用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

航空自衛隊 保存指定航空機

<編集履歴> 26May.2020公開、01Nov.2021見直し更新(第4回目、表記方法一部変更)

 

航空自衛隊には装備品等を保存し、後世に伝えるための制度が存在する。

平成 10 年 (1998年)6 月 4 日 航空自衛隊達第 13 号「航空自衛隊における装備品等の保存業務に関する達」というものだ。その原文はネットで読むことができる;

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1998/gy19980604_00013_000.pdf

 

これをザックリ解説すると、「歴史的価値のある用廃となった装備品は装備品等保存委員会で審議のうえで2セット残しますよ(ただし大型機や設備は写真代替も可)」というもの。保存対象とするものは航空機、誘導武器、航空警戒管制用器材、弾薬(航空機搭載用ミサイル等を含む。)、武器、個人被服(制服、帽子、階級章、航空服、航空ヘルメット等)、 その他だ。どうやら1999年4月にオープンした浜松広報館での展示品の保存業務を念頭に設けられた制度のようだ。

まぁ、こんな制度が航空自衛隊にある(陸自や海自で明文化した制度は見つけていない)ということだけ判ってもらえればイイかと思う。興味ある方はキチンと原文を読んでくださいな(毎度ながらの他力本願モード)。

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写真1 浜松広報官館のT-6は保存指定航空機だ。(2018年8月13日)

 

さて本Blogにおいて重要なのは保存指定された航空機の存在だ。ここでは保存指定航空機と記すことにしよう。第17条では「2セットを残す」としているが、この達が発効した平成10年(1998年)6月時点で既にスクラップとなっていたり、1機しか残っていなかった機体には当然ながら適用されない。また第18条には「大型装備品等(大型航空機(中略))は、(中略)その構成品の一部又は写真等をもって保存に代えることができる」と”逃げ”の規定があるので保存指定航空機が必ず2機あるとは限らない。ネット上には「2機を残さなければいけない」と読んだ方がおられるが、これは間違いだ。「2セットを残す」のはあくまで「努力目標」でしかないことに注意しておこう。

 

 さて前述の通り、この達は浜松広報館オープン直前に作られた制度であることから、浜松広報館に展示されている機体のほとんどは保存指定航空機だろうと考えてはいるが、私自身はその明確な確認を行っていない。マニア間の伝手による伝聞や訪問時にチョコチョコと尋ねただけである。

 広報館や基地広報に問い合わせたり、情報公開請求を行えば判ることなのだろうが、これまではそこまで相手側に手間をかけさせるものではナイと思っていた。だが、このブログの存在が私の想像以上に大きな影響力を持つようになってきているみたいなので、そろそろ正しくしっかりと問い合わせてみようかと考えている。また航空雑誌社を動かして防衛省自衛隊から正規のルートで情報を引き出し、記事にしてもらうようリクエストを投書するなどの活動をやってみたいと思っている。

 もちろん本記事を読んだライターさんが独自に問い合わせ、先に記事したってまったく構わない。いや、その方が私自身の手間が省けるので大助かりなのだが・・・。私自身は一人の趣味人なので、経緯はどうあれ、最終的に正しい情報が得られるならば、それで十分満足なのだ。

 そんなことを考えている今日この頃ですが、皆様がここに掲載された機体以外の保存指定航空機をご存知でしたら一報いただければ幸いです。

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写真2 関係者の努力により航空自衛隊より博物館に貸与され、いつでも見学することができるようになったT-2CCV。(2019年11月11日撮影)

 

【保存指定航空機一覧】

(1) C-46D 91-1138 浜松広報館(屋外展示)*3 

(2) C-46D 91-1145 入間基地(屋外展示)、2004年1月27日指定*1*2*3

(3) F-1       70-8201 入間基地、修武台記念館、2006年2月27日指定*2*3

(4) F-1  90-8227 浜松広報館*3 

(5) F-4EJ改 17-8440 浜松広報館*3

(6) F-86D 84-8104 浜松広報館*3

(7) F-86F 82-7807 入間基地、2004年1月27日指定*1*2*3

(8) F-86F 02-7960 浜松広報館*3*4

(9) F-104J 76-8686 岐阜基地(格納非公開)*3*4

(10) F-104J 76-8693 浜松広報館*3

(11) MU-2S 13-3209 浜松広報館*3

(12) T-1A 15-5825 浜松広報館(格納非公開)*3*4

(13) T-2 29-5103 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に無償貸与、CCV実験機*3*4

(14) T-2 59-5111 浜松広報館、B.I.機、前期型*3*4

(15) T-2 29-5176 松島基地、B.I.機、後期型*3*4

(16) T-3 81-5501 静浜基地(格納基地祭時公開)、製造初号機*3*4

(17) T-3 91-5517 浜松広報館*3*4

(18) T-6F 52-0010 浜松広報館(格納非公開)*3*4

(19) T-6F 52-0011 静浜基地(格納基地祭時公開)*3*4

(20) T-28B 63-0581 浜松広報館(格納非公開)*3

(21) T-33A 71-5239 浜松広報館(格納非公開)*3

(22) T-33A 51-5620 入間基地(屋外展示)、2004年1月27日指定*1*2*3

(23) T-34A 51-0382 浜松広報館*3*4

(24) T-34A 61-0390 静浜基地(格納基地祭時公開)*3*4

(25) H-19C 91-4709 浜松広報館(格納非公開)*3 

(26) H-21B 02-4756 浜松広報館(屋外展示)*3*4

(27) H-21B 02-4759 岐阜基地(格納非公開)*3*4

(28) S-62 53-4774 浜松広報館(格納非公開)*3

(29) V-107 24-4832 浜松広報館*3

(30) V-107 74-4844 入間基地、修武台記念館、2010年3月19日指定*2*3

(31) バンパイア T.55 63-5571 浜松広報館(格納非公開)*3

 

<注>

1. *1はJW誌2021年8月号p.50より。

2. *2は基地広報に直接問い合わせて確認したもの。

3. *3は聞き取りなどの独自調査の結果、”正式には未確認だが、ほぼ間違いない”と考えているもの。

4. *4は岐阜かかみがはら航空宇宙博物館ボランティアの小山氏のサイト「こやまの航空宇宙博物館雑記帳」より(2007年9月4日付の記事)。

航空自衛隊岐阜基地・第2補給処の保存指定航空機見学

5. おそらくは浜松広報館にあるB-747政府専用機の記録等(写真やDVDなど)は「保存指定」されているものと個人的には考えている。

6. 浜松広報館(格納非公開)のB-65 (03-3094)が保存指定となっているかどうかは現時点の調査では確認できていない。現地を再訪した際にでも尋ねてみようと思っている。

7. 次の機体は国内に1~2機しか存在していないが「保存指定」となってるかどうかは未調査のために不明だ(順不同)。

 浜松広報館あるいは川崎重工岐阜工場にあるT-4、美保基地のC-1、美保基地とあいち航空ミュージアムにあるYS-11百里基地のRF-4E、茨城空港のRF-4EJ、新田原基地のMU-2(通称MU-2A)、芦屋基地のH-19C、小牧基地あるいは美保基地のS-62、那覇基地のB-65、石川県立航空プラザにあるB-747政府専用機の貴賓室関連の実物

8. F-86D、F-4EJおよびF-4EJ改、T-1A/Bは国内に複数存在するが「保存指定」されている機体は1機しか確認できていない(ほぼ確定というものを含む)。このため「残そうぜ!」」と声を上げ続ければ、もしかしたら「保存指定」となる可能性が残されている。

 

【余談】

「この機体を保存指定にしましょうよ!」という場合には第13条により部隊等の長に別紙第1の上申書にハンコを押させれば良いワケですね(注:すでに”ハンコ”は不要な状況かもしれない。サインのみだろうか?)。「部隊等の長」であって「飛行隊長」である必要はないので、広報部門や協力本部などにネジ込むという手段が使えそうですね・・・♪

 

以上