用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【KL】空軍博物館(閉鎖済、記録)

<編集履歴> 12Jun.2020公開、30Sep.2023見直し更新(第10回目、見直し更新)

 

 KLのSungai Besi基地内にあった空軍博物館は2016年5月1日より突然閉鎖された。ここではかつて存在した博物館の様子を記録として紹介する。なお2021年以降、機体は順次空軍士官学校内に作られる新たな博物館へと移転され始めている。

・参考URL:マレーシア空軍博物館(新博物館、建設中で一般非公開) - 用廃機ハンターが行く!

<場所 Place> RMAF Muzium (TUDM KL/ Sungai Besi基地内)

<座標 Location> 3.1176N,  101.7044E

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写真1  テブアン、F-5E、A-4PTMが屋外に並んでいた。(2014年6月21日撮影)

 

<訪問日 Visit> 07Oct.2012, 23Sep.2013, 21Jun.2014ほか

<行き方 Access>

1. KL Sentral駅からタクシーで13RM、10分程度。Sungai Besi基地ゲートを入ってすぐ左折すると博物館の入口だった。タクシーの運転手が「基地内に入っちゃうけれどいいのか?」と何度も確認してきたっけな。ただし帰りのタクシーは無い。高速道路Jl.Istanaの道路わきを1㎞ほど北に歩き、適当な小道に入りバスかタクシーで市内中心部に戻る。

2. 鉄道のChan Sow Lin駅から徒歩で約2㎞だが、高速道路Jl.Istanaを渡る手段がない。3車線分を走って渡ったが大変危険だった。このルートは使わない方が良い。

<解説General>

1. 1970年代からTUDM KL(クアラルンプール空軍基地、ローカル地名からSungai besi基地ともいう)の一角に存在することが知られていた空軍博物館。70-80年代は博物館とはいえ展示物はほとんどなく、また運営資金も無かったために墜落したF-5Eの残骸が展示されていたことで有名(?)であった。墜落機の展示は、それはそれで貴重だったが80年代後半頃には撤去されたようだ。

2. TUDM KL(基地機能としての存在)は2016年頃には移転した。これとともに博物館は2016年5月1日より事前通知なしに閉館されている。Sungai Besi基地・空港跡地はオフィス街に再開発されることになっており、2020年6月時点でGE-Pro画像を見ると、かつての基地内の建物は全て取り壊されて整地が進んでいる。再開発計画事業名Bandar Malaysiaで検索すると、いくつかのトピックが現れるので興味ある方は探ってみよう。

3.  博物館にあった機体の大部分は2020年6月時点では隣接するSungai Besi空港の屋根付きの覆いの下(3.1176, 101.7044)に置かれている。2016年9月時点では警察航空隊の管轄エリアであるため団体見学者のみ見学可能とのアナウンスがあったが、現在の状況は不明。再開発事業が終わったのちに空港は残されるのか、それとも二次開発事業で潰されるのか、また新たな展示施設が建設されるのかなど、今後の予定は全く判っていない。

【機体 Aircrafts】

(1) A-4PTM (M32-29) 2機あるA-4PTMのうち本機はハンガー内に格納・展示されていたが、2012年10月から2013年9月までの間に屋外に出されてしまった。綺麗な姿のままで保管されていた機体が熱帯の日差しと降雨のためにアッという間に退色してしまった。

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写真2-1, 2-2 A-4PTM (M32-29)は格納庫内に展示されていたが2013年ごろから屋外展示となり色褪せてしまった。(上:2012年10月7日、下:2014年6月21日撮影)

 

(2) A-4PTM (M32-30) 2機展示されていたA-4PTMのうち、こちらの機体は2000年ごろから屋外に展示されていた。

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写真3 このA-4PTM (M32-30)は2000年ごろから屋外に展示されていた。(2014年6月21日撮影)

 

(3) F-5E (M29-12) この機体も2012年10月から2013年9月までの間にA-4PTMと共に屋外に展示されたが、事実上「触り放題」となった。ピトー管はやや大きくなった子供がぶら下がるのに丁度よい高さにあるので、みんなブラ下がるぞ~と思っていたら、案の定、一年ほどでレドームの付け根からポッキリ折られてしまった。展示機に対する見物客の態度(レベルの低さ)やそれを知っているハズの博物館側の対応の貧弱さを目の当たりにして悲しい気持ちになった。本機は2018-2020年ごろにSendayan基地正門前に移設された。

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写真4-1, 4-2 かつては格納庫内に展示されていたF-5Eだが、2012年後半ごろに屋外展示となるとたちまち退色し、ピトー管は折られてしまった。(上:2012年10月7日、下:2014年6月21日撮影)

 

(4) カナディアCL-41G-5 (FM1125) 2機あったテブアンのうち1機はモニュメントとなっていた。2023年9月19日に新博物館に向けて搬出された。

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写真5 入口近くに飾られていたCL-41G-5。(2014年6月21日撮影)

 

(5) カナディアCL-41G-5 (FM2201) 2機合ったうちの一機はかつて格納庫内に展示されていたが2012年10月7日の訪問後、2013年9月23日までの間に屋外に出されてしまった。本機は博物館に移設済。

写真6 このCL-41G-5も屋内展示から屋外展示となり、直ぐに荒れてしまった。胴体後部のS/Nが”FM.201”のように見えるが、これはエアブレーキが少し開いていて「Mの後半と最初の2」がこの撮影アングルからだと見えないだけ。(2012年10月7日撮影)

 

(6) コモンウエルス CA-27 Sabre Mk.32 (FM-1902) 2機あったうちの1機。本機は博物館に移設済。

写真7 2機あったCA-27のうちの1機。新博物館に移設済。(2014年6月21日撮影)

 

(7) コモンウエルス CA-27 Sabre Mk.32 (FM-1907) スケルトン展示機だ。このように細部が露わになっている機体を雨風にさらされる屋外に出すかぁ?本機は博物館に移設済。

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写真8 野ざらしになっていたCA-27 Sabre Mk.32。のスケルトン展示機。(2013年9月23日撮影)

 

(8) MB339AM (M-39-12) 博物館展示機の中では恐らく最も新しい機体だった。本機は博物館に移設済。

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写真9 長くハンガー内に置かれていたが閉鎖される前の3年間ほどは屋外に置かれ、あっという間に退色してしまったMB339AM。(2014年6月21日撮影)

 

(9) DHC.4Aカリブー(M21-04) こちらは1970年代後半の博物館開所当時から展示されている・・・ハズだが、マレーシアで40年も屋外展示の機体が維持できるのかな?途中で入れ替えられているかもしれないが、そこまでは調べていない。

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写真10 1970年代後半から存在が知られているDHC.4Aカリブー。(2014年6月21日撮影)

 

(10) グラマンCSR-110 アルバトロス (M35-01, cn. G-451) カナダ空軍向けに作られた10機のCSR-110のうちの1機。アメリカ空軍のSA-16Bと同じような機体だが、エンジンをカナダーライト製R-1820-82(1,525 hp)に換装している 。経歴を見るとカナダの9303、N9427、チリの543、N8497H、G-5-20、G-AXFY(これは幾分情報根拠が怪しい)を経てマレーシアに渡り、FM1200、FM1801となった後にM35-01の番号が付与された・・・ようだが諸説あるので注意。

写真11 各国を転々としてきたアルバトロス。(2014年6月21日撮影)

 

(11) デハビランドDH.104 ダブ8 (FM1051) 空軍の人員輸送に使われていたことは明白だが、詳細は軽く調べた程度では全く分からなかった。真剣に調べる前に博物館が閉鎖されてしまったので、私個人としてはそれっきりになっていた機体。2023年9月19日に新博物館に向けて搬出された。

写真12 詳細がよく分からないデハビランド・ダブ。(2014年6月21日撮影)

 

(12) デハビランドDH114 ヘロン2D(FM1054) 2023年9月19日に新博物館に向けて搬出された。

写真13 こちらも詳細不明のデハビランド・ヘロン。(2014年6月21日撮影)

 

(13) ツインパイオニア

写真14 確か1970年代末期ごろの雑誌記事で紹介されていた古株、ツインパイオニア。(2013年9月23日撮影)

 

(14) アルエットIII (FM-1316) スクラップ寸前。「展示機」というより「放置機」だ。

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写真15 展示エリアの片隅にあったアルエットIIIの残骸。(2014年6月21日撮影)

 

(15) アルエットIII (M20-05) こちらは新しいアルエットIII展示機。本機は博物館に移設済。

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写真16 この機体はすでに新博物館に移設されている。(2012年10月7日撮影)

 

(16) ワスプ(M499-04, XT784) 本機は博物館に移設済。

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写真17(2013年9月23日撮影)

 

【末期まで格納庫内にあった機体】

上記の通り、閉館前の数年はA-4PTM、F-5E、MB339AMは格納庫から屋外へと出されてしまったが、10機前後の機体は格納庫内に展示されたままで閉館を迎えた。以下にそれらの機体を紹介する。

(1) Eagle-UAV (M51-01) 民間機Eagleを無人機化した偵察機。LIMA'96頃に実機(もしくはコンセプトモデル)が展示されている(まさか実用となるとは思わなかった)。閉館直前ごろに右前翼のエルロン(フラップか?)取り付け支持部が壊されてしまい、小翼が垂れ下がるようになっていた。2021年09月21日に新博物館へと移設された。

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写真18 民間機Eagleを無人機化した偵察機。キャノピーは黒色化されている。主脚間の胴体下部に偵察用センサーが見える。(2014年6月21日撮影)

 

(2) Scottish Aviation パイオニア2 (FM-1016) マレーシア空軍初期に連絡・偵察機として使われた・・・ようだ(よくわからん)。

写真19 Scottish Aviation パイオニア2。「古い飛行機」ということしか分からない(笑)(2013年9月23日撮影)

 

(3) パーシバルPercival プロボストT.51 (FM-1037) 胴体に描かれた”FM-1037”の番号は偽番号だが、本当の番号は不明。Sendayanの新博物館に移転済。

写真20-1, 20-2 プロボストT.51。(18-1: 2013年9月23日、18-2: 2012年10月7日撮影)

 

【余談その1】

 2014年ごろから2015年ごろにかけてKLの国立博物館にて行われていた展示イベントの際には空軍博物館からアルエットIII(M20-05)が貸し出されて展示されていたが、2016年後半には空軍博物館に返却されている。ネット上には「国立博物館にヘリがある!」という記事があるが、現在は存在しないので注意すること。ただし何らかのイベントの際に機体を貸し出すことがあるという前例だ。情報収集のアンテナを張り巡らしておき、この種のイベントがあれば行ってみよう。

以上