記事で取り上げるものはごく少数でしかない。純粋に「唯一の機体」をリストアップとすると、浜松のT-28Bとバンパイア、そして美保基地のC-1の3機だけとなってしまう。そこで「特別仕様機」と「一般公開されている機体は一機だけ」という機体なども合わせて紹介しておこう。

1. C-1 (38-1003) 美保基地

 2021年6月9日時点では国内唯一の展示機だ。米子や境港の観光協会関係者は「唯一」のタイトルを使い、「観光名所」としてイロイロと盛り上げて欲しいと思う。マニア目線で見るとまだ現用機が10機程度存在するため、正直言ってさほど希少性は感じられない。C-1が全機退役した後(2030年ごろ・・・)に再評価してみたいと思う。

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写真1 美保基地のC-1は国内唯一の展示機だ。(2021年4月1日撮影)

 

2. F-15J (52-8846) 大慶園

 スクラップとなった機体の操縦席部分のみを展示している。「本Blogで紹介するのに適切な展示物か?」と常に悩む存在だ。他に垂直尾翼を用いたモニュメントが築城基地那覇基地の2か所に存在するので「唯一の胴体部分(本体部分)の展示機」としておこう。

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写真2 大慶園に置かれたF-15Jの機首部分。(2021年3月4日撮影)

 

3. RF-4E (47-6901) 百里基地

 機首にカメラを装備した偵察型ファントム。2022年1月に先代展示機906号機が解体され、その後に901号機が展示された。2022年3月末には再塗装によりオモチャのような色合いになってしまった。

写真3 国内唯一のRF-4E偵察機なのだが、塗装がねぇ・・・。(2022年5月29日撮影)

 

4. RF-4EJ (87-6412) 茨城空港

 戦闘機型から改修された全15機の偵察ファントムのうち、7機存在した限定改修型(初期改修型)。機首にカメラを装備したRF-4Eとは異なり、戦闘機を改造したRF-4EJは胴体下に偵察機器を収めた3種類の偵察ポッドを装着して運用していたが初期に改修された本機はこのうち1つのポッドしか搭載できない限定改修型だ。この機体のほかには機首部分のみが福島県のオールドカーセンタークダンにあり、また垂直尾翼を利用したモニュメントが百里基地内に存在するが、全機展示となっているのは本機だけで試作機1機(87-6406)を含む8機の量産改修型は全てスクラップとなり現存していない。本機の特徴となる偵察ポッドが無いのが少々残念。

写真4 2022年3月末に再塗装されたRF-4EJ。(2022年5月29日撮影)

 

5. バンパイア T.55 (63-5571) 浜松基地保管(非公開)

 購入したのは本機のみ。2021年3月のリニューアル時に格納保管されてしまい、現在では見ることができない。

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写真5 格納されてしまい現在は見られないバンパイアT.55。(2007年1月6日撮影)

 

6. T-28B (63-0581) 浜松基地保管(非公開)

 購入したのは本機のみ。2021年3月のリニューアル時に格納保管されてしまい、現在では見ることができない。

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 写真6 T-28B。(2018年8月13日撮影)

 

7. UF-104J (76-8698) 浜松広報館

 本機(698号機)は展示に際してUF-104J仕様に改修した機体で、この仕様でフライトしたことはない。操縦席近傍上下に増設された無線操縦用のアンテナに注目。貴重な機体でも次々に廃棄される中にあって、小さなアンテナの増設だけとはいえ展示用に従来機を改修してまで展示したことの意義は極めて大きいといえるが、あとが続かなかったのはつくづく残念に思う。

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写真7 UF-104J仕様機。(2019年4月20日撮影)

 

8. T-33A (61-5221) 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館

 TPC(Test Pilot Course)で使用されていた時を再現し、標準ピトー管を装備。見えないところではデータレコーダーを搭載したり、胴体前方に重りを搭載して安定性を変えられるようにしてある。T-33Aは201号機からが国産機だが、221号機は「全ての部品が国産となった」初号機でもある。岐阜基地で使用されたあとは入間基地で運用されていたが、展示に際して岐阜基地TPC仕様に戻された。

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写真8 T-33Aに標準ピトー管を装着した特殊仕様機。(2019年11月11日撮影)

 

9. T-2CCV (29-5103) 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館

 T-2の試作3号機に魔改造を施した特別仕様の実験機だ。ただし「T-2CCV実験機」は「単座機」で後席には計測機器を搭載していたが、試験終了後に計測機器を取り除き、複座に戻してTPCで数年間使われていた。博物館では引退当時の「複座機」の姿で展示されているので、もはや「実験機」ではなく「特別仕様機」というべきなのだろう。市販模型の一部にはベントラルフィンが付いているものがあるが、写真を見ての通り実機には付いていない。こだわる方は自分で手を加えて実機に近づけよう。

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写真9 T-2CCV。(2020年12月16日撮影)

 

10. T-2特別仕様機 (59-5107) 岐阜基地

 F-1のプロトタイプ2号機。プロトタイプ1号機(106号機)は既に解体されている。

写真10 T-2特別仕様機。後席内部は金属板で目張りされている。(2022年11月13日撮影)

 

11. H-19C (91-4707) 芦屋基地

 20年以上前から番号を”91-4777”と記入して展示されている。浜松広報館の91-4709号機が2021年3月に格納されたため、現在見ることが可能な唯一の展示機となった。

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写真11 現在、唯一見ることのできる芦屋基地のH-19C。(2018年2月18日撮影)

 

12. H-21B (02-4756) 浜松広報館

 国内に2機あるが展示されてるのは本機のみ。もう一機は岐阜基地内で格納保管されている。

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写真12 貴重な機体だが屋外展示のためキャノピーが劣化している。(2018年8月13日撮影)

 

13.サーブサフィール X1G (TX-7101) 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館

 三自衛隊ではなく防衛庁技術研究本部所属の機体だが、ここで紹介しておく。では飛鳥は?というと科学技術庁(当時)の機体であり、防衛関連とは明らかに管轄が異なる航空行政の開発機となるのでここでは紹介しない。

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写真13 空力的制御のデータを残したサーブサフィールX1G。(2018年8月19日撮影)

 

海上自衛隊

 サブタイプを含めるという条件で「唯一の機体」をまとめるとS-61シリーズとHSS-2シリーズ(つまりH-3系統ですね)がリストに加わることが判明した。紹介する機数を増やすためにリストに加えておく。鹿屋基地史料館を訪問すると「海自唯一の機体」のほぼ半数を一度に見ることができる。これはもう、行くしかないネ!(ただし現在は他県からの来場自粛要請がHP上に書かれている)

1. UF-XS (9911) 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館

永らく三保で屋外展示となっており、ボロボロだった機体を復元させた。

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写真14 綺麗に復元されたUF-XS。見るべき点は多い。(2019年11月11日撮影)

 

2. T-5 (6334) 小月基地 現用機だが、展示機となったものは本機のみ。一時期、用廃機が廃棄物処理業者の敷地に展示されていたが現存していない。

 

3. TC-90 (6810) 徳島航空基地、他に消火訓練機が存在するが展示機は本機のみ。

写真15 徳島航空基地の正門奥にあるTC-90。(2022年10月1日撮影)

 

4. S-61A (8181) 名古屋港の南極観測船ふじ

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写真16 撮影時間によってはブリッジの影が機体にかかる。(2017年10月8日撮影)

 

5. S-61A-1 (8185) 千葉県館山基地 S-61Aのパワーアップ型

写真17 色褪せてきたS-61A-1。(2022年7月18日撮影)

 

6. S-61AH (8941) 鹿屋航空基地史料館、前部胴体のみ、救難型

 

7. ベル47G-2A (8753) 鹿屋航空基地史料館

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写真18 (2008年5月17日撮影)

 

8. HSS-2A (8074) 鹿屋航空基地史料館。B型は数機残存するもA型は本機のみ。

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写真19(2020年10月8日撮影)

 

 9. OH-6J (8763) 鹿屋航空基地史料館

 陸上自衛隊では数多くのOH-6シリーズが使用されたが、海上自衛隊では訓練用途としてOH-6J/D/DAの3機種がそれぞれ少数機が鹿屋基地で使われていた。なお福島県Old Car Center Kudanにあるのは陸上自衛隊機に海上自衛隊塗装を施したものだ。

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写真20 海自のOH-6シリーズで現存するのは本機のみ。各地にあるように感じるのは陸自の展示機が多いから。(2020年10月8日撮影)

 

10. P2V-7 (4618) 鹿屋航空基地史料館

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写真21 P-2Jとどこが異なっているのか現地で見比べてみよう。(2009年5月16日撮影)

 

11. R4D-6 (9023) 鹿屋航空基地史料館

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写真22(2008年5月17日撮影)

 

12. P-3C (5020) 下総基地

第3術科学校にて教材として使用されている。

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写真23 第3術科学校P-3C教材機。ラダーは外されている。(2015年9月26日撮影)

 

陸上自衛隊

 「陸上自衛隊唯一の機体」の大部分は所沢航空発祥記念館に集められていることが判る。つべこべ言わずに行って見てくるべ。ついでにりっくんランドに立ち寄れば「陸自機唯一の機体」の62.5%を一日でゲットできる・・・。

1. AH-1S (73401) りっくんランド

 AH-1初号機が展示されている。別稿「初号機・最終号機」の記事中でも述べたが「戦闘」ヘリコプターは「広報展示機」としては使いづらいかなぁ?と思う。せめて運用部隊のあった基地で展示してくれればと期待するが、既にAH-1Sの運用を終えた目達原駐屯地には残されていない。

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写真24 陸上自衛隊の広報施設りっくんランドにあるAH-1S初号機。(2019年8月11日撮影)

 

2. L-5E (S/N?) 所沢航空発祥記念館 L-5GのS/Nである”535025”を記入。

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写真25(2018年8月22日撮影)

 

3. L-21 (12032) 所沢航空発祥記念館

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写真26(2018年8月22日撮影)

 

4. KAL-2 (20001) 所沢航空発祥記念館

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写真27 所沢航空発祥記念館のKAL-2。ここは「陸自唯一の機体」の宝庫だ。(2018年8月22日撮影)

 

5. H-19C (40001) 所沢航空発祥記念館

 全機展示されているのは本機のみ。河口湖自動車博物館のバックヤードにキャビン部が放置されている。

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写真28 開館当初から展示されているH-19C。(2018年8月22日撮影)

 

6. V-44A (50002) 所沢航空発祥記念館

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写真29 同系統の機体は航空自衛隊に2機存在するが、陸自ではこの機体のみ。(2018年8月22日撮影)

 

7. OH-6J (31058) 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館

 複合材ヒンジレス・ロータ・システム実験機。試験終了後は通常使用に戻され、用廃後は北海道日高弾薬支処に展示されていたものを新たな機体(茨城県霞ケ浦駐屯地の武器補給処から陸送)と交換することで入手した。

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写真30 ロータシステム実験機。上からロータ部を見られる配置が嬉しい。(2019年11月11日撮影)

 

8. KV-107II-4A (51736) 木更津駐屯地広報館(撮影禁止)

 1機のみ製造されたVIP輸送型。側面に四角形の窓が8個並んでいるのが特徴だ。

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写真31 用廃となり、木更津駐屯地祭で機内公開されたKV-107II-4A。(2006年2月12日撮影)

 

9. H-13KH (30217)  福島県 オールドカーセンター・クダン

機体番号を”30216”と記入して展示されている。民間だと静岡ヘリポート展示機が同形式だったかな?

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写真32 同形式の民間機展示機が存在していそうだが、陸自機は本機のみ。(2019年8月24日撮影)

 

在日米軍

 在日米軍機の展示機はほぼ全てが「国内唯一」の機体だ。ここで機種を列挙すると別記事と内容が被ることになるので、ここはどうか別記事の方を参照していただきたい。なお複数機が存在するのはF-4C(2機)、F-16A(2機)、A-4E(2機)の3機種だ。

在日米軍基地内の展示機 - 用廃機ハンターが行く!

 

【まとめ・余談】

 結局のところ、国内の主要な航空博物館である浜松広報館、岐阜かかみがはら航空宇宙博物館、所沢航空発祥記念館、鹿屋基地航空史料館の4か所を制覇、もとい訪問すれば大部分を見ることができるということですね。

 貴重なバンパイアとT-28Bを一般の目からあえて遠ざける方策を執った浜松広報館の展示方針はやはり賛同できないなぁ・・・。

 

【参考】

 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館展示機に関する背景・裏話は「航空機を後世に遺す 歴史に刻まれた国産機を展示する博物館づくり」(横山晋太郎、2018年、グランプリ出版)に詳しく記載されています。現在も入手可能な書籍ですので、お薦めです。

 以上