用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

海上自衛隊 LC-90 / TC-90 / UC-90のお話し

<編集履歴> ??Aug.2018Mixiに公開、21Feb.2019はてなBlogに移設して公開、28Nov.2024「LC-90/TC-90/UC-90のお話」という記事に独立、29Nov.2024見直し更新(独立後第1回目、LC-90の調達機数など見直し)

 

 1974年から海上自衛隊で運用されているC-90シリーズ(ビーチクラフトキングエアの海上自衛隊仕様)ですが、2024年7月31日付けで「次期練習機及び次期連絡機に関する情報提供企業の募集について」という文書が発行されています。

・参考URL(オリジナル文書は削除されているようです):

防衛装備庁、海自の次期練習機・連絡機について情報提供企業を募集(8月14日まで)|Jディフェンスニュース(自衛隊・防衛省のニュース)

 この内容は「練習機(TC-90型航空機)と連絡機(LC-90型航空機)双方の後継機種に関して、その取得方法を検討するにあたり、情報提供を行う意思のある企業を募集する」というもの。

 比較的近い将来(おおむね5年程度先と予想。キリのよいところで2030年頃としておく)には機体更新が行われるとみて良いでしょう。

 LC-90 / TC-90 / UC-90はマイナー機種のために航空雑誌等で取り上げられることは極めて少なく、いつ頃から調達され、いつ輸入/受領されて、いつ何号機がどの部隊に配備されたかという記録なども、ネット上をサラリと見た程度では判らない「謎の機種」だ。例によって、細かいことはゆっくりと調べることにして、ネット上にある少ない情報をまとめてみた。

 

【 LC-90】

 海上自衛隊では国内5か所の滑走路を有する航空基地(八戸、厚木、岩国、鹿屋、那覇)に各一機づつの連絡機を配備するため、5機 (9301-9305)のビーチクラフトC-90キングエア(C90)を輸入した。運用開始は1989年からのようだ。初号機”9301”(LJ-1182/N3228V)は、ビーチにて1988年に製造されており、そのNナンバー”N3228V”は1988年8月2日に登録抹消されている。このため「1988年夏に輸入され、国内で整備の後、1989年(1988年度の1989年1~3月)に納入された」のだろうと思っている。その後、全ての機体を厚木基地の第61航空隊にて一括集中管理することになった(いつ頃かは不明)。

 これら5機は2024年11月末時点で全て現役だ。

<余談:”9306”号機は存在したのか?>

 イカロス出版の「日本で見られる軍用機ガイドブック 最新版」(2020年3月発行)によると"9306"号機が存在することになっている。だが、国内外のいくつかのサイトを見ても”9306”号機の写真や情報が出てこないのだな。どこから”9306”号機の情報が出てきたのだろう?と本の奥付をみると、編集協力者の項に自分の名があった・・・。

「ち、違うっ!オレじゃない!そうだ、アイツだ!アイツが悪いんだ!!」

(編集末期には”事件”が生じて、関係者一同でドタバタしていたっけなぁ、と遠い目)

※2024年11月29日の時点で、”9306”号機が存在した証拠はみつけていません。

写真1 本機は木更津航空基地に展示されることが多く、その到着/帰投時には比較的良好な条件でタキシングを撮ることができる。(2017年9月10日)

 

【TC-90】

(1) 海上自衛隊では1974年からビーチクラフトC-90シリーズを練習機TC-90として使用しており、その全機が徳島航空基地の第202教育航空隊に配属されている。ユルユルと長期に渡って小数機を調達/輸入しているので、調達時期によって若干タイプが異なっている。2024年11月末時点では6829-6841号機の13機を運用中だと思われる。

6801-6811: C90

6812-6818: C90-1

6819-6827: C90A

6828-6834: C90B

6835-6841: C90GT

写真2 TC-90は調達時期により、仕様が若干異なっている。この写真では手前の33号機(C90B)は3翅プロペラだが、後方の40号機 (C90GT)は4翅プロペラだ。(2022年10月1日撮影)

 

(2) PARは仙台のジャムコが実施している。東日本大震災時にはPARに入っていた6823と6828が津波被害に遭い、抹消されている。事故抹消機は無い。ただし、6838号機は2021年6月3日昼前の着陸時に左脚が引き込むトラブルが生じ、左翼をこすりながら停止。2023年11月18日の航空祭時には格納庫内で左翼とエンジンを外して修理中だった。

(3) 徳島航空基地にTC-90が1機展示されているほか、1機を消火・救助訓練用として用いている。

(4) 用廃となった5機のTC-90 (6822, 6824, 6825, 6826, 6827)はフィリピンへ譲渡され、海軍で使用されている。

 

【展示機/訓練機】

(1) TC-90 (6802) 徳島航空基地(34.1307N / 134.6044E)にて胴体部分を消火訓練に使用中。GE-Pro画像によると2009年11月18日撮影分以降に機影が確認できる。

写真3 徳島航空基地にて消火/救助訓練に使われているTC-90。(2022年12月17日撮影)

 

(2) TC-90 (6810) 徳島航空基地の正門に展示されている。ゲートガードとして展示された後に、本機を使用した救助訓練が行われたこともある。公式X(旧Twitter)掲載の記事を丹念に探せば、その時の様子が”発掘”できるハズだ。

写真4-1, 4-2 徳島航空基地正門にあるTC-90展示機(2022年10月1日撮影)

 

(3) TC-90 (6828) 千葉県山武市サバゲーパラダイス 2023年1月14日付のX(旧Twitter)投稿にて、胴体部分のみが現地に仮置きされている姿が紹介された。今後は再塗装された後にフィールド内に設置されるのであろう。私自身はまだ撮影していない。

 

【UC-90】

 かつては国土地理院から地図作製のための運用委託された航空写真撮影機UC-90 (9102)を運用していたが、2010年に退役し、解体・廃棄された。個人的には現役時代に1~2回程度目撃しており、ポジでも撮影してあるハズだが、探し出すことができずにいる。その姿を見てみたい方はネットで検索してください。

 

【参考】

・型式の詳細はこちらへ;

ホーカー・ビーチクラフトTC/LC-90キングエア,UC-90キングエア『くにかぜII』

以上