用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

航空自衛隊 YS-11の展示機

<編集履歴> 27Aug.2018Mixiにて公開、2019年初め頃にはてなBlogにて公開、21Jan.2023見直し更新(第16回目、159号機用廃か)

 

 航空自衛隊では戦後初めて国内開発した旅客機YS-11を1965年から13機を導入し、輸送、航法訓練、飛行点検、電子戦訓練および電波情報収集機として運用してきた。2022年9月16日の時点ではダートエンジンを搭載したオリジナルの機体は国内の民間エアライン、海上保安庁航空自衛隊および海上自衛隊からは全て引退しているが、エンジンをP-2Jのものに換装したYS-11EA電子戦訓練機2機とYS-11EB電波情報収集機3機の合計5機が航空自衛隊で現役だ。これらの機体はRC-2の調達やスタンドオフ電子戦機の開発が終わる2027年ごろまでは使われることだろう。

【展示機】

用廃となった2機が展示機として残されている。

1. YS-11P 52-1152 愛知県 あいち航空ミュージアム、無償貸付機*1

 2017年5月28日(日)の美保基地航空祭が一般大衆への最後のお披露目の機会となり、翌29日(月)に美保基地から小牧空港へフェリーフライトをもって用廃となった。

*1 Jウイング誌2021年8月号付録より

f:id:Unikun:20190404224806j:plain 

写真1 あいち航空ミュージアムのYS-11P。(2018年08月18日撮影)

 

 2. YS-11P 02-1158 美保基地

 貨物輸送型のYS-11Cとして製造されたが、後年人員輸送型のYS-11Pに改造された機体。このため胴体左側後部には大型の貨物ドアの名残が確認できる。本Blog掲載の小さな写真でもあいち航空ミュージアム展示機とは日の丸前方の窓の数が異なることも判るだろう。2018年5月末ごろから基地南東部の道路沿いにC-1と並んで展示されている。投光器を一時的に設置してライトアップが行われたこともある。2021年3月31日および4月1日に現地を訪問しているがやや退色が進み、胴体右後半には剥離などいく分の劣化が見られた。

f:id:Unikun:20210404100621j:plain

写真2 美保基地のYS-11P。日の丸より前方に貨物ドアの名残が見える。(2021年4月1日撮影)

 

【余談その1:YS-11FC(52-1151)】

 2021年3月17日に退役したYS-11FC(52-1151、空自のYS-11初号機)は2022年6月中旬に基地北東部の機体解体場所(これまでC-1等が解体されていた場所)に移動された。6月21日付でC-1(78-1026)と共に解体公告が出されており、2022年8月17日に解体された。

 解体前にこのYS-11を残すためにどのくらいの費用が掛かるのか試算してみたので、その結果を残しておこう。別稿で米子空港に博物館を建ててしまおう!という話を展開していたのだが、この話の中で分かったことは「倉庫風博物館を造るなら1平方メートルあたり約13万円かかる」ということだ。これに基づいてYS-11の前後左右に1mの隙間を設けた小屋(博物館)を建てる場合の費用を計算すると;(全長26.0m+前後各1m)×(全幅32m+左右各1m)×13万円 =952平方メートル×13万円=1億2千376万円。

 狭山市の入間基地北端近辺の路線価を調べると85,000~125,000円/m^2程度。ざっくり10万円/m^2としておくと952m^2だと土地代は9,520万円。おおむね1億円としておこうか。すなわち建物と土地合わせて2億2千万円ほどあれば、YS-11FC一機だけを展示する展示館を基地北端に建設できることになる(路線価基準で土地を買収できるとは思っちゃいないけれど、そこはユメよ、夢!)。解体費、輸送費、設置・再組立費、再塗装費は別だが、経費の目安が分からないので、ざっくり1億円としておこう。それでも3億円チョイあれば、YS-11FCはキミのものだったハズなのだけれど・・・。ポンと3億円を出してくれる人は現れなかったのだった。

f:id:Unikun:20210205145936j:plain

写真3 入間基地南端を離陸に向けてタキシングするYS-11FC(52-1151)。2022年8月17日に解体された。(2021年2月3日撮影)

 

【余談その2:YS-11EB(92-1157)】

 2022年9月6日付の解体公告がHPに掲載されたあとの9月16日ごろ、YS-11EB(92-1157)とC-1(88-1028)が解体場所に運ばれた。YS-11EBは10月17日に解体された(YS-11EBとしては初の用廃)。

f:id:Unikun:20210404102648j:plain

写真4 "怪しい飛行機"ことYS-11EA/EBが展示機となる可能性は限りなくゼロに近い。2027年ごろまでは飛び続けるものと予想するので、せめて映像記録として遺しておこう。(2020年11月16日撮影)

 

【余談その3】

 2022年6月4日に開催された入間基地ランウエイウォークの際にはプロペラを外したYS-11EBを間近に見ることができた。プロペラ付近には水の侵入を防ぐためのシーリングがしてあったので、用廃機ではなく、整備中のものと考えている。なお電子戦訓練機と電波情報収集機に改造された機体(YS-11EA/EB)が用廃時に展示される可能性は絶望的に存在しない。

 

【余談その4(2021年5月2日記事改編)】

小美玉市まちづくり構想(令和2年3月)」という文書がある。

https://www.city.omitama.lg.jp/manage/contents/upload/5ea51f619d9c0.pdf

この24ページ(全体でいうと27/58ページ)には「航空自衛隊保有最終号機となるYS11を展示するなど」という文言があり、飛行点検隊塗装のYS-11を展示している絵が掲載されていることから、YS-11FC誘致に向けた取り組みが行われていたようだ。だけど、この構想はとん挫してしまったようで用地も未整備とのこと。「とりあえず花火を打ち上げた」だけで終わってしまったようだ。幾分かでも進展があれば、入間基地でラストフライトを行ったあとのYS-11FCを百里にフェリーしたのだろうが、それすらも無かった事実が、この構想が立ち消えになったことを示しているのだろう。このような動きがあったということだけを記録としてとどめておきたい。

 

【余談その5:YS-11FC 12-1160】

唯一の「飛行点検隊用」に新造された機体(注:その他のFC機は輸送型からの改造)。2020年11月9日に基地北東部の解体場所に移動され、のちに解体された。

 

【余談その6:】

YS-11EB(2-1159)は2022年12月ごろ引退した模様だと航空ファン誌2023年4月号が伝えた。

以上