用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【慶尚南道】サチョン(泗川)市のKAI 航空宇宙博物館

<編集履歴> 17Jul.2019サチョン周辺の機体紹介記事として公開、02May.2022見直し更新(第9回目、写真追加、解説追加)

 

<場所 Place>  サチョン基地南側、KAI工場エリア内

http://kaimuseum.co.kr/kor/

<座標 Location>      35.0719N, 128.0633E

<訪問日Visit>   03 May.2001(開館前に訪問),03 May.2008 and 26Oct.2019

<行き方 Access>

(1) サチョン(泗川)市外バスターミナルからタクシーで10分程度。道なりに約4.5km、徒歩で約1時間。

(2) 市外ターミナルから市内バスNo.80に乗れば1ブロックほど離れたところを通るので、これを利用しても良い。発車間隔は40-60分程度だ。GoogleMap やDaumで時刻表やルート、バス停の位置を確認して利用しよう。

【サチョンまでのアクセス】

(1) ソウル南部ターミナルからサチョンを経由してサンチョンボに行く市外バスが一時間に一本程度、一日に20数本運行されている、所用4~4.5時間程度だ。

(2) ソウル南部ターミナルから晋州までの市外バスが一日。に20本程度運行されている。所要4時間程度。到着後にターミナル脇(屋外)よりサチョン方面(サンチョンポ行)の普通バスに乗り40分程度。なおサンチョンボ行のバスは晋州市街バスターミナルが始発で、晋州高速バスターミナルを経由する。

(3) ソウルから晋州までの高速バスが1.5時間に一本程度ある。晋州高速バスターミナル到着後にターミナル前を通過するサチョン方面(サンチョンポ行)の普通バスに乗り、30分程度。

(3) 釜山西部バスターミナル(沙上)とサチョンを結ぶ市外バスが一日に22本程度。サチョン下車。所要1.5時間程度で料金は8,500‐11,000W程度 。

<解説General> 

(1) 2002年8月28日に開館した博物館。1995年春頃までソウル・ヨイドに存在した安保展示場(1994年秋には存在したが1995年9月29日訪問時には既に更地になっていた)に展示されていた機体と新たな展示機で構成されている。開館は0900-1700(3月から10月は1800まで)。正月と秋夕を除く毎日開館、入場料3,000ウォン。

・ヨイドの安保展示場についてはこちらを参照ください:

【ソウル】ヨイドの総合安保展示場(閉鎖、撤去済、記録) - 用廃機ハンターが行く!

(2)  展示機数は25機程度で、ほぼ全てが屋外展示。B-29など朝鮮戦争で使用された貴重な機体が数多く展示されている。 

(3) サチョン市外バスターミナルからはタクシー以外の交通手段は事実上存在しないので、現地でタクシーを降りる際に運転手に時間を指定して迎えに来てもらおう。市バスが一ブロック離れたところを40-60分程度の間隔で走るが、ハングルを読めないと利用するのはハードルが高いぞ。最悪の場合にはバスターミナルまで歩けば良い。せいぜい1時間半程度だ。

【展示機 Aircrafts】

(1) B-29 (O-521739 / 48) 太平洋戦争中、日本各地に焼夷弾を投下したことと原爆搭載機であったことで日本国内では超有名な爆撃機。アジアでは唯一の展示機であり、一度は現物を見ておきたい。朝鮮戦争が始まってから約半年後に出現したジェット戦闘機MiG-15に数多くが撃墜されたような気がしていたが、実際に撃墜されたのはわずかに16機、その他の理由を含めて合計損失数は34機だったそうな。休戦までには日本本土爆撃任務に匹敵するのべ21,000回余りの出撃をしたとのこと。元ヨイドの総合安保展示場展示機。

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写真1 一度はこの目で見ておきたいB-29。(2019年10月26日11時20分ごろ撮影)

 

(2) C-124C (O-20943) 元ヨイドの総合安保展示場展示機。こちらもアジアでは唯一の展示機だ。

写真2 とにかくデカい。(2008年5月3日9時50分ごろ撮影)

 

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写真3 大きなC-124CグローブマスターIIと小さなO-1G。(2019年10月26日13時10分ごろ撮影)

 

(3) O-1G (09-995) コクピットのラジオコールは"37995"となっており、"53-7995"が本当のS/Nだと思われる。両主翼端上面にアンテナを付けている。2008年訪問の訪問直前に派手な3色塗装となったが、いつの間にか大人しい青灰色塗装となった。

写真4 以前は派手な三色塗装だったO-1G。両翼端のアンテナを立てている。(2008年5月3日9時50分ごろ撮影)

 

(4) TAF-9J (Bu. 141152, 3F/219) 元ヨイドの総合安保展示場展示機。本機種は朝鮮戦争に参加していない。

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写真5 朝鮮戦争には参加していないグラマンTF-9J(2008年5月3日9時40分ごろ撮影)

 

(5) F4U-4 (Bu.81415) 元ヨイドの総合安保展示場展示機。

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写真6 F4U-4コルセア。(2008年5月3日10時10分ごろ撮影)

 

(6) B-26K (64-651 / TA) 元ヨイドの総合安保展示場展示機。機首に"B-26"と描いている。

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写真7 B-26K。(2019年10月26日12時30分ごろ撮影)

 

(7) C-123K

写真8 (2019年10月26日12時45分ごろ撮影)

 

(8) F-4E (80-355) 2002年の開館当時、F-4D/Eはまだ現役機であり、これらの機種が一般に公開展示されるのは非常に珍しい存在(当博物館の目玉)であった。2008年の訪問直前に現役機と異なる"サンダーバーズ塗装"となったが、いつの間にか元の塗装に戻されている。なお韓国内ではF-4EよりもF-4Dの退役が先に進み、これが各地に展示されたためにE型や少数保有していたRF-4CよりもD型の展示機の方が多いようだ。

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写真9,10 以前は米空軍サンダーバーズのような塗装を施していたF-4E。現在では標準的な韓国空軍仕様に塗り直されている。(上:2008年5月3日9時30分ごろ撮影、下:2019年10月26日12時50分ごろ撮影)

 

(9) F-5A (10-552)  こちらも2008年の訪問直前に三色の派手な「韓国製F-5F初号機風」の塗装となり、以後、この塗装が続いている。F-5Aの実機にこの塗装が施されたことは無い。

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写真11,12 「韓国製F-5F初号機風塗装」となっているF-5A。機首のハングル文字はKF-5E/Fの愛称である「チェゴン(制空)」だが、現在では消されている。(上:2008年5月3日9時30分ごろ撮影、下:2019年10月26日12時50分ごろ撮影)

 

(10) F-86F (24-865) 主翼下にAAMランチャーと合計4本の増槽タンクを装着している。この形態はやや珍しい。

写真13 (2019年10月26日12時45分ごろ撮影)

 

(11) F-86D (424 / 51-8424) 元ヨイドの総合安保展示場展示機。左胴体側面にはハングル文字で「大韓民国空軍」、右側面には「R.O.K. AIR FORCE」と書かれている。胴体下に燃料タンクが置かれているが、そもそもF-86系列機は主脚格納ドアのヒンジ部が胴体中央線部分にあるため胴体下に吊下物は取付けることができない。明らかに「他の機種のもの」。F-86Dの武装はロケット弾パックのみという先入観があるが、本機はヨイドに展示されていた頃からAero38ランチャーを主翼に取り付けている。かつてソウルの科学博物館屋上に展示してあったF-86Dにもランチャーが付いていたが、これが撤去された現在では韓国内で一般人が見られるF-86Dの中では唯一Aero3Bランチャー付の機体となった。

写真14 韓国内で唯一サイドワンダー用ランチャーを付けたF-86D。胴体下の120galタンクは「どこからか持ってきた1本をただ置いてある」だけ。F-86シリーズは主脚収納ドアのヒンジ部が胴体中央線に沿ってあるので、吊下物は搭載できない。(2019年10月26日12時45分ごろ撮影)

 

(12) T-33A (61656 / TR-656) 特にコメントのつけようがないT-33A。。

写真15 (2008年5月3日10時30分ごろ撮影)

 

(13) T-6 (117354 /TA-354) 元ヨイドの総合安保展示場展示機。主翼下にガンパック(増槽ではないゾ。よく見て来よう)2個、爆弾2発を搭載している。

写真16 (2008年5月3日10時30分ごろ撮影)

 

(14) T-28 (17625 / TA-625) 元ヨイドの総合安保展示場展示機。サチョンに展示されてからはカラフルな塗装となっていたが、いつの間にか大人しい銀地塗装となった。

写真17,18 サチョンに展示された後で一時期派手な塗装になったが、いつの間にか大人しい銀地に戻された。(上:2008年5月3日10時30分ごろ撮影、下:2019年10月26日13時ごろ撮影)

 

(15) C-54E

写真19 (2019年10月26日10時40分ごろ撮影)

 

(16) T-37C (21361) サチョン基地は訓練基地であり、かつては多くのT-37Cが飛び回っていた。1988~1992年頃に基地の脇で着陸する姿を眺めていたことがあるが、怖くて撮影することはできなかったという思い出のある機種だ。

写真20 何度も塗り直されたため細かいステンシルは無くなっており、警戒色もオレンジ色から赤色に変わっている。(2019年10月26日10時40分ごろ撮影)

 

(17) EC-47Q (O-93704) 胴体の上下に怪しげなアンテナを生やしている。垂直尾翼には”093-704”と描かれていた。オリジナルのS/Nは"42-93704"だ。

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写真21 胴体の上下にアンテナを生やしたEC-47Q。(2019年10月26日13時ごろ撮影)

 

(18) UH-1B

写真22 機首を北に向けているため、晴れた日のお昼前後は前方からのショットでは光線具合があまり良くない。キレイに撮るなら午後遅くまで粘ろう。(2019年10月26日13時ごろ撮影)

 

(19) H-19  元ヨイドの総合安保展示場展示機。

写真23 (2019年10月26日13時ごろ撮影)

 

(20) ARCH-50(KAI製UAV)

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写真24 KAI製の小型UAV。(2008年5月3日10時30分ごろ撮影)

 

(21) SB427 ベル427のKAI製機のモックアップ。SBは「サムスン・ベル」の略

写真25 KAI製SB427のモックアップ。現在では「それらしい」迷彩色に塗られている。(2008年5月3日9時30分ごろ撮影)

 

(22) F-16A (92-000) モックアップ。開館当初はF-16デモンストレーター塗装であったが、その後、現行のF-16風に塗装が変わっている。

写真26, 27 以前はF-16デモンストレーター風塗装だったが、現行のF-16風に塗り直された。(上:2008年5月3日9時30分ごろ撮影、下:2019年10月26日11時ごろ撮影)

 

(23) T-50 レプリカ 開館してしばらくしてから展示された。2019年10月26日に訪問した際には台座を残して機体は無くなっていた。

写真27 T-50のレプリカ。2019年訪問時には無くなっていた。(2008年5月3日9時40分ごろ撮影)

 

(24) T-50前胴部の模型

写真28 T-50前胴部の模型。これも2019年訪問時には無くなっていた。(2008年5月3日9時40分ごろ撮影)

 

(25) 復活号(レプリカ)

写真29 復活号のレプリカ。(2019年10月26日10時40分ごろ撮影)

 

【参考文献】

(1) 「韓国の展示機ガイド第3回、KAI航空宇宙博物館と韓国南東部の展示機編」大路聡、航空ファン2008年9月号No.669p.76-79

(2) 「「韓国の一泊二日で訪ねる」KAI航空宇宙博物館と近郊の展示機」大路聡、航空ファン2019年10月号No.802p.70-77

 

【余談:サチョン市周辺の紹介】

 釜山の西約90kmの街サチョン(泗川)にはサチョン基地があり、KAIの工場と民間空港が隣接している。サチョン基地は韓国空軍の訓練基地であり、かつてはT-33AやT-37Cが飛び回っていたが、現在ではKT-1部隊が所属している。空港脇(基地正門前)にはブラックイーグルス塗装を施された3機のT-37Cが並んでいるほか、隣の晋州市との間にはT-37Cが1機展示されている。KAI工場敷地の一角には航空宇宙博物館があり、アジアで唯一のB-29が展示されている。民間航空便ソウル金浦空港との間に一日3往復ほどの定期便がある。毎年10月末にはサチョンエアショーが開催されている。

以上