用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

【栃木県】帝京大学宇都宮キャンパスの教材機

<編集履歴> 06Nov.2022公開、09Dec.2024見直し更新(第3回目、富士RPH-2収蔵)

<場所 Place> 栃木県宇都宮市豊郷台1-1 帝京大学宇都宮キャンパス

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<訪問日Visit> 05Nov.2022

<行き方 Access> 

(1) JR東北本線(愛称は宇都宮線宇都宮駅西口5番バス乗場より宇都宮美術館方面行のバスに乗り約20分(350円)、帝京大学下車。バス停は大学構内国際交流センター前にある。機体のある格納庫までは教育棟群を抜け、約200m先だ。

<解説General> 

(1) 帝京大学宇都宮キャンパスには理工学部の航空関連学科があり、教育実習用に数機の用廃機が格納庫内に収められている。また格納庫内にはJAXAから寄贈された宇宙開発関連機の模型など10数点も展示されている。例年11月初旬ごろの土日に学園祭「帝祭」が開催されており、この時には格納庫が公開されて機体などを見学することができる。

(2) 航空祭のような人出はないが、そこそこに見学者が訪問する。一般論として機体の全体像を撮影するならば人の少ない土曜日の開場直後か、日曜日の閉門直前を狙って訪問すると良いだろう。

(3) 東京方面から宇都宮までの普通列車は数多くあるが、 宇都宮駅前から大学までのバスの便は学園祭の行われる土日祝日には一時間に1~2本程度しか走っていない。接続時間を確認して出かけよう。それでも私が訪問した際には列車の到着が遅れたため、予定していたバスに乗れずに40分近くを駅で無駄に過ごすことになった。駅構内や駅前で餃子の一皿でも食べていればと思ったが、朝一番での現地訪問を狙っているとお店も開いていない。まぁこんなこともあるさね。

【展示機 Aircrafts】

(1) 三菱T-2 (79-5193) 航空自衛隊の無償貸付機で2005年11月の公開時には存在していた。引退当時に所属していた松島基地第4航空団第21飛行隊のマークを尾翼に描いている。後期型だが20mm機関砲は外されている。外された機関砲自体は周辺に見当たらなかったので、事前に取り外して搬入したのかもしれない。構造を理解する教育に使用されているため、いくつかのアクセスパネルは外されていて中身を見ることができる。たしかに屋外にある展示機とは一味違った機体構造や搭載機器類に関する知識が得られる展示物だ。二基のエンジンは外されており、そのうちの一基はさらに分解されて展示されている。機首のレーダーとFCSは外されて床に置かれていた。離れて撮影することが困難なので、横位置全景を狙うのであれば20mm程度以下の超広角レンズが必要だろう。また真横全景を撮影した場合には開いた扉から入る光が当たる機首付近と光の当たらない垂直尾翼付近の光量の差が大きいため、撮影後にトーンや色合い補正などの画像加工が必須となる。

写真1-1, 1-2, 1-3 三菱T-2後期型。手前は宇都宮ソリッドモデルクラブの作品展示。機首レーダとFCS部分は外されて床に置かれていたが、機体構造の理解という観点からは不要な装備のためか、扱いがぞんざいな気がした。(2022年11月5日撮影)

 

写真1-4 機首部右側にある疲労度積算計。アグレッサー所属機の主翼破断事案以降に取付けられたもので-2~+7Gの荷重が何回機体にかかったかを記録している。T-2運用の歴史の中で主翼破断という事故があったこと、その対応の一部を理解することができれば幸いだ。(2022年11月5日撮影)

 

(2) 富士T-3 (01-5529) 航空自衛隊の無償貸付機で2006年12月には搬入されていたようだ(正確な搬入日は不明)。引退当時に所属していた静浜基地第11飛行教育団のマークを尾翼に付けている。

写真2 富士T-3の教材機。(2022年11月5日撮影)

 

(3) ロビンソンR22Beta (JA01TU) 格納庫内にある最も新しい機体とのこと。2010年に新規にJANo.登録された。

写真3 回転翼機の実習機はこのロビンソンR22Betaだけ。(2022年11月5日撮影)

 

(4) 日飛ピラタスB4 (JA2279) スイスのピラタス社が設計した全金属製のグライダーB4は322機が製造されたのち、1978~1980年頃に日本飛行機株式会社(日飛)がその製造権を取得し、日本国内で製造・販売を進めた。しかし13機を販売(JANo.登録も13機)しただけで1982年頃には滑空機事業から撤退してしまった。本機は国内登録された13機のうちの1機だ。過去の学園祭ではグランドに展示されたこともあるが、私が訪問した際には翼を外して格納庫内に置かれていた。

写真4 翼を外して格納庫内に置かれていた日飛ピラタスB4 (JA2279)。学園祭の案内誌にはグランドで展示する旨が書かれていたのだが、本機を展示する予定だったのだろうか?(2022年11月5日撮影)

 

(5) 日飛ピラタスB4T(JANo.未登録機)  本機は日飛が単座のピラタスB4グライダーを複座型へと独自に改造したものであり、世界中で本機のみしか製造されていない貴重な機体だ。ネットを探すと右翼中ほどに標準ピトー管を付けて左旋回する本機の写真が一枚だけ見つかる。写真をよく見ると当時からJANo.やJQNo.は機体に描かれていない。JQNo.は分からないが、データベースサイトを見るとJANo.の登録はされていないようだ。ちなみに日飛ではサイドバイサイドの複座モーターグライダーNP-100を自主開発してJQ2001の番号を取得したが、やはり販売には繋がらなかった。NP-100の実機は科博廣澤航空博物館に展示される予定だ。

写真5 世界に一機しか存在しない日飛ピラタスB4Tがここにある。周囲にはT-2のエンジン(TF40-IHI-801)が分解されて部品ごとに展示されていた。(2022年11月5日撮影)

 

【その他】

(1) 有志チームは何度か鳥人間コンテストに出場しており、学園祭では過去に出場した機体(部品や残骸を含む)を見ることができる。TVでは放映されない機体構造や操縦者(人力エンジンね)の話などジックリと伺うことのできるよい機会だ。

写真6 2022年夏の鳥人間コンテストに出場し、1,200mあまりを飛んだ機体。(2022年11月5日撮影)

 

(2) RPH-2 富士重工(株)(現SUBARU)が製作した多目的無線操縦ヘリコプター。自重230kgと他の農薬散布に使われる無線操縦ヘリよりも大型で、航空機製造事業法で定められた150kgを超えるため、同法の適用を受ける(私自身は同法を読んでおらず、Wikipediaからの抜粋情報です。2024年12月9日記)。搭載量は100kgで、農薬(60kg)とのことなので、燃料は約40kgということなのだろう。価格は3,000万円だそうな(Wikipediaより)。

写真7 大型の事業用ラジコンヘリRPH-2。(2022年11月5日撮影)

 

【注意・懸念事項】

 2022年11月5日(土)に訪問した際のこと。現地で配布されていた案内誌には"航空宇宙工学科「格納庫開放」は6日(日)10:00~16:00"としか書かれていなかった。また、構内で偶然耳にした学生達の会話に、「格納庫は今日も開けちゃったんだってよ」という言葉があった。もしかしたら正規の格納庫公開は土日二日間の学園祭のうちの日曜日の一日だけだったのかもしれません。「帝京大学」や「帝祭」の単語にて過去のTwitter発言を確認してみると「”明日は”格納庫を開放します」という日にち限定の発言もあることから、いよいよ格納庫開放を行うのは学園祭開催期日のうちの特定日だけではないかと言う感じがしています。航空機の見学を目的として学園祭を訪問される方は、直前に学園祭実行委員会や関連Tweet等で格納庫が公開されることを確認したうえで訪問ください。なお私自身は3週間ほど前に問い合わせをしていますが、その際には限定した日時のみ格納庫の開放を行うという話は無かったことも付け加えておきます。

 

【余談】

帝京大学宇都宮キャンパスの裏手には宇都宮美術館があり、マグリットの「大家族」などが展示されています。興味ありましたら、ついでに訪問ください。

以上