用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

法、規則、訓令、達などを確認しよう

<編集履歴> 06Jun.2020公開、28Feb.2021見直し更新(第4回、リンク切れ修正、字句表現見直し)

 

【はじめに】

 本Blogにおいては最も堅苦しいハナシとなるが、まっとうな用廃機ハンターになるための法令知識だ。字面ばかりで大変だと思うが、一度はガマンして読み通して欲しいと思う。

 さて日本においては憲法>法律(以後、法)>政令(施行令、以後、令)>施行規則(省令)という順番でルールや定義が決められる「仕組み」となっている。

 さらに施行規則(省令)の下には「訓令」や「達(通知)」などの下位文書が存在し、これらに従った運用が行われている。

 全省庁を見渡すと例外も幾分あるようだけれど、ここでは「まぁ大体こんな流れなのだ」と思っていただければ十分だ。そもそも書いている本人が基本的な法務関係の勉強などしたことがないのだから(おいっ!)。

 そんな程度ではあるが自衛隊の用廃機に関する法的根拠をまとめてみよう。

 一度法的根拠の流れを知ってしまえば「アレの件はこちらの情報から得られるハズ」「これの件はコチラの情報とリンクしているハズ」ということも理解でき、体系的に用廃機の流れを理解できる・・・のではないだろうか・・・(弱気発言)。

 

国有財産法のうえでの扱い】

 さて国の仕事をするために購入したもの(本Blog上では戦闘機などの自衛隊機のことを指す。行政財産という)の用途を廃止とした場合には、本来ならば財務大臣に引継ぐのが基本だが、「法8条のただし書」にて「政令(施行令のこと)で定めたものは除くよ」というコトになっている。

国有財産法>(抜粋)

第八条 行政財産の用途を廃止した場合又は普通財産を取得した場合においては、各省各庁の長は、財務大臣に引き継がなければならない。ただし、政令で定める特別会計に属するもの及び引き継ぐことを適当としないものとして政令で定めるものについては、この限りでない。
2 前項ただし書の普通財産については、第六条の規定にかかわらず、当該財産を所管する各省各庁の長が管理し、又は処分するものとする。(抜粋終了)

 

 そこで国有財産法施行令を読むと令5条2で「(財務大臣が定めるものを除いた)航空機で用途廃止をするもの」と書かれている。つまり特に財務大臣が口出ししなければ防衛大臣の権限の下で勝手に処分していいよ、という流れになっている。

 

国有財産法施行令>(抜粋)

第五条 法第八条第一項ただし書の引き継ぐことを適当としない財産は、次に掲げるものとする。
一 交換に供するため用途廃止をするもの
二 立木竹、建物で使用に堪えないもの、建物以外の工作物(第十二条の二を除き、以下「工作物」という。)、船舶及び航空機で用途廃止をするもの(財務大臣が定めるものを除く。)
三 前二号に掲げるもののほか、当該財産の管理及び処分を財務大臣においてすることが技術その他の関係から著しく不適当と認められるもの(抜粋終了)

 

<変なトコロで余談>

しっかりと確認はしていないが「政府専用機(B-747-400)」は「財務大臣が定めた」航空機となり、それゆえ「飛ばせる状態のまま」入札ができたのだろうと思っている。法の流れを知る際の一つの例として、各自で調べてみると面白いだろう。なお私自身はこの点を調べて書いている訳ではない(無責任!)ので、間違ってたら指摘してくださいね。<余談終了>

   

 【自衛隊法のうえでの扱い】

 防衛大臣が決めていいよ、となっているので、防衛大臣管轄の自衛隊法に定めてあるかと思いきや、確認すると自衛隊法や自衛隊法施行令には航空機の取り扱いについては一言も述べられてはいない。

 定められているのはさらに下位のルールである防衛省令・規則(訓令や達)のレベルでの取り決めだ。そこで防衛省のHPから「訓令等の検索」のサイトに入り、関係する規則などを確認してみよう。具体的には防衛省HPの所轄法令等のコーナーにて、以下の検索サイトの左側の列から「陸上幕僚監部」「海上幕僚監部」「航空幕僚監部」のいずれかを選択し、キーワード「航空機」にて「陸上/海上航空自衛隊所属国有財産(航空機)取扱規則」を引き出すのだ。やってみよう。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_web/

 

1.航空機の取扱規則(航空自衛隊

 検索サイトから「航空自衛隊所属国有財産(航空機)取扱規則」を引き出す。第22条から第27条が用廃関係の条文だ。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1968/gy19680416_00013_000.pdf

 

2.海上自衛隊の国有財産(航空機)取扱規則

 検索サイトから「海上自衛隊所属国有財産(航空機)取扱規則」を引き出す。第31条から第34条が用廃関係の条文だ。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/e_fd/1967/ey19671212_00073_000.pdf

 

3.陸上自衛隊の国有財産(航空機)取扱規則

検索サイト「陸上自衛隊所属国有財産(航空機)取扱規則」を引き出す。第12条、第14条が用廃関係の条文だ。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/f_fd/1966/fy19670303_00078_002.pdf

 

4.自衛隊機がスクラップとして売却される際にS/Nや部隊マークが消され、銘板が除去されることの根拠は平成28年10月5日付「防衛省所管国有財産(航空機)の用途廃止後の取り扱いについて(通知)」の第4(1)による。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/j_fd/2016/jz20161005_13435_000.pdf

 <参考:抜粋>

第4 部局長は、第3において売払いをすることとなった航空機(以下、対象航空機という。)について次に掲げる処置をとるものとする。

(1)あらかじめ、防衛省所管であることを標示するための記号、標識等について、当該対象航空機を使用していた部隊等において、可能な限り抹消又は除去すること。(抜粋終了)

 

5.最後になってしまったが「防衛省所管国有財産(航空機)の取扱いに関する訓令」の別表に記された「用途廃止」の定義を参照しておこう。「国有財産」「行政財産」「普通財産」などの単語が出てくるが、正確な定義は各自で検索して調べて欲しい。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1965/ax19650401_00024_000.pdf

 <参考:抜粋>

用途廃止
防衛省においてその所管に属する行政財産を国有財産法第8条第2項の規定に基づき、
防衛省において管理する普通財産に繰り入れる目的をもつて用途を廃止した場合である。すなわち、国有財産法施行令第5条第1項第4号に規定する場合で使用に耐えない航空機を取りこわし又は返還の目的をもつて行政財産の用途を廃止する場合以外の場合であつて、技術その他の関係から財務省(財務局)においてその財産を処分することが著しく不適当と認められるものであるものについて、この用語で整理する。したがつて、行政財産においてこの用語を使用した場合は、同時に普通財産において行政財産より組替の用語で整理されなければならない。(抜粋終了)

 

【公園や学校などで機体を展示する場合の根拠】

「物品の無償貸付及び譲与等に関する法律」という法律がある。国の事業の宣伝なら物品等を無償か安い金額でお貸しできますよ、という法律だ。

 用途廃止となった自衛隊機は「物品」となり、この法律に基づいて貸付されることになる。なお実際に「借り受ける」場合には、さらに施行令や施行規則、達など下位の文書を読み込み、その詳細に従った手続きが必要となってくる。

<物品の無償貸付及び譲与等に関する法律>

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000229

 

 この法律を受けて「防衛省所管に属する物品の無償貸付及び譲与等に関する省令」があり、これに従って私たちは用廃機を借り受けることができる。

 重要なポイントは次の2点だろうか。

(1) 借受け(貸付)は一年ごとに更新する。根拠は第三条だ。

(2) 「貸付品の引渡、管理、修理及び返納に要する費用は、借受人に負担させるものとする」という一文が第四条にある。このため「機体は無料だけど、借りるためには輸送費、設置費、維持管理費、撤去・返送費用がかかる」のだ。そして「輸送費・維持管理費・撤去・返送費用にビビって展示を断念する」という現実に繋がるのだな。

防衛省所管に属する物品の無償貸付及び譲与等に関する省令 | e-Gov法令検索

以上