用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

海上自衛隊 C-130Rのお話し

<編集履歴> 02Oct.2024公開(「海上自衛隊 固定翼輸送機の展示機」より分離独立)、11Apr.2025見直し更新(第3回目、見直し実施)

 

 本記事では海上自衛隊機で運用しているC-130Rにまつわる話を紹介する。

【概要】

 東日本大震災対応で酷使し、引退時期を早めたYS-11M/MAの後継機として、6機分約150億円が2011年度(平成23年度)第3次補正予算で認められ、購入された。一機当たり20億円程度とされている。ちなみに航空自衛隊のC-130Hの調達費は、為替レートや装備により異なるが、おおむね250~300億円程度とされているので、新造機の十分の一以下という”超破格”のお値段だった。機体は米海兵隊普天間基地に駐留(当時)するVMGR-152で使用された後に2005年から2008年頃にかけて引退し、AMARCで保管されていた中古のKC-130Rから空中給油装置などを外し、必要な部品等を新たに取り付けるなどの改装したものだ。

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写真1 厚木基地に北側から着陸するC-130R。フルサイズ35mm程度だ。(2017年5月3日撮影)

 

 改修作業はアメリカで行い、輸送型に改装してから輸入した。流れとしては、アメリカから横田基地に飛来して通関手続きを済ませ、その後(だいたい翌日)に厚木基地へフェリーされている。歴史資料を読み解く際には「日本飛来日」と「海上自衛隊入手日/厚木基地飛来日」は異なるので注意が必要だ。

 海上自衛隊への引渡し前から、中古機ならではの細かなトラブルが相次いでおり、国内搬入後も低い稼働率に悩まされていたようだ。2010年代から2020年代ごろに発行された航空雑誌、軍事研究誌(2016年11月号)、OB会機関誌、個人のBLog(配信会社のサービス終了に伴い消失)などに、その苦労の様子がいくつか掲載されている。特別点検を行うなどの予算処置もとられており、「安かろう、悪かろう」「安物買いの銭失い」などと揶揄されている。それでも、後年に要した特別点検費用などをザっと積算してみたところ、新機購入の場合に比べて半額から2/3程度で済んだようだ。「何と言われようが、絶対に安い買い物だった」と言えそうだ。もっともシロウトの部外者には、YS-11M/M-A引退後に相当期間「業務上使えなかった」ことが、どれだけの影響を及ぼしたのかはわからない。この間に「何かあったら」海上自衛隊兵站は破綻していたことだろうと思う。なお新品にしたエンジンだけは「すこぶる快調」という話を聞いたコトがある。

 購入した機体は現在も運用中で、”用廃機は”発生していない(意味深な表現・・・)。

写真2 厚木基地R/W19に着陸するC-130R。(2017年5月3日撮影)

 

【機体】

 海上自衛隊では本機種に対して9051~9056の番号を付与して運用しているが、ここでは各機についてアレコレ述べてみる。なお、元海兵隊機であるため、アメリカ海軍のBu.No.が付与されているのだが、参考とするマニアサイトによって、そのBu.No.が異なっていることが判明している。つまり、元のBu.No.が判らないのだな。この話は後ほど詳しく解説する。

 

(1) 9051 (cn.382-4629, Bu.160015)

 2015年1月16日に横田基地に飛来(確定)。厚木基地到着は翌17日だと思われる(推測)。Bu.No.は参照した全てのマニアサイトで”160015”となっている。

 

(2) 9052 (cn.382-4635)

 6機のC-130Rの中で最も早く来日した機体で、2014年11月13日に横田基地に飛来したと推定する(確定できる情報なし)。翌14日に厚木にフェリーされた(防衛省公表あり)。Bu.No.には二つの説がある(後述)。

 

(3) 9053 (cn.382-4615)

 9052号機に続き、2番目に来日した機体。2014年11月28日に横田基地に到着。翌29日に厚木にフェリーされた。Bu.No.には二つの説がある(後述)。

 

(4) 9054 (cn.382-4677, Bu.160017)

 2015年3月4日に横田基地に飛来、同日中に厚木基地へフェリーされた。Bu.No.は参照した全てのマニアサイトで”160017”となっている。

 

(5) 9055 (cn.382-4683)

 2016年1月に横田基地に飛来(日付不明、12日夜から13日早朝と推定)、厚木基地到着2016年1月13日(確定)。来日後はほとんどフライトしておらず、約5年後の2021年7月17日と24日にFCF(機能チェック)飛行を実施したことがKF2021年10月号p.106に記されている。元は普天間のVMGR-152で運用されていたKC-130R (QD018/160018)とされるが、このBu.No.には二つの説がある(後述)。

 

(6) 9056 (cn.382-4696)

 来日年月日/厚木基地到着年月日は不明(2016年10月説あり)。2016年12月7日には厚木基地で撮影されている。Bu.No.には二つの説がある(後述)。

 

【シリアルナンバーとBu.No.】

 前述のとおり、海上自衛隊では本機種に対して9051~9056の番号を付与して運用しているが、9052, 9053, 9055, 9056号機のBu.No.には、それぞれ二つの説が存在する。
 これは「世界的に信用ある米軍機の機体番号データベースサイト」である”JOE BAUGHER'S HOME PAGE”の記載と、これまた信憑性の高い”The AMARC Experience”およびオランダの"Scramble"における記載が、それぞれで異なっていることが原因と考えている。どの記載内容を正として参考/引用するかによって、当該機のBu.No.は異なってくるのだ。

 以下に海自S/N ( cn., The AMARC Experience記載のBu.No./JOE BAUGHER'S HOME PAGE記載のBu.No./Scramble記載のBu.No.)を記しておくが、読者の皆様がBu.No.までを記載する際には、その出典を明らかにしておき、”責任回避/責任転嫁”をすることを強くおススメする(ボクが間違ったんじゃないモン。大元(引用元)が間違っていたんだヨ、と言えるようにしておこう)。(2024年10月2日確認時点)

(1) 9051 (cn.382-4629, Bu.160015 / Bu.160015 / Bu.160015) 三者とも同じ

(2) 9052 (cn.382-4635, Bu.160013 / Bu.160016 / Bu.160016)

(3) 9053 (cn.382-4615, Bu.160016 / Bu.160013 / Bu.160013) ★★

(4) 9054 (cn.382-4677, Bu.160017 / Bu.160017 / Bu.160017) 三者とも同じ

(5) 9055 (cn.382-4683, Bu.160018 / Bu.160020 / Bu.160018) ★★★

(6) 9056 (cn.382-4696, Bu.160020 / Bu.160018 / Bu.160020) ★

※ ★印は個人的な注目度を記すマーク。気にしないでください。


 どの記載が正しいのかは、今の私には判らない。正規のBu.No.を知るには機体内部の銘板を確認するか、輸入/購入関連の資料を確認するしか方法は無いだろう。つまりは「中の人」でないと判らないということだ。(注:日本の情報公開法を元にして、防衛省に対して開示請求すると、金と時間がかかるうえ、開示されないこともある。本件はアメリカのFMS契約ベースの案件なので、アメリカの情報公開法によりアメリカ側に情報公開を求めれば、早く/安く/確実な情報が得られることだろう。でも、私自身はやらないヨ。だって、まだ現用機で用廃になってないもの・・・)

 なお、イカロス出版発行の「日本で見られる軍用機ガイドブック 最新版」(2020年3月発行)ではオランダのScrambleのデータベース記載と同一になっている。またFlyteamさんではBu.No.の記載はなく、製造番号 (cn.)のみの記載となっている。

 

【参考サイト】

・The AMARC Experienceのデーターベースページより(Database>L>Locheed>KC-130Rと進む);

The AMARC Experience - Search the Database

・JOE BAUGHER'S HOME PAGEより;

US Navy and US Marine Corps BuNos--Third Series (160007 to 163049)

・オランダのScrambleのデーターベースコーナーはこちら;

Military Database

以上