<編集履歴> 30Jul.2025公開、31Jul.2025見直し更新(第1回目、見直し更新、写真追加)
【概要】
(1) 戦前にノースアメリカン社で開発された低翼単葉の練習機で、のべ15.495機が製造された。戦前/戦中は米陸海軍のほか、英軍/英国連邦諸国で使用されていたが、戦後には約60か国以上に供与されて、練習/前線監視/攻撃/救難など様々な任務で使われていた。
(2) 1万5千機もあるとタイプも名称も多々あるが、おおむね米陸軍航空隊(のちの空軍)ではT-6テキサン、米海軍では"SNJ"シリーズ、英国機(英国使用機および製造機)はハーヴァード、オーストラリア機(豪使用機および製造機)はワイラウェイと呼ぶ。
(3) また米陸軍航空隊機は当初AT-6A~G(AT: Advanced Trainer)と称していたが、戦後(1948年ごろ)に再生してT-6A~Gとなり、新たなSNを取得している。さらに改造機としてLT-6G/T-6F/T-6Hもあるけれど、説明は略す。
(4) 現在、資料によっては「AT-6」と表記している場合があるが、上述の経緯があるため、改修されずに博物館に残された機体(ほとんど存在しない)以外は「T-6」と表記するのが正しいかと思う。
(5) ようやく本題の韓国軍のT-6シリーズの話になるが、運用開始は朝鮮戦争勃発後の1950年ごろ、運用終了時期は不明ながら、操縦教育用としては1962年頃まで使われていたようだ。運用機数は不明。
Scramble.nlのデータベースで「South Korea」「T-6(もしくはT-6A/D/Gなど各タイプ)」を検索すると多数の機体が表示されるが、Joe Baugherさんのリスト(JBリストと略す)と照らし合わせると、「韓国空軍に供与/譲渡した」という話は一切ない(誤認・見落としがありましたら、お知らせください)。Scrambleのデータベースは何か異なるリストを誤って掲載しているのではないだろうか?
(6) 現在の韓国国内には8機のT-6シリーズが残されているが、SNやcn.が判別できる機体は2機程度しかなく、出自や詳細が不明な機体ばかりだ。私自身は外観からの型式判断が出来ないので、基本はBobOgdenのSN本(第2版)に記載された形式を記載している。「この機体はココがこうなっているので〇型じゃね?」と思われた方は、どうか遠慮なくコメントにてお教えいただければ幸いです。
【展示機 Displayed T-6s】(おおむね北から南の順)
(1) T-6 (SN不明、cn.不明, 37.5566N / 126.8083E)
ソウル特別市江西区、金浦国際空港に隣接する国立航空博物館に展示。胴体には「建国7」と書かれている。朝鮮戦争勃発時に国民からの献金で10機のT-6を購入したというが、そのうちの7号機という意味を持つ。
(2) T-6F (82536, 44-82536, cn.121-43258, 37.5371N / 126.9778E)
ソウル特別市龍山区戦争記念館の館内に吊り下げて展示されている。胴体に書かれたハングルは「建国」。上述した国民献金購入機の意味だろうが、本当にこの機体が該当しているのかどうかは判らない。1948年にAT-6FからT-6Fへと再生された機体。
(3) T-6G (106/K, SN不明, cn.不明, 36.5795N / 127.5242E)
忠清北道清州市の韓国士官学校(星武台)展示機。2016年に登録文化財第667号に指定された。空軍博物館入口前(36.5820N / 127.5249E)に置かれていたが、2022年に駐車場脇に新設された屋根付きの小屋(?)の下にTF-51Dと共に移設されたため、衛星画像では確認できなくなっている。ちなみにGE-Proで機影を確認できるのは2019年4月4日取得画像までだ。2018年末頃には胴体にはハングルで「建国6」と描いていた。2025年夏の時点で空軍博物館の一般見学ツアーは再開されていない模様。
※機体はAT-6F説あり。展示機一覧記事を一通り書き上げてから(2025年秋ごろ完成予定)、詳細を確認します。まずは「どこに、何があるか?」の確認を先行させます。
【忠清北道】清州の韓国空軍士官学校(空軍博物館)と周辺の展示機 - 用廃機ハンターが行く!

写真 屋外展示場に置かれていたころのT-6G。(2006年3月12日撮影)
(4) T-6A (53867, SN不明, cn.不明, 35.1879N / 128.1476E)
慶尚南道晋州市の空軍技術高等学校の展示機エリアにある。一般見学はできない。
(春の観桜シーズンに敷地開放することがある「らしい」が、その際の画像がネットに無いので、入場できたとしても撮影はできないのだろう)ネット上の画像はみつけていない。
(5) T-6D (48527/D-4, SN不明, cn.不明, 35.0886N / 128.0834)
慶尚南道泗川市の泗川空軍基地内に展示されている。正門近くだが、サチョンエアショーの際にも近寄ることが出来ないエリアのため、見ることはできず、詳細は不明。ネット上の画像はみつけていない。
(6) LT-6G (117354/TA-354, 51-17354, cn.195-1, 35.0710N / 128.0618)
慶尚南道泗川市のKAI航空宇宙博物館に展示されている。元ヨイドの総合安保展示場展示機で、主翼下にガンパック(増槽ではないゾ。よく見て来よう)2個、爆弾2発を搭載している。この形態での展示は韓国国内では本機のみだ。AT-6G(攻撃機Attackerではなく、Advanced Trainerの略)の再生機で"51-"からなる新たなSN付与機。cn.195-1/11の11機のうち、5機は”モスキート・ミッション”と呼ばれた爆撃機先導任務機(のちのFAC任務ですね)のLT-6Gへ改造された。「練習機」ではないヨというコトだが、恐らくは任務遂行のために爆撃機と交信するための通信機を備えたことと、それに伴いアンテナの形状が変わったことくらいじゃないかと思っている(注:私には通常のT-6Gとの外観形状の違いが判らない)。 ガンパック用の照準(FCSというほどのものでは無さそう)も追加されたのかな。懸架物投下機構(爆弾投下用)は通常の機体にもありそうだけれど、もしかしたら、これも追加装備されたのかもしれない。
【慶尚南道】サチョン(泗川)市のKAI 航空宇宙博物館 - 用廃機ハンターが行く!

写真 写真ではよく分からないが、ガンパックを吊り下げている。実物はジックリ観察して来よう。(2008年5月3日10時30分ごろ撮影)
(7) T-6D (SN不明, cn.不明, 34.9657N / 126.5176E)
全羅南道務安郡のミリタリーテーマパークに展示されている。胴体には”163”と描かれているが、以前は”202”だった。ケンチャナヨ(気にしない)。またノーズにハングルで申し訳程度に「建国機」と描いている。
【全羅南道】務安のミリタリーテーマパーク - 用廃機ハンターが行く!

写真 ミリタリーテーマパークのT-6D。(2023年11月3日12時40分ごろ撮影)
(8) T-6G (SN不明, cn.不明, 33.3044N / 126.2998E)
済州特別自治道西帰浦市、済州航空宇宙博物館の館内に吊り下げられている。胴体に書かれたハングルは「大韓民国空軍」だ。
【展示後に撤去】
(1) T-6 (202, SN不明, cn.不明, 37.5006N / 126.9776E)
ソウル特別市銅雀区のソウル顕忠院(国立墓地)に展示されていたが、2008年5月から2009年10月末の間に撤去された。
【ソウル】国立ソウル顕忠院(撤去済、記録) - 用廃機ハンターが行く!
以上