用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

調達情報を読もう

【この項でのポイント】

 各基地・駐屯地の公式HPには「調達情報」というコーナーがある。

 ここには用廃となった機体を解体・撤去する業者を募集する際の情報が掲載されることがある。使用中の機体が用廃となったとき、事故抹消となった機体が生じたとき、近隣の公園などから展示機が無くなった時などは事案の発生から1~2年くらいの間は頻繁に確認してみよう。また基地に展示された航空機の再塗装を行う業者を募集する際の情報が掲載されることもある。展示機の汚れが目立つようになってきたらチェックしておこう。本項では主として解体処分に注目して話を進める。

 

【調達情報】

 お役所において、ある金額以上の物品やサービス(役務)を購入する際には「こんな物品やサービスが欲しいよ!」というお知らせを発表し、集まった業者で入札を行い、一番安い値段で提供してくれる業者と契約を交わす(売却の場合には一番高い値をつけた業者となる。念のため)。

 この「お知らせ」のことを「公告」という。「調達」とは「官側(ここでは自衛隊)が物品やサービス(役務)を入手するために必要な業務全般」としておこう。毎度ながら私自身が正しい知識や用語の定義を用いて書いているワケではないので、正確なハナシや定義はGoogle大先生に伺って確認していただきたい。本Blog上では「まぁ、そんなモンだ」程度の認識があれば良いかと思う(と、逃げさせていただく)。

 そして自衛隊も「お役所」の一つなので、必要な場合には「調達」するのだが、その際の情報をHPの「調達」のコーナーにて閲覧できるのだ。

 調達の内容は、例えば「機体」、「ミサイル」、「航空燃料」、「食事用のお米や肉」などの物品であったり、「ボイラの点検作業」「トイレの修理作業」などのサービス(役務)であったりとその内容は様々だ。「戦闘機」などの大きいものや自衛隊全体に必要なものは防衛装備庁が窓口になって調達するので、そちらのHPを確認しよう。

防衛装備庁 : 調達・公募情報

 

 本Blog的には「用廃となった機体を解体する業務」、「解体によって発生した産業廃棄物の処分」あるいは「解体によって発生したリサイクル可能品(鉄くずやアルミくずなど)の売却」という事案について、「やってくれる業者」を集めるハナシが注目すべき内容だ。

 これらは通常ワンセットとなっており、「機体を解体する費用、解体した破片を持ち去る費用、その破片を売払って儲ける金額、最後に残った廃棄物を処分する費用を合わせて、総額いくらでやってくれますか?」という形で入札が行われている。

 なお事故機の破片処理も同様と考えるとよいだろう。近隣の公園等に展示されていた機体を解体・撤去する場合にはその機体を貸与されていた地方自治体等の公園管理部署が窓口担当となることもあり得る。この場合には管理する自治体の調達情報に当該案件の公告があるハズなので”アンテナ”を張っておこう。場合によっては自治体の公園等の管理計画や予算案に撤去計画や撤去費用が盛り込まれていることもある。ボロボロの機体が公園などにある場合にはそちらもチェックしておくと良いだろう。

 

【公示、入札の時期】

 業務内容や基地毎の「これまでのやり方」により、いくぶんの差はあるようだが、通常は何時迄に終わらせて欲しいか(履行期限)を示し、その2~6か月程度前に公示がなされる。公示後2~4週間程度で入札が行われているようだ。

 入札は参加希望業者が指定された時間に指定された部屋に集まり、箱の中に金額を書いた用紙を投函し、その結果を読み上げるだけなので30分もかからないハズだ(官需関係の入札に参加した経験より)。

 早ければその場で契約を行い、翌日には作業履行が可能となる。実際にそのような最速事例があるかどうかは知らないけれど、事務手続き上は契約締結後ならいつでも「実施可能」なハズだ。ただし通常は作業時間(概ね平日の0800-1700)も仕様書に記載されているので、あまり変ことは夢想しないように。

  入札が終わった案件についてはHP掲載の公告情報を読めなくなることが多いので、気になる基地の調達情報はこまめにチェックしておこう。なお全国の入札物件情報を提供する民間の有料サイトを利用すれば過去の公告の内容を確認できるようだが、私自身はそこまでして調べようという気が無いので見たことはない。ここでは方法論を記すのみとする。

 

【公告の内容例】

 公告を発するのは航空自衛隊海上自衛隊では原則として用廃機の発生した基地だが、陸上自衛他の場合は原則として補給処のある霞ヶ浦駐屯地となるようだ。「用廃機の発生場所」の詳細は別稿「用廃機の発生するところ」を参照していただきたい。

【基礎講座】用廃機の発生するところ - 用廃機ハンターが行く!

 現在C-1やYS-11の用廃機が発生している入間基地やF-4ファントムの用廃機が発生している百里基地の調達情報を見ると、ヒコーキマニア的には機体の分断方法が仕様に定められていることが注目に値するだろうか。切断部位を過去の仕様書からまとめると概ね次のようになる。詳細は変更されることもあるので、公告の都度、仕様書を確認していただきたい。

航空自衛隊 固定翼機>

1) 主翼前(コクピット後方)と尾翼前(主翼後方)の二か所で胴体を切断

2) 胴体両脇で主翼を切断、垂直尾翼は胴体取付部から切断

3) C-1の場合にはさらにエンジンパイロン部分で主翼を切断

航空自衛隊 回転翼機

不明

陸上自衛隊UH-1、AH1S>

1) テイルブームと胴体の結合部

2) テイルブームと垂直安定板の結合部

3) 垂直安定板とテイルローター取付部を切断

4) AH-1Sについては胴体を水平に二分割し、操縦席部分を破壊

陸上自衛隊 CH-47>

1) 前部ローター取付部と後部ローター取付部の二か所で胴体を切断

2) 機体上面ライン付近を基準に前部ローター取付部と後部ローター取付部を胴体部分より切断

 

海上自衛隊機>

不明

 

【契約情報と履行】

 入札の結果、業者が決まったら必要な契約を締結する。

 いつ、どの業者と、いくらで契約したかという情報は1~2ヶ月ごとにまとめて公表されることが多い。2000年代ごろに館山航空基地でHSS-2Bを解体した時は一機あたり30~50万円程度、2015年前後に百里基地でファントムを解体した時は一機あたり100~150万円程度だったと記憶している。一度に何機を処分するかによって業者の人工や機材のレンタル代が変わるし、売却する廃金属類の買取価格にも相場があるため、「一機あたりいくら」という「定価」はない。私個人の感覚的には入札時期にや処分機数により一機当たりで2倍近い価格差が生じているように思っている(実際、別項に記した通り価格差が大きいので何とかせいっ!と財務省から指摘されてる)。 

【雑談】用廃ファントム一機、おいくら万円? - 用廃機ハンターが行く!

  ある程度の用廃機を集めておき、業者がヒマな時期でかつ作業に使う機材(巨大なハサミや運搬用トラックなど)の稼働率が低い時期(レンタル料金が安くなる)に一気に処分するのが調達側の腕の見せ処なのだろう。

 履行の際には巨大なハサミでジョキジョキと機体を切り刻み、トラックに積み込んでお終いだ。作業時間は通常機なら一機に一日とはかからない。ネット上にいくつか作業中の写真が投稿されているが、C-1やP-3Cクラスでも一機一日でほぼ作業を終えているようだ。

 

【余談:現用機の引退時期の予想】

 航空機の運用期間中は定期的に点検・整備を行うことが義務付けられているが、先に述べた防衛装備庁のサイトでは今年度の「定期点検整備」の調達予定とその納期予定を見ることができる。また契約情報から機数と金額を知ることができる。

 自衛隊で使用する航空機はおおむね36か月から48か月の間隔で定期点検整備を行っている。保有機数と定期点検整備の契約情報から「最後の定期点検整備の契約」を推定すれば、その36~48か月後には全機引退(すなわち用廃機発生)となることが予想できる。諸々の条件によりシロウトが推定した引退時期は変動することも多いが、ある程度の目安にはなる。航空自衛隊のC-1と海上自衛隊のUH60Jについて用廃機の発生予想をやってみたので、興味があれば記事を見ていただきたい。

防衛装備庁 : 調達・公募情報

C-1の用廃予測 - 用廃機ハンターが行く!

海上自衛隊 H-60系統の展示機 - 用廃機ハンターが行く!

  

以上

編集履歴

24Jan.2021 公開

08Jun..2021 見直し更新(第3回目、字句表現等見直し)