<編集履歴> 13Jul.2021「【短報】3機用廃となったE-2C」として公開、16Jan.2022「航空自衛隊E-2Cの用廃機」に改題して内容を全面的に更新、見直し更新(第0回目)、08Oct.2025見直し更新(第15回目、451号機ロトドーム取り外し目撃情報)
MiG-25亡命事件をきっかけにして1983年から13機が導入された早期警戒機E-2C。2023年には無事故で運用40周年を迎えている。
一方、2020年には岐阜基地第二補給処の建物前にてシートに包まれた機体が確認されており、2021年7月13日に公開された令和3年度防衛白書の資料5にて、2020年度末(2021年3月末日)までにE-2Cの保有機数が13機から10機に減耗していることが明らかになった。2024年7月12日時点では用廃となった3機を含めて合計7機が稼働していないようだが、令和6年防衛白書資料6による保有機数は10機のままとなっている。用廃処理をしたくとも簿価が残っていて処分できない状態にあるのではないか、などと考える。
なお、2024年4月末に引き渡された44-3462号機をもってE-2CのIRANは終了したという(JW誌2024年8月号、p.51)。一般的なIRAN間隔でいうなら、3年後の2027年度には全機が退役するハズだ。簿価との兼ね合いで「飛べないけれど、書類上は生きている」状態なのかどうかは、2028~2030年度ごろに発行される防衛白書に記されるハズの「主要航空機の保有機数」を見れば判ることだろう。
E-2CのIRANは川崎重工岐阜工場にて行われていたが、次世代機であるE-2DのIRANは、厚木の日本飛行機(注:今は川崎重工の子会社)で行うとの話も聞いている。この話の真偽については、岐阜基地や厚木基地のウォッチャーの投稿に注目していよう。
本記事ではE-2Cの用廃機発生状況をまとめてみる。
【機体の状況】(2024年11月30日確認)
(01) 34-3451 (Bu.161400)
書類上は「生きている」が、事実上は用廃と推定。Flyteamさんへの画像投稿は2018年12月8日の那覇基地航空祭のものが最後となっている(2025年10月8日確認)。2018年度が最終FLT年だろうか?2025年9月27日付でエンジンを抜かれた本機の姿がXに投稿されていた。また同年10月6日はロトドームを取り外す作業が行われ、その様子がXに投稿されていた。なお自身の画像在庫を調べたところ、どうやら451号機はデジタルでは撮影していないようだ。
(02) 34-3452 (Bu.161401)
Flyteamさんへの画像投稿は2019年12月14日に那覇基地R/W36Rに着陸する際のものが最後となっている(2025年10月8日確認)。書類上は「生きている」が、事実上は用廃と推定(2019年度が最終FLT年か?)。

写真1 三沢基地RW28にアプローチする452号機。地表に積もった雪の照り返しで機体下面が綺麗に浮かび上がる。この写真を撮影してから、それほど時間を経たずして飛行不能(事実上の用廃)になったものと考えている。(2019年2月5日撮影)
(03) 34-3453 (Bu.161402)
Flyteamさんへの画像投稿は2020年3月4日に那覇基地に着陸する際のものが最後となっている(2025年10月8日確認)。書類上は「生きている」が、事実上は用廃と推定(2019年度末/2020年3月が最終FLT年か?)

写真2 松島基地祭から帰投するためにタキシングする453号機。(2005年10月27日撮影)
(04) 34-3454 (Bu.161403)
書類上は「生きている」が、事実上は用廃と推定。2021年10月14日に三沢基地に着陸する姿がFlyteamさんに投稿されている。前日には那覇で撮影されているので、最後にフェリーされてきた時のショットだろう。

写真3 冬の三沢基地RW28にアプローチする454号機(2019年2月6日撮影)
(05) 54-3455 (Bu.161786)
Flyteamさん掲載写真の最終撮影日は2015年9月14日。2020年度中に用廃か?2023年11月の岐阜基地祭当日には格納庫内にて確認とのX投稿情報あり。主翼、垂直尾翼、レドームは外された状態であった。

写真4 10万時間安全飛行達成の記念塗装を施した455号機。同様の塗装は後述する457号機にも施されていた。(2009年11月3日入間航空祭帰投時に撮影)
(06) 54-3456 (Bu.161787)
Flyteamさん掲載写真の最終撮影日は2017年1月31日。防衛白書の保有機一覧より、2020年度中に用廃となったものと考える。2023年11月の岐阜基地祭当日には南側でシートに包まれて放置されていた。

写真5 築城基地航空祭に展示された456号機(2009年11月29日)
(07) 54-3457 (Bu.161788)
Flyteamさん掲載写真の最終撮影日は2017年5月22日。防衛白書の保有機一覧より、2020年度中に用廃となったものと考える。2023年11月の岐阜基地祭当日にはBu.16187とBu.16189の間にシートに包まれて放置されていた。(ただしこれは、現用機と飛行を確認できない機体の情報より、消去法にて54-3457 (Bu.161788)と推定したもの)。本機は1996年2月ごろから2001年7月22日の防府北基地祭で展示された時まで、IRAN間隔としては2回分程度の間(約6年間)は「縁が黒くないお皿(グレー一色のお皿)」を載せていた。E-2C全機の中で、これは唯一の例外事例だが、その理由は判らない。新型円盤の評価試験でもやっていたのだろうか?

写真6 2009年7月30日に10万時間安全飛行を達成した記念塗装を施した457号機。(2009年10月12日岐阜基地祭帰投時に撮影)
(08) 54-3458 (Bu.161789)
2020年度中に用廃か?Flyteamさん掲載写真の最終撮影日は2018年10月12日。2023年11月の岐阜基地祭当日には岐阜基地南側でシートに包まれて放置されていた。

写真7 築城基地航空祭で帰投準備をする458号機(2011年10月2日撮影)
(09) 34-3459 (Bu.164621)
2017年12月初旬ごろにプロペラを八翅のNP2000に換装(換装1号機)。2023年7月4日にIRAN後の試験飛行を行っている姿がXに投稿されている。このため2026年度までは飛行可能と予想する。


写真8-1, 8-2 航空自衛隊のE-2Cで初めてNP2000プロペラに換装したのは34-3459号機だった。(2019年9月8日、三沢基地祭にて撮影)
(10) 34-3460 (Bu.164622)
2020年2月3日IRAN明け時は四翅プロペラ。プロペラを八翅のNP2000に換装して2021年3月3日に岐阜で飛行、換装3号機。2021年(令和3年)1月26日付の契約で契約金額は184,503,000円也。3年後の2023年3月(2022年度末)までは飛行可能と予想するも2023年12月10日那覇基地航空祭で飛行していた。Flyteamさんへの投稿写真は2024年2月24日に那覇基地で撮影されたものが最後となっているので、2023年度末までは「生きていた」と判断する。

写真9 那覇基地航空祭にて。一般の方々が460号機の姿を見ることが出来たのは、この日が最後だった。(2023年12月10日撮影)
(11) 34-3461 (Bu.164623)
プロペラ換装せず。2023年1月末にIRAN終了しているので、2026年1月末までは飛行可能と予想する。

(12) 44-3462 (Bu.164624)
プロペラ換装せず。JW誌2024年8月号p.51には「2024年"4月"にE-2Cとして最後のIRANを終えた」旨の記述がある。X上の岐阜基地ウォッチャー投稿によると、試験飛行は4月25日に実施されており(通常3回の試験飛行を行うとのことだが、4月25日が何回目の試験飛行なのかは確認していない)、デリバリーフライトは"5月17日"だったようだ。「IRANを終えた時期」の意味が、「工場から出た/試験飛行を開始した時」ことを言うのか、それとも「納品された/デリバリーフライトで岐阜から去って行った時」のことを言うのかは発信者によって異なるだろうが、いずれにせよ、3年後の2027年度末までは飛行可能と予想する。ちなみに自衛隊パイロットが機体をフェリーして、工場のエプロンに到着後、民間側で機体外見を点検して引渡し書類(民間側から見た場合には受領書類)にサインした時点で「IRAN(もしくはPAR)に入った」といい、工場で作業を終え、民間側で試験飛行を行い、官側で確認飛行を行い、引渡し書類(官側からみて受領書類)にサインした時点で「IRAN(もしくはPAR)を終えた」というのが、正しいのだろうと思う。マニアレベルでは、いつサインをするのかなんて分からないので、通常は「工場から出てきた時点」あるいは「試験飛行を開始した時点」で「IRAN(もしくはPAR)を終えた」というのが普通かと思う。今回のように、「4月に工場から出てきて試験飛行を開始し、5月に引き渡された」場合はまだしも、「12月に工場から出てきて試験飛行を開始し、年明けの1月に引き渡された」場合もあるので、時節の表現と実際の機体の動きには注意しておこう。
本機は2025年9月21日の三沢基地航空祭にて地上展示機となっていた。なぜ、三沢にE-2”C"が展示されているのだろう?那覇から整備のために一時的に戻ってきたのだろうか?最後のIRANを終えてから約1年半。11機目のE-2Dがすでに到着しており、本機が(事実上の)用廃となった(もしくは間もなく用廃となる)可能性も捨てきれない。9月22日以降に本機が空を飛んでいたのを見かけたなら、その姿をネット上に掲載していただけるとウレシく思います。

写真11 駐機する背後をJALのB-787が通過する。(2022年12月11日撮影)
(13) 44-3463 (Bu.164625)
プロペラを八翅のNP2000に換装して2021年3月3日に岐阜で飛行、換装2号機。2020年(令和2年)2月20日付の契約で契約金額は282,997,000円也。→2024年3月末(2023年度末)までは飛行可能と予想。2024年度中の動向に注目。なおFlyteamさんへの投稿状況を見ると2023年5月28日の美保基地祭で展示された際のショットが最後のものとなっている。(2025年4月23日確認)


写真12-1, 12-2 上はNP2000プロペラに換装したあとの試験飛行で岐阜基地にアプローチする463号機。下は那覇基地航空祭にて観客の目の前をタキシングする同機。(上:2021年3月8日岐阜基地、下:2022年12月11日那覇基地にて撮影)
【E-2C用廃に関する年表】
・2018年03月05日 第二補給処の公告の調達情報提出期限(3月5日)の中に「E-2C 54-3455号の維持整備等に関する作業」「E-2C 54-3456号の維持整備等に関する作業」「E-2C 54-3457号の維持整備等に関する作業」が存在。
・2018年10月08日 川崎重工エリア内に2機のE-2Cが置かれていることをGE-Pro画像で確認できる。(35.3969N, 136.8800E)
・2018年10月12日 54-3458の最終撮影日(Flyteamさん掲載写真より)
※私自身は54-3458号機の「維持整備等に関する作業」については公告を確認していない。防衛白書に掲載された保有機一覧より、飛行していない455,456,457,458号機の4機のうち、3機までは2020年度末までに用廃となっている。残る1機は2022年度末時点において飛行は確認されていないものの、書類上は「生きている」状態にある。用廃となった3機とは「維持整備等に関する作業」に記された3機だろうと考えていたが、2023年11月の基地祭時にシートに包まれた機体の中に54-3458号機が含まれていることが確認されたため、この説をひっくり返すことになった。455号機が格納庫内にあったとのことから、この機体が「(書類上は)生きている」可能性がある。
・2019年12月23日 「E-2C航空機の屋外保管に際しての防護作業」を船山株式会社が2,250万円で落札
・2020年04月09日 第二補給処建屋前に3機のE-2Cが置かれていることをGE-Pro画像で確認できる。(35.3916N, 136.8549E)
・2020年06月21日 航空ファン誌2020年8月号(No.812)p.109下段に岐阜基地外周から撮影された第二補給処建屋前に置かれたシートに包まれた3機のE-2Cの写真が掲載された。
・2021年03月31日 国有財産台帳にE-2C3機分が存在せず。(2021年7月13日公開の令和3年度防衛白書資料5より)
・2022年11月13日 岐阜基地祭において南側第二補給処前にシートをかけられ、レドームを外した状態の3機が並んでいた。一番西側の機体はBu.161787(54-3456号機)だった。
・2023年11月12日 岐阜基地祭において、上述3機のほかに、格納庫内に一機(455号機)が存在していたとの投稿がX上にあった。なお上述3機は東側よりBu.16189(写真判定)、Bu.161788(消去法による推定)、Bu.161787(写真判定)の3機であった。
※これらの機体を2024年度末までに解体し、収集運搬するための契約締結者募集の公示が2024年9月6日付で発行されていた。2024年5月中旬に最後のIRANを終えており、今後の運用は長くても3年間だ。部品等を保管するためにモスボールしておく意味もなくなったということなのだろう。
https://www.mod.go.jp/asdf/gifu/acd/kouji3.pdf
・・・と、書いたが、2025年4月22日に撮影された動画を見ると、モスボールされていたこれら3機のE-2Cは、そっくりそのまま、その位置に残っていた。入札が不調だったのか、それとも、「この3機以外」の3機が解体されたのか・・・?いつか、どこかで”真相”は世にでてくるのだろうか(笑)。(2025年4月23日追記)

写真13 岐阜基地南側にてシートをかけられて並ぶ3機のE-2C。2024年度末(2025年3月末)までには解体される予定だ。(2023年11月12日撮影)
【参考:ネットのどこを見るとプロペラ換装の契約や契約金額が見られるのか?】
1. 次のように進んでください。
防衛装備庁のHP > (画面右側の「お知らせ」内)中央調達のトップページ > 調達情報の公表 >契約に係る情報の公表(中央調達分) > 年度別に「月別契約情報」というExcelファイルを見ることができます。(注:2024年度初めごろから2023年度分を含めて閲覧できなくなっています)
2. 「月別契約情報」には「競争」(入札を行うもの)と「随意契約」(入札を行わないもの)があります。またそれぞれに「基準以上」(様々な条件が厳しいもの)と「基準未満」(様々な条件が容易なもの)があります。ここでは「随意契約(基準以上)」を参照しましょう。機体などの購入、IRAN予定数量などにかかる契約相手先と金額を知ることができます。
3.ほかの項目になりますが、調達予定品目などの情報があり、本年度は何機IRANに入るかな?などの情報を得ることができます。ま、一度HPを覗いてみてくださいな。
防衛装備庁HPのURL; https://www.mod.go.jp/atla/choutatsu.html

写真14 三沢基地RW28にアプローチする452号機。(2019年2月5日撮影)
【おまけ:E-2CとE-2Dの見分け方】
E-2Cのプロペラ換装機とE-2Dを見誤るケースがあるようです。両機種の見分け方を別記事にまとめましたので、ご参照ください。ご参考になれば幸いです。
【雑談】E-2CとE-2Dの見分け方(航空自衛隊の場合) - 用廃機ハンターが行く!

写真15 三沢基地RW28にアプローチする452号機。(2019年2月6日撮影)
【余談】
1. 日本国内でE-2Cが展示機なることは無いと考えている。近隣諸国ではシンガポール空軍博物館に1機が展示されているので、機会があったら訪問してみよう。「地球の歩き方」には掲載されていない、”隠れた名所”だ。
・関連記事はこちら:シンガポール空軍博物館 - 用廃機ハンターが行く!
2. かつては中国/寧波にある中国防空博覧園にE-2の実物大模型が展示されていたが、2021年2月20日以降、2022年4月12日までの間に撤去された。
・関連記事はこちら:【浙江省】寧波市 中国防空博覧園 - 用廃機ハンターが行く!
以上