用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

陸上自衛隊 AH-1Sの用廃機

 陸上自衛隊では1979年より2機のAH-1S(AH-1Eに相当)を導入して評価を行い、その後90機のAH-1S(AH-1Fに相当)を導入して第1~5対戦車ヘリコプター隊に配備した。現在では減耗が続き、2021年3月17日付で目達原駐屯地の第3対戦車ヘリコプター隊がAH-1Sの運用を終了して閉隊し、従来より配備されていたAH-64DとOH-1からならなる第1戦闘ヘリコプター隊に改編されている。

トリビア ”民間の”AH-1S

 92機が調達・生産されたAH-1Sだが、このうち73451号機は「納入前・引き渡し前」に富士重工(株)(現(株)スバル)で試験飛行を行っている際に墜落しているため「発注・製造は合計92機」、「納入・運用は合計91機」となる。ウンチクを語る際には前提条件など定義づけには十分注意して数値を記載していただきたい。なおこの事故は引渡し前に生じたことから機体の所有権は民間企業である富士重工(株)にあり、「民間機の事故」扱いとなった。このため運輸省(現国土交通省)の航空機事故報告書に記載された唯一の軍用ヘリとなっている(注:自衛隊機と民間機が絡む事故(空中衝突など)を除く)。

事故報告書はコチラ;http://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/90-6-none.pdf

 

【展示機】

 初号機73401は陸上自衛隊広報センターりっくんランドにて展示されているが、これ以外の機体はまだ展示機とはなっていない。せめて現在までに何号機までが用廃となったのか、入手可能な情報を確認し、推定してみよう。

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写真1 りっくんランドに展示されているAH-1S初号機。(2019年8月11日撮影)

 

【確認の方法】

(1) Wikipediaや既刊の雑誌などから調達数を確認する。

(2) 防衛白書の資料の部で保有機数(前年度末日時点での保有数)を確認する。

(3) Flyteamさんの写真投稿で近頃撮影されていない機体を探し出す。

(4) 上記の結果を突き合わせて推定する。


【推定・確認の結果】

<調達数の確認>

 前述の通り92機を調達し、91機が納入された。ウイキペディアにある予算別調達機数は次の通りだ。以下、調達機数(92機)を基準として話を進める。

 予算年度 /調達機数 / 機番 / 備考

 1977年度  1機     73401       用廃、りっくんランドに展示

 1978年度  1機  73402       用廃

 1981年度   12機    73403-73414    全機用廃

 1982年度  5機  73415-73419    全機用廃

 1983年度     5機  73420-73424    全機用廃

 1984年度     8機  73425-73432    大部分が用廃と推定

 1985年度  8機  73433-73440    一部用廃と推定

 1986年度  0機  調達無し

 1987年度  8機  73441-73448

 1988年度  8機  73449-73456

 1989年度  9機  73457-73465

 1990年度  8機  73466-73473

 1991年度  6機  73474-73479

 1992年度  4機  73480-73483

 1993年度  2機  73484-73485

 1994年度  2機  73486-73487

 1995年度  2機  73488-73489

 1996年度  1機  73490

 1997年度  1機  73491

 1998年度  1機  73492

 

保有機数の確認>

 防衛白書の「資料」にある「主要航空機の保有数・性能諸元を確認した結果は次の通りだ。

平成29年(2017年)3月31日 59機

平成30年(2018年)3月31年 56機(前年度-3機)

令和元年(2019年)3月31日 55機(前年度-1機)

令和  2年(2020年)3月31日 52機(前年度-3機)

令和  3年(2021年)3月31日 50機(前年度-2機、昨年度時点の予想は47機だった)

令和  4年(2022年)3月31日 47機(前年度-3機を予想)

 

<推定>(2021年07月13日改訂)
1. 調達機数は92機なので単純に考えれば機番の新しいものから50機分の73442号機以降が残っているハズだ。ただし42号機以降では51、54、58、74号機の合計4機が墜落や大破・中破している。よってさらに4機分を遡って73438号機以降の機番が残っていると仮定する。73438号機以前、すなわち1985年予算調達分(おおむね1988-9年頃に納入された分、73433-73440号機)が2021年度にはほぼ全機が退役している状況と言えそうだ。

2. そこでFlyTeamさんに投稿されたAH-1Sの写真から1984-5年度予算調達分の撮影日を確認し、上記の仮定を検証してみよう。機番と最終撮影日を確認した結果を以下に記す。2020年度は新型コロナウイルス感染予防のため、基地祭・駐屯地祭などの公開イベントはほぼすべてが中止となり、また緊急事態宣言発令などによる外出自粛も相まって目撃情報は極端に少ないが、1984年予算調達分の73430と73432号機が2020年度に撮影されている。73431号機に至っては2021年9月度にSUBARUで試験飛行を行っているので、あと3年程度は運用するのだろう。一方で85年予算調達分の73440が2017年以降の目撃例が無いなどから、1985年度調達分の機体に用廃機が発生し始めていることがうかがえる。

機番 / 最終撮影日と撮影場所

73430 2020年06月03日、木更津

73431 2021年09月21日、北宇都宮駐屯地SUBARU試験飛行)

73432 2020年10月13日、丘珠

73433 2006年11月6日に墜落、大破抹消

73434 2013年11月03日、海田市

73435 2017年09月26日、丘珠

73436 2019年11月03日、明野 本機もしくは73438は2021年1月夜間移送

73437 2020年02月13日、熊本

73438 2018年11月25日、浜松 本機もしくは73436は2021年1月夜間移送

73439 2019年11月16日、防大

73440 2017年04月16日、霞目

 

【まとめ】(2021年7月13日改訂)
(1) 陸上自衛隊では2021年3月31日時点で47機のAH-1S保有し、4個対戦ヘリコプター隊(および教育部隊)にて運用しているが、1985年度予算で調達した8機の機体の多くが既に用廃となったものと考えられる。

(2) AH-1Sはこれまで納入後30年間程度運用したのちに用廃となっていたようだ。この計算だと1995年度予算で調達したものが1998年ごろ納入され、30年後の2033年ごろに用廃となって複数の機体による「部隊運用」はできなくなるハズだ。だが保有機数が減って年間の飛行時間が従来と同じ程度であれば用廃となる機数は年々増えていく。おそらくは上述の予定より5年ほど前倒しとなる2028年ごろには全機が引退するものと予想する。

(3) 2028年ごろというと航空自衛隊ではF-35Bの導入が始まったころ、陸上自衛隊ではV-22の木更津暫定配備の延長もしくは佐賀空港への移転の判断が決着しているころだろうか。AH-64Dのアップグレード問題の進展は報じられておらず、新規導入の動きは聞こえない(一昨年だったかに次期戦闘ヘリの情報提供を求めた後の動きが判らない)。OH-1のエンジン部品は2020年秋に30セット(15機分)の契約があったようだが飛び始めるのは2024年ごろからだろう。

(4) 一飛行隊あたり稼働4機、整備中2機の6機配備、4個飛行隊の合計運用機数が24機程度となり、教育用として使用する4機分程度を合わせ、保有機合計が28機程度となる時期あたりが、その後の方針決定・公表時期と予想する。これから毎年5機づつ用廃となれば5年後(2026年)の話だ。

 一方で現在の「中期防衛力整備計画(平成31年~35年(令和5年、2023年))」には「戦闘ヘリコプターについて、各方面隊直轄の戦闘ヘリコプター部隊を縮小するとともに、効果的かつ効率的に運用できるよう配備の見直し等を検討する。」と記載されている。かつて一対戦車ヘリコプター隊あたり2つの小飛行隊が存在していたが、現在はすでに一対戦車ヘリコプター隊あたり一飛行隊と縮小されている。残るテーマは「配備の見直し等」の部分だ。今後、北海道と九州の部隊を削減するとは思われないため(注、追記参照)、本州内に配備した3個戦闘ヘリコプター隊を解隊して飛行隊数を減らすことになるだろうと予想している。この方針は2023年ごろに公表し、2024年に実施されるのではないかと考えるのだが、さぁ、どうなるだろうか。

・追記:2021年3月には九州目達原駐屯地AH-1Sが無くなり、AH-64DとOH-1の第1戦闘ヘリコプター隊が編成されてしまった。上記の予想は大ハズレである。これからはきっと本州の3個ATHが解体するものと予想するぞ!(2021年4月23日追記)

 

【注1: 参考:事故機】

73413 2005年09月18日 相浦で展示飛行中に墜落

73433 2006年11月06日 鴨川付近の山中に墜落

73451 1990年10月19日 状況不明

73454 2004年02月23日 鳥羽市付近で73474と空中接触、2名死亡

73458 2004年07月21日 北富士演習場内に落着

73463 2001年02月14日 午後6時ごろ千葉県市原市上空で訓練中にOH-6D(31260号機)と空中接触し、機首部分を小破したが修理され飛行可能となった。相手側のOH-6Dは墜落し、乗員2名は死亡した。

73474 2004年02月23日 鳥羽市付近で73454と空中接触、2名負傷

不明   2003年05月20日 青森県内に墜落

不明   2000年06月23日 東富士演習場内に落着大破、2名重傷

 

 以上

編集履歴

26Dec.2019 公開

04Nov.2021 見直し更新(第14回目、事故抹消機の見直し実施)