用廃機ハンターが行く!

アジア各地に転がる用廃機を見に行くためのガイド(?)

海上自衛隊 飛行艇の展示機

<編集履歴> ??Aug.2018Mixiに公開、21Feb.2019にBlogに移設し公開、31Mar.2022 見直し更新(21回目、鹿屋のUS-1近況記述見直し)

 

 海上自衛隊の固定翼機のうち、大型機に分類される飛行艇について機種ごとの展示状況をまとめてみよう。本項では概ね使用された年代順に記載する。

 

1. UF-XS
 国産飛行艇(のちのPS-1)開発のための基礎データ取得用に米軍からUF-1(149822)の供与をうけ、これを大幅に改修した実験機(9911号機)。世界に1機しか存在しないド珍機だ。現在は岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に展示されている。 

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写真1 岐阜かかみがはら航空宇宙科学館のUF-XS。(2019年11月11日撮影)


2. PS-1
 戦後の日本が初めて開発した対潜飛行艇で1973年から1989年まで使用された。飛行艇としての性能は優れていたが、海面に停止してソナーを降ろし、潜水艦を探知する運用が非効率的であったことや6機を事故や曳航中の海没で失ったこと、そして探知手段であるソノブイの性能向上かつ安価生産が可能になったこと(恐らくこれが最大の理由)などから本機の生産は23機にとどまった。

 国内には5813号機が唯一現存しているが、岩国基地の米軍エリア内に屋外展示となっており見学は事実上不可能だ。ただし2018年に岩国市が飛行艇博物館建設の構想を発表している。その進捗状況は聞こえてこないが、移設展示される可能性がまだ残されている。かつては以下の2機が国内に展示されていたが、いずれも解体されてしまい現存していない。

(1) 5810号機: 熊本県天草パールセンターに1984年10月1日以降に展示されていたが2018年12月に撤去。八代市の解体業者に運ばれ12月25日ごろまでに解体された。

(2) 5818号機:周防大島なぎさパークに展示されていたが、は2021年11月15日から16日にかけて現地で解体された。

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写真2 体験航海時に艦艇に追従してきたPS-1。(1988年5月5日、岩国基地沖合)

 

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写真3 周防大島陸奥記念館脇に展示されていた5818号機は2021年11月15日から16日にかけて解体された。(2020年4月6日撮影)

 

3. US-1 / US-1A
 PS-1飛行艇を外洋救難専用に仕上げた飛行艇。US-1(9071-9076)のうち9072号機以外は後に改修されてUS-1Aとなった。また9077-9090は当初からUS-1A仕様で製造されている。事故抹消は1995年2月21日に豊後水道に墜落した1機のみ(9080号機)。2018年には最後の1機が退役した。2020年4月時点で国内に残る機体は3機だが、鹿屋基地史料館の9076号機は2005~2007年頃の台風によって左翼フラップとラダーが取れてしまった。その後、金属板にて元の形に整形されているが、フラップやラダーを取り付けたのではなく、本当に形だけ「整形」てあるのでヒンジ部を含めて可動部の隙間は無くなっている。また9090号機は将来岩国市に建設される可能性のある博物館での展示に備えて基地内にて保管されているのみであり、一般公開はされていない。岩国市の博物館構想がとん挫した際には廃棄されることだろう。

(1) 9076 鹿屋基地航空史料館に展示

(2) 9078 岐阜かかみがはら航空宇宙科学館に展示

(3) 9090 海上自衛隊岩国基地格納庫内に保管(航空ファン誌2020年7月号p.73より)

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写真4 鹿屋基地の9076号機。2020年3月時点で左フラップとラダー部分は金属板にて整形されている。(2008年5月17日撮影)

 

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写真5 博物館展示のためのフェリーフライト(1995年12月12日)が本機の最終飛行となった。岐阜基地へ飛来に際しては各務原市内の小中学校生にその低速性能を見せるためのコースが設定された。(2019年11月11日撮影)

4. US-2
 2003年12月18日に試作1号機(US-1A改)が初飛行し、現在も生産中の現用機。「製造契約時の正式名称」から9901号機と9902号機の銘板には「US-1A改」と刻印されており、T.O.なども「US-1A改」になっていると伝えられている。開発が終了し「US-2」と命名された後に製造された9903号機以降の機体の銘板はきちんと「US-2」と刻印されていおり、T.O.にもUS-2と記されているとのことだ(なお伝聞情報であり、私自身はこの目で確認していない)。

 2015年4月28日に9905号機が離水に失敗した。その後、機首を水面に突っ込んで逆立ちした形となってしばらく浮遊していたが5月1日11時過ぎに水没した。この機体は後日回収されたが原因調査後に廃棄されている。用廃展示機は存在しない。

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写真6 試験機塗装のUS-2(9902)とUS-1A(9089)。(2009年10月4日岩国基地にて撮影)

 

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写真7 人の海に浮かぶUS-2。(2019年12月8日築城基地にて撮影)

 

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写真8 US-2の用廃展示機は当分の間生じない。(2010年7月19日阪神基地にて撮影)

以上