用廃機ハンターが行く!

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陸上自衛隊 V-107Aの展示機

<編集履歴> 11Apr.2020公開、21Jun.2023見直し更新(第15回目、福島駐屯地と久居駐屯地の機体撤去)

 

 バートル社のタンデム式ローターのヘリコプターV-107(軍用型H-46)を川崎重工(株)がライセンス生産した機体はメーカー名称をKV107IIと称しているが、陸海空三自衛隊ではV-107Aという名称で使用された(注1)。陸上自衛隊では輸送用として1966年から2002年までの間にV-107Aを合計60機を使用した。用廃となった機体のうち46機が展示機や教材機となっており、このうち23機が現存している。

注1:本機は一般にKV-107IIと表記されていますが、本Blogでは別稿に記した理由によりV-107Aという表記としています。

自衛隊バートルの型式名称は? - 用廃機ハンターが行く!

 

【残存状況まとめ(各型式合計)】(2023年6月21日確認)

導入:                                 60機(100 %)

事故抹消:                            6機(6/60 × 100 = 10.0 %)

展示機・訓練機:                46機(46/60 × 100 = 76.7 %)

展示機・訓練機後に撤去: 23機(23/60 × 100 = 38.3 %)

現存機:                               23機(23/60 × 100 = 38.3 %)

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写真1 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館の51804号機。”沖縄塗装”となっている。

 

【型式とS/N】

<メーカー呼称”KV107II-4”>

初期型でS/N(シリアルナンバー)は51701~51735および51737~51742の41機。このうち6機が事故で抹消(51724は事故後復帰のため含まず)され、18機が展示あるいは教材機となった。

<メーカー呼称"KV107II-4A">

一機のみ存在するVIP輸送型。S/Nは51736。1996年4月度に用途廃止となり、しばらくは木更津駐屯地の格納庫内に眠っていたが、2015年度ごろに敷地内に建てられた広報館に収納され、現在も展示中だが、館内は撮影禁止となっている。

<メーカー呼称"KV107IIA-4">

エンジンをCT58-IHI-110-1からCT58-IHI-140-1に換装したタイプでS/Nが51801~51818号機の18機が存在した。このうち51813号機は事故で失われており、残る機体のうち8機が展示機となった。なお51801~51804の4機は沖縄で運用するため1970年代前半の恐らくは製造時から胴体両側のスポンソンに500ガロン燃料タンクを設けていた。さらに製造当初は他の機体同様の80ガロン燃料タンクの小型スポンソンであった51814, 51815, 51817, 51818の4機は1990年前後に500ガロン燃料タンク仕様に改修され、沖縄で運用されていた。改修機はKV-107IIA-4Aと称することがあるようだが、製造初期の51801~51804号機もこの呼称となっていたかどうかは確認していない。さらに51815と51818の二機に対しては1990年前後の燃料タンク増設改修の際に機首に気象レーダ―を装着した。上述の改修状況から1983年6月6日に事故抹消となった51813号機は事故当時は80ガロン燃料タンクの小スポンソン装備機かつレーダー未装備の機体だったと考えられる。

以下、本記事では500ガロン燃料タンクを増設した大型スポンソン装着機を大スポ、気象レーダー(Weather Rader)をWRと略して表記する。

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写真2 霞ヶ浦駐屯地の大スポ、WR付の51815号機。

 

 【展示機】

多数の機体が展示機となったため、確認を容易にすべく、ここではS/N順に記載する。明らかに訓練用途として屋外に設置されている機体には「訓練機」というコメントを付けてある(格納庫内にある整備訓練機は除く)。屋外展示機は特記しない限りは2020年4-5月度にGoogleEarth-Pro画像により機体が存在することを確認している。明らかに撮影日の異なる画像がネット上に存在する場合には最も古い年月を記すようにした。すなわち展示された時期ではなく「最初に確認された時期」であることに注意されたい。また私自身が訪問して確認したものではない。

 <KV107II-4>

 (1) 51701 美幌駐屯地(43.8209, 144.1585)、2006年8月13日公開日以降存在

 (2) 51703 丘珠駐屯地(43.1134, 141.3781)、1996年6月以降存在

 (3) 51705 相浦駐屯地(33.1765, 129.6584)、2003年9月7日以降GE-Pro画像に存在

 (4) 51707 東千歳駐屯地(42.8430, 141.7183)、 訓練機、2002年5月2日以降GE-Pro画像に存在

 (5) 51711 国分駐屯地(31.7241, 130.7541)、2014年11月19日以降GE-Pro画像に存在

 (6) 51712 松本駐屯地(36.2114, 137.9543)、2002年4月24日公開時以降存在

 (7) 51717 神町駐屯地(38.4024, 140.3851) 、2010年8月11日以降のGE-Pro画像に存在

(8) 51730 神町駐屯地(38.4034, 140.4050)、訓練機、2004年4月以降存在 

 (9) 51734 所沢航空発祥記念館保管庫に格納中、非公開。2012年4月から2018年4月存在確認(保管庫公開時に存在を確認可能)

 (10) 51735 善通寺駐屯地(34.2204, 133.7818)、2012年11月以降存在

<KV107II-4A>

(11) 51736 木更津駐屯地(35.3916, 139.9169)、VIP輸送用機、2017年2月25日の基地公開時に新たにオープンした広報館内に展示。なお館内撮影禁止とのこと。

<KV107II-4>

(12) 51742 米子駐屯地(35.4582, 133.3275)、訓練機、2003年9月以降存在

<KV107IIA-4>

(13) 51801 日本原駐屯地(35.1171, 134.1487)、展示機、大スポWR無し。2003年10月以降存在

(14) 51803 山梨県身延町の個人宅。かつて茨城県フラワーパークに展示されていた機体(1995年10月存在確認)だが、2009年8月以降2010年3月末までの間に解体・撤去された。現在の機体は解体業者から51803号機の胴体部分と航空自衛隊のKV-107のローターヘッド部分を入手して接合・再生したハイブリッド機となっている。胴体のS/N記載部分には03の数字を削りとった跡が確認できる。大スポWR無し。

(15) 51804 岐阜かかみがはら航空宇宙博物館 屋外展示機 大スポWR無し。

(16) 51805 別府駐屯地(33.2968, 131.4571)、2004年10月28日GE-Pro画像に以降存在

(17) 51807 信太山駐屯地(34.4910, 135.4406)、2009年5月-2019年4月存在

(18) 51812 船岡駐屯地(38.0477, 140.7795)、2004年4月以降GE-Pro画像に存在

(19) 51814 新町駐屯地(36.2705, 139.1150)、大スポWR無し、2002年9月以降存在

(20) 51815 霞ヶ浦駐屯地(36.0383, 140.1909)、大スポWR付。2002年9月以降存在

(21) 51816 淡路島 ミツ精機(株)(34.4588, 134.8601)、2019年訪問確認 

(22) 51817 島原復興アリーナ脇(32.7446, 130.3762)、大スポWR無し、2010年2月28日以降GE-Pro画像に存在

(23) 51818 クロスランドおやべ(36.6569, 136.8772)、大スポWR付。本機は2002年3月25日午前に熊本県高遊原分屯地を発ち、明野、木更津を経由して午後3時半頃に関東補給処のある霞ヶ浦駐屯地に着陸した。これによって陸上自衛隊におけるV-107の運用は幕を閉じた。その後、2004年7月下旬に関東補給処(霞ケ浦)から富山県小矢部市クロスランドおやべに搬送されて展示されている。

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写真3 山梨県身延町にある陸自51803号機の胴体に航空自衛隊のV-107Aのロータヘッドを取り付けたハイブリッド復元機。(2019年8月20日撮影)

 

【展示後撤去あるいは現状不明】

(1) 51702 日本航空学園教材機 撤去済

(2) 51704 富士駐屯地 撤去済(2020年4月衛星画像で確認できず)

(3) 51708 霞ヶ浦駐屯地 2000-2002年頃に51815と置換され撤去。

(4) 51710 習志野駐屯地 CH-47J胴体と置換か?(2020年4月衛星画像で確認できず)

(5) 51714 八戸駐屯地 撤去済

(6) 51718 那覇駐屯地 2006年12月以前に撤去

(7) 51719 金沢駐屯地 1993年9月存在、撤去時期不明

(8) 51720 霞目駐屯地 1993年10月存在、撤去時期不明

(9) 51722 旭川駐屯地 撤去済(2020年4月衛星画像で機体確認できず)

(10) 51724 倶知安駐屯地 撤去済(1970年7月7日事故後復帰)

(11) 51725 弘前駐屯地 撤去済(2020年4月衛星画像で機体確認できず)

(12) 51727 小倉駐屯地 撤去済

(13) 51728 真駒内駐屯地 撤去済

(14) 51729 福知山駐屯 撤去済

(15) 51732 久居駐屯地 51811に置換され、本機は撤去

(16) 51737 松戸駐屯地(35.7833, 139.9764)、訓練機、2000年11月以降存在も2021年3月30日に解体

(17) 51739 松本駐屯地 51712に置換され、本機は撤去(2002年以前か?)

(18) 51741 美幌駐屯地(43.8205, 144.1605)、訓練機、2018年7月16日から2019年10月28日の間に撤去

(19) 51802 川内駐屯地 撤去済

(20) 51808 福島駐屯地(37.7097, 140.3858)、訓練機、2011年4月10日GE-Pro画像に存在、2021年9月から2022年3月30日の間に撤去

(21) 51809 土浦駐屯地 2004年2月存在、2007年4月30日GE-Pro画像で機影無し。

(22) 51810 岡山県クリエイト菅谷展示 2005年3月に撤去

(23) 51811 久居駐屯地(34.6724, 136.4814)、訓練機、2016年4月存在、MRなし。2021年3月17日から2023年5月2日の間に撤去

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写真4 淡路島のミツ精機(株)に展示されている51816号機。

 

【参考: 事故抹消機】(確認できたもののみ。日付は事故発生日)

(1) 51706 1971年11月12日

(2) 51723 1971年03月01日

(3) 51733 1976年09月12日

(4) 51738 1973年11月30日

(5) 51740 1992年03月10日

(6) 51813 1983年06月06日

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 写真5 島原復興アリーナ脇の51817号機。隣には60式装甲車も展示されている。(2010年9月11日撮影)

 

【余談】

本項の大スポ機、WR装備機についてはGoNavyさんのBBSIIギャラリー掲載写真とFlyTeamさん投稿写真を主に参照した。なおJ.A.R.G.発行のJapanese Military Aircraft Serials 2000には51801~51804号機にもWR装備の記述がみられるが、WRを装備した機体の写真は確認していない。

以上