用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

航空自衛隊 川崎T-4の展示機

<編集履歴> 21Feb.2019公開、10May.2023見直し更新(第21回目、字句表現等見直し実施)

 

 川崎重工(株)が製造した中等練習機T-4は1985年に初号機が納入され、2003年末までに212機が生産された。

<事故等による抹消機>

(1) これまでに4機を事故で失っている。機番は次の通り:653, 654, 720(BI), 727(BI)

(2) また2011年3月11日の東日本大震災において、発生した津波により4機が被災し658号機、 683号機、BIの 804号機が抹消されている。被災した4機のうち676号機のみは修復され、現在も使用中だ。BIの804号機の垂直尾翼はモニュメントとしてブルーインパルスハンガーの脇に残されており、基地公開時には見ることができる。さらに機体番号を消去しているので658号機か683号機のいずれかは不明だが、どちらか一機が防衛省電子装備研究所飯岡支所電磁特性研究室に運び込まれ、ステルス評価装置の性能確認試験(静的計測)に使われた。この様子は防衛装備庁技術シンポジウム2017発表要旨中のポスターセッション10、「ステルス評価装置の性能確認試験」に「松島基地津波に被災した機体を活用」という説明文と共に写真が掲載されているので興味ある方は確認していただきたい。なおこの機体をポールの上に据え付けた写真が飯岡支所の案内パンフか何かに掲載されたことがある。ネット上に写真が残っているかもしれないので、興味があればこちらも探してみよう。

https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2017/img/ats2017_summary.pdf

<用廃となったブルーインパルス機>

 本機は学生訓練における通常の運用においては荷重をかけることがほとんどなく、部品供給が枯渇するまで(事実上無期限に)運用可能と言われている(特に初等教育に用いられる芦屋基地で運用されている機体)。このため通常運用機で用廃となった機体は存在しない。

 一方で大きな荷重を繰り返しかけるブルーインパルス(BIと略す)用に作られた初期の11機(墜落抹消機2機および津波被災抹消機1機を含む)は2019年度末(すなわち2020年3月末)までに全機が用廃となった。このため小牧基地にて保管していた9機と現用機1機の通常型T-4をアクロ専用機に改修して活動を行っている。

用廃や事故等で抹消されたBI機の状況は次の通りだ(判明分のみ)。

(1) 46-5720 2000年7月4日、基地へ帰投する際に山中に墜落

(2) 46-5725 2016年12月7日用廃。尾翼のみ展示用に残る

(3) 46-5726 2017年2月初旬ごろ用廃。川崎重工(株)岐阜工場内に展示

(4) 46-5727 2000年7月4日、基地へ帰投する際に山中に墜落

(5) 46-5728 2017年9月10日以降に用廃

(6) 46-5729 2018年3月27日以降に用廃

(7) 46-5730 2018年10月25日以降に用廃

(8) 46-5731 2020年3月25日に用廃

(9) 66-5745 2020年3月24日、松島から浜松への空輸をもって用廃(注1)、浜松広報館に展示

(10) 26-5804 2011年3月11日、津波により被災、抹消。松島基地で尾翼モニュメントとなる。

(11) 26-5805 2019年3月2日以降(2018年度中)に用廃となるも2019年9月度にはカラースモークの地上テスト機として使用。2022年10月11日にあいち航空ミュージアムに展示機として搬入、常設展示中

 

注1:745号機は2020年3月20日のオリンピック聖火到着式典において強風の中で五輪を描くミッションが松島基地における最終フライトとなった。当日のミッションに参加した機番は全6機BIの編隊が787(1), 666(2), 745(3), 731(4), 790(5), 686(6)。リーダがノーマルの6機の第二編隊(注:正式名称ではなく本Blogでの便宜上の名称)の機番は752(1,Normal), 663(2), 694(3), 693(4), 690(5), 697(6)。当日姿を見せなかった1機は26-5692であった。

  

<用廃展示機> 

T-4の用廃展示機は次の3機が存在する。

(1) 46-5726 空自の無償貸付機

 本機は2017年2月初旬ごろに用途廃止となり、2018年度より川崎重工岐阜工場建物内に展示されている。航空祭の時に三柿野駅から正門に向かう際に建物外周よりガラス越しに見ることができる(建物内に入り間近に見ることはできない)。撮影する場合には基地航空祭開催時の早朝もしくは午後3時以降の陽の当たらない時間帯を選ぶ必要がある。理由は作例を見て判るように日中はガラスの反射が強く、室内に展示された機体がほとんど見えなくなるからだ。PLフィルターを用いて反射を減ずることも可能だろう。

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写真1-1, 1-2, 1-3 三柿野駅前の川崎重工(株)事務棟1階に展示されているT-4(46-5726)。写真1-1は2019年11月10日、航空祭時の午前11時30分ごろに撮影。写真1-2, 1-3は2022年11月13日午後13時10分ごろ撮影)

 

(2) 66-5745 本機は松島基地で2020年3月20日に行われたオリンピック聖火到着式典でのフライトが最後の任務となった。2020年3月24日に浜松基地にフェリーされて用廃となり、展示用の整備を行ったあと、2021年3月9日に浜松広報館に搬入された。一般公開は同年3月13日からとなった。

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写真2 浜松広報館のT-4B.I.(66-5745)。(2021年3月23日撮影)

 

(3) 26-5805 空自の無償貸付機。2018年度末の2019年3月2日以降に用廃となったが、その後2019年9月度にはオリンピック用のカラースモークの地上テスト機として使用された。2022年10月11日にあいち航空ミュージアムに展示機として搬入された。その翌日から組み立て中の状況も一般公開されているが、「正式なお披露目」は記念式典の行われた11月26日となる。エンジンノズルは見えるが、ダミーのノズルだけのようだ。

写真3 あいち航空ミュージアムに展示された805号機。二階のテラスから撮影できるが他の展示機の翼などが微妙に引っ掛かる。(2022年11月12日撮影)

 

<今後の予定>

 宮城県東松島市では三陸沿岸道上り線矢本パーキングエリアの隣接地に道の駅を整備しようと計画している。2024年春の開業を目指しているが、ここに少なくとも1機のT-4B.I.が展示される可能性がある。詳細はこちらへどうぞ。

【検討中】道の駅にT-4B.I. - 用廃機ハンターが行く!

 

垂直尾翼を利用したモニュメントなど>

 (1) 46-5725  アクロ専用機として製造された2号機の垂直尾翼が可搬式のイベント展示品となって残されている。アクロ専用機1号機の46-5720が2000年7月4日の墜落事故で抹消となって いたため、退役時には最も古い機体だった。2018年のニコニコ超会議や2019年8月の松島基地航空祭、2022年7月31日の千歳基地航空祭で公開されており、今後も各種のイベントで展示されることだろう。なお垂直尾翼、射出座席、エンジン(一基)が”一セットの展示物”となっている模様。

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写真4 可搬式のイベント用展示物となった46-5725の垂直尾翼。(2019年8月25日撮影)

 

(2) 26-5804  東日本大震災津波により被災した。垂直尾翼松島基地第11飛行隊舎前にモニュメントとして残されている。 

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写真5 松島基地にある26-5804のモニュメント。(2019年8月25日撮影)

 以上