<編集履歴> 03Aug.2018Mixiにて公開、12Feb.2019はてなBlogに移設し、公開、
22Jan.2025「航空自衛隊 F-86Fの展示機」より分離独立、見直し更新(第0回目)
<はじめに>
「航空自衛隊 F-86Fの展示機」のサイズが大きくなって見づらくなったため、境界層板に関する記述を独立分離させました。(2025年1月22日記)
本命である航空自衛隊のF-86Fの展示機に関する記事はこちらです;
【初期型のF-86F(F-86F-25とF-86F-30)】
航空自衛隊はF-86F-40というタイプを主に運用していたが、米軍から供与された機体のうち、最初の30機(52-7401~62-7430)の中にはF-86F-25/-30と呼ばれる初期型タイプが含まれていた。これら初期型には主力となるF-86F-40と較べると次のような違いがあり、同等に扱うことは困難だった。このため、これら初期型は格納して早期に米軍に返却したり、RF-86Fへと改修してしまった。
(1) 主翼の長さが短い
(2) 主翼前縁にスラットが無い
(3) 主翼の中ほどの前縁に境界層板が立っている。
(4) コクピット計器盤の計器配置が異なる
【境界層板Boundary layer fence】
これらの機体の主翼の中ほどの前縁には、何の変哲もない金属板が取り付けられている。これを境界層板Boundary layer fenceという。簡単に言えば「主翼上面の気流を適正化するための役割を持つ板」だ。もう少し詳しく書くなら、「胴体側から翼端側へと向かう空気の流れを堰き止め」、もしくは「胴体側から翼端側への空気の流れを阻止して」、「気流が機軸に沿って後方に流れるようにする」ことにより、翼端失速を防止するのが主な目的の空力装置だ。気になる方は航空力学や流体力学、航空機の失速について、もう少しばかり齧ってみよう。Youtubeには空気の流れを可視化して説明する動画がいくつもあるぞ。
【ここで見られるゾ!】
主翼に境界層板が設けられている機体(初期型のF-86F)は千歳基地、静浜基地、小松基地、防府南基地、芦屋基地に展示されている。一度はどちらかの基地を訪問し、細部を写真に撮って、他の場所にある機体と見較べてみようじゃないか。1/72スケール程度の模型を見た程度では、その存在に気づかないこともあるが、間近に見ると意外に大きい装備だと感じることだろう。

写真1 F-86Fの初期型に見られる主翼上面の境界層板。主翼前縁にはスラットが無いことも同時に判る。(2023年6月3日、防府南基地にて撮影)
【参考】
F-86と同世代や、それより少し進化したあたりの世代に分類されるMiG-15/-17/-19系統の機体の主翼上には、前から後ろまで続く境界層板が2~3枚設けられていたり、一枚の大きな境界層板が設けられている。この時代、イロイロと試行錯誤した結果なのだなぁと思う。

写真2 J-5(中国製のMiG-17)の主翼上面には3枚の境界層板が設けられている。(中国広東省広州市星海公園、2016年11月6日撮影)

写真3 J-6(中国製のMiG-19)の主翼上面には1枚の大きな境界層板が設けられている。(中国瀋陽市中國航空博覧園、2014年7月19日撮影)
以上