<はじめに>
2020年5月29日に行われた東京上空でのブルーインパルスのフライトにかかる費用は約360万円だったそうな。その内容を確認してみたので記しておこう。確認した内容は「東京上空フライトにかかる燃料代」、「松島基地ー入間基地往復にかかる燃料代」、「浜松基地のT-4を借りたときの燃料代」、「T-4の機体償却金額(仮)」、「C-1による整備員と支援機材の輸送にかかる燃料代」、「C-1の機体償却金額(仮)」だ。
本Blogの趣旨とはかけ離れているのだけれど、Facebook以外に他に残しておくネット上の場所がないので「雑談」としておきます。
写真 入間基地祭で飛ぶブルーインパルス。(2017年11月3日撮影)
1.ブルーインパルスが消費した燃料の費用について
1-1.東京上空フライトに要した燃料費の確認
<T-4B.I.機の搭載燃料の確認>
通常のT-4の機内燃料タンクの容量は600galだが、B.I.改修機はNo.3タンク(約85gal、322 L)をスモークオイル専用としている。よって機内搭載燃料量は600 - 85 = 515gal
今回のフライトでは120galドロップタンクを2本つけているので両翼で240gal。
搭載燃料の合計は515 + 240= 755gal(=2,858 L =2,286 kg、1L=0.8kgとして )
<ジェット燃料のお値段>
ジェット燃料のお値段は防衛装備庁の「契約にかかる情報の公表(中央調達分)」の「月別契約情報 競争(基準以上)」の契約結果から求めるが、ときどきの変動が大きいので50円/Lとしておく。(計算すると2019-2020年で41-48円/Lくらい)。
一機あたりの燃料価格は50円/L × 2,858 L = 142,900 円
なお本Blogでは比重を0.8として計算することにする。
参考:「JIS K 2209 航空タービン燃料油」https://www.jisc.go.jp/
6機編隊プラス全般統制機の合計7機が飛んだので7倍して1,000,300 円となるが、これは最大値であって、実際には消費した燃料で計算してみよう(以下同じ)。
<スモークの値段>
スモークオイルは通常のスピンドルオイルだ。80円/Lとしておこうか。これを先に書いたが約85gal(322 L)の容量があるNo.3タンクに搭載するので、1機あたり80円/L × 322 L =25,760 円。6機分なので6倍して154,560円也。
<消費燃料量>
さて、ここで燃費から求めてみる。
「中等練習機(XT-4)の開発」(日本航空宇宙学会誌第38巻第434号、1990年3月p.111-23)の「第3表 XF-3-30エンジンの性能表」に記された数値を用いて計算してみよう。
用いる数値は次の通りとする:XF-3-30の燃費は0.679kg/h/kgf。最大推力は1,670kgfだ。最大推力の80%で離陸から着陸までをこなし、飛行時間は12:35から13:15の40分間だ。この結果は;
消費燃料量は0.679×40/60×0.8×1,670×2基=1,210 kg/機 =1,513 L/機。
残燃料は2,286 kg - 1,210 kg=1,076 kg/機(燃費より約35分の余裕)
お値段的には1,513 L/機 × 50円/L = 75,650 円/機
実際に使った燃料の7機で飛んでいるので7倍して約53万円也。
写真 入間基地に着陸する増槽タンク付きのブルーインパルス機。2015年10月18日撮影。
1-2.松島ー入間基地間の往復フライトに要した燃料費の確認
松島基地ー入間基地間は直線で約320kmだが、多少の大回りをするだろうから400kmとしておく。この距離を最大推力の80%、速度650km/Hで飛んで37分(実際の離陸時間と着陸時間をTwitter発言で調べようとしたけれど、東京上空飛行のコメントであふれていてみつけられなかった)。
往復の消費燃料量は0.679 × 37/60 ×2工程 × 0.8 × 1,670 × 2基 = 2,238 kg/機 = 2, 798 L/機。
消費燃料の費用は2,798 L/機 × 50円/L = 139,900 円/機
7機で移動しているので往復の燃料代は約98万円也。
1-3. 全般統制機を浜松基地から借り、また返した際の燃料費の確認
今回は全般統制機を浜松基地から借りてきて使用しているので、これを受け取りに行った時と返しに行った時の燃料も計算しておこう。行程は次のようになる。
1)松島基地から1機のT-4B.I.機に二人が乗り、浜松基地に行く
2)浜松基地で機体を借り、二機にそれぞれパイロット1名が乗って松島基地に戻る。
3)松島基地から二機にそれぞれパイロット1名が乗って浜松基地に行き、機体を返却。
4)浜松基地から1機のT-4B.I.機に二人が乗り、松島基地に戻る。
松島基地ー浜松基地間は直線で約510km。多少回り道をして600kmとする。この距離を最大推力の80%、速度650km/Hで飛んで55分。単機片道の消費燃料量は0.679 × 55/60 × 0.8 × 1,670 × 2基 = 1,663 kg = 2,079 L/機。
燃料費は片道2,079 L × 50円/L = 103,950 円
都合単機で6行程分なので6倍して燃料代は約62万円だ。
【注1】
T-4B.I.は松島から浜松へはクリーン形態で飛べる。すなわち機内燃料の515Gal ( =1,950 L)で余裕をもって飛べるのだ。上記の計算式において必要量は片道 2,079 Lとしているので10%程度は多めに見積もっていることになる。まぁシロウト計算で誤差10%ならイイところかね?と自己評価。
【注2】
2020年7月7日、移動訓練のためにD2形態で松島基地を13:10ごろ離陸した1番機の浜松基地到着時刻は14:14ごろだったとのこと。所要64分。上記の計算では55分としているが、そこそこ良い値だったろうと思っている。(2020年7月7日追記)
1-4.ブルーインパルスT-4の燃料費とスモーク代のまとめ
東京上空飛行 53万円
松島基地往復 98万円
浜松のT-4レンタル 62万円
スモーク油代 15万円
合計 228万円
写真 2009年10月12日岐阜基地にて撮影
2.支援したC-1が消費した燃料費について
整備員や支援資材を松島基地から入間基地に空輸した際に用いたC-1の燃料費について確認してみよう。ただし適切な算出根拠となる数値が無かったので、ネット上のアチコチにある都合の良い数値を組み合わせて算出を試みた。
<使用した燃料代の計算>
C-1は6.5tの貨物輸送時に最大燃料での航続距離は1,200 nmとのこと。機内燃料は15,708 Lとすると燃費は1200nm×1.852m/nm /15,708 L =0.141 km/L。ほほう!
入間基地ー松島基地400㎞を送迎のために二往復している。使用燃料量を求めると400×4/0.141=11,348 L。
燃料代は50円/Lから11,348 ×50 = 567,400円となる。
T-4の燃料代と合わせるとここまでの合計は285万円だ。大臣発表の「約360万円」との差額はこの段階で75万円だ。
写真 入間基地祭で撮影したC-1。(2018年11月3日撮影)
3.参考計算、T-4B.I.のショー一回当りの償却金額
国有財産であるT-4の償却金額の計算は所定の方法(注)があるが、ここでは以下に記す数値をもとにした「均等割」の価格として考えてみよう。
注)国有財産台帳の価格改定に関する評価要領について
https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/tsuutatsu/TU-20111012-4670-14.pdf
T-4B.I.の機体価格は約23億円で約24年使用するので9600万円/年だ。3年に1度のIRANが1回約1.1億円なので用廃までに7回実施して7.7億円、24年で割り返すと年間約3200万円がかかることになる。機体価格+定期点検整備費の合計で年間あたり1億2800万円だ。1日2回、年180日飛んだとして年間飛行回数360回、飛行1回あたりの金額(イコール償却金額)とする約36万円/機/回だ。今回は7機飛んだので7倍して252万円だ。ただしこの金額は大臣発表の「360万円」には入っていませんね。大臣発表の金額はあくまで「直接経費」だけなのでしょう。
3.参考計算、C-1の償却金額
T-4と同様にして整備員や支援機材の送迎に使用したC-1の償却金額を「均等割」で考えてみる。計算に使った諸条件は次の通りだ。まずC-1の機体価格は約30億円。3年に1度、約2億円の定期整備を引退までに14回やるとすると機体プラス定期点検整備代の総額58億円。引退までの総飛行時間は過去に引退した機体の実績より17,800時間としよう(本Blog「航空自衛隊 C-1の用廃機」参照)。
飛行一時間当たりの経費は58億円/ 17,800時間 = 325,842円/時間となる。
入間ー松島間の飛行時間を片道1時間として二往復4時間で約130万円だ。
<おわりに>
さて、いかがだったでしょうか。シロウトのザックリ計算でしたが、根拠となる数値さえ得られれば、それなりに計算できるということが判れば良いかな~と思っています。
「計算にはこの数値や、この計算式を用いるべし!」「この項目も算出すべし!」という事項がありましたら、お教えいただければ幸いです。
以上
【編集履歴】
11Jun.2020 公開
07Jul..2020 見直し更新(第2回目、松島-浜松間の移動時間検証を注2に記載)