用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

「小松にファントムを!」終章

<編集履歴> 15Nov.2021公開、16Nov.2021見直し更新(第1回目、字句表現等を一部修正)

 

 2021年3月の航空自衛隊F-4ファントム戦闘機完全引退を前に、小松空港の前にある石川県立航空プラザに機体を展示できないかという提案を公開した。この過程で航空プラザの置かれた現状や展示に必要な費用や維持補修費、その後の集客に必要な広報活動など「考えなくてはいけないこと」について自分なりにまとめ、「真面目に用廃機を展示しようという話をするならば、キチンと知っておかなくてはいけないコト」を明確にして「わかったコト」と「まだわからないコト」を分類できたように思っている。そして、それを文書にまとめて公表できるかどうかは、また別な次元の話だということも理解したつもりでいる。

 得られた知識と理解の発展応用編として「米子空港脇に航空展示館を!」とブチあげ、さらに自分なりに「展示に必要な事項」を調べているのだけれど、知るべきことや、まとめるべきことがありすぎて、話がなかなか前に進みませんね。

 「機体を展示して欲しい!」という声を上げるのは簡単だけれど、実際に展示するのは「かなり大変」ということを理解してきただけでも一個人・一マニアとしては収穫といえるのでしょうか。

 

 さて先日、小松航空プラザ館長の山内様から直接メールをいただく機会があり、航空プラザにおけるファントム展示の検討の背景を少しだけ知ることができました。そのメール内容を簡単にご紹介しますと;

1.F-4の展示については空幕とも調整し、借り受ける寸前まで行った。

2.次の問題点などを考慮し、小松市及び財団の協議の結果、借受けを断念した。

(1) 機体の大きさから屋内に搬入出来ない

(2) 屋外展示は、塩害・紫外線の影響で機体が劣化する

3.山内館長ご自身としては非常に残念に思っている

・・・ということです。

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写真1 文章ばかりではつまらないので一枚。小松基地をタキシングする旧マーク

旧塗装の303飛行隊機。(1980年8月22日撮影)

 

マニア的な目でこの話を眺めると;

1.ファントム展示の検討をしてくださったことに対し、関係された皆様に感謝いたします。また航空自衛隊側では「ほぼOK」という所まで行っていたことは嬉しく思っています(”ほぼ”とはどの程度かという突っ込みもありましょうが、ここでは問いません)。

 

2.ネックは(小松)基地から館内への搬送・据付・展示という部分だと感じましたね。お話いただいた中には費用の話はありませんでしたが、公道を移動させるのはかなり大ごとだろうということは「メタセの杜」にファントムを展示した際のことから、いくらかの想像ができます(メタセの杜の場合には基地からの距離もあった。その点、航空プラザは基地・空港からの移動距離は短いものの、現在のHSS-2Bの脇に置く場合でも駐車場の一部を一旦潰すなどの工事が必要になる)。また既存の建物の壁をブチ抜いて機体を館内に入れるという工法もありましょうけれど、相当な費用が掛かることは容易に想像できます。なおTwitterには「予算が得られなかった(予算案が通らなかった)」との投稿もありますので、いくつかの展示方法とそれぞれの工費を検討したけれど、いずれも通らなかったと解釈してよいかなと思っています。

 

3.たとえ屋外展示であっても展示すれば良かったとする意見はあろうかと思いますが、これは展示思想や展示方針に関わることなので、良し悪しの正解は無いように思います。たまたま今週(2021年11月15日~19日)は周防大島町のPS-1の解体作業が行われることになっていますが、退役後もボロボロになりながらも30年に渡り姿を見せ続けてくれたことを良しとするか、30年前の引退時に全ての機体を解体廃棄してしまい、覚えている人だけが話題にすれば良い存在だったのかは答えが無いように思うのです。

 

4.個人的には「実物で大きさ(奥行容積を含む)を実感させることは大事」「どうしてそのような構造にしたのか、その設計思想と整備性やハンドリングとの兼ね合いの重要性、そして生産性や経済的理由(製造コストへの反映)を知るには実物が必要」「これらを総合的に知らしめる教育にはやはり実機展示が必要」との考えでいます。

 このため屋内展示ができないならば、紫外線や塩害により10年くらいでボロボロになったとしても、せめて屋外に展示してほしい(ほしかった)という気持ちはあります。もっとも小松の場合には鉄道で数時間のところに岐阜かかみがはら航空博物館があるので、こちらに(431号機を)キチンと展示してくれれば(費用対効果の点で)イイかと妥協もできるのですけれどね(一機でも多く残したいという気持ちも勿論ある)。

 

 企業においては事業提案をしても「そんなコトできるかっ!」と一蹴されることは日常茶飯事。その結果を胸に秘め、機会をみて再度提案して復活させるということも良くある話です。しかしファントム退役に伴う用廃機の発生と、それを展示するという話の検討は時間的に見ておそらく一発勝負だったのではないでしょうか。またコロナ禍がなければ、観光推進策として話が変わっていたかもしれません。

ここは検討・協議を行っていただいたことに改めて感謝し、その結果として借受けを断念したという判断を尊重したいと思います。

以上