用廃機ハンターが行く!

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【中国の展示機】J-5(歼5)シリーズとMiG-17

<編集履歴> 09Dec.2021公開、13Dec.2021見直し更新(第3回目、MiG-15の話とJ6/MiG-17中国の話を分離独立)

 

 中国各地にある歼5(J-5)シリーズについて書いておこう。主に中国の百度百科の解説から抜き書きしたメモ書き程度の内容だが、お役に立てれば幸いだ。これを見て記事を書こうなどと思ったライターさんは必ず百度百科および西側ライターの文献等を確認して数値(年月日や生産機など)を確認してくださいね。

【機種名の表記方法】

本Blogにおける中国語の機種名表記のルールについては別項を参照ください。

【中国】基礎編 機種名表記について - 用廃機ハンターが行く!

【MiG-17とJ-5シリーズ】

 さて中国空軍(中国人民解放軍空軍)は少数のMiG-17Fを導入したのち、これをライセンス生産してJ-5と呼んだ。J-5シリーズにはMiG-17Fのライセンス生産機であるJ-5(瀋陽製)、MiG-17PFのライセンス生産機J-5A(成都製)、中国独自設計の複座型JJ-5、中胴下部にカメラベイを設けた偵察型JZ-5の4種類と試験研究機の存在が知られている。用廃後には無人機化も行われているが、この機体については本Blogでは取り上げない。

【MiG-17F】

 ソ連から購入した機体が存在する。1955年にソ連は15機分の製造キットと10機分の部品等を中国に提供したとされるので、これら25機分の機体各所にはキリル文字が記されていたものと思われる。ソ連で組み立て、完成した機体を中国に輸出した(中国が購入した)という話はまだ見つけていないので、その話を見つけるまでは「中国で使用されたMiG-17およびJ-5の全機が中国国内で”組み立てられた”」としておく。

 なお「中国で組み立てられた機体をJ-5と称する」という定義を用いる場合には「中国にはMiG-17は存在せず、全てがJ-5である」ということになるが、本Blogでは「中国で製造された部品等を用いて中国国内で製造・組み立てを行った機体をJ-5と称する」という定義を原則として用いるため、「ノックダウン生産機はMiG-17と称する」こととし、また「J-5には初期のノックダウン生産機を含まない」ものとする。

 北京の中国人民革命軍事博物館に展示されている30474号機は初期に購入した25機のうちの一機とされているので、よくよく見れば機体各部の注意書きがキリル文字で記されているハズだ(私自身は確認していない)。

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写真1 ソ連から購入したとされるMiG-17。ただし組み立てたのは中国国内のようだ。(中国人民革命軍事博物館、2013年12月21日撮影)

 

【J-5(歼5)】

 MiG-17Fを瀋陽国営112厂(現在の中航工业集团沈阳飞机工业公司)でライセンス生産した機体。中国で製造した機体は1956年7月19日に初飛行し、1959年5月に生産終了となるまでに767機を製造した。瀋陽国営112厂での名称は“东风101(東風101、DF-101”。(百度百科より) 

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写真2 中国でよく目にする標準型のJ-5。(上海航空科普館、2010年3月20日撮影)

 

【J-5A(歼5甲)】

 MiG-17PFを成都飞机厂にてライセンス生産した機体で中国語簡体字で記すと「歼5甲」になる。機首に上部とインテーク内にレーダーを備えた全天候型戦闘機。成都飞机厂での名称は“东风104(東風104、DF-104)”。1961年8月に設計が開始され、1964年11月11日に初飛行した。1968年5月に124機を製造して生産を終えた。(百度百科より) 

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写真3 機首にレーダーを装備したJ-5A。(東方緑舟、2010年3月21日撮影)

 

【JZ-5(歼侦5)】

 J-5の偵察型。百度百科の「歼-5」を見ると「歼侦-5侦察校射飞机」という名称になっているが「校射」の意味は不明だ。もっとも用途が砲兵隊の事前観測・着弾成果観測なので、なんとなく分るのだが・・・。砲兵学校の要求で射撃状況の偵察用として1975年ごろまでに16機が製造された。しかし1986年には空軍偵察校射大隊が改編廃止となり、機体は練習機として使用されたという。現存する機体は青島の海軍博物館にある1機のみだ。見ての通り機首にレーダーを備えている。主脚間の胴体下面にカメラベイを設けているが、肝心の部分の拡大写真を写してくるのを忘れた。(主に百度百科より) 

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写真4 機首にレドーム、お腹にカメラベイのあるJZ-5。中国国内では青島の海軍博物館だけに存在が確認されているレアな機体だ。(海軍博物館、2017年6月24日撮影)

 

【JJ-5(歼教5)】

 J-5の複座の練習機型。1964年に設計し、1966年5月8日に初飛行を行った。1986年に1,061機を生産して生産終了となった。ソ連では複座型MiG-17を製造していないので完全に中国独自の機体である。(主に百度百科(2021年12月10日閲覧)より。なお百度百科の説明では生産終了を19”68”年としているが、初飛行から2年後までに一千機を超える機体を製造できるはずもなく、明らかに8と6を書き間違っている。また百度百科の「歼-5」の記述の中にあるJJ-5の製造機数は1,087機と26機多くなっているが、同じページの後半には1,061機という数字も出てくる。百度百科「歼教-5」に記載された製造機数は上述の1,061機だ。どちらの製造機数が正しいのかは分からないが、本Blogでは出現頻度が高い1,061機説を採用する。

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写真5 垂直尾翼の"FT-5"は中国語の”歼教-5”の英訳だ。(建川博物館聚楽、2017年3月19日撮影)

 

【詳細不明のレーダー試験機】

 北京郊外の中国航空博物館に展示されている2424号機の機首には大きなレーダーが装備されている。詳細は不明だが、量産はされていない。

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写真6 機首上部にレーダーを配置したJ-5試験機。(中国航空博物館、2005年10月1日撮影)

 

【余談】

 MiG-15シリーズとJ-5(MiG-17)シリーズの見分け方の解説はこちらへ。

【中国の展示機】MiG15シリーズとJ-5(MiG-17)シリーズの見分け方 - 用廃機ハンターが行く!

 

【参考】

世界の傑作機No.97「MiG-15”ファゴット”, MiG-17"フレスコ"」(2020年アンコール版)

百度百科の「米格-15战斗机」、「歼-5」および「歼教-5」(2021年12月10日閲覧)

以上