ソウルの国立劇場前にある韓国自由総連盟の建物「ジェイグリーンハウス」前にはかつてF-51D, F-86F, MiG-15, An-2や火砲などが展示されていた。これらは1997年ごろに全て撤去され、展示場跡地は駐車場となっている。ここでは展示機の記録として当時の状況を紹介する。
写真1 MiG-15とF-86F (24-839)。(1989年5月1日撮影)
<場所 Place> ジェイグリーンハウス
<座標 Location> 37.5514N, 127.0021E
<機体 Aircraft>
1) TF-51D S/N: 202
2) F-86F S/N: 24-839(1989年5月1日)、50-833(1993年5月2日)
3) MiG-15bis S/N: 239
4) An-2 S/N: 18132(中国製Y-5とのこと)
<訪問日Visit> 01May.1989 and 2May.1993
写真2 亡命機MiG-15。後ろの建物は国立劇場。(1989年5月1日撮影)
<行き方 Access>
(1) ソウル地下鉄4号線トンデイプク(東大入口)駅下車、4番出口から徒歩約400m。
写真3 1993年に再訪した時にはF-86Fの機体番号は50-833となっていた。(1993年5月2日撮影)
<解説General>
(1) ソウル中心部、国立劇場前(新羅ホテル脇)にある韓国自由総連盟の活動拠点となる建物。現在の名称は「ジェイグリーンハウス」だが、1980-1996年ごろの航空雑誌上では「反共同盟会館・Anti-Communist League」「フリーダムセンター」「反共会館・勝共会館」という具合に団体名・組織名称・建物名称を混同して紹介されていた。時期により名称が変更されていたこともあったかもしれない。まぁインターネットが存在せず、極めて限られた情報(主に入場門や正面玄関に掲げられた名称)しか判らなかった時代なので仕方ないことだろう。航空情報誌1982年9月号p.144の投稿文が日本国内における本展示場の最初の紹介文だと思われるが、投稿した熊本県の某マニア氏はホテルに行くバスの窓から偶然迷彩F-86Fを見つけたという。
(2) 冒頭に記したとおり展示機や展示物は1997年頃に敷地を整備して展示場を駐車場に作り替えた際に全て撤去されてしまい、現存するものは無い。
(3) F-86Fは1989年5月1日訪問時のS/Nは24-839であったが、1993年5月2日に再訪した際には50-833となっていた、当時は韓国空軍からF-86Fが引退する(した)頃であり、機体の置換・更新は可能だったとは思うが、わざわざ新しい機体を持ってくるとは考え難い。塗り直したものだろうと推測する。
(4) MiG-15bisは1970年12月3日に北朝鮮から亡命してきた機体。1975年頃から1987年ごろまではソウル・ヨイドの総合安保展示場にて展示されていたもので、北朝鮮からは3機目の亡命機。なお航空ファン誌2008年10月号p.71に記載された亡命日は1960年8月3日となっているが、同じ記者が10年後に再訪した際の記事である2019年12月号p.66の記載では1970年12月3日となっている(現時点で私自身は本機の来歴を調査しておらず、ただ記事を書き写しているだけである)。
(5) An-2と書いているが実は中国製のY-5(SN:18132)。元は中国の交通部民用航空局の機体で1961年9月15日に済州島の東にある牛島に着陸したもの。乗員は台湾に亡命、機体も一度は台湾で公開された後に韓国に戻され、ここに展示された。
(6) TF-51D、MiG-15、An-2は撤去後に全羅南道務安にあるホダム航空宇宙展示場(別稿参照)に移設された。このうちTF-51Dは2014年に開館した済州島の航空博物館に再度移設されている。
(7) ここに展示されていた北朝鮮の小型潜水艇は昌原の北韓館に移設されたものと思っている(この潜水艇は恐らく一隻しか韓国内に存在しないと思っているため)。
写真4 コクピットは良く見えないが、実は複座型のTF-51D。(1993年5月2日撮影)
写真5 An-2(中国製Y-5、S/N:18132とのこと)。(1989年5月1日撮影)
※本項に記した機体来歴等については航空ファン誌2008年10月号p.70-72を参考にしました。
以上
【編集履歴】
31Jul.2020 公開
14Aug.2020 見直し更新(第1回目、MiG-15の亡命日に関するコメントを追加)