<編集履歴> 31May.2025公開、
25Oct.2025見直し更新(第3回目、一つの記事を一般事項/機体/グランドショー解説、編隊飛行課目紹介、個別演技課目紹介の3つの記事に分割した。)
【はじめに】
航空自衛隊のブルーインパルスは2024年度以降は特に基地祭上空での演技数を減らし、各地でのフライバイを数多く実施するようになってきている。一般受けは良い(広報効果は抜群)し、基地での観客対応に要する人手は不要だし(昨今の人手不足対応)、自衛隊側からすれば入場者対応(仮設トイレの借り上げなど)の費用も不要なので予算削減にも繋がるしと、そこそこ”コスパ”が良くなっているのではないかと思っているが、ヒコーキマニアとしては大いに物足らない!
自衛隊がやらんのなら、お隣り韓国のアクロチーム、韓国空軍第53特殊飛行戦隊、第239特殊飛行大隊(제53특수비행전대、제239특수비행대대)”ブラックイーグルス”(以下、BEと略す)を見に行くべぇ。歴史や背景などは、いつもの通りにWikipediaに任せるとして、そのWikipediaに掲載されている2013年度のプログラムをベースとして、おおむね現行の課目について紹介を試みる。
記事の構成は当面は次の様にする。
(1) 一般事項、機体に関するトリビア、およびグランドショー(離陸前、着陸後の地上でのアクション)の見どころ紹介。(本記事です)
(2) 離陸からショー前半の編隊航過課目の紹介。
韓国空軍 ブラックイーグルス 編隊飛行課目紹介 - 用廃機ハンターが行く!
(3) ショー後半の個別課目紹介。
韓国空軍 ブラックイーグルス 個別課目紹介 - 用廃機ハンターが行く!
なお、ハングルでの紹介文を、乏しい語学知識を元に訳している部分もあるので、誤訳も多々あるかと思う。今後2~3年程度をかけて、補足・修正していくつもりだ。
・ブラックイーグルス公式サイトはこちら;
・ブラックイーグルス公式サイトの演技解説はこちら;

写真1 正面から見たBEのT-50B。(ADEX2025/ 2025年10月17日)
【BEの演技はどこで見られる?】
ブルーインパルスと較べるとBEの参加する韓国内イベント数はかなり多く、平均すると春から晩秋にかけては月に2~3回程度の公開飛行が行われている。詳細は毎年1月頃に公式HPや公式Xで前期分が公表され、5-6月ごろに後期分が公表される流れになっているが、直前に中止されるイベントも少なくないのが特徴だ。おおむね次の場所で公開されている;
(1) ADEXソウルエアショー:2年に一度、奇数年の10月末頃に開催される韓国国内最大のエアショー(国際トレードショー)。
(2) サチョンエアショー:2年に一度、偶数年の10月末頃に開催される”基地祭”レベルのエアショー
(3) スペースチャレンジ:毎年5月~11月の間に各基地で行われる広報行事。元は子供向けイベント(模型飛行機大会と称していた)だったが、昨今は日本の基地航空祭未満の規模のオープンデー(30年前のちびっ子ヤング大会とか、サマーフェスティバルなどに似たようなイベント)になりつつある。2023年頃からは外国人も入場できる旨が注意書きに明文化されるようになった。なお、1990年代に問い合わせた時には外国人入場不可だった。その後、2000年代にはカメラ/荷物を持たなければ入場できるようになったという話を聞いたコトがある(記事にならないから行かない、とも聞いた気がするので、聞いた相手は雑誌カメラマンでしたかね?)。
(4) 在韓米軍オーサン基地エアパワーデー
(5) 各基地での祝賀イベント(司令官の交代、軍学校の入校式、卒業式などを含む)
(6) 各地のイベント(伝統的なお祭りやフラワーフェスティバルのような季節的なもの)
上述したイベントのうち、(5)(6)は近隣の空軍基地からのリモートショーとなることが多く、また基地上空以外ではフライバイ/水平系の旋回通過が主体で、垂直系課目は行われない場合もあるようだ。
【離陸までの見どころ紹介】
ADEXソウルショー/サチョンエアショー/オーサン基地エアパワーデーでの演技を眺めた経験から、一般的な流れを紹介しよう。
(1) FOD拾い:エンジンスタートの約75分前ごろから整備員が一列に並び、機体前のエプロンのFOD拾いを行う。

写真2 まずは整備員総出でFOD拾い。(ADEX2025/ 2025年10月19日)
(2) 機体準備:演技開始の1時間ほど前から機体整備が始まる。雨天時などには朝からキャノピーやインテイク/排気口にカバーがかけられているが、この時点で外される。

写真3 カバー類を外し、一通りの準備が終わったところで記念撮影。記念撮影を行うタイミングはショーの前だったり、後だったりと、特に決まってはいない。(ADEX2025/ 2025年10月19日)
(3) エンジン始動の約20分前、パイロットがやってきて事前準備。後席要員はこの時に着座する。準備が終われば4番機の前あたりに8人のパイロットが集合する。

写真4 パイロットがやってきて事前準備。これはショーではないので、ラフなスタイルだ。(ADEX2025/ 2025年10月19日)
(4) 開始時のテーマソングが流れるとショーが始まる。8機並んだ機体の中央付近に8人が整列し、観客に向って敬礼!クルリと回れ右して、各搭乗機へと向かう。

写真5 演技開始前には機体前に整列集合して敬礼!この後、回れ右して、各機に向って歩いて行く。(サチョン/2019年10月25日)
(5) 各機にパイロットが乗り込み、一斉にエンジンスタート。目いっぱい各舵やスピードブレーキを動かす動翼点検時はシャッターチャンスだ。
(6) 点検が終わると一斉にスモークチェック。スモーク噴出時間は1秒程度しかないので狙う場合には注意を集中しよう。
ただし!
理由は不明だが、実施しない場合もある。実例として2025年10月18日(土)、午後の曇天時のショーでは実施しなかったが、翌19日(日)の午前のショーでは実施した。例えば8番機のスモークチェックを狙っていたら、チェックはせずに1番機がタキシーアウトを始めてしまい「肝心な出発シーンを見逃がした!」なんてコトもあるだろう。8機のエンジンが唸る中でも、機体発進時の僅かな音の変化には十分注意しておこう。


写真6-1, 6-2 発進前のスモークチェック。スモークを出している時間は極めて短い。個人的には噴出時よりも、その数秒後にスモークが漂って背景を全て隠した頃の方が絵になるように思う。(5-1: オーサン/2025年5月11日、5-2: サチョン/2019年10月25日)
(5) リーダー機から目の前を通過して、滑走路端へと移動する。機体左側のコクピット脇にS/Nやポジション、パイロット名と機付長名が書かれているのでチェックしておきたい。また5番機はインテイク脇に描かれたポジションナンバーが逆さまになっていることに注目する。

写真7 R/Wへと向かうBE。(サチョン/2024年10月27日)


写真8-1,8-2 目の前をタキシングするリーダ-機と5番機。同じようなカットで恐縮だが、機体左側の前席キャノピーフレームにSN、後席脇のフレームにはポジション/パイロットネームが記入されているので、忘れずにチェックしておこう。掲載写真では小さくて読めないが、リーダー機のSNは”T-50B-10-0052”、5番機のSNは"T-50B-10-0055"だ。5番機のナンバーは逆さまになっていることにも注目する。(8-1: サチョン/2019年10月25日、8-2: オーサン/2025年5月11日)
【離陸から着陸まで】
別記事を参照ください。
(1) 離陸からショー前半の編隊航過課目の紹介。
韓国空軍 ブラックイーグルス 編隊飛行課目紹介 - 用廃機ハンターが行く!
(2) ショー後半の個別課目紹介。
韓国空軍 ブラックイーグルス 個別課目紹介 - 用廃機ハンターが行く!
・ブラックイーグルス公式サイトでの演技解説はこちら;
【着陸後】
演技を終えた機体は2機2機2機2機の隊形で戻って来る。エプロンの停止場所に戻ってきた機体は一斉にエンジンカット。だが、直ぐにキャノピーは開かず、なにやらゴソゴソやっている。この時、太極旗もしくは当該イベント専用の旗をキャノピの内枠に括り付けているのだな。これが終わると、ようやくキャノピーオープン。降機後は列線中央までウォークバックして一列に並び、敬礼!
なお、後席要員は一連のパフォーマンスが終わるまでの間、後席でじっとしている。

写真10 演技を終えてエプロンへ戻って来るBE。(ADEX 2017 / 2017年10月21日)

写真11 キャノピー枠に国旗(もしくは当該イベント用の特別な旗)を括り付けてからオープンする。パイロットが降機すると10分もしないうちに整備作業が始まり、外されてしまうので、撮り忘れないように注意しよう。(サチョン/2019年10月25日)
【帰投】
ショー最終日に原州基地に戻ることもある。その際には予備機を含めた機数でサヨナラフライパスを行う場合があるので、離陸後10分程度は機体の行方を確認しておこう。
もちろん、当日帰投しない場合もあるし、航過せずに直帰してしまう時もある。その時の運次第だが、予備機を含めた機数でのレアな編隊飛行を見逃がさないようにしたい。
離陸は3機+3機+3機が標準で、最後の3機編隊はスモークを引く。

写真12 予備機を含めた9機がダイヤモンド編隊を組んで会場を後にする。(オーサン/2025年5月11日)
【トリビア:スモークパイプ】
BEは飛行中にスモークの色を白と赤、もしくは白と青に変えることができる。恐らく白色スモークオイルタンクと青または赤の染料入りスモークオイルタンクの二つを持っていて、スイッチで切替えるるのだろう。(染料だけのタンクを持っていて、排気口で”混合”しているのでは無いと考えている。)このために垂直尾翼の基部左右から2本のスモークパイプを排気口まで導いている。

写真13 垂直尾翼後部の基部左右からスモークパイプが伸びている。地上展示中はスモークパイプ先端を保護するためのチューブを付けている。(ADEX 2025/ 2025年10月18日)
【特別マーキング】
BEはこれまでに何度か特別マーキングを垂直尾翼に施している。
(1) 2019年:韓国空軍創設70周年記念マーキング。垂直尾翼に70を描き、左側はハングルで「創軍70周年」、右側は英語で「SINCE 1949」となっていた。


写真 (サチョン/2019年10月25日)
(2) 2020年:「힘내라! 대한민국!(がんばれ!大韓民国!)」記念マーキング。コロナ禍が始まったころ、お互いを励ます言葉として流行した文言。コロナ禍で2021年に延期された東京オリンピック出場選手団への励ましともとれるが、恐らくは前者(互いの励ましあい)の意味が強いと考えている。「がんばろう、日本」と同じ意味合いだろう。この年は訪韓していないので写真は無い。「ブラックイーグルス」+「デカール」で検索するとプラモデル用のデカールの見本と例示写真が出てくる。
(3) 2023年:韓米同盟70周年記念マーキング。「Alliance for the Future 韓米同盟70(韓米同盟はハングル表記)」と記されていた。

写真 「韓米同盟70周年」記念マーキング機。(2023年10月21日)
(4) 2025年:光復80周年記念マーキング。韓国では「1945年8月15日に朝鮮が日本の統治から脱し、自主独立を取り戻した」とされ、8月15日は光復節という祝日になっている。2025年は日本では単に「終戦80周年」だけれど、韓国では「光復80周年」となる。それを記念して5月10-11日のオーサンエアパワーデー以後に「光復80(光復はハングル文字)」と記入された。

写真 2025年の「光復80周年」記念マーキング。(ADEX2025 / 2025年10月19日)
※ 2019年以降にADEXにしか行っていない人は、「正規塗装」のBEを見ていないのではないだろうか・・・?
以上