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【特集】行こう、逝こう!韓国へ!!(亡命機一覧)

<編集履歴> 14Aug.2020公開、21Feb.2021見直し更新(第5回目、台湾に亡命した事案についての参考URL追加)

 

 韓国には1950年04月28日から1996年5月23日までの間に中国や北朝鮮から13機の機体が飛来している。ただし、このうち一機は亡命目的ではなく事故により韓国内に着陸したものだ。これらの飛来機は韓国国内に9機、アメリカに1機が展示されている。 そして韓国内9機の展示機のうち、7機は日本人の訪問が可能な場所に展示されている。これらの機体について、飛来日順に状況を確認してみよう。

 なおソウル戦争紀念館にはMiG-15UTIが展示されているが、こちらは亡命機ではなく展示のために購入したものとされている。また同じくソウル戦争紀念館のAn-2の出所は不明だ。韓国空軍が使用していた特殊作戦機の可能性がある。

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写真1 清州の韓国空軍博物館に並ぶ3機の亡命機。(2006年3月12日撮影)

 

【韓国への亡命機一覧 / 飛来日、国籍、機体及び解説】

1.  1950年04月28日に北朝鮮より24歳のLee Kun Soon大尉がソビエト製Il-10にて釜山に飛来。機体のその後は不明。

 

2. 1953年09月21日に北朝鮮から飛来したMiG-15bis(S/N: 2057)。ノ・クムソク操縦によりソウル金浦空港に着陸。機体は嘉手納基地に運ばれて飛行試験によるデータ取得テストを受けたのちにアメリカに運ばれ、現在はアメリカ空軍博物館に展示中。

 

3. 1955年06月21日に北朝鮮からYak-18練習機に乗って二名の乗員が亡命。乗員や機体の詳細やその後の状況は不明。

 

4. 1960年08月03日に北朝鮮から飛来したMiG-15bis(S/N: 241)。亡命してきた2機目のMiG-15bisで束草の簡易飛行場に着陸した際に前脚を破損。現在の保管場所は不明。

 

5. 1961年9月15日に中国山東省から飛来したY-5(中国製An-2、S/N: 18132)。済州島の東にある牛島に着陸。乗員Shao Xiyanと Gao Youzongは同年10月7日に台湾に渡り、二人とも台湾空軍に勤務して大佐クラスまで昇進した後に退役した。機体はソウルの反共同盟会館での展示を経て、現在は務安のミリタリーテーマパークに展示中。

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写真2 務安のミリタリーテーマパークにあるY-5(An-2)。(2009年5月4日撮影)

 

6. 1970年12月03日に飛来した北朝鮮のMiG-15bis(S/N: 339)。航法ミスにより韓国に侵入し、不時着/大破した。機体は修復してヨイドの総合安保展示場(1975-?)、ソウルの反共同盟会館で展示されたのちに務安のミリタリーテーマパーク(注:現在の名称)に展示中。韓国に飛来した3機目のMiG-15bisだ。

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写真3 務安のミリタリーテーマパークに展示されたMiG-15bis。(2009年5月4日撮影)

 

7. 1982年10月16日に中国山東省から飛来したJZ-6(中国製MiG-19の偵察型、S/N: 029、飛来時には3220と描かれていた)。パイロットのオ ヒョングンは10月31日にCALの特別機で台湾に移動した。機体は水原基地に保管されていたようだが、2010年3月13日取得のGE-Pro画像では清州基地内(36.7108N, 127.5007E)にて展示されていることが確認できる。この機体番号を「029」とした画像もネット上に存在する。

機首番号を029とした画像はこちら:https://blog.naver.com/dan11/221106061180

 

8. 1983年02月25日に北朝鮮から飛来したJ-6(S/N: 207)。水原基地に着陸したが、現在ではソウル戦争紀念館にて一般に向け展示されている。

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写真4 ソウル戦争記念館のJ-6(中国製MiG-19)。(2009年10月23日撮影)

 

9. 1983年08月07日に中国大連から飛来したJ-7(中国製Mig-21、 S/N:045)。城南基地(ソウル基地)に着陸。現在は清州の韓国空軍博物館にて展示中だ。

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写真5 韓国空軍博物館のJ-7。(2006年3月12日撮影)

 

10. 1985年08月25日に中国山東省膠州(青島の西側にあるエリア、市)から飛来したH-5(中国製IL-28、 S/N: 038)。燃料切れのためにイクサン(益山)の水田に不時着するも機体は大破し、搭乗員1名と地上の韓国人1名が死亡。生存した二名の搭乗員のうち一名は死亡した搭乗員の遺灰と共に中国に戻り、亡命首謀者の1名は同年9月20日に台湾に渡った。三つに折れた機体は修復され、現在は清州の韓国空軍博物館に展示中。

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写真6 韓国空軍博物館のH-5。(2006年3月12日撮影)

 

11. 1986年02月21日に中国から演習中の水原基地に飛来したJZ-6(S/N:283(元3283号機))。パイロットは同年4月30日に台湾に渡った。本機は晋州の空軍科学高校(飛星台・空軍教育司令部に同じ。35.1879N, 128.1479E)に展示されていたが2012年8月1日から2013年8月9日の間に撤去され、2014年4月以前に済州航空宇宙博物館に移設された。なお国籍マークは空軍科学高校に展示されている間に北朝鮮マークに描き直されており、このマークのまま(北朝鮮機として)済州航空宇宙博物館に展示されている。

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写真7 済州航空宇宙博物館のJZ-6。北朝鮮の国籍マークを描いているが中国からの亡命機だ。(2016年3月26日撮影)

 

12. 1986年10月24日に中国から飛来したJ-6(S/N: 053、飛来時には83053)。煙台より清州基地に飛来。現在は 清州の韓国空軍博物館に展示。なおKF誌2019年3月号p.68では本機のことを「8”2”053号機」と記載しているが、これは間違いで「8”3”053号機」が正しい。

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写真8 韓国空軍博物館のJ-6とJ-7。(2006年3月12日撮影)

 

13. 1996年5月23日飛来、北朝鮮のJ-6(S/N: 529)、水原基地に着陸し、その後は水原基地にて展示されている(37.2456N, 127.0090E)。見学不可。

 

【参考】

Wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Cold_War_pilot_defections

※韓国を経由して台湾に渡った亡命事案についてはこちらも参考に。 

反共義士 - 维基百科,自由的百科全书

 

以上