<編集履歴> 25Feb.2021公開、21Feb.2025見直し更新(第4回目、見直し実施)
<場所 Place> 〒252-1105 神奈川県綾瀬市蓼川
海上自衛隊厚木航空基地 海上自衛隊 厚木航空基地 オフィシャルサイト
米海軍厚木航空施設 https://www.cnic.navy.mil/regions/cnrj/installations/naf_atsugi.html
<行き方 Access>
(1) 正門までは相模鉄道相模大塚駅から約1.8km、バスを利用するか、25分程度歩く。さがみ野駅からは若干近く約1.6km、徒歩で20分程度だ。
<解説General>
(1) 海上自衛隊および在日米海軍の基地。基地正門付近にSNJ、A-4E、F-4Sがある。また少し入ったグラウンド周辺にSH-3、EA-6B、SH-60B、F-14Aが展示されている。SNJとA-4Eを除く5機は、いずれも「国内唯一の展示機」だ。ついでに「西太平洋側唯一」であったりもする。崇めよ!(笑)
もちろん、アメリカ海軍空母の「唯一の海外拠点/母港」が日本という国の横須賀にあり、厚木基地はその艦載機のための基地であったことが背景にある。目の前の事象(用廃展示機)だけでなく、その歴史や経緯、軍事的な背景事情も少しは頭に入れておこう。「日本だけの展示機だぁ!」なんていう浮かれた記事を書くと、軽薄なヤツと思われるぞ、きっと(自戒を込めて)。
(2) 例年4月中-下旬の日米友好祭(基地公開)と7-8月頃の盆踊り大会の時が撮影のチャンス。(ただし2020年、2021年は新型コロナウイルス感染防止のために友好祭は中止)。
(3) かつては厚木基地に所属していたCVW-5の各飛行隊が展示機をアサインされて管理を担当していたようで、部隊が変わるごとに担当する航空部隊ごとのカラーに塗り替えられていた。これら全てのマーキングを集めるとそれなりに見応えがある変遷集ができるが、本Blogではやらない(全てを撮影していないし、メンドウなので)。各機種ごとに1~数枚程度を貼りつけておくのみにとどめる。航空部隊が岩国に移転したあと、2022年8月20日に行われた盆踊りの際に訪問したが、A-4EとF-14Aのマーキングは落とされていた。今後、どのような塗装になるのか楽しみにしている。
<機体と座標 aircraft and location>
1. A-4E(Bu.151074, 35.4579N / 139.4333E)
1992年1~2月ごろに用廃となったVC-5所属機(UE-12)で、3月7日には展示のための塗装工事が始まっていた。機体はBu.151074だが、展示後の一時期には、主翼後縁近くの胴体に”Bu.150122”(1967年に抹消された機体)が記載されていたことがあった。展示機の管理は厚木基地所属の飛行隊がそれぞれの機体をアサインされて行っていたようだが、本機は飛行隊の性格によって、かなり塗装に変化の見られた機体だ。「もっとも劇的に変化した機体」といっても良いかもしれない。展示機を管理する固定翼飛行隊が岩国基地に移転してからは、比較的おとなしい塗装のままとなっている。2022年8月20日に行われた盆踊りの際にはBu.No.と尾翼のマークは消されていた。
写真1 A-4E。2022年8月時点では尾翼のマークとBu.No.は消され、胴体の文字は”Dumbusters”となっていた。(2017年04月29日撮影)
2. SNJ-6(Bu.112068, 35.4579N / 139.4338E)
自衛隊創成期に米海軍から海上自衛隊に供与され、”6196”号機として運用されていた機体。用廃後は下総基地第3術科校で教材となっていたものをレストアして展示機にした。この際、書類上は海上自衛隊から米軍に返還され、ワシントンD.C.の国立海軍博物館所有物を貸し出されている形になっている模様(公文書を確認したワケではないが、ネット上の根拠不明なウワサをかき集めると、こうなる)。1985年5月19日の厚木基地祭にて再塗装された機体がエプロンにて展示された後にゲート脇のマッカーサーガーデンに設置された。1985年の基地祭にて公開された時から1989年の基地公開ごろまでは機体右側は海上自衛隊塗装、左側は米海軍塗装であったが、その後は全身が米海軍塗装となっていた。補修と機体全体の再塗装のため、2019年ごろにはマッカーサーガーデンから一時姿を消していたが、コロナ禍による公開行事が中止となった2年間を経たのち、2022年8月20日の盆踊りの際には再び半身海自、半身海軍の塗装で展示されていた。
ヒコーキ雲さんの記事(2025年2月20日時点)では本機を”SNJ-5”と記述したり、”SNJ-6”としたりするが、アメリカ系のマニアサイトの多くはSNJ-6としている。Bu.やcn.が正しいのであればSNJ-6とするのが正解だ。本Blogでは"SNJ-6"説を採用する。なお、2004~2005年頃の本機の胴体後部には明確に”SNJ-5”と記載されていた。
余談ではあるが、米海軍で使用したSNJ-6の大多数(恐らく、ほぼ全て)はアメリカ空軍によりAT-6Fとして発注され、海軍に納入された機体であるため、空軍S/Nを併せ持つ。本機の空軍S/Nは”44-82114”だ。(数え間違えていなければネ・・・汗)
US Navy and US Marine Corps BuNos--Third Series (111749 to 120341)

写真2 キャノピーは黒く塗りつぶされている。2022年8月には全体が黄色のトレーナー塗装になった。(2017年04月29日撮影)
3. F-4S(Bu.155807, 35.4577N / 139.4333E)
在日米海軍のファントム運用史はマトモに調べたことはないが、ベトナム戦争時代の空母寄港時(1965年前後)に頻繁に飛来し、空母ミッドウエイの横須賀母港化と共に厚木に部隊が駐留したという流れだろう、多分。そのうちキチンと調べて、文章をUpdateするかもしれないけれど、当面は米海軍マニアのサイトでも参照していてくださいな。
そして、在日米海軍(CVW-5)最後のF-4Sが本国に向けて厚木基地を飛び立ったのは1986年4月26日のこと。その際にVF-161所属のNF-101/Bu.153881が見せた超低空離陸は伝説となった。
さて、厚木基地に展示されている機体は1989年4月23日には展示機としての塗装を終えてエプロンに引き出されている姿が写真に残されており、その後に設置されている。この当時は機体右側がVF-161、左側はVF-151の塗装だった。2022年8月20日の盆踊りの際には胴体エンジンノズル脇に描かれていたBu.No.は消されていた。
米海軍のみが使用したF-4Sはアメリカ国内に16機程度が残されているほか、イギリスにも1機(Bu. 155848)が展示されている。展示機種を見るとF-4J/Nも多数あるが、一部はF-4S改修機ではないかと考えている。感覚的なハナシだけれど、アメリカの用廃機リサーチは結構甘い。”おおらか”と言ってしまえば、それまでだが。沢山あり過ぎて、細かくやっちゃらんねぇよぉ!という事情があるかもしれない。ま、とにかくファントムの展示機は数多くあれど、F-4Sに限って言うならば、太平洋のこっち側からドーバー海峡までの間では唯一の機体だ。崇めよ!
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_displayed_McDonnell_Douglas_F-4_Phantom_IIs


写真3-1, 3-2 F-4S。エンジン排気口脇に描かれたBu.No.は2022年には消されていた。(2018年04月21日撮影)
4. EA-6B(Bu.160786, 35.4567N / 139.4343E)
在日米海軍/海兵隊のEA-6A/B運用史はマトモに調べたことはないが、1960年代後半ごろから岩国でEA-6A(複座機だよ)が確認されていたようだ。1970-73年頃には厚木でEA-6B(四座機だよ)が目撃され始め、1980年にはCVW-5にEA-6B飛行隊であるVAQ-136が配属された。VAQ-136は2012年頃にEA-18Gへと機種更新したので、最後のEA-6Bが日本を去ったのは2012年1~2月頃のことだろう(前述の通り、マトモに調べちゃいない)。その後の数年間は、海軍/海兵隊のローテション配備などがあったために、時々は各地で見ることができたが、2019年3月には全機が引退して、EA-18Gへと更新されている。
さて、現在の展示機はVAQ-136所属時代 NF-501)の2008年1月21日に厚木基地エプロンでエンジンから出火/損傷し、抹消となった機体だ。この事故が起きなければ、国内にEA-6Bが残されることは無かったのかもしれない。2009年3月13日(金)に設置する予定が「春2番」の大風の影響で延期され、15日(日)にポールの上への設置作業が行われた。だが、設計ミスでボルト穴が合わず、現場で3時間程度をかけて加工しながら据え付けたという逸話が残る。2022年8月20日の時点では機体左右のマーキングが異なっていた。
EA-6Bを運用したのはアメリカ海軍/海兵隊だけだ。そして”全世界に”27機が展示されているが、そのうち26機はアメリカ国内にある。すなわち、本機は世界で唯一、アメリカ以外の国に展示されているEA-6Bなのだよ。崇めよ!
・参考URL; EA-6B Prowlers on Display

写真4 基地公開の際にはいつでも見られるので、ありがたみは全く感じないが、実はアメリカ以外の国に唯一存在する機体なのだ!(2017年04月29日撮影)
5. UH-3H(Bu.152704, 35.4562N / 139.4341E)
HSL-51(第51対潜軽ヘリコプター飛行隊)の所属機で、Det.11(分遣隊11) として米第7艦隊旗艦ブルーリッジ(LCC-19)に派遣されていた2機のうちの1機。主に人員(艦隊司令官/VIP)輸送用として使われていたが、2006年に引退したとされる。2007年に「テイラー広場」に設置された。同年8月18日の盆踊り大会が一般初公開となったが、この時には周囲に芝生はまだ植え付けられておらず「設置したて」の状態だった。展示当初には尾輪近くに実際に所属していた部隊である"HSL-51"と描いていたが、2013年5月以降はHSC-12(第12海上戦闘ヘリコプター飛行隊)が人員移送任務を引継いだことから、"HSC-12"と描き直されている。
H-3系統ヘリコプターは各国で使用され、また展示されている。国内でいうならば海自のHSS-2/S-61系統のことだ。だが「米海軍のH-3系の機体」という視点で見ると、「本国以外で唯一の展示機」となる。そこそこに崇めよ!

写真5 アメリカ本国以外では唯一の「アメリカ海軍のUH-3H」展示機だ。機首の”11”は(HSL-51の)”Det.11”所属機であったことを示している。(2017年04月29日撮影)
6. F-14A(Bu.161141, 35.4562N / 139.4352E)
F-14は映画「フィナルカウントダウン」(1980)や「トップガン」(1986)により、チョー有名になった戦闘機で、日本国内への初飛来は、恐らく1976年の国際航空宇宙ショーだ。国内においてはCVW-5に配属されたVF-21とVF-154の2個飛行隊が1996年初頭ごろまで運用していた。アメリカとイランでのみ運用されていたが、アメリカでは2006年9月に全機が引退している。唯一の海外運用国であったイランでは2024年中に全機を退役させると表明している。
さて、厚木基地内の本機は1999年9月3日(金)に設置された。機体が大きいことと、最上位人気機種のため、公開時には常に見学者が周囲にいる。このため「人を入れない機体だけの写真」を撮るにはかなりの強運と、人がいなくなるまで待つ忍耐力が必要だ。また、公開時の夜間に打ち上げられる花火と機体を絡めたショットが写真投稿サイト等で高評価を得た結果、近年では開門と同時に「夜の花火と機体を絡めるための場所取り」が行われるようになってきた。そろそろ「撮り鉄」同様に各種の問題が表面化するのではないかと危惧している。2022年8月20日の盆踊りの際にはBu.No.と尾翼のマークは消されていた。
2025年2月20日時点では、イラン国内での実機展示は確認されておらず、本機は世界で唯一、アメリカ以外の国に展示されているF-14だ。崇めよ!
※イランのF-14は2024年末に全機が引退した(ハズ)ため、今後は数機が展示されるものと予想している。なお、街中にレプリカ機が展示されていたことがある(現状不明)。
・参考URL; F-14 Tomcats on Display | On Display | F-14 Tomcat

写真6 人を入れずに撮るのはかなり大変。(2019年04月27日撮影)
7. SH-60B(Bu.161564, 35.4567N / 139.4349E)
正確な設置年月日は不明だが、2014年5月3日(*)の基地公開時が一般初公開となった。2022年8月20日の盆踊りの前に塗り直されたようだ。以前とは誤差範囲程度の違いはあるものの、全体としては同じ塗装を保っている。H-60系統の用廃展示機は日本のSH-60Jを含めて各国にあるが、太平洋のコッチ側から、米東海岸までの間にある「米海軍のSH-60B」は本機のみだ。類似型式の機体が現役で多数飛び回っているので、個人的にはありがたみは感じないのだが、崇めておこう(だんだんトーンダウンしているなぁ)。
*2025年2月19日時点でヒコーキ雲さん掲載写真の日付は「5月6日」となっているが、その他の展示機の写真撮影の状況やFlyteam, Go Navy!さんのサイト情報より、基地公開日は「2014年5月3日」が正しい。

写真7 アメリカ以外では見ることのできない"米海軍の"SH-60B展示機。(2017年04月29日撮影)
以上