用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

海上自衛隊 MH-53Eの用廃機

<編集履歴> ??Aug.2018Mixiに公開、21Feb.2019はてなBlogに移設して公開、28Dec.2022見直し更新(第21回目、退役記念行事の話を追加)

【概要】

   掃海ヘリコプターV-107Aの後継機として11機(S/N: 8621~8631)を調達。1995年6月6日に掃海訓練中の事故で8626号機を失った。2017年2月20日に最終フライトを行って全機が引退。3月3日(金)に岩国航空基地にてMH-53E除籍記念行事が行われている。この時の記事に「用途廃止又は6000時間の耐命により逐次除籍になり、本日3月3日をもって全機が退役」との記述があるので、文書上の除籍日はラストフライトから約2週間後の3月3日になっている可能性がある。なお記念式典では8615機と8631号機が展示された。用途廃止後は部品取りのため米軍に売却したため、展示機となった機体は存在しない。

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写真1 国内に展示されたMH-53Eは無い。ただし2022年11月中旬の時点で8627号機のドンガラがMCAS岩国基地に残されている。(2009年10月4日岩国基地にて撮影)

 

【用廃後の機体の行方と製造番号について】

用廃後の機体の動向についてはJウイング誌2023年2月号(2022年12月21日発売)にてまとめられていたので、そのうちここでまとめてみたい。しばらくは・・・記事を読んでくださいネ!(私が書いたワケではないけれど)

さて海上自衛隊で使用していたMH-53Eのうち、S/N 8621, 8623, 8625, 8626の4機については参照するサイト(ネット上の「大手」軍事系サイトのデータベース)によってc/nが異なっていることが判明している。しかし機体は既に日本国内になく、確認できないのが現実だ。このため本記事を読んだ皆様がご自身の執筆物にc/nまでを記載する場合には、その出典を同時に記載されることを強く希望いたします。(ご連絡いただいたガメラさんに御礼申し上げます。12Oct.2020公開)。

<各サイトの記載確認結果>

大手軍事・航空サイトに記載されている海上自衛隊のMH-53EのS/Nとc/nを列挙してみよう。ここではS/N 、 Scramble on the webのデータベースのc/n、 日本のFlyteamさんに記載されたc/n、 helis.comのデータベースに記載されたc/nの順に記す。調査日は2020年10月12日だ。(airliners.netを追加、10月13日)なおMH-53Eのc/nは本来65543(あるいは65-543)のように5桁の数字であるが、ここでは見やすくするために下3桁のみを記載する。

<JMSDF's MH-53E, S/N and c/ns>

S/N : c/n(Scramble) / c/n(Flyteam) / c/n(helis.com) / c/n(airliners.net)

8621 : 543 / 540 / 540 / 543、一部異なる。

8622 : 542 / 542 / 542 / 投稿無し、全て同じ。2009年3月MH-53E初除籍機

8623 : 540 / 543 / 543 / 540、一部異なる。

8624 : 548 / 548 / 548 / 548 、全て同じ。

8625 : 563 / 562 / 563 / 563 、一部異なる。

8626 : 564 / 563 / 564 / 投稿無し、一部異なる。1995年6月6日事故抹消

8627 : 583 / 583 / 583 / 583 、全て同じ。胴体はMCAS岩国に残る。

8628: 585 / 585 / 585 / 585、全て同じ。

8629 : 586 / 586 /  586 / 586、全て同じ。

8630 : 587 / 587 / 587 / 587、全て同じ。

8631 : 610 / 610 / 610 / 610、全て同じ。

 

【参考:製造番号とは】

 まず「製造番号」とはメーカーが出荷する前に「製品」(今回は機体)につける製品管理番号のことだ。製造会社によってその付与方法や付与基準は異なっているが、基本的には「あの機体は今、どこの国の空軍でシリアルナンバー(通常S/Nと略す)何番として使われているのか?」ということを調べる際に用いる。マニアのためではない、自社製品のフォロー活動のために必要な個別管理番号だ。通常はconstruction numberを略してc.n.、もしくはc/nと表記する。あるいはmanufcturer serial numberを略してmsn.とする記載方法もある。小文字で書かれていることが多いが全て大文字であったり、頭だけ大文字であったりすることもある。本項ではc/nとしておこう。厳密を期す場合には「当該メーカーのやり方」を記載すればよい。

 先に述べた通り、付与方式はメーカー任せだが、基本的には連番だ。「アメリカから注文10機、毎度ぉ!」「お次、日本から3機!」「イランから2機入りましたぁ!」「日本から追加1機!」・・・なんてやっていると、製造番号(c/n)は01~10がアメリカ政府向け、11~13が日本向け、14と15がイラン向け、16がまたもや日本向け・・・となる。番号は製造会社での管理用番号なので、受注が確定した時点か、製造の初期に基本となる構造部分がラインに載せられたあたりで付与する。しかし、製造過程で生ずるミスや部品手配の乱れ、あるいは政治的背景(A国への納入よりもB国への納入を優先させるため、A国向けに製造中の機体をB国向けへと振り換える場合)などにより、出荷の順番が変わることもある。

 一方、受領側では受領順にS/Nを振るから、例えば前述の例を引継いでc/n13がc/n 12より先に出荷されちゃった場合のことを仮想の日本の場合で記すと001号機(c/n 11)、002号機(c/n 13)、003号機(c/n 12)、004号機(c/n 16)・・・という具合に、c/nでは連番の規則性が無くなっていく。

まぁ、こんなモンだ程度に頭に入れておいてほしい。

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写真2 編隊飛行を披露するMH-53E。(2007年9月9日、岩国基地航空祭

 

【情報募集】

 先に述べた通りMH-53Eは日本国内にありませんので、これ以上調べようがないというのが実情です。かつてこの機体の整備に関わった方で、〇号機の製造番号は確かに××だった、と記憶されている方がおられましたら、お教えいただけないでしょうか。

 また「こちらのサイトの方が確実性の高い情報が記載されている」というネット上の情報がありましたら、どうかお教えください。

 

岩国基地に残る8627号機】

 MCAS岩国基地内にはMH-53E(8627)号機のドンガラ(部品等を除いた残りの機体外殻主要構造)が残されており、2022年11月中旬に行われたExercise Active Shield中に行われたリカバリー訓練にて8627号機を車両に積載して移動させる様子が公式Facebookに掲載されている(MCAS岩国公式Facebookの情報をお知らせいただいたIさんに御礼申し上げます)。Jウイング誌2023年2月号(2022年12月21日発売)でも詳しく紹介されているので一読しておこう。

https://www.facebook.com/MCASIwakuniJapan/posts/pfbid025PJ1CwTPvdEqpFRvj3VqLRf7YS2SYYo95Nwp1VMTCajZHdUGhRkVUTRkWpwNtxq1l

写真3 MH-53E 8627号機の写真は無いので8629号機の写真を掲載する。(2011年9月18日海上自衛隊岩国基地航空祭にて撮影)

 

【余談】

海上自衛隊でMH-53Eを使用していたことを知らなかった」という発言が2022年10月頃のTwitterに投稿されていた。発言者は高校生くらいだろうか。当たり前のようにMH-53Eを眺めていたオッサンとしては「完全引退からわずか5年で、世代は変わったのだなぁ」と、しみじみ感じているところです。

以上