用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

陸上自衛隊 UH-1Jの用廃機

<編集履歴> 26Dec.2019公開、19Apr.2024見直し更新(第12回目、見直し)

 

 陸上自衛隊のUH-1Jは平成元年(1989)度予算で12機分の発注が計上されたのを皮切りに、平成19年(2007)度予算で16機分を計上するまで、合計130機が調達されており、すでに全機が納入済みだ(機体の配備は1993年から)。そして令和4年度防衛白書の資料8よりによると、令和3年度末(令和4年3月31日時点)での保有機数は115機なので、15機が用廃もしくは事故抹消となっている。

 2023年06月25日時点で展示機や訓練機としてS/Nが確認されているものは遠軽駐屯地、北宇都宮駐屯地霞ヶ浦駐屯地および今津駐屯地にある3機のみだ。2023年3月3日は7機のUH-1Jを解体処分するための公告が関東補給処調達会計部のHPに掲載されていたので4機(=全用廃機数15機-今回解体処分の7機-展示機/訓練機合計4機)が「どこかに眠っている」ハズだ。今後、各地で整備訓練機や古くなったUH-1B/Hとの置換、もしくは新たな展示機が生ずるものと予想している。

 一方で2022年12月20日ごろのフィリピンの新聞ではUH-1Jをフィリピンに供与するというニュースが掲載されていた。用廃機あるいは特定の数機かはフィリピンに供与されることになるものと思われる。ただし国内事情で開発されたUH-1Jを海外で運用するためにはそれなりのサポートが必要だと考えられる。サポート体制の構築まで含めて考えないと「供与」は難しいのではないかな~とシロウトである私は思っています。

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写真1 UH-1Jは令和4年度(2022年)防衛白書より15機の用廃機が生じている。(2010年5月30日高遊原分屯地にて撮影)

 

【展示機・訓練機】(廃棄予定機と思われる機体を含む)

(1) 41801 北海道 遠軽駐屯地(44.0562N/143.5479E) MR/TRは無く、2022年夏ごろから屋外に放置されていたとの投稿がX上にあるが、GE-Proの2021年9月28日取得画像にはグランド脇の木陰にそれらしい機影が見える。訓練機だがノーズパネルは浮き上がっており、廃棄前の仮置きという感じだ。本機は2020年3月には用廃になっていたとのウワサがあった。

(2) 41804 / XI 栃木県 北宇都宮駐屯地(36.5118N / 139.8747E)の学生訓練用機として2019年6月16日の公開日にはUH-1H(41695)のあった場所に2023年5月27日公開日に置かれていた機体。コロナ禍で公開行事の行われなかった4年間の間に更新設置された。キャビン部扉に描かれた"XI"は丘珠駐屯地の第11飛行隊を表している。

(3) 41806 / V 茨城県 霞ヶ浦駐屯地 格納庫内で教材機となっている(私信による)。

(4) 41820 / SK 滋賀県 今津駐屯地(35.3929N / 136.0199E)、GE-Proでは2021年4月15日取得画像より確認できる。Twitterに投稿された2022年12月4日の公開時の画像よりテイルローターとエンジンは付いていないため、広報用展示機ではなく訓練機だと思われる(ただし設置場所、ヘリコプタ運用をするため部隊の配備状況からフツーの訓練機とは性格が異なるような気がしている)。本機は2015年5月17日には霞ヶ浦駐屯地の格納庫内にあったことが確認されているが、”SK”の機体であるため、この時点で用廃であったのかまだ活躍中の機体であったのかは不明。

※2023年6月3日の霞ヶ浦駐屯地公開行事では41818/SKが屋外に展示された。本機は調達第二次ロットに相当する機体で、2019年秋には立川駐屯地所属機であったことが写真記録で残っている。2019年以降に霞ヶ浦に配属された機体であり、かつ耐用命数の残り時間の少ない機体であることから、既に用廃となり教材機となっている機体ではないかと考える。

写真2 北宇都宮駐屯地内で訓練に使われているUH1J (41804号機)。台座の高さはホバリング(ホバータクシー)時の高さとなっている。これは学生がホバリング時の視点(高度感覚)を慣らすためと聞いたコトがある。(2023年4月27日撮影)

 

【参考:UH-1J用廃機数の確認手順】

(1) UH-1Jの調達数を確認する。(SN 41801-41930の130機だ)

(2) 防衛白書の資料の部で保有機数(前年度末日時点での保有数)を確認する。

(3) Flyteamさんの写真投稿で近頃撮影されていない機体を探し出す。

(4) 事故抹消機を確認する。(2023年6月28日時点で2機)

(5) 次式にて用廃となった機数を推定する。(3月末日から防衛白書発行までに事故等による損耗が生じていない場合)

 用廃となったUH-1Jの機数 =UH-1J調達数-防衛白書記載の保有

(6) 上記(3)、(4)およびwikipedia記載のUH-1J調達数から用途廃止になった機体のSNを推定する。

 

【確認結果の例】
(1) UH-1Jの調達数は130機

(2) 令和4年度(2022)防衛白書の資料表8よりUH-1Jの保有数115機。このうち事故抹消は2機なので、13機(=130-115-2機)が用廃となった勘定だ。

(5) Flyteamさんに投稿された写真は撮影時期が古いものが多く、確認・検証として利用するには十分な情報を得られないと判断したため、確認結果の公表はしない。(気になる方はご自身でやってみてくださいね)

(6) 事故抹消機は以下の2機。

<事故抹消>

41871 2020年2月7日 旭川駐屯地にて吹雪の中で横転(2023年11月21日付で解体公告が出された。12月20日入札、引渡および解体期限は2024年3月29日まで) 

41889 2019年6月21日 立川駐屯地で落着、テイルブーム折損

 

【参考・考察】

(1)  41801-41812の12機は平成元年度(1989年)予算による調達一次ロット。納入後28~30年間程度の運用期間を考えると2023年度末には全機が用廃となるものと思われます。
(2) 平成2-3年(1990-1991年)の2年間は調達機はありません。

(3) 41813-41825の13機は平成4年度(1992年度)予算による調達二次ロットに相当します。今津駐屯地に展示された20号機、霞ヶ浦駐屯地の一般公開行事で展示された18号機のほか、13号機と17号機が用廃機となっている可能性があります。

(4) 令和元年度版より防衛白書の資料から「UH-1H」の表記が消えている(それまでは「UH-1H/J」と表記されていた)。 ちなみにUH-1Hは平成27年(2015年)に丘珠で展示されたのが最後の1機のようです。しかし防衛白書上では平成27-29(2015-2017年3月末日まで)は保有機数が「131機」となっており、UH-1Jの130機を上回っている。この間は書類上だけかもしれませんが1機が在籍していたことになる。

(5) 防衛白書に記載された保有機数の妥当性ですが、過去にF-4EJ/F-4EJ改の保有機数を間違えて記載しており、修正もなされていないという「前科」があります(別項「おかしいぞ!防衛白書のファントムの機数」参照)。このため「必ずしも正しいとは言えない数値」ですが、ほかに参照できる公的資料が存在しないので、「正しいものとして」話を進めます。

(6) Flyteamさんに投稿された写真撮影日の信憑性について。個人裁量の自由投稿でチェッカーが存在しないようですね。このため異なる機体番号の機体や、退役してから数年経過した日付に撮影された「現役機」の写真が掲載されることが時々あります。投稿数の多い写真は他の写真と見比べて間違いであることが推測できますが、投稿数の少ないものは検証することが困難ですね。私は投稿者のその他の投稿内容や写真の腕前、活動状況などから、その投稿内容の信憑性を感じ取っています。

以上