用廃機ハンターが行く!

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航空自衛隊 F-86Fの展示機

<編集履歴> 03Aug.2018Mixiにて公開、12Feb.2019はてなBlogに移設し、公開、

23Oct.2023見直し更新(第17回目、日本文理大の教材機コメント追加)

 

【概要】

 航空自衛隊では1955(注1)-1982年3月15日までF-86F昼間戦闘機を使用していた。その数はMAP供与機135機(401-535)と国産機299機(701-000)の合計434機だ。なおMAP供与機の総数は401-580の180機だが、536-580の45機は供与されたのちは使うことなく格納され、1959年に米国に返却されている。またMAP供与機135機のうちの19機は偵察型のRF-86Fに改造された(詳細は後述)。

 現在では航空自衛隊基地に18機、陸上自衛隊駐屯地に1機、在日米軍横田基地と嘉手納基地に各1機、民間の施設や公園等に14機の合計35機が展示されている。

注1:MSA協定に基づき7機のF-86Fを築城基地で受領したのは1955年10月12日(参考した図書内には「12月供与」という記述もある)、浜松基地第1航空団に最初の2機のF-86Fが配備されたのは1956年1月5日とされる。

・参考文献:航空情報別冊「JASDFセイバースペシャル」(1983)

 

ブルーインパルス

 F-86Fは航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス(BIと略す)」で使用されていたため、展示用の特別塗装を施した機体が現在も残されている。詳細は別記事を参照ください。

【特集】ブルーインパルス塗装のF-86F展示機 - 用廃機ハンターが行く!

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写真1 入間基地展示機。航空自衛隊の保存指定機だ。(2019年4月6日撮影)

 

自衛隊基地・施設の展示機】

<航空自衛隊基地>

現在では18機のF-86Fが航空自衛隊基地・施設に展示されている。これらをおおむね北から南の順で以下に列挙する。美保基地那覇基地には展示されていない。

(1) F-86F-30 62-7415 千歳 主翼に境界層板付き

(2) F-86F-40 62-7508 三沢

(3) F-86F-40 82-7789 松島

(4) F-86F-40 92-7885 百里

(5) F-86F-40 82-7849 熊谷

(6) F-86F-40 82-7807 入間 保存指定機*1

(7) F-86F-25 62-7417 静浜 主翼に境界層板付き

(8) F-86F-40 12-7995 浜松基地、BI塗装、92-7929と記入

(9) F-86F-40 02-7960 浜松広報館、BI塗装、保存指定機

(10) F-86F-40 02-7966 浜松広報館、BI塗装

(11) F-86F-40 82-7778 小牧

(12) F-86F-40 92-7897 岐阜 62-7427(F-86F-30)と記載

(13) F-86F-25 52-7408 小松 主翼に境界層板付き

(14) F-86F-40 62-7527 奈良

(15) F-86F-30 52-7403 防府南 主翼に境界層板付き

(16) F-86F-30 52-7406 芦屋 主翼に境界層板付き

(17) F-86F-40 92-7938 築城

(18) F-86F-40 82-7777 春日、BI塗装

*1 基地広報班に問い合わせて確認した。

新田原基地に展示されていたF-86F-40(92-7916)は2020年8月頃に展示場から撤去され旧アラートハンガー前に移動された。キャノピーが破損した写真がネット上にあり、この後、廃棄解体されたものと思われる。

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写真2 千歳基地のF-86F-30。主翼上に境界層板のある初期タイプだ。(2016年08月07日撮影)

 

写真3 千歳、静浜、小松、防府南、芦屋基地に展示されたF-86Fに見られる主翼上面の境界層板。(2023年6月3日撮影)

 

<陸上自衛隊基地>

全国の陸上自衛隊駐屯地のうち、北宇都宮駐屯地にのみBI塗装を施されたF-86Fが展示されている。

(1) F-86F-40 92-7883 北宇都宮駐屯地(36.5166, 139.8758)、BI塗装(82-7818と記入)

 

<在日米軍基地>

(1) F-86F-40 62-7517 胴体にはFU-832、垂直尾翼には12832と記入。

(2) RF-86F S/N不明 嘉手納基地、機体は元の戦闘機型に戻されている。元となった機体は航空自衛隊機とする説と韓国空軍機という説がある。 

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写真3 熊本のSTANDARDさんに展示されている機体(2019年3月31日撮影)

 

【公共施設や民間施設等のF-86F】(番号は連番とする)

全国の公園などの公共施設や民間施設には合計14機のF-86F-40が展示されている。これらをおおむね北から南の順で以下に列挙する。なお北海道、中国、四国および沖縄の公園や民間施設にはF-86Fの展示機は存在しない。

(1) 12-7996 福島県 Old Car Center KUDAN (以前は富山県滑川市東福寺野自然公園に展示されていた02-7946の機体番号を書換えて展示したもの)

(2) 02-7962 山梨県 河口湖自動車博物館(BI塗装、02-7960と記入)

(3) 02-7970 山梨県 河口湖自動車博物館

(4) 72-7753 新潟県 魚沼市星光堂 (37.2303, 138.9673)

(5) 82-7865 長野県 麻績村聖博物館、無償貸付機*1

(6) 62-7516 静岡県 菅野医院分院屋上(35.0128, 138.4193、BI塗装) 

(7) 72-7749 静岡県 浜松の竜洋袖浦公園、無償貸付機*1

(8) 92-7910 愛知県 幸田町郷土資料館(72-7743と記入)、無償貸付機*1

(9) 62-7702 愛知県 三菱重工小牧工場、無償貸付機*1

(10) 機番不明 兵庫県加古川市(34.78N, 134.93E付近)の某事業所の屋根の上にF-86Fの前半分が飾ってあり、GE-Pro画像およびStreetViewで確認可能。キャノピーには72-7749(静岡県展示機)と記載されている。所有者が公開を好んでいないような書き込みがあるのでこの程度の紹介としておく。

(11) 92-7888 大分県 八面山平和公園、無償貸付機*1

(12) 62-7437 大分県 日本文理大 機首の3桁数字は"437"、コクピット左脇のステンシルには"62-7473"、キャノピー枠には"92-7880"と書かれている。コクピット内のラジオコールの有無は不明なので、どれが本当かは分からないが、以前からの情報より"62-7437"としておく。1981年にはリンドバーグ病院に展示されていた機体で1999年10月には日本文理大学に置かれている写真が残る。この間、約20年間の動向は不明だ。

(13) 92-7905 大分県 湯布院の岩下コレクション(以前は佐賀県鳥栖市とんかつの木村に展示)

(14) 02-7968 熊本県 スタンダード(米軍迷彩塗装)

*1 Jウイング誌2021年8月号付録より

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写真4 入間基地に着陸するノータンクのF-86F。(1980年12月22日撮影)

 

偵察機 RF-86F】 

 航空自衛隊ではRF-86Fという機体も使用していた。これはF-86F-25/-30のMAP供与機から「19機」を選び出し、機首の機銃を降ろしてカメラを装備する改造を施したものだ。改造によって運用機18機と整備訓練用としたカメラを装備したコクピット部分周辺のみの改造機1機分」が生まれた。この整備訓練用の「前半分」を1機とするか0.5機とするか、それとも運用には供さなかったので無視するか、記事執筆者によって表現が異なるために「18機、18.5機もしくは19機」という表現が文献等に見られる。定義(前提条件)によって、いずれの機数も正しいので記事等に機数を書く場合には総改造機数(19機あるいは18.5機)なのか、飛行可能な運用機数(18機)なのか、ハッキリさせる必要がある。残念ながら本タイプは国内に残されていないが用廃後にアメリカに返却された機体のうち一機がアメリカ国内で展示機として残されている。また1機が元の戦闘機形態に戻されたうえで沖縄の嘉手納基地内に展示されている(航空自衛隊所属時のS/N不明、韓国空軍のRF-86Fを改造したものでははないかという説も存在する)。

 韓国の国立墓地、戦争紀念館、基地などに同様の改修を受けたRF-86Fが4機ほど展示されているので、興味ある方は「チョイと眺めに」行ってみよう。展示場所は太田市顕忠院、春川市戦績紀念館、イムシル顕忠院、(おそらく)サチョン基地内だ。サチョン基地以外の3か所は一般人でも見学可能だ。それぞれの場所については別記事を参照して欲しい。

・参考記事URL:

【江原道】春川地区戦績記念館(チュンチョン(春川)) - 用廃機ハンターが行く!

【デジョン(大田)】国立大田顕忠院の展示機 - 用廃機ハンターが行く!

【全羅北道】イムシル(任実)護国院 - 用廃機ハンターが行く!

 

【個人所有のF-86F】

 ほぼ一機丸ごとを保有している場合と機体前半部程度がある場合には上述したが、これ以外にも個人所有物が国内には数機分存在している。向こう20年ほどの間には所有者の都合でオークションに出品されることもあるだろう。これらについては多くを語ることができないが、簡単な紹介をすることについて許可が得られたのは以下の1件のみだ。

(1) 02-7954 静岡県内個人所有物 計器盤部分(ウインドシールド前端からスロットルレバー付近までの約1mほど)がある。 (2021年前半にTwitter投稿あり)

以上