用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

航空自衛隊 三菱F-2A/Bの用廃機

<編集履歴> 02Sep.2019公開、27Jan.2024見直し更新(第5回目、写真追加)

 

【用廃状況の概要】

 航空自衛隊では単座のF-2Aを64機(うち2機は試作機)、複座のF-2Bを34機(うち2機は試作機)、合計98機(うち試作機4機)を導入して運用している。

 F-2Aは空中接触事故などが生じているものの現在も64機全機を運用している。一方、F-2Bは2機を事故で失ったほか、2011年の東日本大震災で生じた津波による被害により5機が抹消されており(注)、現在の保有機数は27機だ。よってF-2A/B合わせて91機を保有しているが、報道等で伝えられている通り、部品の供給不足により「共食い整備」していることが問題視されている。部品をとられた機体の姿が時折SNSなどへ投稿されているが、私たち一般レベルでの用廃機かどうかは国有財産台帳への登録状況で判断することになる。というコトで防衛白書の資料編に記載された保有数は毎年しっかり眺めておこう。「これは用廃に違いない!」と騒ぐ姿は客観的に見ると痛々しいぞ(自戒を込めて・・・)。

注: 東日本大震災発災時に松島基地に所属していた18機全機が津波による被害を受けたが、このうち13機を修理して復帰させた。

 

【用廃展示機】

(1) 東日本大震災の時に津波に流され、損傷して抹消された5機のうちの一機、23-8110号機のコクピット部分が残されて松島基地にて学生教育用に用いられている。これは基地祭時には記念撮影用としても活躍している。2019年公開時にはコクピット内は撮影禁止であったが、2023年公開時には自由に撮影することができるようになっていた(ただしHUD下のMFDには覆いがあった)。

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写真1-1, 1-2 津波被害により抹消された110号機の前席コクピット部分は教材として使われている。2019年公開時には「コクピット内撮影禁止」の札が掲げられていたが、2023年公開時には自由に撮影できた。(1-1: 2019年8月25日、1-2: 2023年8月27日、松島基地にて撮影)

 

モックアップの展示】

 機体開発時に作成された単座機の木造モックアップ(実物大模型)が浜松の広報館に展示されている。また機首部分のみが作られた複座型のモックアップが石川県立航空プラザに展示されている。

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写真2-1, 2-2 浜松広報館のモックアップ。展示当初から試作機塗装であったが、2021年春のリニューアル時に量産機塗装に変更された。 (2-1: 2018年8月13日、2-2: 2021年12月21日撮影)

 

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写真3 石川県立航空プラザにあるF-2Bのモックアップ。(2018年9月18日撮影)

 

【参考:抹消機】

(1) 43-8126 2007年10月31日 三菱重工における試験飛行時に操縦系の配線ミスにより離陸失敗、落着中破。パイロットが自力脱出する頃から炎上し、焼損。

(2) 73-8132 2019年02月20日 6飛行隊にて山口県沖で空戦訓練中、異常姿勢からの回復操作が適切で無く、安全高度を下回ったため操縦士2名脱出。機体は墜落・水没。

(3) 2011年3月11日の東日本大震災では松島基地所属のF-2B全機18機が津波による被害を受けた。その後に13機は修復したが次の5機は抹消された;107, 110, 114, 120, 131。上述の通り110号機の前席部分は学生教育用として使われてる。

 

【余談】

 F-2など複合材料を用いた機体の場合、その廃棄方法は2023年時点では「確立されていない」。「炭素繊維有機接着剤なのだから燃やせば二酸化炭素になるじゃん?」という気もするが、名古屋空港で半焼けになった126号機の垂直尾翼のように「焼けるとバラける」と燃え尽きる前の細かい繊維が飛散して肺に入り、石綿のように障害を起こす可能性がある。また震災時に海水に浸かった部品を焼くと炭素と海水中の塩素が反応してダイオキシンのような有害物質を生成する可能性がある。それぞれ個別の対策は可能なのだけど「総合的に対策を施された処理施設」は、まだ無いか、あっても実験実証施設の段階というのが現状のようだ。

 あと10年くらいで処分方法が確立されないとですね、「どこかの廃棄物置き場にF-2A/Bの主翼が山積みになっている」などという「用廃機ハンターにとってはウレシイ事態」が生ずるのではないでしょうか。オーストラリアのF-111Cのように「埋めてしまえ」というのは一つの解決策ではありますが・・・。

 

【余談の余談:展示場所予想!】

 F-2A/Bは2035年頃から用廃機が発生する予定だ。何事も起こらなければ、2045年頃には最後の実戦部隊が機種更新され、その翌年度末あたりには岐阜基地での運用を終えることだろう。20年後に自分が生きているか?あるいは、このBlogが存在しているか?なんてコトは考えるつもりもないが、今の話題として「展示場所予想」だけは記しておこう。

まずは所属基地:三沢、百里、岐阜、築城の3基地に各1機ずつ計4機。

浜松広報館に1機。場合によってはT-2のコクピットシミュレーターがF-2Bに更新されるかもしれない。

岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に501号機もしくは101号機。

合計で6機程度というのが良い所でしょうか。

 F-2A/Bのサイズは現在のF-86D/Fよりも大きいけれど、展示機としてはF-15より小さく、「ほどよいサイズ」でもある。今から20年後には流石にF-86D/FやT-33Aも撤去が進んでいると思うのだけれど、その置換として一機、いかがでしょうかね・・・?

 展示後の管理を考えるとT-4の方がより小さく、維持管理費用も少なくて済むので、展示するならコッチ(T-4)でイイや、という場所も多いだろうなぁ。(2024年1月27日記)

写真4 築城基地航空祭で見せたブレーク@GEOS氏監修&操縦(2023年11月26日)

以上