<編集履歴> 12Oct2019公開、23Oct.2025見直し更新(第12回目、F-4D展示)
<場所 Place> チョンチェン キニョンガン(戦争記念館)
<座標 Location> 37.5362N / 126.9785E
<訪問日Visit> 何度か。最近では22Sep2019, 20Oct.2023.
<行き方 Access>
(1) ソウル地下鉄サンガクチ駅から徒歩5分
<解説General>
(1) 1994年6月に開館した国内最大の戦争記念館。開場は0930-1800。入場は1730まで。入場料無料。毎週月曜日は休館(月曜日が休日の場合にはその翌日)。休館時でも屋外展示の機体は撮影可能なときがある。迷ったら行って見るべし。
(2) 機体に記入されたS/Nは偽番号であることが多い。わざと偽の番号にしたのか、再塗装の際に間違えたのかは不明だ。調査のためにいくつかの文献を参考にしても異なる説が書かれている場合もある。本Blogでは異なる説がある場合にはできるだけ原典を併記することで混乱を避けたいと思う。
(3) 2019-2022年ごろにかけて、大規模な改修工事を行い、機体展示場所の移動や再塗装などを行った。工事期間中には、一部の機体等を一時的に別な場所に移動させたうえで展示を継続させている。ネット上に存在する訪問者の紹介記事には、改修前のもの、改修中の一時的な仮置き状態のもの、改修後のものが混在しているので注意しよう。
【屋外展示機 Outdoor Displayed Aircrafts】
(1) B-52D
この博物館の建設時に展示用として購入した機体。たしかに当時は大きな話題となったし、今も何かにつけて引き合いに出されることが多い。広報戦略としては成功した例だろう。

写真1 展示の目玉、B-52D。(2019年9月22日撮影)
(2) C-46D-20-CU (”O-10541”, 44-78541, cn.22364)
本機のcn.はイギリスのエアブリテン調査によるもの。本来のcn.とはチョイトばかり異なっている”可能性”がある(2025年7月時点で調査継続中)。

写真2 (2023年10月20日15時半ごろ撮影)
(3) C-119G (51-7996, cn.10739)
朝鮮戦争当時、米空軍で運用されていた双胴輸送機。韓国空軍での運用実績は無い。この機体は台湾での展示用に韓国空軍から送ったC-46Dと引き換えに入手したもので、展示当初には台湾空軍で使用されていた際の番号である”3199"を機首に残していた。本当のS/Nは”51-7996”だ。2023年訪問時には塗装が変更されて機首番号は消され、垂直尾翼に”O-17996”と書かれていた。


写真3-1, 3-2 C-46と交換して台湾からもらったC-119。展示当初は台湾空軍番号である”3199”を機首に残していた。 (3-1: 2008年5月6日16時ごろ、3-2: 2023年10月20日15時半ごろ撮影)
(4) C-123J (10389, 56-4389, cn.?)
垂直尾翼には”10-389"と書いているが、本当のS/Nは”56-4389”だ(要再調査)。

写真4 翼端の補助ジェットエンジンが特徴のC-123J。 (2019年9月22日15時ごろ撮影)
(5) F-86D (51-8502, cn.173-635)
ロケット弾ポッドを下ろしているが、ロケット弾は1本も入っていない。


写真5-1, 5-2 (上:2018年10月29日16時40分ごろ、下:2023年10月20日16時ごろ撮影)
(6) F-5A (89046, 68-9046, cn.N.6412)
2005-2006年ごろに展示された。当初は韓国空軍の制空色であったが2019-2023年の間に銀色の旧空軍機塗装に変更されている。また、主翼下の模擬爆弾は2009年から2019年の間に搭載された。


写真6-1, 6-2 (上:2006年10月14日8時30分ごろ、下:2023年10月20日15時半ごろ撮影)
(7) F-4C (64-0766)
韓国空軍においては飛行任務に就いたことが無い、BDR(Battle damage Repair)訓練機。機体各所に補修パッチの跡が残る。開館当初は屋内展示機であったが、2000年頃からは屋外に移設された。2019-2023年の間に塗り直され、グレーの制空迷彩からベトナム迷彩機へと様相を変えた。主翼パイロンにMERを介してMk.82の模擬弾を片翼3発、計6発を搭載している。

写真7 (2023年10月20日15時半ごろ撮影)
(8) F-4D (50732, 65-0732, cn.1789)
2025年7月に水原基地から搬入され、7月20日から「公式に」公開された。機首には「防衛誠金献納機」と大きく描かれているが、本当の「防衛誠金献納機」は0931, 0934, 0935, 0941, 0957の5機とされる。この機体は2024年6月7日に水原基地で行われたF-4E戦闘機退役式の際に、式典用に旧ベトナム迷彩風に再塗装されていた機体で、式典時には機首下面のセンサー部分は白色に塗られていたが、移設展示に際してレドームと同じ黒色に塗り直されている。私自身は展示後に訪問していないので、写真は無い。(近い将来、再訪しなくては!)
(9) J-6C (207)
中国製のMiG-19。1983年02月25日に北朝鮮から飛来し、水原基地に着陸した亡命機。開館当初は屋内に展示されていたが、2000年頃から屋外に移設された。

写真8 亡命機J-6C。(2018年10月29日16時50分ごろ撮影)
(10) T-28A (17830/TA-830, 51-7830, cn.174-683, 37.5351N / 126.9786E)
胴体には"TA-830"と書かれている。B-52Dの主翼の陰にあり、いつ訪問しても見づらい。

写真9 いつ訪問してもB-52の陰になって撮りづらい機体だ。快晴の夕方に行くと銀色の胴体後部には日が当たるも機首は影となり、写真的にはものすごく撮りづらい状況になる。(2023年10月20日15時30分ごろ撮影)
(11) T-33A (53-5129 / TR-129)
木立に囲まれており、非常に撮影しづらかったが、2023年10月訪問時には周囲の木は切り倒されてスッキリとした姿を撮影できるようになっていた。ただし相変わらずB-52の右翼後方尾翼の右脇にあるので、やはり撮影しづらい。

写真10 木立に囲まれていたT-33A。2019-2022年ごろの改修工事の際に周囲の木は切り倒されたが、B-52の脇にあり、撮りづらい。(2018年10月29日16時50分ごろ撮影)
(12) T-37C (21366)
2005-2010年ごろに展示された”比較的新しい機体”だ。2019-2022年ごろの改修工事の際に展示位置が大きく変えられている。

写真11 (2023年10月20日15時15分ごろ撮影)
(13) T-41B (15054)

写真12 胴体後部に描かれたハングルは「空軍」。(2023年10月20日15時30分ごろ撮影)
(14) T-103 (05013, cn.0501, 37.5361N / 126.9785E)
ソ連への対外債務返却の代わりに現物を貰ったという経緯のあるイリューシン設計局の練習機。2004年からのべ23機を運用したが、部品補給が困難なため、2018年には運用を終了した。2011年に1機を事故で失っている。

写真13 胴体後部に描かれたハングルは「空軍」。(2023年10月20日15時20分ごろ撮影)
(15) U-6A (116837)

写真14 垂直尾翼に描かれたハングルは「陸軍」。(2023年10月20日15時30分ごろ撮影)
(16) Y-5(An-2)
どこから持ってきたのか不明な機体。韓国空軍は特殊任務用途として、数機のAn-2(Y-5)を運用していたことが知られている。そのうちの1機ではないだろうか?

写真15 (2019年9月22日15時ごろ撮影)
(17) S-2A (6707)
BobOgdenのS/N本によれば本機はBu.136596の元海上自衛隊4108号機。しかし"6707"が正しい場合にはBu.136707となるが、このBu.No.は米軍S/NリストのバイブルであるJOE BAUGHER'S HOME PAGEのリストには存在しない(実際には存在する番号かもしれないが、これを確認することができない)。右翼のサーチライトは無くなり、黒いカバーで整形されている。

写真16 (2018年10月29日17時ごろ撮影)
(18) 復活号(レプリカ)

写真17 (2023年10月20日16時ごろ撮影)
【屋外展示機/ヘリコプター展示場 Outdoor Displayed Helicopters】
(1) AH-1J (29066, cn.29066)
2019-2023年の間に子供用展示館の上部にあるヘリ展示場に移設された。ここのヘリコプター展示エリアにある全ての展示機について言えることだが、季節によるが、15時ごろ以降には樹木や建物の影が機体にかかる。午後に現地に到着したら早めに撮影しておこう。


写真18-1, 18-2 2019年訪問時には移設準備のため簡単な架台の上に設置されていたが、その後は子供用展示館の上(ヘリコプター展示エリア)へと移設された。(上:2019年9月22日15時ごろ、下:2023年10月20日15時45分ごろ撮影)
(2) H-5H (S-51)
2019-2023年の間に銀塗装から黄色に塗り替えられて雰囲気が一変した。


写真19-1, 19-2 H-5ドラゴンフライなど、珍しい機体もいくつかある。(上:2019年9月22日、下:2023年10月20日16時ごろ撮影)
(3) OH-13H

写真20 国籍マークもSNも無い、OH-13H。(2023年10月20日16時ごろ撮影)
(4) HH-19B (34425, 53-4425, cn.55764)

写真21 (2023年10月20日15時半ごろ撮影)
(5) UH-1B (12542, 62-12542, cn.693)
老朽化したH-19Bを置き換えるため、1977年7月に18機を導入し、1994年1月31日まで運用した、と、解説板に書いてあった。

写真22 いつ訪問しても木陰になっているので、キレイな画像がない。(2023年10月20日16時15分ごろ撮影)
(6) UH-1H (16182)
”16182”号機は、かつて春川陸軍基地に展示(放置?)されていた機体と伝えらえる。この機体を戦争記念館に移設したのだろうか。衛星画像ではハッキリとせず、また地上で撮影した写真も見つからないので、あくまで「伝えられるSNによる推測」の域を出ない情報だ。

写真23 元は陸軍春川基地の機体か?(2023年10月20日16時20分ごろ撮影)
(7) SA319B アルエットIII (770303, cn.2307)
本機のコクピット計器盤に残されたラジオコールから、"77-0303"号機であることが確認されている。また、機内に残る銘板から"cn.2307"であることが確認されている。
本機のテールブームには、2020年頃までは"770301"という誤ったSNが描かれていたが、2020-21年頃に行われた再塗装後にはノーズ(レーダ上部)に"303"、テイルブームに”770303”という「正しい」SNが描かれている。
また、胴体両脇後部にはcn.が描かれている。かつては"2278"だったのだが、いつの間にか"2298"へと書き換えられた。恐らく再塗装する際に7と9とを間違えたのだろう。これら”2278”と”2298”のいずれもが誤った番号なのだが、2020-21年ごろの再塗装時には見逃されていたようで、「2307という正しいcn.」に修正されておらず、現在も"2298"という誤ったcn.のままで展示されている。
ソウルのド真ん中にある有名な機体展示場の機体であるため、外国人スポッターが訪問することが多く、この機体の画像が多くのスポッターサイトに投稿されている。しかし、上述した理由により大部分のサイトでSNとcn.の記述が間違っているのが現状だ。これらを参考にして一文を書く際には十分に注意しよう。

写真24 ソウルの戦争記念館にあるSA.319B。(2023年10月20日15時40分ごろ撮影)
(8) MD 500MD”ディフェンダー” (780062, 780062, cn.0329D, 37.5373N / 126.9783E)
2023年訪問時に新たに存在として設置されていたことに気づいたニューフェイス。韓国陸軍機でノーズ下部に小型サーチライトが装備されている。東を向いて置かれているが機体右側(南側)には行くことができない。遠く離れて望遠レンズで順光サイドを狙えるが、壁があるので足下が切れる。撮影しにくい機体だ。

写真25 (2023年10月20日16時ごろ撮影)
【屋内展示機 Indoor Displayed Aircrafts】
(1) F-86F-30 ("91236", 52-4308, cn.191-4)
かつては屋外にあった24308号機で、2019年頃の改装後に米軍機風に塗り直されて館内に吊下げられた。この時に垂直尾翼の番号は"91236"、胴体後部に”FU-236”と記入された。ミサイルランシャーのみを装着している。


写真26-1, 26-2 改装工事前には屋外にあった韓国空軍風塗装のF-86Fは2019年頃には姿を消した。その後、館内にて新たに米軍塗装となった機体が展示されている。(上:2008年5月6日15時30分ごろ、下:2025年5月9日撮影)
(2) AT-6F
写真27
(3) F-51D (205/K, 44-73494, cn.122-39953)
ソウルの戦争記念館展示機。元は永登浦基地の展示機だったという。2019年9月訪問時には博物館改装工事に伴って、一時的にF-4C前に置かれていたが、工事終了後は館内展示となっている。また、館内移設の際に機首に描かれていた「信念의鳥人!(信念の鳥人/シンニョメ チョイン)」の文字は消されている。


写真28-1, 28-2 改装工事中、一時的にF-4Cの前に置かれていたが、その後は館内展示となった。(上:2019年9月22日、下:2025年5月9日撮影)
(4) O-1A
写真29
(5) UTI-MiG-15 (128)
北朝鮮の国籍マークをつけているが、亡命機ではなく、本館の開館に際して展示用に購入した機体だ。開館当初から館内に展示されているが、2019年ごろの改装工事後は天井から吊り下げられている。韓国内では唯一の展示機だ。

写真30 この機体は亡命機ではなく、展示用に購入したもの。(2025年5月9日11時15分ごろ撮影)
(6) Yak-18
1955年6月21日に北朝鮮から汝矣島に飛来した機体だと考えられている。胴体には北朝鮮のマークを描く。開館当初から館内に展示されており、2019年ごろの改装工事後は天井から吊り下げられている。韓国内では唯一の展示機だ。

写真31 この機体も展示用に購入したもの。(2025年5月9日11時ごろ撮影)
(7) KTX-1
KT-1のプロトタイプ。以前は屋外に展示されていたが、2019年頃の改装工事の後に屋内展示となった。

写真32 この機体も展示用に購入したもの。(2025年5月9日撮影)
(8) L-4のレプリカ
館内の朝鮮戦争関連展示室内にある機体。レプリカ。

写真33 (2025年5月9日撮影)
【展示後に撤去】
(1) C-54D (42-72740, MSN.10845)
2005年頃に撤去されたのち、格浦港での展示を経て、現在は全羅北道群山市にあるクンチャン(群長)大学( 35.9979N / 126.7851E)に移設されている。(別記事参照)
【全羅北道】グンサン(群山)、クンチャン大学校の展示機 - 用廃機ハンターが行く!
(2) OH-23G (15205, 64-15205, cn. 1714)
開館当初から屋内ホールから吊り下げられていたが、2019-2022年頃の改装工事後は撤去されていた。デジタルでは・・・まじか?!一枚も撮影していない!

写真34 デジタルで撮影する前に撤去されてしまったOH-23G。(2019年、大路 聡氏撮影)
(3) O-1G
開館当初から展示されていたが、2019-2022年頃の改装工事後は撤去されていた。デジタルでは・・・これも一枚も撮影していない!
(4) L-5G
開館当初から展示されていたが、2019-2022年頃の改装工事後は撤去されていた。デジタルでは・・あああ、本機も撮影していない!
【その他】
戦車、ミサイル、艦載砲、北朝鮮の特殊半潜水艇、北朝鮮との銃撃戦で傷ついた船舶など多数の兵器が展示されており、マニア目線でジックリ眺めると一日では到底足りない。
【参考文献】
(1)「韓国戦争記念館と韓国北部の展示機編」大路聡、航空ファン2008年7月号No.667、p.70-73
(2)「韓国戦争記念館の展示機・前編」大路聡、航空ファン2019年5月号No.797、p.66-70
(3)「韓国戦争記念館の展示機・後編とソウル特別市の展示機」大路聡、航空ファン2019年6月号No.798、p.68-77
(4)「韓国戦争記念館の展示機2023」大路聡、航空ファン2023年7月号No.847、p.64-73
【余談】
(1) 地下鉄三角地駅から博物館に向かう小道はテグタン(タラ鍋)で有名なエリア。2010年頃にはポゴタン(フグ鍋)の店もいくつかあったような気がするのだが、2019年訪問時にはいくつかの店が無くなっていた。お味はというと「昆布や鰹節風味などの”旨味”に欠ける鍋」という感想だった。まぁ、一度はお試しあれ。
(2) 2023年10月訪問時には地下鉄駅からの地下通路が博物館方面に延伸されており、上記(1)の小道を通らずに博物館へ行けるようになった。便利になった反面、面白味のある路地裏を見ることができなくなってしまった。気になる方はチョイト離れた地下鉄駅出入口を利用して周辺の散策もしてみよう。
(3) 2023年10月20日に訪問した際の目的はリニューアルされた館内展示の確認であったが、10月24日の「国連の日」に合わせて開催された「2023国連参戦記念行事」の開幕式開催のために館内は16時で閉館(入場は15時半まで)。入場することはできなかった。でも式典に華を添えるステキなお姉さま方を撮影できたので全く問題なし!館内展示を見るためにまた行くさね。(→2025年5月9日再訪)


写真 上は1階ホールで行われた式典会場に入場する直前のショットで緊張した固い顔つきをしている。下は式典参加後に表に出てきたところ。大役を終えて緊張がほぐれた笑顔がステキ。(2023年10月20日16時15-45分ごろ撮影)
以上