用廃機ハンターが行く!

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【雑談】航空博物館の図書スペースについて

<編集履歴> 22Feb.2022公開

 

【はじめに】

 浜松広報館では2021年春のリニューアルに際して図書スペースを廃してキッズスペースとイートインコーナーに改装した。月並みな言葉では「リニューアルの内容はどうかご理解ください」と言われる(注:直接、本当に言われている訳ではない)のだが、どうにも「理解・納得」できないので一言書き残しておこうと思う。これはバンパイアなど貴重な機体を展示場から撤去した件とは別次元での批判だ。

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写真1 図書スペースを廃し、キッズスペースとイートインコーナーとした浜松広報館。何も置いていない書棚が悲しい。(2021年12月21日)

 

【定義】

(1) 博物館法による基づく「登録博物館」となっている航空関連の博物館は成田空港の脇にある「航空科学博物館」のみだが、ここでは「国内の航空機展示施設」一般のことを”航空博物館”と称して記載する。

<参考>

博物館法と”航空博物館” - 用廃機ハンターが行く!

国内の主要な航空機展示施設 - 用廃機ハンターが行く!

(2) ここでは「開架式で一般客が自由に書籍を手に取ってみることのできる場所」を「図書スペース」という言葉で表現する。施設によっては大きな一室だったり、休憩スペース脇に置かれた小さな本棚だけだったりと規模は様々だし、「図書館」「図書室」「資料室」「図書コーナー」などいろいろな名称があるが、全て同じ扱いとしておく。なお特定の施設の特定の場所を指す場合には、その施設の固有名称を用いることにする。

(3)「展示物(主として航空機だが)関連について、より多くのことを知りたかったら、こんな書籍がありますよ」と訪問者に対して紹介しようとする意図が認められると考えられた場合に「図書スペースがある」としておこう。

(4) 「蔵書」および「蔵書数」のことを「ライブラリ」と称する。

 

【図書スペースの現状】

 国内の"航空博物館"には"図書スペースは設けられているか?まずは現状を確認してみよう。別記事「国内の主要な航空機展示場所」に記した場所とそれ以外の展示場所について、自分の記憶とネット上の情報から拾った結果を以下にまとめてみた。おおむね北方から南方にかけての順番に並べてある。

 私設博物館に図書スペースが無いことはスペースの都合や設立趣旨からしても仕方がないと思うところはあるのだが、「浜松広報館」のほか「あいち航空ミュージアム」「石川県立航空プラザ」「鹿屋基地史料館」のように公的博物館の性格が強い施設に図書スペースが無いのは少々残念に思う。一方、館内には図書スペースが無いものの「市内の図書館」にそれなりのコーナーを設けている岐阜かかみがはら航空宇宙博物館のやり方は高く評価できる。ただし、やはり「機体のある現場」で「手に取って眺める出来る書籍」はある程度置いてほしいと思う。

※見落としや誤認がありましたら一報いただければ幸いです。

・参考:国内の主要な航空機展示施設 - 用廃機ハンターが行く!

 

<図書コーナーのある航空博物館>(記憶に残るもののみ。これ以外にも図書コーナーのある航空博物館はあるかと思います。気づいたらUpdateします。なおコロナウイルス感染防止のため、一時的に閉鎖しているところがありますので、ご利用の際には事前に訪問先にお問い合わせください。)

(1) 三沢航空科学館(青森県):ライブラリはかなり充実している。

ライブラリー Library | 青森県立三沢航空科学館

(2) 航空科学博物館(千葉県):東棟1階に館内図書館がある。

(3) 東京都立産業技術高等専門学校科学技術展示館:学内に図書館があるが、一般非公開。公立校なのできちんと申請すれば利用できると思う。

(4) 陸上自衛隊広報センター りっくんランド(埼玉県:東京にするか悩ましい所だ・・・):簡易な書棚がある。

(4) 所沢航空発祥記念館(埼玉県):展示スペースの一角に書棚とソファがある。

(5) 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(岐阜県):館内には無いが各務原市中央図書館2階に特設コーナーを設けている。

(6) 万世特攻平和祈念館(鹿児島県):休憩コーナーの脇に書棚がある。

 

<図書コーナーのない航空博物館>

(1) オールドカーセンター・クダン(福島県)

(2) 大慶園(千葉県):商業施設(娯楽施設)なので無くて当然。

(3) 河口湖自動車博物館(山梨県

(4) 浜松広報館(静岡県): 2021年3月のリニューアルで撤去。ただし自衛隊内新聞などごく少数の発行物は閲覧可能。

(5) あいち航空ミュージアム(愛知県)

(6) 航空プラザ(石川県): 一般用の図書コーナーは無いが2000年頃には事務室内に非公開の書棚があった。職員資料用か。

(6) ミツ精機株式会社 翼の広場(兵庫県

(7) 太刀洗平和祈念館(福岡): 2021年に訪問したが記憶にない。「あった」ということが明確になるまでは「ない場所」に分類する。

(8) 鹿屋航空基地史料館(鹿児島):図書スペースは無い。

(9) 知覧特攻平和会館(鹿児島県):図書スペースは無い。

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写真2 所沢航空発祥記念館の図書スペース。商用の航空雑誌が主体だが学会誌や業界専門誌もある。図書館とは異なり、中身を読ませるよりも「こんなことをやっている世界があるんだ」と「気づかせること」が大事だと思う。興味がわけばネットで調べられるが、その分野があることを知らなければ検索すらできない。(2022年2月18日撮影)

 

【図書スペース設置の意義】

(1) 博物館で一般書開架式図書スペースを設ける理由のうち、私自身が最も需要だと思うのは「このようなことをやっている分野が存在する」ということを「訪問者」に「新たに」あるいは「改めて」気づかせることにあると思う。訪問者の中には資料や史料を探しにやってくる人もいるだろうが、そういう人は「調べ方」を心得ているので、ぶっちゃけ本Blogでの議論の範囲からは無視してよい。

一般の観客が「へぇ!こんな本があるんだ!」「こんなことを主に取り上げる業界があるんだ!」「こんな仕組みになっていることを解説した本があるんだ!」などということに「気づくキッカケ」が生じればそれで良く、また十分だと思う。興味がわけばネットで調べ、ネット情報で十分でなければさらに文献を調べ・・・となるハズだ。もっともそこまでやる人は訪問者100人のうち1人とはいないだろうけれど。

(例えば高校卒業生のうち、工学系大学に進学し、航空工学系の大学院に進む学生がどれだけいるかということを考えてみよう。令和4年度(2022年度)大学入学共通テストの 志願者数は53万367人。国内で航空工学部のある大学数は29大学(らしい)。一学部200人として5,800人なので、この時点で大学進学希望者(≒大学入学共通テスト志願者数)の1.1%だ。)

「航空関連分野に興味を持った」程度の人なら100人のうち5人くらいは出てくるかなぁと思うが、それで十分だと思う。訪問者の1~5%程度に対して興味を抱かせれば大成功な「書籍の展示物」といってもよいだろう。

 

【デメリットや問題点】

(1) 公開している本は傷むことを前提とする。

 子供が投げる・破るは当たり前。大人でも唾をつけてページをめくったり、ページを破って持ち去ったり、アンダーラインを引くなど、通常の図書館で生じていることは全て起こりうるものと受け止めたうえで開架式図書を置いてほしい。

(2) 盗難も起こりうることを前提とする。

 専門書や写真集などは特にその傾向が高いだろう。監視カメラを設置して「見てますよ」という状況を作るだけで、幾分は盗難の発生確率を下げることができるかもしれない。

(3) 書棚を置くことで「展示スペースが無くなる」とか「管理の手間がかかる」ということもあろう。

写真3 筑波海軍航空隊記念館の休憩スペースにある書棚。太平洋戦争中の戦記物が多いのは記念館の特色として当然だが、現代の機体に関する本もある。特筆すべきはミュージアムショップコーナーにて地元の古本屋とタイアップして主に太平洋戦争前後の戦記や航空機に関する古本を多数販売していること。中には新鋭ジェット戦闘機のムック本や近年発行された航空雑誌も混じっているが、その種類と量はこの書棚より多いくらいで驚かされる。興味を持った方にその場で手に取っていただき購入につなげるという意味では良いビジネスモデルだと思うが、売り上げのほどは不明だ。(2022年5月29日撮影)

 

【航空博物館に希望すること】

 私が希望することは「航空博物館には開架式の図書スペースを大なり小なり必ず設けて欲しい」。これに尽きる。この想いの直接的な発信先はもちろん浜松広報館だが、その他の公的性格の強い「あいち航空ミュージアム」や「石川県立航空プラザ」などにも言える一般論だ。

さらに細かな希望事項を以下にまとめておこう。

(1) 名称は図書室、資料室、書庫、ライブラリーなどどんな形でもよいが、子供~高校生くらいが「国内外にはこんな世界や社会があるんだ」と気づくキッカケを与える場所であれば良いと思う。もちろん良い歳の大人が「再発見」するキッカケとなればもっと良い。

(2) ここにはいわゆる一般書と言われる次のような図書を国内発行図書に限らず、できれば海外発行図書まで、航空に関する様々な分野の書籍を集め、子供から大人に対して公開して欲しい。理由は上述の通り「見学者に対してこのような世界が存在する」ことを知らしめることにある。収集し、公開する書式は次のモノを含むことを希望するが、目的が最新知識の普及ではなく、「このような世界があることの紹介」であるので最新版である必要はない(やる気があれば、廃棄する古い雑誌などを格安で入手して揃えられるはずだ。予算的には大きな負担にはならない)。;

・航空関連の商用誌(月刊誌、季刊誌など。性格上、軍事関連誌を含む)

・専門誌および専門書(学会誌、業界誌、工学関係書籍、運行/運用マネジメント関連書籍)

・写真集および撮影指南書

・機種ごとあるいはテーマごとの特集本(ムック本など)

・歴史本(戦争史、運用史、技術史、個別の機体の開発史など)

・各種の単行本、手記、回想録、航空関連小説、コミックなど

(3) 貴重な文書や資料は上記とは別にして管理して欲しい。たとえば別途入場制限のある資料室や、あるいは鍵のかかる資料棚に置き、管理・監視の下で閲覧させるという方法だ。子供が戦前に発行された本を投げ合ったり、閲覧者が唾を付けてページをめくったり、図書にアンダーラインを引いたりする人が無いように監視できるようにするというのが趣旨だ。

(4) 図書コーナーの設置方法の提案として、例えば休憩スペースの脇に飲料の自動販売機程度の大きさの書棚を置き、古本屋や寄付などによって入手した一般誌を(盗難前提で)置くだけでも「一般の訪問者」に対しては十分な啓蒙となるのではないだろうか。筑波海軍航空隊記念館での実施例を写真3に紹介しておく。

以上