<編集履歴> 20Jun.2022公開、2Jul.2022見直し更新(第3回目、C-46収納を忘れていたことに気づく。その見直し実施)
【はじめに】
ファントムとYS-11FCが退役した2021年春ごろには「機体が欲しい!」「どこかに展示して!」という声がSNSで多く見られたが、それなら航空博物館を建てたらどうよ?というのが本企画の発端だ。
かつて「ウルトラマン研究序説」(1991年扶桑社、文庫版は1998年出版)という、ウルトラマンが実際に活動した時に生ずる社会現象を真面目(?)に考察する本があった。おそらくはその流れで柳田理科雄の「空想科学読本」シリーズ(初版は1996年)や最近の映画「大怪獣のあとしまつ」(2022年春)などが作られているのだと思うが、これらはなかなか面白い。このような流れは例えば前田建設の「アニメに出てくる施設を建設する際の見積書作成(ファンタジー営業部シリーズ」)など、実際の社会の仕事をおもしろおかしく紹介するという流れにもつながり、社会構造の理解に役立っていると思っている。
そこで本ブログでは同じように「仮想事象(ここでは航空博物館の建設と運営)を真面目に考えて、社会構造を理解してみよう」というのが、この一連の話の主旨である。まかり間違って現地の商工会議所やら観光協会などが「いいね!」と考えてホントになってしまったらいいな、という淡い希望は胸に抱くも、現実は厳しく、全くの門外漢である私自身は何の話を、どう考えて、どういう話に落ち着かせたものか全く分からない。いくつかの解決すべき問題点を列挙して「米子空港航空機展示場の設置」というカテゴリーにまとめてみたところで作業は中断。イロイロと「お勉強(自習)」することになった。
今回は展示館建設の費用について、この一年で分かってきたことをまとめてみようと思う。
・参考:一連の話のコトはじめはこちら;
【はじめに】米子空港に航空機展示場の設置はできないか? - 用廃機ハンターが行く!
【博物館建設費用はいくらかかる?】
ヒコーキを展示したい!博物館を建てよう!と口で言うのは簡単だが、建設費用はどのくらいを見積もれば良いものなのだろうか?
建設した後には維持管理費用も発生するが、「まずは建てるのにいくら必要よ?」という観点で考えてみた。この一年間の自分の思考はフラフラしていたが、まとめると次の2点になるだろうか。
(1) こんな博物館を造るゾという、いく分具体的なコンセプトをまとめる。
(2) そのコンセプトを実現するための費用を見積もり、現実化するための基礎とする。
【博物館のコンセプト】
すでに別記事で述べているが米子空港に注目したのは観光需要からみた立地条件が良いことと、観光資源となりうる機体が既に存在していることだ。あとは「お膳立てをしてやれば」上手くいくに違いないという腹がある。「絵空事」とはいえ、かなり具体的な話を作ることが出来そうなので、「ヤル気」も起きる。さらに滑走路を延長した際に分断された道路の跡地利用として何か良い案はないかなどという話が実際に議会であったりする。現実的な話に発展する可能性がいよいよ高くなる。これは「面白そうだ」。
もともとが「観光需要」から発想した話なので、純粋に「儲かる施設かどうか」という観点で考えることができる。「反対派勢力が強いから」なんて話は排除し、「地元が潤うか、仕事が増えるかどうか」だけが焦点だ。関係する地元自治体の議員にしても「武士は食わねど高楊枝」の態度でいるか、票田有権者の所得を増やすという「背に腹は代えられぬ」事情とどちらを優先するかという話になれば、ノってくる議員も多いだろうなんて思っている。「私の理想を追求するために、皆さんの儲け話は捨てましょう!」という議員は、他に有権者のメリットを伝えることができなければ次の選挙以降にはいなくなるのではないだろうか。
さて展示館にはすでに書いたように美保基地と美保駐屯地の機体を持ってくることを前提としている。「冬季の観光需要を満たすための施設なので」という大義名分を掲げてマニア的には長期間の維持保管を実現させるべく「全機屋内展示の展示館」を原則とする。今後の自衛隊機の用廃発生予定(別記事)を見ても、今後しばらくはT-4とヘリコプター程度しか目玉展示となりうる機体は発生しないので中型機2機分(小型機3機分)程度の余裕を見れておけば良かろう。
写真1 私が参考とするベルギー・ブリュッセルの王立軍事歴史博物館の航空機コレクションの様子。展示機の翼は交差し、立体的に配置され、見学者用通路の幅はファントムの内翼程度の幅(約3m)しか確保されていないし、機体の裏側に回り込むこともできないが、真摯なリサーチャーに対しては調査のための見学が可能というフォロー体制が確立されている。浜松広報館の展示方法とは真逆のコンセプトだ。(2019年6月19日撮影)
展示機の周囲1m程度の間隔は立入り禁止エリアとして、見学通路は機体間で最低3mを確保する。展示館の内側は縦・横ともに4mの非展示部分を設けて見学通路とすることを基本的な条件として、機体レイアウトを考えた結果、横71m、縦63m、床面積4,473m^2(平方メートル)、一坪3.31m^2として約1,351坪という「基本プラン」を作ってみた。Excelデータを「はてなブログ」に張り付ける術を知らないので、パソコン画面を接写したものを張り付けておく。機体をナナメに配置したり、非展示部分を減じたりと写真1に参考例として示したベルギーの王立軍事歴博物館並みの配置とすれば、さらに2~3機程度を展示することが可能な広さだが、この辺りは空間デザイナーの方がおられるともっと良い話が伺えると思う。
写真2 展示館の見積もりを出す際に必要な面積を求めるために作成した「基本プラン」。Excelで一マスを1m^2として作成しているので、航空機の形はかなり雑だが、判るかな?壁の内側4mは歩行帯とするので「非展示エリア」とし、その上には高さ5m程度のテラスを設ければ上からも眺めることができるので良いかないな。黄色い部分は見学者立ち入り可能な部分(C-1とYS-11の翼の下は通行可能)、航空機の周囲は約1mの余裕を見込む・・・などと「自分の航空博物館」を妄想して楽しんでいる。「現在の美保基地と米子駐屯地の展示機を全て収納し、かつ将来を見越して数機分のゆとりのある広さ」かつ「全機平面配置」という条件で読者の皆さんも「オレならこう配置する」というものを作ってみてはいかが?(図案は2022年6月19日版)
【基本プランの”倉庫”見積は】
冬季にも集客する博物館なのでそれなりの冷暖房・空調設備や照明施設が必要だが、あれこれ考えると訳が分からなくなる。そこでシンプルに「航空機を納める倉庫」を建設するものとして見積概算を行った。倉庫建設の考え方は建設設計事務所のHPなどに要点が書かれている。いくつか読んでみて、自分の知識で丁度良いまとめが書いてあったHPを一件紹介しておく。
倉庫の建築は坪単価いくらかかる?建築費用について知ろう|倉庫建築のお金のこと|戦略倉庫LABO
このHP内に記述があるが「建築物の単位面積当たりの金額」は「国土交通省**年建築着工統計調査」のデータから「倉庫」の「床面積」と「工事予定金額」から算出することができる。門外漢の私がここまでたどり着くのに数か月を要したが、まとめてしまば2行程度のハナシだ。
2021年度の全国統計を見ると木造も鉄筋コンクリート造りも全て合わせた「倉庫」の床面積は13,386,200m^2、工事予定金額は172,362,887万円なので、建築費用は平方メートルあたり約13万円(坪当たり約43万円)なので、「基本プラン」を実現させるには4,473m^2 × 13万円 = 5億8,149万円が必要となる。5.8億円としておこう。
観光施設とすべき建物が「倉庫」で良いのか(外装は綺麗にしよう!)とか、収益を上げるためのショップはどうするんだ(別棟を建てよう!)とか、そもそも維持管理費は?などと考えるべき事項はたくさんあるので、単純に(なんの根拠もないけれど)3倍の費用が掛かることにしておこうか。5.8億円×3倍 = 17.4億円だ。どうせざっくり計算なので、キリのよい20億円としておこう。これをベースに今後の話を進めようと思っている。
なお上記「基本プラン」では横幅が1m伸びると縦63m×1m×13万円= 819万円、その3倍として2,457万円Upすることになります。これもざっくり計算なので「1m延長2,500万円」としておきましょうかね。
→見学者通路の幅を3mにするか、2.5mにするかという話は結構大きな金額の話につながるのだな!
【お金の出所と返済計画】
これだけの金額を「ヨッシャ、ヨッシャ!」とポンと出してくれるような自治体や銀行・地元企業などは絶対に存在しないことは明らかなので、金策を考えなくてはいけないネ。
別稿で記した入場者収入より年間入場者49万人、入場料は大人500円、”大人”の割合を49万人のうちの70%と考えると入場料収入の予測は年間1億7,150万円だ。入場料収入だけで20億円の建設費用を返済しようとすると約12年かかることになる(利息無しの単純割り返し)。一般の住宅ローンが20~30年程度なので、まぁまぁの値だろうかね(意外に実現性のある数値かな)。グッズ販売などはそこそこ収益がありそうだが、全体から見ればスズメの涙だ。一般論として、こちらで収益が上がれば、その分他のエリア内で消費するお土産購入費が減ることになるので、地域全体としてはプラマイゼロ。「ココでしか買えない」グッズをそろえ、「周辺観光地で購入するお土産のほかにもう一品」を買わせる施策が必要になってくる。
米子市・境港市・出雲大社・足立美術館あたりを巻き込んだ「山陰観光エリア開発事業構想」というくらいにまとめあげて、エリア全体の観光収入を一旦プールして事業配分するという仕組みを提案しないと、ダメかもしれないね~、などと思うようになった。そもそも「この一帯の観光要素を増やすことにより、観光客が一度で回り切れないようにして、リピーター増加を図る。かつ冬季も見学可能な施設とすることで閑散期である冬季の観光施設の稼働を高める。」ということが目的の事業だ。それほど悪い提案ではなかろう?
まぁ、お金の話はやりだすとドロドロしたものが沢山出てきそうなので、今後は「自分の興味ある、面白そうな話」を突っ込むべく、もう少し勉強していきたいと思ってます。
本回のお話はこれにて!
【追記】
C-46を収納することを忘れていた!幅約33m × 全長約23m = 床面積759平方メートル分を単純に追加すると平方メートルあたり13万円なので986万円コストアップだな。ワケの分からない追加費用でその3倍かかるとして約3億円追加かぁ。Excelの図を修正して機体のレイアウトを見直すのも面倒なので、展示方針の中に次の一文を入れておくことにしよう。「本博物館には美保基地と美保駐屯地に存在する機体を収納・展示する。ただしC-46は美保基地のシンボル的存在なので現在の正門わきに残すものとし、本博物館には収納しない」。これでヨシ!(2022年7月2日記)
以上