<編集履歴> 09Feb.2021公開、15Mar.2023見直し更新(第5回目、体裁見直し)
【はじめに】
台湾空軍では1960年5月26日のF-104受領式典から1998年5月22日の退役式典まで39年間に渡り、西ドイツ(当時の名称、アメリカLuke空軍基地で教育用に運用していた機体を含む)、デンマーク、ベルギー、日本、そしてアメリカのデビスモンサンからF-104A/B/D/G/J/DJ(TF/RFを含む)を文字通り「かき集めて」使用していた。このためエピソードが在り過ぎて、とても数行では書くことができないため、ここではバッサリと切り捨てることにする。台湾における一連のF-104配備プログラム(入手・配備計画)を「阿里山計画(計画は中国語繁体字で計劃)」と言い、1号から11号まで存在することを覚えておくと検索時に役立つだろう。航空自衛隊を退役したF-104J/DJを入手したのは1986年9月12日より実施された「阿里山計画9号」によるものだ。だが耐用命数が残り少ない機体が多かったこと、多数運用していたG型と異なる部分が多いうえに日本語の技術指令書の不備があったこと(翻訳も大変だった)、さらに空中爆発事故が生じたことなどが重なり1991年には全機が引退している。台湾のRF-104といえば特徴的な長い鼻(LOROP-nose)を付けたRF-104G-LOROP機が有名だが、その開発運用計画は「始安計画」という。こちらも検索時に役立つ用語だ。
【展示機】
現在、台湾内に残る機体はF-104Aが5機(うち1機は現状不明)、D型1機、G型11機、J型7機、DJ型1機、複座のTF-104Gが12機、G型から改修されて偵察型となったRF-104Gが5機の合計42機(うち1機は現状不明)だ。以下に形式別4桁番号順に紹介しよう。なお*印は108年度三軍陳展装備列表に記載されている展示機を示す。
<F-104Aの展示機>
4201-4262の62機を入手。約半数はヨルダン空軍に移譲した。その後展示機となったものが複数存在するが、ここでは取り扱わない。
(1) F-104A (4241 / 56-0823) 空軍軍史館軍機展示場
(2) F-104A (4254 / 56-0846) 旧桃園大園基地内、かつては航空科学館展示機
(3) F-104A (4255 / 56-0865) 新竹基地
(4) F-104A (4253 / 56-0833) 台中CCK基地→現状不明
(6) F-104A (4258 / 56-0876) 中正國防預備幹部學校
※F-104A (4256 / 56-0867)は馬公基地に展示されていたが廃棄されたものと推定
写真1 閉鎖・解体された桃園国際空港航空科学館に展示されていたF-104A。エンジン排気口の上の垂直尾翼面積がG/J型に比べて小さいことが判る。(2011年8月15日撮影)
<F-104Bの展示機>
4101-4105、4121-4123の8機を運用したが現存する機体はない。
<F-104Dの展示機>
4161-4166の6機をアメリカから輸入。4166号機のみが残る。
(1) F-104D (4166 / 57-1326) 空軍教育展示館
写真2 岡山空軍基地に隣接する航空教育展示館のF-104D(手前4166)とF-104G(奥4344)。(2017年11月26日撮影)
<F-104Gの展示機>
4301-4402, 4411-4425の117機を運用、一部はRF-104Gからの改修機であり、また一部はRF-104Gに改修された。
(1) F-104G (4301 / 62-12250) 台中CCK基地
(2) F-104G (4344 / 64-17770) 航空教育展示館
(3) F-104G (4348 / 64-17774) 屏東 空軍第一後勤指揮部
(4) F-104G (4367 / 63-13242) 花蓮縣上騰高級工商職業學校
(5) F-104G (4381*/ 63-13265) 宜蘭縣蘇澳鎮忠靈祠
(6) F-104G (4393 / 65-12753) 新竹基地
(7) F-104G (4412 / 62-12342) 桃園市私立大興高級中學
(8) F-104G (4413 / 62-12345) 航空教育展示館、スケルトンモデル
(9) F-104G (4416*/ 62-12349) 台中市軍人忠靈祠
(10) F-104G (4417*/ 63-13645) 彰化縣八卦山風景區
(11) F-104G (4424*/ 64-17754) 台中市清水區大楊油庫、かつては桃園の新興工商に展示されていた機体
写真3 軍史館にあった頃のF-104G(4413)スケルトンモデル。本機は航空教育展示館に移設されているが、このように上から見ることはできない。(2006年6月17日撮影)
<F-104Jの展示機>
少なくとも30機を輸入。4501-4522の22機を1991年まで運用し、残り8機は部品取りとした。
(1) F-104J (4506*/ 36-8565) 南投縣集集軍史公園、F-104G 4303/ 62-12252と記載
(2) F-104J (4514*/ 46-8616) 台南の國立成功大學
(3) F-104J (4515*/ 46-8618) 台中市私立嘉陽高級中學、かつては中山大学展示機
(4) F-104J (4519 / 46-8645) 台中の成功嶺、”4522”と記載
(5) F-104J (4522*/ 46-8596) 高雄市國立科學工藝博物館、集集軍史公園と同じくF-104G 4303/62-12252と記載
(6) F-104J (4526*/ 36-8526) 台南市南化水庫、4526は存在しない番号(配備は4522まで)、部品取り用に輸入した機体を展示
(7) F-104J (4547 / 36-8547) 桃園の國防大學理工學院、4547は台湾空軍には存在しない番号だ(配備されたのは4522号機まで)。部品取り用に輸入した機体を展示している。
<F-104DJの展示機>
少なくとも6機を輸入し、うち5機4591-4595として運用した。
(1) F-104DJ (4595 / 36-5017) 中華科技大學 雲林校區、かつては水里親水公園の展示機
写真4 かつて水里にあった頃のF-104DJ(4595 / 36-5017)。(2009年8月13日撮影)
<TF-104Gの展示機>
4141-4149, 4151-4153, 4171-4197の39機を運用した
(1) TF-104G (4147 / 61-3030) 台中CCK基地
(2) TF-104G (4171 / 61-3073) 新竹基地
(3) TF-104G (4177 / 61-3080) 岡山の空軍航空技術學院 巨輪校區
(4) TF-104G (4178*/ 61-3082) 台中市軍人忠靈祠
(5) TF-104G (4179*/ 61-3083) 台東縣卑南鄉軍人忠靈祠
(6) TF-104G (4182*/ 63-8454) 高雄縣軍人忠靈祠
(7) TF-104G (4186*/ 63-8458) 金門國家公園管理處乳山遊客中心
(8) TF-104G (4189 / 63-8462) 台中CCK基地
(9) TF-104G (4192*/ 63-8465) 新北市新北市樹林區軍人忠靈祠
(10) TF-104G (4193*/ 63-8467) 台中市台中823戰役紀念公園
(11) TF-104G (4195*/ 66-13622) 新竹の中華科技大學
(12) TF-104G (4196*/ 66-13625) 基隆市役政公園
写真5 新北市の軍人公墓にあるTF-104G。(2017年2月19日09時45分頃撮影)
<RF-104Gの展示機>
台湾では前脚後方にカメラベイを設けたRF-104Gを8機(うち2機は後年F-104Gに改修、5628→4402、5632→4401)およびカメラベイを設けてRF化したF-104Gを2機有していた(4384→5663、4399→5664)が、これらは現存していない。今見られる「RF-104G」はLOROP-nose運用を可能にした改修機だけだが、通常のノーズを取り付けて旦持しているので機体番号以外では偵察型ということが分からない。
(1) RF-104G (4371*/ 63-13249) 台中市沙鹿區公所
(2) RF-104G (4375 / 63-13254) 花蓮基地、かつては桃園大園基地展示機
(3) RF-104G (4378 / 63-13260) 高雄の高苑科技大學
(4) RF-104G (4398*/ 67-14890) 新竹市康樂公園
(5) RF-104G (4400*/ 67-22517) 彰化縣溪湖鎮軍機公園
<展示後廃棄>
※F-104A (4256 / 56-0867)は馬公基地展示されていたが廃棄されたものと推定
<その他>
逢甲大学に1997年7月31日に搬入されていたF-104G(4420 / 62-12699)は2006年の同意によりアメリカClassic Aircraft Aviation Museumへ寄贈された。機体は2006年11月9日にシアトル港に到着し、直ちに博物館に運ばれたという。
以上